加藤典洋のレビュー一覧

  • 村上春樹は、むずかしい

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    村上春樹の文学が、時代と自分にとっていかに切実だったか、痛感した。一貫性のある、また、真っ当な評論である。一気に読んだ。

    ・どのような近代的な文学も、必ず、社会がゆたかになっていくある時点で、否定性が従来のかたちのままでは文学を生き生きと生かし続けられない転換点が来る。
    ・現実のもつ現実性が時の経過の中でリアルな意味をすり減らしてしまう。そういう場合、その現実性は、いまやフィクションを通じてしか、リアルな意味を回復できない。
    ・麻原の物語の力はむしろ稚拙であったからこそもたらされたのではないか。
    ・戦争が終わるということはないある意味で正義という魔法が解けること。その後、青豆の運命は私たちか

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    2016年04月23日
  • 戦後入門

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    「著者の集大成」などと思いたくないけど、「戦後」と「今に対する危機感」が強く伝わってくる。読み応え十分。

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    2015年11月05日
  • 吉本隆明がぼくたちに遺したもの

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    よかった。今まで恥ずかしながら吉本隆明氏の著作を
    読んだことがなかったのですが。
    彼の言葉、詩、思想のかっこよさを初めて感じた
    気がします。深くまでは理解できていないのでしょうが
    かっこいいと思える言葉や思想だと思いました。
    彼の著作を今後読む機会があれば、読んでいきたいと
    思います。
    ”世界と自分との両端性”
    ”先端と始原への同時的かつ両方向的な追尋の姿勢”
    ”みんなが言っていることは正しいが腑に落ちない感覚”
    ”無限性と有限性”
    ”ヨブ記においての解釈とキリスト教の誕生”
    ”西洋社会とキリスト教・アフリカ的段階”
    ”原生的疎外感”
    ”指示表出と自己表出・無意識内臓系と意識感覚系”
    ”歴史は

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    2015年02月04日
  • 敗戦後論

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    著者は、日本をはじめ敗戦を経験した国にとって、戦後とは「ねじれた時間」だとする。今まで真だったものがひっくり返るからだ。戦勝国の論理が通るようになり、敗れた自国のこれまでの「真」は「虚」になる。いわば「ねじれ」を中核に抱えて在立する社会となる。おそらくそれが、復興や成熟の原動力にもなるのだろうけど、日本にいたっては「ねじれ」がありながらも、「ねじれ」として認めていない国だとする。たとえば、ついさっきまで「鬼畜米英!」と叫んでいたのが、あっという間に「民主主義万歳!」となり、アメリカを慕うようになった変わり身の速さなどをいっているのだろう。
    こうした浅薄な日本がいま進んでいる道が危惧される。本書

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    2014年10月18日
  • 吉本隆明がぼくたちに遺したもの

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    新しく刊行されたものばっかり読むんじゃなく、ここで言及されているような「古典」も読まねばと心新たにしました。

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    2014年04月13日
  • IT時代の震災と核被害

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    次世代を担う人たちの答え。
    震災当時、震災以前の反省と現状認識、そして将来への課題など素晴らし良い内容がつまってる。

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    2012年11月26日
  • 戦時期日本の精神史 1931~1945年

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    歴史的事象とは、人々の思想・感情の潮流がその時々に記録した「結果」だ。
    だからこそ出来事の羅列ではなく、精神史をストーリーの形で語ることでしか
    見えてこないものがある。
    しかし精神史を広く平等な視座で語れる人がどれほどいるのか。
    なにしろ思想・感情の話である。
    その難解な仕事に、鶴見俊輔ほどふさわしい人物はいないだろうと思わされる本作だった。

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    2012年09月15日
  • IT時代の震災と核被害

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    ルポから思想まで豪華布陣だが、宮台さんの激憤しながらの筆致が鮮やか。『「ファストフードからスローフードへ」と同じく「原子力から自然エネルギーへ」も日本的に勘違いされるでしょう。〈食の共同体自治〉の問題が、食材選択の問題に短絡したように、〈エネルギーの共同体自治〉の問題が、電源選択の問題に短絡するでしょう。(略)原発災害からの学びがその程度で終わってしまうのですか。』pp.384-385. まさにそこなのだ。設計の悪い世論調査と内閣支持率に翻弄されて愚昧な二択に落とし込んではいけない。そこで一般意志2.0の登場なんだろうな。東さんと宮台さんと津田さんは全く方法論が違うけど、震災をきっかけに議論が

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    2012年01月23日
  • 言語表現法講義

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    著者本人も言っているとおり、実践的文章教室でも文章読本でもない。文を書く人の感性そのものを刺激する本。
    自分の出身大学でこんなすばらしい授業がなされていたとは、残念。大学時代に受けられていたら、今頃は、もっと澄んだ高見の景色が見れていたと思う。

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    2011年12月12日
  • 言語表現法講義

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    いかめしい名前だけれど、その中身はタイトルから想像されるよりもずっと和かい。不自由な言葉の自由さを感じることができて、もっと自分の頭にあることを言葉にしてみたいなと感じた。


    七歳の男の子が書いたとという日記の言葉


    ぼく かえる みつけた。

    しみそう。

    くさのところへ いきました。


    これを正しくすると、


    ぼくはかえるをみつけました。

    しにそうでした。

    くさのところへいきました。


    となるけれど、途端に最初にあった言葉が持つ余韻が消えてしまっている。最初の文章は書いた男の子の姿までをも想像させるものだったのだろう。明らかに不完全な文章なのだろうけれど、完全である必要なんて

