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日本ばかりが、いまだ「戦後」を終わらせられないのはなぜか。この国をなお呪縛する「対米従属」や「ねじれ」の問題は、どこに起源があり、どうすれば解消できるのか――。世界大戦の意味を喝破し、原子爆弾と無条件降伏の関係を明らかにすることで、敗戦国日本がかかえた矛盾の本質が浮き彫りになる。憲法九条の平和原則をさらに強化することにより、戦後問題を一挙に突破する行程を示す決定的論考。どこまでも広く深く考え抜き、平明に語った本書は、これまでの思想の枠組みを破壊する、ことばの爆弾だ!
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Posted by ブクログ
著者がヨシモト先生(吉本隆明)系の人ということで本書を敬遠していたが、評判が気になって、ついに読む気になった。 本書を敬遠していたもう一つの理由は、著者が文芸評論家であることが引っかかるから。やはり、戦後日本論は、文学系の視点よりは、社会科学系(特に政治思想)の視点のほうが、私の好みに合う。文学系の...続きを読む視点はしなやかで、美的で、繊細で、個性的であるのはよいが、その分だけ現実性、客観性、普遍性から遠ざかると思う。 まあ、こういう屁理屈を言うヒマがあったら、本書を処分するか読むかのどちらかにしろ、と言われそうだ。そこでザッと本書を見ると、「あとがき」の次の箇所に目が留まった。以下はその概要である。 <今回の本を書くにあたって、私がもっとも励まされ、教えられたのは、イギリス人のロナルド・ドーラと、元編集者の矢部宏冶という二人の「部外者」による憲法九条論だった。二人の共通点は、憲法九条の精神を今に生かそうとしたら、それは「護憲」ではなく、「改憲」となる、と見切ったことだ。 彼らから一番教えられたのは、憲法九条の精神の実行に向けた「改憲」論を支える、生き生きとした世界観だ。ドーラは、なぜ日本は世界のことを考えないのか、と言う。憲法九条は、「日本は世界と共にある。世界と共に生きていく以外に自分を全うできない道を選んだのだ」という宣言ではないか、と言う。 また矢部は、沖縄に赴くことで、今何が必要なのか、と言うことを日本に関してつかんでいる。彼の基地撤廃条項の九条への書き込みというアイディアはフィリピンに学ぶ独立の仕方である。それを彼は沖縄で見つけたと私は思う。沖縄と連帯しようとすれば世界につながる。護憲では済まない、という彼の声が聞こえる。 池澤夏樹は、”矢部の本の真価は改憲の提案にある”と評し、”今は直進の「護憲」ではなく「左折の改憲」が必要かもしれない”、”自分の答えは「もう護憲では足りない。左折の改憲を」”と書いた。> うーん、「直進の護憲」から「左折の改憲」へと捻りが入って進歩が見られるが、現実的な具体策がよくわからないので、まだ文学的なムードが抜けていないようだ。せっかく美しい問題提起をしても、何しろ相手は強大(膨大、恐大、狂大、凶大、etc.)な「アメリカ帝国」だから、簡単に事が進むわけがない。本物の保守派の江藤淳氏や国家主義者の安倍元首相ですら酷い目に遭ったと言われている。必ず潰されるのに、一体具体的にどうするつもりなのですか? そういう点に注意して読めば、本書は戦後日本を概観する上で十分参考になると思う。著者の人柄が良さそうだし、本書の感じも良さそうだしということで、まだ全部を読まないうちに評価を満点の星5つ★★★★★にしてしまった。そういう私も現実的ではない。 著者が 2019年に亡くなっていることは知らなかった。ご冥福を祈ります。
