あらすじ
売れないもの書きの人見は、極貧生活を送っていたのだが、日がな彼独特の理想郷を夢想していた。ある日、学生時代の同窓生、自分とうり二つの億万長者が死んだことを聞き、恐ろしい企みを思いつく。
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昔読んだ少年探偵団シリーズ以来、久々の乱歩。一人の男の強迫的で幻夢的な妄想の極致。前衛的で自由な、ユートピア的ディストピアの描写に圧倒。表現者の幸福とは狂気的に突き詰めたコンテンツを産む事と思えば、これほど幸せな作品も無いのかも知れない。
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江戸川乱歩の「パノラマ島綺譚」、夢野久作の「ドグラ・マグラ」。
「乱歩と久作を読まずに歳をとってはいけません」の松岡正剛氏の言葉に魅かれてこの本を手にしました。
江戸川乱歩の作品はかなり読んできましたが「パノラマ島綺譚」は読んでいませんでした。
人見廣介の妄想し続けてた理想郷を作るための荒唐無稽な企み。
狂気じみた世界観。妄想への人の執念は恐ろしく、かとて人は誰しも妄想するものであり。薄気味悪くも話に引きずり込まれる自分がいるわけで。
ミステリーとしてのストーリー自体もなかなか面白いのですが、主人公の妄想への飽くなき執念。そこに注目するとさらに面白さが感じれると思います。
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読んでる間ずっとゾワゾワしてた。
何でしょう?あの感覚。
「パノラマ」はある意味下品でそれでいて耽美。
生理的に受け付けない、理性がダメだと危険信号を出しているのに本能で怖いモノ見たさで覗いてみるあの感覚に似てる。
見たら最後帰って来れない。自分本位だから主人公の自身はハッピーエンド。
周りもお金に眩んで見て見ぬふりだから割を喰ったのは奥方だけ?
「柘榴」は…。柘榴のビジュアルは当分見たくないかな?思い出してしまう、この話を。
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いやー、たまに読み返してみたくなる乱歩作品。
このおどろおどろしい雰囲気と乱歩作品の変態っぷりがたまらなくいい。
犯罪としては現代では成り立たないトリックなんだけどその時代背景、まだ夜道を歩くと柳の下にお化けが見えてくるようなそんな雰囲気が
背筋をゾクゾクさせる作品でした。
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表紙に惹かれて手に取った、久々の江戸川乱歩!子供の頃よく読んでいた。思えば私のミステリー好きはここが原点かも。
40年以上前のワクワクがよみがえる。
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表題作はミステリというよりは怪奇小説として面白かった。
色鮮やかでグロテスクな感じが乱歩っぽい。地上の様子も気になるけど、海底の様子が見てみたい!出てくる魚の画像を調べるだけでワクワクゾクゾクした。
乱歩地獄で映像化されてそうだなと思ったけど残念ながらされてなかった。しかし漫画があるそうなので是非読んでみたい。
石榴は2回目。無駄がなくて面白い。
てかここでもサード侯爵的な人が出てきてたのか…。
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表題作を途中までなぜか村上春樹作品だと勘違いして読んでて (あれ?なんでこんな古風な言い回しなんだ?) と思ったら乱歩先生でした。でもそう思うくらい今まで読んできた乱歩作品とは雰囲気の異なるものだった。幻想的で耽美的。しかしラストの気持ち悪さに思わず笑い拍手してしまった。さすがっす先生。著者のエッセイでも書かれてたようだけど、パノラマ島の描写が確かに独特で想像力を要するので体力を使った印象。江戸川乱歩作品の推理やトリックを読みたい人にはあまりおすすめしないかも。
同時収録の「石榴」はコレコレコレィ!となるザ・推理小説。最後に始まる大どんでん返しの連続に「あっそういう…えっ違うの!?」と振り回されっぱなしで楽しい。
解説でも書かれてたけど、一人二役という共通点のある2作品を1つの本に収録してくださってることがおいしくてありがたい。
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初めて読みましたがこれまでの江戸川乱歩とは少し違う世界観に酔いしれました。
「パノラマ島綺譚」は正に理想郷を舞台に一攫千金と楽園の為に犯罪を起こす男の話ですが、
トリックと言えば終盤の死体の隠し場所の謎解きくらいで
(それも目星を付けれるくらいの謎解き)ほぼ犯人目線で物語が進んでいくので、
逆に「一体この物語の終着点はどこだろう?」と乱歩の掌で転がされている感覚が強かったです。
乱歩本人が解説にもあるようにこのような夢想物語を描くことを恥ずかしいと思っていたようですが、
島に上陸してからの描写は耽美的で浮世離れしていて、
到底理解できぬ程の狂気なのに恐ろしく美しいと思ってしまう。
まるで宗教画や西洋絵画を眺めているような美しさで、
特に海中と最後の花火の描写は自分が「事件」を読んでいるにも関わらず、あまりの極彩色の暴力的な美しさに事件を忘れてしまう程でした。
「芋虫」や「人間椅子」とはまた違う狂気で、乱歩の才能に驚かされました。
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えー嘘だ、嘘〜、そんな〜えっ、おー、おお、やばっ、ありえねー、ぜっていありえねぇーよ、そんなー、気持ち悪、そんな〜、おー、あはは、そりゃねぇよ、馬鹿馬鹿しいわ、見てらんねーよ、そりゃやばい、おーー、あーーそんなオチ、そりゃヤベェな、そのオチはやべぇよ、もう一度そのオチはやべぇよ、異端すぎ、奇譚すぎだろ、そこで、俺も裸体を拝みたいわ〜
