中山七里のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレパイセン本。
中山七里著『祝祭のハングマン』は、法の網をすり抜ける悪を裁く「私刑執行人=ハングマン」という、ダークヒーロー的存在を核に据えた作品である。その設定は単なる勧善懲悪の枠を超え、人間の心に潜む復讐心や正義への渇望を鮮やかに照らし出す。主人公たちの姿は、理性と激情のはざまで揺らぎながらも、許されざる者を断罪するという一点に収斂していく。その過程は倫理観を鋭く突きつけると同時に、読む者に強いカタルシスをもたらす。序盤の静謐な展開から、後半にかけての昂揚は見事であり、闇に潜むハングマンの存在が現実に顕現したかのような迫力を放つ。正義と悪の境界が溶解する中でなお、人はなぜ「裁きたい」と願うのか――本作はその根源的な問いを私たちに突きつける。重厚なテーマと緊張感ある筆致により、ダークヒーロー小説の醍醐味を存分に味わえる一冊である。 -
Posted by ブクログ
タイトルの「静おばあちゃん」は『テミスの剣』の高円寺静裁判官。
ストーリーはともかく、『テミスの剣』を先に読んでいたからこそ、心に響いた静おばあちゃんの言葉。
「どんな行為にも言い訳がある。どんな人間にも正義がある。でも、それは本人以外の目で測ると歪んでいることがままあってね。しかも組織という枠組みの中にいるともっと頑迷に、もっと歪んでしまうの」
「正義というのはね、困っている人を助けること、飢えている人に自分のパンを分け与えること。定義なんてそれで充分」
「権力を握った人間は自分が正義だと思い込んで、その正義を揺るがすものを赦そうとしない」
「仕事の価値はね、組織の大きさや収入の多寡じゃなくて、自分以外の人をどれだけ幸せにできるかで決まるのよ」
退官して四半世紀以上、たいそうなお年のわりにしっかりしてらっしゃると思っていたら…
さらっと軽く読みました。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ2025/48
とっても考えさせられて良かった。
子供が自分の意思で、または親の意思で臓器を抜き取られる。率直にいうとゾッとする。
とくに中国から養子に出された子が、わけもわからず臓器を取られ、術後不良で死ぬってつらすぎる。
香典目当ての父親にも心底腹が立った。
だけど後半になるにつれて、私も犬養刑事と同様どこかで揺れ動くような感情を持たされて
正しさってなんなんだろう。正解ってなんだったんだろう、って考えずにいられなかった。
執刀医、閉腹医、口止めの殺人犯がすべて異なるというのも面白かった。長束さん……
高千穂が少し刑事として成長していて嬉しい。
相変わらず感情的なんだけど、頼れるパートナーになってきている。
あのラストシーンで陣野さんが孫娘のために臓器を必要としていたこと、犬養のせいで孫は死ぬと言われるところ。心臓ぎゅっと掴まれる。
絶対に犬養は悪くないのに、自分の娘が治る可能性を自分が減らしている葛藤。今後もこのシリーズを追いたいなと思いました。
-
Posted by ブクログ
ネタバレ本作は、元刑事で現在は作家となっている毒島真理の“刑事時代最後の戦い”を描くシリーズ第0話的な立ち位置。自身が優秀であると勘違いし、承認欲求を拗らせている犯人たちを取り調べを通じて落としていく舌戦が見ものの作品。
各話のバックボーンには「教授」と呼ばれる人物が存在し、承認欲求や歪んだ夢を抱えた人間たちを心理的に追い込み、間接的に犯罪を実行させていた。
単なる犯人ではなく、弱さに付け込んで弄ぶ存在であり、社会にこれからも同じ悲劇を生み続けるであろう知能犯で、裁判という正義の執行では止められない相手であると判断し、舌戦で教授を追い込み自殺へと誘導した。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ物語の舞台は、岡山県・津山市に存在する山深い村─姫野村。そこに残るのは、戦後まもなく村人6人を惨殺した元地主・巌尾利兵衛の呪い。70年以上にわたり、鬼哭山(おになきやま)からの咆哮とともに“祟り”が襲いかかるという伝承がある。