新書にして600頁越えのボリューム感に怯み、早く読みたいと思いながら、長らく積読状態に置かれていたもの。やっと読めました。しかしこれ、どうせ読むなら早く読んどくべきだな。新たな戦前なんて言われちゃうような今日に読んだからこそ、相当に響くところがあったのかもしらんけど。 まず、枢軸国側と連合国側の争い...続きを読むであった大戦が、終戦後にいつの間にか、民主対共産に置き換えられたとの指摘から始まる。その原因として、根底には原爆投下の責任回避的側面が垣間見え、結果的に、現在まで続くところのアメリカ従属体質が維持され続ける問題にまで論が及ぶ。必然的に憲法第九条に言及される訳だけど、どう改正を声高に叫びつつ、一方で対米従属方針を強めていくべく立ち回る論理矛盾が、いかに荒唐無稽か、すっと腑に落ちる。ではどうすべきか。フィリピンが、対米関係をこじらせることなく、米軍基地の撤廃に成功した例を引き、日本でも同様の可能性が探れると説く。本書上梓から十年が経過し、氏が鬼籍に入られてからも世界の変化は著しい。コロナ禍やウクライナ侵攻・ガザ侵攻で、本書でも一番の拠り所としている国連の、そのプレゼンスは低下している印象を拭い切れない。本書の論旨を、まんま現代に適用するのは、ますます困難になっているけど、それでも十分に通用し得るもの。それだけに、今の世に対する氏の論考がもはや聞けない喪失感が大きい。
対米従属と半独立の現実が未だに日本の現状であることの、歴史的背景と数多くの論考をベースに著者が明快な結論を導き出す過程をたどることができる好著だ.p63にある"戦争の死者たちを、間違った、国の戦争にしたがった人々と見て、自分の価値観とは異なる人々だからと、心の中で切り捨てる" と...続きを読むいう戦後しばらくの期間、スタンダードとされた革新派の人々と、"戦前の死者たちを称揚したい.否定したくない、という一心から、歴史的な現実のほうをねじまげて、日本は正しかったのだ" と考える人々があり、後者が次第に増えてきた現実を直視している.これらの発想は未だに根強く残っている.ポツダム宣言受諾と無条件降伏の関係の議論も良かったが、原子爆弾に関しての考察が秀逸だ.米政府内では、原爆投下以前にも科学者を中心に使用を止める提言があったこと、さらに投下後にもこのような技術を公開することを官僚がいたことなど、興味ある事実が披露されている.憲法9条の論考も素晴らしい.p551にある非核条項と基地撤廃条項を加えた9条改定案、さらにp369の配置図は非常に理解しやすい.
ポストモダン思想やポストモダニズムもそうでしたが、本書の「戦後」というテーマも、自分が生きている「今」を含むテーマであるにもかかわらず(含むがゆえに、かもしれないけれど)理解しにくいと感じていました。先日読んだ宮台真司氏の『私たちはどこから来て、どこへ行くのか』で、戦後の社会の移ろいについては大きな...続きを読む理解を得ました。しかし、社会学の立場からの論考であり、あまり政治的な話には(当然でしょうが)踏み込んでいません。 そこで、国際関係や政治的な動き、そしてそこに横たわる考え方(イデオロギー的なもの)はどうなのかを知りたくて、新書としてはいささか厚い本書を手にとりました。 未だ日本は米国の従属支配から脱却していない(つまり、日本は「独立した主権国家」になりえていない)、という立場から、著者(加藤典洋)は同じテーマを何度も繰り返し、少しずつ見る角度を変えながら、丁寧に説明してくれています。扱うテーマは難解であり、本の厚さに最初はやや躊躇いもありますが、氏の微に入り細にうがった説明は、理解を深めるにはとても良い。タイトルに「入門」とありますが、戦後の日本社会(特に日本から見た日米関係をはじめとする、わが国の国際的な立ち位置と国内イデオロギーの変化)を概観できます。昨今、まるで戦前の軍国主義に逆行しようとしているかのようなアベシンゾーのおかげで一寸先は闇状態の我々に天啓を与えてくれる書でもありましょう。 宮台氏のいう「対米ケツ舐め路線」が、いまだに日米同盟(つまり日米安保条約とそれに基づく日米地位協定)の軛から逃れられないことからくるルサンチマンの裏返しなのだと、本書を読むと思えてきます。ましてやちぎれんばかりに米国に尻尾を振り回すアベなどは、しょせん米国の従属国である「日本」の首長として、劣等感の塊であることが理解できます。こんな小者に、我らの大事な憲法改正を任せることなど、自殺行為に等しいでしょう。 