加藤典洋のレビュー一覧

  • 村上春樹の世界
    村上春樹の小説が、表面上は粋で欧米風な言い回しを使いながらオチのない話が繰り広げられる、時代から切り離された独立したものとして見える一方で、実は日本の時代感を繊細に、形而上的に表現している、というその矛盾に、人は惹きつけられることが分かった。

    例えば映画でもそうだけど、読者や観客に向けてあえて語ら...続きを読む
  • 転換期を生きるきみたちへ
    数年前に1度読んだが、内容を忘れてしまったので再読。
    様々な立場の方々が、先の見えない転換期にあたり、中高生に向けて「根元的に物事を考える」ために書かれた本。

    刺さるメッセージはたくさんあったが、特に刺さったのは「13歳のハードワーク」だった。
    たしかに「夢=職業」にしてる人が圧倒的だなー、と思っ...続きを読む
  • 村上春樹の世界
    無茶苦茶楽しい読書だった。こんないろんなこと考えて読むの久しぶりかもというくらいのめり込んだ。感動するくらい面白い読みもあれば、それは違うんじゃないかという読みもけっこうある。完璧な本じゃない。だけどそれがまた良い。好きだった。
  • 村上春樹の世界
    加藤典洋さんが、村上春樹さんに関して著された評論を集めたものです。いくつかの長編の分析、長編短編を通して読むことで見えてくるもの。そこから、村上春樹さんが、どのように小説家として進化してこられたかが、加藤さんの愛情とも見える心のこもった分析から見えてきます。キーワードといいますか、象徴ともいいますか...続きを読む
  • オレの東大物語 1966――1972
    加藤氏の大学生時代のことがテーマなのだが、実際には文芸評論家として本格始動する直前までの半生記となっている。加藤ファンとしては。彼がどのようにもの心つくようになっていたのかが垣間見えて面白い。
    闘病は凄まじかったようだ。喪失感は大きいが、改めてご冥福をお祈りする。
  • 戦後入門
    対米従属と半独立の現実が未だに日本の現状であることの、歴史的背景と数多くの論考をベースに著者が明快な結論を導き出す過程をたどることができる好著だ.p63にある"戦争の死者たちを、間違った、国の戦争にしたがった人々と見て、自分の価値観とは異なる人々だからと、心の中で切り捨てる" という戦後しばらくの期...続きを読む
  • 戦後入門
    ポストモダン思想やポストモダニズムもそうでしたが、本書の「戦後」というテーマも、自分が生きている「今」を含むテーマであるにもかかわらず(含むがゆえに、かもしれないけれど)理解しにくいと感じていました。先日読んだ宮台真司氏の『私たちはどこから来て、どこへ行くのか』で、戦後の社会の移ろいについては大きな...続きを読む
  • 戦後入門
    第二次世界大戦をイデオロギーの戦争とし、原爆投下を正当化したアメリカの思惑は、現在のパワーバランスを作り出す一助となっている。
  • 「戦後再発見」双書8 9条入門
    9条成文化の歴史的経緯を中心に検証されているが、それが集団的自衛権や、沖縄の米軍基地の問題とどのように関わっているのかということについても、まるでもつれた糸を解きほぐすかのように精密な考察がなされている。
    自国の憲法なのに、それがどのように成立したかということについて、自分があまりにも無知であったと...続きを読む
  • 村上春樹は、むずかしい
    まずはご冥福をお祈りいたします。亡くなられたからという訳じゃないけど、このタイミングで読んでみることに。先だって読んだ内田樹作・春樹評の中でも触れられていたしね。おおむね好意を寄せながら、褒めの一辺倒じゃないってところは好感。未読作品も、早く読んでしまいたくなりました。ただ、春樹特別って訳じゃなく、...続きを読む
  • 「戦後再発見」双書8 9条入門
    加藤氏の遺著となってしまった。次があったはずなのに。この問題提起はきっと大きな論争となる(ならねばならない)が、それを受けて立つはずの加藤さんはもう何も返してこない。
  • 転換期を生きるきみたちへ
    中高生に『ミライの授業』と併せ読んで欲しい。

    本書は、大人が読んでも考えさせらえるものである。
    「転換期を若い人が生き延びるための知恵と技術」について、親子で一緒に考えてみてはどうだろうか?
  • 敗者の想像力
    大学時代読み切れなかった本をやっと読破。
    間違いなく私の人生の中で出会えて良かった本10番に入る。
    この本をきっかけにジブリ作品を見返したい、さらにはその作者、宮崎駿に影響を与えてきたものをもっと知りたいと思い、新しい本を購入。宮崎駿『出発点』『折り返し点』
  • 転換期を生きるきみたちへ
    『日本の反知性主義』の続編。うんうんうん、と頷きながら読んでました。そしてしみじみ、今は時代の転換期なんだなぁと思いました。
  • 村上春樹は、むずかしい
    『村上春樹は、むずかしい』というタイトルであるが、ここまで読み込むのであれば、むずかしいというのも頷ける。

    例えば、初期短編『中国行きのスローボート』については、初編からの細かな改変部分に目配せされていてその意図についての解釈が解説される。これまで、村上春樹の父と中国に対する一種の集合的な罪の意識...続きを読む
  • 村上春樹は、むずかしい
    伝統的な日本の純文学の系譜と対比的に捉えがちな村上春樹を、日本の近現代の文学の伝統の上に位置づけるという批評的企ての書。村上作品の変遷を主要な作品を通して見ていく。

    『風の歌を聴け』
    近代の原動力となってきた否定性を否定しながらも、その没落を悲哀に満ちたまなざしで見送るという斬新さ。

    初期短編3...続きを読む
  • 敗者の想像力
    この本を読むきっかけとなったのは、2017年6月9日、大阪朝日カルチャーセンター中之島教室主催の、内田樹先生と高橋源一郎先生による対談である。
    その中で、高橋先生はこの著作の内容に触れながら、権力に立ち向かう「敗者としての立ち向かい方」についての示唆をされていた。
    それは、この本の第2部で詳しく述べ...続きを読む
  • 戦後入門
    はじめに-戦後が剥げかかってきた
    第1部 対米従属とねじれ
    第2部 世界戦争とは何か
    第3部 原子爆弾と戦後の起源
    第4部 戦後日本の構造
    第5部 ではどうすればよいのか
    おわりに-新しい戦後へ
    新書でタイトルに「入門」とあるのに大変厚みのある本で、これを読んだだけで戦後が分かる!という類の本では...続きを読む
  • 戦後的思考
    第一部では、前作の敗戦後論を振り返るとともに、改めて戦後日本が抱えた死者の分裂と対外的な二重人格性の指摘がなされます。他国より自国の死者を先に意味付けることを批判されたことに対する応答が多めです。第二部では、吉本隆明や吉田満ら戦中派の戦争への没入という誤りに、戦後社会が立脚することの意義が述べられま...続きを読む
  • 村上春樹は、むずかしい
    [村上さん、引きずり出してみました]人によって好き嫌いが大きく分かれ、文芸界での評判も分裂する傾向にある村上春樹とその著作。デビュー作となった『風の歌を聴け』から直近の『女のいない男たち』までを時系列的に眺めながら、村上春樹の文学史的評価に新たな光を当てようと試みた作品です。著者は、文芸評論家として...続きを読む