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    2010年02月09日
  • 日本の無思想

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    日本と西洋とを対比させるのではなく、違う道筋は辿っても結局「公的空間」を喪失している点では同じ見る視点が説得力あり。
    その克服があくまで私利私欲側から、つまり人間の欲望の基底の側に足をつけていなくてはいけないとヘーゲルやマルクス(「マルクス主義」ではない)など複雑な引用を駆使して論じている。
    新書版とはいえ、噛み応えあり。

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    2009年10月04日
  • 敗戦後論

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    「敗戦後論」「戦後後論」「語り口の問題」の三篇を含む、戦後日本に対しての評論。著者の頭のキレを実感する一冊でした。

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    2009年10月04日
  • 言語表現法講義

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    『敗戦後論』で良くも悪くも著名な筆者だが(高橋哲哉に代表的な「良心的」知識人からの批判等)、個人的には以前かなり救われた一冊。あくまでも個人的だけど、かけがえのない感動した本、マイ・ベスト10――あるいは、ベスト5でも入れるだろうなあ、と思う。数年来、どうも思ったような言葉にならず、我ながら腑に落ちない日々…。勇気を振り絞って(?)痛み苦しみながら、最初からゆるゆると読み直している。が、ああ、やっぱりどの講義(章)も切実で真摯だなあという印象。自分の足場(デカルトの「格率」論も出てくる)がわからなくなってしまった…そんな思いを感じている人には、文章表現にかかわらずとも、救われるところがあるよう

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    2009年10月04日
  • 日本の無思想

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    なかなか私には難しい本でした。
    「ホンネとタテマエ」を主題とし、戦後日本の在り方を考察した本でした。
    なかなか読み進まない本でしたが、なんとか完読できました

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    2025年10月25日
  • 転換期を生きるきみたちへ

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    『13歳のハードワーク』がいちばん興味深くわかりやすい内容。これを最初の章に持ってくるべきでした。本当に中学生に読んでほしいと思うなら、まず読みやすい文章から載せるのがいいと思います。「こんな難しいこと書いてるオレってすごいでしょ、みんなついてこれる?」って思ってる大人の文章から始められると読もうとする気持ちがなくなります。
    中学生は小説以外の文章を読む機会が少ないし、意外とまじめなので本は常に最初から読もうとします。興味のあるところから読もうとは思いません。

    そしてこれを書いているおじさんたち、子どもがいるなら精一杯育児に関わったでしょうか?中学生、高校生の息子、娘にしっかり向き合ったとい

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    2025年09月20日
  • 「戦後再発見」双書8 9条入門

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    昭和天皇とマッカーサーを中心として、憲法9条の成立背景、安保条約以後の変容について論じた本。かなり面白い


    #創元社 #加藤典洋 #9条入門

    マッカーサーの政治的野心が見え隠れし、昭和天皇の免罪を勝ち取り、天皇象徴化による国民の空白を埋めた憲法という位置づけ


    憲法に相互主義の規定がないことについての論考は、一読の価値がある。相互主義とは 他の国が従うなら、自国の交戦権を制限して国連に委譲すること。9条について、改正議論が出るとしたら、相互主義の部分であろうと思う


    「1条(天皇の民主化)によって生じた日本国民の空虚が、9条(戦争放棄)の理想の輝きによって 埋められた」という結論は

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    2025年05月29日
  • 敗者の想像力

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    「敗者の想像力とは、敗者が敗者であり続けているうちに、彼のなかに生まれてくるだろう想像力のことである。自分が敗者だというような経験と自覚をもっていないと、なかなか手に入らないものの見方、感じ方、考え方、視力のようなものがあるはずだが、そういうものをまとめて、ここでは「敗者の想像力」と呼んでおく。」23

    「敗戦国に特有のものではない。それは普遍的な拡がりをもつ。」25

    「敗者の想像力と敗者への想像力。
     この二つはたしかに違っている。自分たちが敗者である。その自覚の底に下りていく。そしてそこから世界をもう一度見上げてみる。見下ろす想像力と、見上げる想像力。想像力にも天地があるのである。」27

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    2024年07月01日
  • 人類が永遠に続くのではないとしたら

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    p78「歓喜と欲望は、必要よりも、本源的なものである」
    p217「〜自由への欲求、真理の追求といった人間の無限性は、それだけで先験的に存在しているのではない、ということである。〜人間のばあい、その関係(引用者注:自然(大地)との関係)はほかの存在、動植物におけるようには安定していない。なぜなら、ほかの動植物は自然との関係において自分に「可能なもの」の圏域に安らっているが、人間ばかりは、そこを踏み出しだし、無限に不可能なものを欲するからである」

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    2024年03月10日
  • アメリカの影

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    28 ベース
    36 江藤淳の評価と韓国での受容
    72 成熟と喪失への批判
    79 ごっこ=擬制
    114 江藤淳の2つの錯誤
    133
    136
    203
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    2023年08月01日
  • テクストから遠く離れて

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    26 寄生 テクスト論破り
    65
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    81
    98 デリダからバルトへ 作者の死
    107
    120
    152 カミュ
    208 フーコー 作者の死
    215
    253
    300
    305

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    2023年07月26日