江戸川乱歩のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレまさかのアルセーヌ・ルパン登場。今作では猟奇的な犯罪は出てこず、(殺人はあるものの)雰囲気としては二十面相対明智に近い。
ルパンが平気で人を殺そうとするので、ルパンって殺人は嫌いなんじゃなかったっけー?と思っていたら、日本人(白人以外)は殺してもOKという言い分でひっくり返った。よそから勝手に拝借してきたキャラクターにそんな好感度の下がる言動をさせちゃっていいのか?と思ったが、どうやら原作にモロッコ人3人を射ころしたエピソードがあるらしく、乱歩がルパンの人種偏見を批判したものであるらしい。しかしながら、明智も「日本人を、あのモロッコの蛮族同様に心得ているんだな」(p155)と言っているあたり、人種偏見があるのは同じだったりする。
「白き巨人」という言葉が出てきた時になぜか即座に正解が思い浮かんだので、記憶にはないがこの話もポプラ社の旧「少年探偵団」シリーズで読んだことがあるのかもしれない。
(2026.8.1) -
Posted by ブクログ
『パノラマ島綺譚』と『石榴』の同時収録。
内容の共通点はあれどジャンルは前者は怪奇小説、後者は推理小説に近い。
「生と死を分つ境界は曖昧」というテーマが二作を通じて感じられる。
何もかもに退屈していると確かに生きながら死んでいるような気分になるのかもしれない。
皮肉にもそういう人に限って身近な他人に目を向けようとしなかったり、狭い視野しか持っていなかったりする。
『パノラマ島』も『石榴』も、そんな考えの人物が罪を重ねてしまう物語。
個人的には『パノラマ島』の方が好みだった。
ゾッとする情景描写はさすが乱歩。
生きた人間が芸術品のように扱われているのが不気味。
本人たちは金を約束されて自分の意思でやっているのだろうけど、それこそ生きながら死んでいるみたいなものだなと考えると死体を使うよりタチが悪い。
-
Posted by ブクログ
ネタバレ展開や伏線の破綻もなく、かなり面白かった。ただ、最初の福田得二郎殺害だけは、同居していたわけでもない犯人がどうやって実行できたのか謎。
作中の日付に一部混乱があるような気がする。
p54で、今日が11月17日と聞いて明智が「僕が上野駅に着いたのは18日の晩だから、まる一日眠っていたわけですね」と答えるのは明らかにおかしい。
明智が上野駅に着いたのは、福田殺害が行われたのと同じ日(の殺害時刻より前)なので、17日(紙切れ「三」の日)の夜であり、これはそれまでの記述から明白。
そこから誘拐されて丸一日眠ったとすれば、船を脱出したのは18日の夜となる。しかし、p73には「翌々日19日の朝」に明智溺死の新聞記事が出たという記述や、「18日午後4時ごろ」に溺死体が発見されたという記述があり、18日夜脱出と矛盾する。溺死体の発見が19日、新聞記事が出たのが20日の間違いであれば筋は通る。
一方、新聞記事関連の記述が正しいとすると、明智が丸一日眠ったとするのが間違いで、誘拐されて数時間眠った後、17日夜のうちに脱出していたことになる。
巻末の「明智小五郎年代記」には、「東京駅に戻り誘拐されたのが、16日でした。船の上でとらわれの身になって目を覚ましたのが17日」とあるが、16日=紙切れの数字「四」の日であり、「三」になる前日に既に明智を呼び出していることになるのでおかしい。
後の「少年探偵団」シリーズの原型となるような描写が随所にあって面白い。例えば、誘拐された明智が壁にかかった道化の顔と会話し、その後脱出して船から逃げる場面は『仮面の恐怖王』でそのまま使われているし(本作では文代の助けによって逃げおおせるのに対し、『仮面の恐怖王』では自力で脱出しており、明智のスーパーマン度が増している笑)、時計塔の針に首を切断されそうになる場面は『塔上の奇術師』で使われている。また、犯人のピストルの弾があらかじめ抜いてあったり爆薬が水浸しになっていたりするのは、怪人二十面相との対決でお馴染みのパターンである。
解説(大槻ケンヂ)が楽しい。旧「少年探偵団」シリーズの後半巻で大人乱歩に出会ってしまった小学生のトラウマの話には爆笑しつつも深く共感。殺人の前に笛が聞こえる場面や、遺体に菊の花びらが散らしてある場面は本当に怖くて、大人になるまで覚えていたもんなあ。
(2026.7.30) -
Posted by ブクログ
「一寸法師」
・さすがに今の時代に読むと、当たり前のように出てくる差別意識がかなり厳しい。
・デパートのマネキンの場面は背筋がゾーっとした。
・犯人判明までのどんでん返しはかなり面白かったが、結末での決着の付け方はちょっと納得がいかん…
・解説(法月綸太郎)でも触れられているが、明智小五郎の人格がけっこうヤバい!結末の発言もそうだし、被害者の母である山野夫人の反応をニヤニヤしながら確認したりとか。
「何者」