令和の新型コロナ禍におけるマスク着用の同調圧力や情勢不安の鬱積─その中で東京から移住してきた麻宮をきっかけに、不穏な空気が村を覆い、次々に不審死が起きる話。
姫野村での閉鎖的な環境で日々の不満が蓄積すると余所者への攻撃が正当化されてしまう。陰性証明書のような証明があったとしても陰謀論に飛びつき、話を聞こうともしない。私自身の地元も多少田舎なので心当たりのある話だった。
殺しのトリック的なところで言うと、鉱山採掘に利用した穴が台風などの突風により大音量の音を醸し出してしまい、持病のある人間がショック死してしまったこと。 -
Posted by ブクログ
中山七里さんの作品は、「岬洋介」シリーズと「御子柴礼司」シリーズを読み進めていますが、「切り裂きジャックの告白」で登場した「犬養隼人刑事」を思い出し、とりあえずシリーズ2作目以降となる「七色の毒」、「ハーメルンの誘拐魔」、「ドクター・デスの遺産」の三冊を本棚に登録しました。
「七色の毒」はタイトル通り七つの色にまつわる七つの短編になっています。それぞれの物語は、過去にニュースとして報道された事故や社会問題が織り込まれていて、人間が持つ毒という形で表現しています。
中山作品といえば「大どんでん返し」ですが、短編でも遺憾なく発揮されています。さすがというか、中山七里さん自身が七つの毒を全て持っていて自由に調合できる天才なのでしょうね。
しかし、好きなシリーズがまた一つ増えてしまって、最新刊に全然追いつけていないのが益々遅れることになりそうです。世の中に面白い本が多すぎますね。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ静おばあちゃんと玄太郎おじいちゃんの中山ワールドゴールデンコンビが大活躍
自分に厳しく他人にも厳しい静おばあちゃん、玄太郎おじいちゃんと相性抜群かと思いきや、わがままじいさんと見なしてて面白い笑
ところどころ入る静おばあちゃん(またはみち子さん)の冷静なツッコミが結構ツボ
自分たちが同期であることを説明しようとする刑事さんに「お前らのなれそめなんぞ聞きとうない。そういうのは結婚式場でやれ」って玄太郎おじいちゃんが言うところが好きwワードセンスが天才すぎる
そんな中でも高齢者犯罪の増加、高齢者相手の詐欺、外国人労働者問題などの社会問題もしっかり扱われていてよかった。
第4話はテイストが少し違うけど、優しい物語でこういうのもよかった。
静おばあちゃんと円の最後の挿絵がよい。 -
Posted by ブクログ
久しぶりに中山七里。一気読み。帰省時に母に献上する本を早く読まねば。
地下鉄の廃駅が舞台のミステリー。楽しい。
ベルリンでのミニツアーを思い出す。大戦中に地上と地下鉄の間に作られた巨大防空壕を案内するミニツアーを見つけて行ったことがある。ただの(地上の)何でもない交差点にある小さな倉庫のようなところの扉を開けて中に入っていくと、そこは地下への入り口だった。地下にたどり着くと銀行の分厚い扉(巨大な円環のぐるぐる回すやつがついてる)にそっくりな扉。よく銀行破りが映画とかで挑戦するやつね。そこから中に入ると立派な居住空間。いくつかの部屋に、医務室、トイレ、途中で地下鉄を下に除き見る小窓など、ワクワクした。映画などで見るような制御室みたいなガラス張りの部屋もあった。最後は入り口からは徒歩1駅離れた駅の階段の踊り場の壁に同化したような出口からポンと出た。そこで解散して電車でホテルに帰った。ツアーガイドはドイツ語だけだったので、微妙なドイツ語知識しかない私はポツリポツリとしか解説が理解できなかった。今は英語もあるようだ。もう10年以上も前の記憶なので、誇張はありそうだが。
本の感想より、思い出が長くなった。