中山七里のレビュー一覧
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「護られなかった者たち」「境界線」の宮城県警シリーズ第三弾にして完結編です。この作品にも前作にも登場した人物が描かれていることと、背景には東日本大震災が大きく関わっていることなどは共通してます。前作では宮城県警の笘篠のことが、この作品では蓮田のことが大きく取り上げられています。
宮城県南三陸町の仮設住宅において、同地区役場職員掛川が殺害された。国は仮設住宅から災害公営住宅への転居を推奨しており、現場となった部屋は空き部屋だった。それでも費用面や慣れない環境で今後過ごさなければならないことに難色を示し、現在も仮設住宅で3世帯が暮らしていた。宮城県警の笘篠と蓮田が捜査にあたる中、浮上したのは -
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“それは、街の死骸だった。”
東日本大地震、原発と重い題材なのだが、テンポの良さとスピード感のある展開でページをめくる手が止まらなかった。
とくに震災後の原発の描写は、作者が丹念に調べ上げて物語として落とし込んでいるのでほぼ真実なんだろうなと思った。
震災が起こった場所で暮らしていたこと、原発で働く選択をしたこと。
自己責任で片付けるには、割り切れない気持ちになってしまう。
とはいえ、地震大国で暮らし電気がないと暮らせない生活を送っている身としては何もできないのも事実なのだが。
このような社会派サスペンスを読んだあといつも思うのだが、今まで責任ある立場で受けた恩恵もあるのだから、問 -
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光崎教授のテレビ番組出演したあと、放送局のホームページに犯行予告とも思える書き込みがあった。自然死に見せかけた殺人を行うというその文言のせいで、普段なら単なる病死や事故死とされるような異状死体を調べなければならない羽目に陥った古手川と真琴。一方で、光崎には犯人の心当たりがあるのではないかという疑惑も。相変わらず目の離せないシリーズです。
今までこのシリーズを読んだ人ならみんな思うでしょう。光崎教授の言うことは圧倒的に正しいですが、彼をテレビに出してはダメだと(笑)。そりゃあこうなるわ。しかしこの犯行予告にはぞっとさせられます。そして解剖率が低い日本の現状もまた、このシリーズを読んでいれば恐ろし -
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自分探しの結論といった趣き。
司法修習生となった岬洋介。寮の隣人天生は岬の2歳上で高校生までピアノを弾いていたクラシック好き。
司法試験に合格した後に、司法修習生として1年4ヶ月の研修があるそうだ。
天才岬洋介は、司法の分野でもやっぱり天才。もう死角なしの完璧男子なのに、人にはフラットでどことなく子供っぽい。ゆえに完璧だと私は思う笑
司法修習生として現実の事件も向き合いつつ、とある天生のいたずらがきっかけで、岬は自分の目指すところに向き合っていく。
同時に、彼らが新聞で見た絵本作家の殺人事件にも関わり、被害者の作品を見てまた信じるところを思ったりする。
音楽の表情もたいへん巧みで、事件もなか -
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中山七里さんのいろいろな作品に登場する、岬洋介の高校時代。
検事の父の転勤に伴い、音楽科とすごいピアノのある高校に転校し、天才的なピアノの才能と美貌で一躍話題をかっさらう岬。クラスメイトなどと軋轢もありつつ、理解者というか保護者的な友達もできて、それなりの学校生活を送る。この保護者的友達の鷹村の視点で語られる作品になっている。
夏の嵐の日、学校が土砂崩れに巻き込まれそうになり、鷹村と岬は助けを呼ぶために校舎を出て、岬は川の上にかろうじて渡された電柱を渡り、鷹村はクラスメイトに避難を促すために戻る。
そして岬が民家から助けを呼び、学校にレスキューが着く。しかしそのとき、岬と軋轢のあった少年が他殺