・めちゃくちゃ面白かった。こういう話の方が好き。「乱歩の体臭」についての解説者の意見に深く頷いてしまった。
(2026.7.27) -
Posted by ブクログ
明日は 江戸川乱歩のご命日
幼少期より 鏡の性質に魅入られていた青年。遺産相続して、資金と時間が豊富になると、ますますその鏡の世界に没入していく。
究極の鏡は 鏡の球体。
その完成品に身を投じる。
それは、それは、精神が持ちませんね。
イラストはホノジロトヲジさん
乙女の本棚では、「死後の恋」「人間椅子」を手がけています。
鏡地獄という作品自体が 乙女というタイトルから遠そうであるにも関わらず、鏡、硝子をイメージするような繊細なイラストが描かれていました。でも、これはイラストレーターさんが誰でもちょっとかわいそうなような。
江戸川乱歩の小説に出てくる、博士系の人ってイメージ的にはボサボサの精神が追い詰められていく感じの男性。そこをやっぱりイケメン風にしないと収まりが悪いし。
美しいイラストが並んでました。
-
Posted by ブクログ
7月28日は江戸川乱歩の文学忌、柘榴忌
「黒蜥蜴」
月刊『日の出』1934年連載。
美貌の女盗賊・黒蜥蜴vs明智小五郎。
宝塚で三島由紀夫の戯曲『黒蜥蜴』上演とのことで、原作を。
黒蜥蜴は、宝石商のお嬢様を誘拐し、ダイヤモンド「エジプトの星」を手に入れようとする。
黒蜥蜴は、犯罪者でありながら「美しいものを蒐集する芸術家」として描かれていて、誘拐も宝石強奪も、彼女にとっては犯罪の演出舞台のようです。
なかなかエロチックなシーンがあるのだけれど、舞台ではどう処理するのでしょう。
そして作中には、あの“人間椅子”の実用化まで描かれるというサービス精神。
このくらいのお茶目なトリックなら、安心して空想できます。
昭和初期のエンタメ小説。
「怪人二十面相」
1936年『少年倶楽部』連載
橋場家の「ロマノフ王家」の宝石をめぐる、怪人二十面相vs明智小五郎。
実は、この本のタイトルが『黒蜥蜴と怪人二十面相』となっていたので、黒蜥蜴の別作品があるのかとお借りしましたら、
収録されていたのは『黒蜥蜴』と『怪人二十面相』でした。
なんてこったい。
この『怪人二十面相』は、小林少年が明智探偵に憧れて弟子入りし活躍する、少年探偵シリーズ第一弾。
ここから、あの少年探偵団へつながっていく。
小学生の頃からしばらくの間、私の本棚にもいらっしゃいました。
さて、昭和の頃なら、大人向けのちょいエロ退廃趣味『黒蜥蜴』と、子供の憧れ探偵小説『怪人二十面相』の抱き合わせはNGだったかもしれません。
けれど、その頃の少年少女も、もう立派な大人。
今ならこういう取り合わせも、なかなか楽しい。
解説は東雅夫氏。
この2作品が1冊の文庫となった経緯を説明されている。
2004年にテレビドラマ『乱歩R』が放送され、基本設定と縁の深い2作品をカップリング収録して刊行されたとのこと。
現実的には、文庫としてちょうどよいボリューム感だったのだと思う。
ただ、タイトルに“と”を入れたことで、
私のように「黒蜥蜴と怪人二十面相」という知られざる別作品だと思う間抜けが現れるので、やめてほしいなと思いました。 -
Posted by ブクログ
明智小五郎シリーズ三作目。
前作『一寸法師』の路線を引き継ぎながら、さらにエンタメに吹り切って、探偵小説というより怪奇冒険小説という趣の作品。今回でもエキゾチックな白い詰襟シャツを着たオシャレな明智だが活躍シーンとしては変装に次ぐ変装ぐらいで(後の多羅尾伴内の原型だろうか)、結構やらかし気味なのはご愛嬌か…
蜘蛛男要素どこだよ、とか根幹のトリックについてもアレ過ぎて警察の無能感が浮き彫りになってツッコミどころも満載だが、関東大震災直後の東京の迷宮じみた混沌の表われとも取れる。また犯人についてもいわゆる「意外な犯人」タイプではあるが、それよりも明智シリーズに見るような探偵と犯人の二重性の象徴としての意味合いの方が重要だろう。
個人的には昭和初期の日本映画界の雰囲気を感じ取れるのは面白く感じた。 -
Posted by ブクログ
本作は、読む人によって物語の見え方がまったく変わるところが興味深い。
兄の行動を"純愛"と受け取る人もいれば、"薄気味悪い狂気"として読む人もいるだろう。
私は圧倒的に後者だった。
押絵の中に入り込んだ兄は、一歩間違えばロマンチックにも感じる。
しかし私には、レンズを通して女に魅入られ、自身の欲望に取り憑かれてしまったように思えた。
押絵の中で老いていく兄と、若いままの娘。
その不自然な対比に、胸がざわついて仕方なかった。
物語全体に漂う静かな狂気。
語り手である弟の淡々とした口調が妙に不気味で、読めば読むほど、「これは愛なのか、それとも執着なのか」という問いが頭から離れなくなる。
江戸川乱歩の作品は初めて読んだが、独特な世界観とどこか現実味を帯びた物語がクセになった。これから色んな作品読みたい!