では、憲法を改正するにはどうすればよいのか。とりわけ戦後の日本が抱える「米国」という軛から晴れて友好的に主権を取り戻し、一見「平和主義」に見える現憲法の第九条をどのように扱えばいいのか。そうしたことが、現在に至る戦後の流れの中での変遷、日本とそれを取り巻く社会情勢、日本独特の社会的・文化的風土といったものを踏まえて詳しく解説されます。 本書が唯一の正解ではないでしょう。しかし、劣化著しい政治家が叫ぶ、口先だけの「改憲」よりははるかに信憑性も説得力もあります。宮台氏の社会学的見地からの論考とも通ずる部分もあります。良かれ悪しかれ、憲法改正へと舵は切られるでしょう。改正の道筋が正しいかどうか。憲法改正という言葉が現実味を帯びている今、本書はその道筋を判断する上で、重要な補助線を与えてくれるに違いありません。
第二次世界大戦をイデオロギーの戦争とし、原爆投下を正当化したアメリカの思惑は、現在のパワーバランスを作り出す一助となっている。
はじめに-戦後が剥げかかってきた 第1部 対米従属とねじれ 第2部 世界戦争とは何か 第3部 原子爆弾と戦後の起源 第4部 戦後日本の構造 第5部 ではどうすればよいのか おわりに-新しい戦後へ 新書でタイトルに「入門」とあるのに大変厚みのある本で、これを読んだだけで戦後が分かる!という類の本では...続きを読むないが 戦後政治を時系列で理解するための「索引」として手元に置いておきたい。
日米関係、憲法9条、核問題、基地問題についての解決方法を提示してくれている。しかしこの解決方法は理念のようなもので、ここに至るまでのプロセスはどうしたら良いのだろうかと思った。
600頁を超える大部な新書。 扱うテーマは濃いが、語り口は平易で、大変読みやすい。 世界戦争の持つ意味(本来の、「もたざる国、ならず者国家v.s.国際秩序の擁護者」の構図から、「全体主義、ファシズムv.s.自由民主主義」という物語の「再成形」)、原爆が持った大きな歴史的意味や、米国による原爆投下を...続きを読む批判できない日本の問題(原爆慰霊碑に見られるような「絶対的(理念的)平和主義」が現実に即していないこと)、吉田ドクトリンを基軸とした戦後日本の歩み(親米・軽武装・経済中心主義による、対米従属の意識の緩和策)、未だくすぶり続ける駐留米軍基地や核兵器の問題など、第一次世界大戦以降から現代に至るまで、緻密な歴史分析と問題提起を行う。 そして、これらの歴史から生じた「ねじれ」(著者は折に触れてこの言葉を使っているが、かなり多義的に用いられている感がある)、日本の対米従属や核廃絶といった問題を解決するための、日本の唯一のあり得べき道として著者が提案するのが、国際主義に立脚した国連中心主義と、憲法9条の強化(改憲により、国連中心主義や非核三原則、外国軍基地撤廃等を宣言する)である。 近時の報道やネットコミュニティ、あるいは街頭において散見されるヘイトスピーチや「東アジア外交の重視⇒左翼、売国」といったレッテル張りがいかに空虚で、それによるマイナス作用を見ていないものか、あるいは、これまで日本でよく語られてきた「戦争は悪、自衛隊は悪、核兵器は悪、平和を守れ」といった(そのように主張するだけの)理想主義的言説が、いかに現実と遊離し、日本の抱える諸問題を解決に導いてこなかったかが、よくわかるはずである。 著者の結論に乗るにせよ反るにせよ、今後の日本のより良い、現実的に可能な未来を考えるに当たって、必読の書。
所謂“戦後”なるものは、どのように形成され、進展して来たのであろうか?色々と考えるべきポイントや材料は在る…本書は、確かに分厚い新書だが「視るだけで疲れる…」ような代物ではなく、「普通に読み易い本」で取っ付き易い…価値在る一冊だと思う…
「著者の集大成」などと思いたくないけど、「戦後」と「今に対する危機感」が強く伝わってくる。読み応え十分。
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