【感想・ネタバレ】オレの東大物語 1966――1972のレビュー

あらすじ

「東大は、クソだ」。長年のタフな論争を闘い抜いてきた文芸評論家の原点は東大闘争、しかしながら大多数の同時代人とは異なり、医学部を中心に華々しく展開したメインストリームに較べれば幾分「地味」な文学部闘争にあった……。6年間の学生生活で著者がきたした変調、払拭し得なかった違和感とは。周りを囲む様々な知性との交錯を重ねながら、やがて導かれた独自の結論としての、「内在」から「関係」への転轍。かつて自身が幕末の尊王攘夷に用いた概念が、ラストでは加藤自身に照射される。2019年5月に急逝した日本を代表する文芸評論家が、まったく新しい文体で「パンドラの箱」に挑み、骨太な思想の淵源を初めて明かした、唯一無二の青春記。

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

加藤氏の大学生時代のことがテーマなのだが、実際には文芸評論家として本格始動する直前までの半生記となっている。加藤ファンとしては。彼がどのようにもの心つくようになっていたのかが垣間見えて面白い。
闘病は凄まじかったようだ。喪失感は大きいが、改めてご冥福をお祈りする。

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2020年09月07日

Posted by ブクログ

著者の評論自体にさほど触れたことはないが
全共闘時代における、ある種傍流な学生のあり方を「今の若い人にも面白かろう」として
死と隣接した病床の中、2週間に書き連ねた躍動力に目を見張り、
人生の様々な転機を振り返る中、見出した人生の決算に先人の重みを感じる。

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2022年01月04日

Posted by ブクログ

山形から現役合格して6年間東大に在学した著者は、後に有名な文芸評論家になる。本書は余命幾許もない病床で、在学中の全共闘を中心とする学生運動を軸に、主体的でない関わりを通じて彷徨った経験が赤裸々に書き綴られている。
東大闘争は安田講堂の籠城戦を経て、文学部を除き鎮静化していくが、著者の中では無期限ストから離脱宣言しないまま没入していく。在学中は友と呼べる友人がほとんどできず、入学後に感じた'東大はクソだ!'の感慨は'オレもクソだった'という自己発見に帰着する。この心の移ろいを見出すことは難しいが、数少ない友だった詩人・瀬尾育生氏の解説が、著者の細部を照らし、作品群における本書の位置付けを明確に指摘している。
東大入試中止を引き起こした一連の出来事から、大学側の問題処理の頑迷さが感じられる。

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2023年02月02日

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