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昔のカルト映画を思わせる作品。
ただし、オチが「そんなんでいいの?!」というような
呆気ないもの。
それで、いいのかもしれない。
狂人の夢、それを具現化した奇妙な島。
そういったものを楽しむための娯楽作品として、完成しています。
どの作品でも同じことですが、
病的な美しさの表現は、乱歩自身が実際にそういった類の偏執者なんじゃないかと思うくらい、
油絵のように立体的で、粘っこく書かれていました。
あくまでもサイコであって、推理小説ではない。
それが乱歩の魅力であると思いました。
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【本の内容】
売れないもの書きの廣介は、極貧生活ながら、独特の理想郷を夢想し続けていた。
彼はある日、学生時代の同窓生で自分と容姿が酷似していた大富豪・菰田が病死したことを知り、自分がその菰田になりすまして理想郷を作ることを思いつく。
荒唐無稽な企みは、意外にも順調に進んでいったのだったが…。
ほかに「石榴」を収録。
妄想への飽くなき執念を描くベストセレクション第6弾。
[ 目次 ]
[ POP ]
大富豪菰田源三郎を墓から掘り起こし、源三郎になりすました人見廣介。
疑う人たちを富の力で騙し、彼は夢想していた地上の楽園美の国夢の国を沖合の島に建設した。
そしてただ一人騙し通すことの出来ない千代子夫人を島に連れ出して殺害することにした。
美とグロテスクのハザマにあるパノラマ島で繰り広げられる悪夢。
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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・パノラマ島奇譚
独特の世界観やその美しさに惹き込まれる。
最後の様な光景を見たら、自分はどうなってしまうんだろう。
・石榴
どんでん返しが繰り返されて多少混乱した。
タイトルが重い意味を持っていていい。
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江戸川乱歩の作品は、結構好きで以前にも「人間椅子」や「芋虫」などの有名な作品は読んでいた。人間の持つ悪の部分をじわじわと表現するうまさがあり、どんどん作品に引き込まれる。ただし、乱歩の描くパノラマ島の描写に自分の想像がついていけているか、他の人はどんな想像をするのだろうと興味が沸き、絵になっているものがあったら観てみたいと思った。
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江戸川乱歩のホラー小説。
パノラマ島の描写部分がなかなか進まなかったが、結末がなんとなく分かっているにもかかわらずわくわくしながら読めた。
同「硫酸殺人事件」も結末が目に見えているところが読み手にいい焦りを与える。。
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アートって、きっと人間の業とか、そういうどろどろしたどす黒いもんから発せられる表現なんだと、江戸川乱歩の作品を読むと感じる。
作品中で描かれる狂人や偏った性癖のある人などの特徴は、探せば僕らのこころの中にもきっとあるのだろうと思う。
この本には
「パノラマ島奇譚」
「石榴」
の二作品が収録されている。
そのどちうらもが、類稀な、江戸川乱歩作品ならではの風合いと感触を持っている。
まるで見てくれがとても綺麗で小さくてとてもかわいいが、口に入れて咀嚼するとなんとも醜悪な味や匂いを発するお菓子か何かのような感じがするのだ。
世にも恐ろしい犯罪や兇行は、たった一人の人間のこころのなかに潜む美意識や欲望であったりするのだろう、とそういうことをまざまざと覚えさせられる。
江戸川乱歩はやっぱり天才だ。
そして狂人であると思う。
そういう意味で唯一無二の才能だ。
更に恐ろしいのは、言葉選びや、感じや、劇中の人物の喋り方や服がやはりどことなく古めかしいのにも関わらず、ストーリーの内容が新鮮であると言うことだ。
驚くなかれ、この「パノラマ島奇譚」は大正時代に発表された文章なのだ。
更にまるで美しいタイムカプセルか何かのような感じもある。
本当に江戸川乱歩は美しい小説家であると思う。
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『パノラマ島綺譚』はパノラマ島の描写がすごく細かくて、想像するだけですごく美しい場所なんだろうなぁ。と思った。でも、最後があまりにもあっけなくて残念…それとも最初から廣介は決めてたんだろうか?
もう一つの『柘榴』はミステリーなんだけど、その内容より硫酸で溶けた顔を柘榴に見立てるのにすごく惹かれました。美しいなぁ…
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乱歩先生の『双生児』を思い出すような導入だった。
『双生児』では双子の兄に成りすますことがストーリーの中心だったが、『パノラマ島奇譚』では成りすますまでが導入に過ぎず、その後の展開こそが本筋として描かれている。
乱歩作品を何作か読むと、犯人のバレ方がいつも無理矢理に感じられる。偶然に頼りすぎて現実味が薄く、犯人側に運がなかったのだなとつい同情してしまうことも多い。しかし今回は、バレようがバレまいが、結局カタストロフィーは避けられなかったみたいだけど。
ラストは特に印象的だった。狂気に染まった男が、どうせ死ぬなら自分の死すら芸術の一部として表現してしまおうという心意気を感じたのだ。
金はあるとはいえ、作中では妻や探偵も感心するほどの島を作り上げてしまうその才能は、やはり本物だと感じる。
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いやぁ〜時間かかったぁ〜〜。
パノラマ島綺譚…は私的にはかなり微妙だった。
なんでこんなに進まないのか…って考えながら読んでた。
パノラマ島の細かな描写を読むのがなんとも苦痛で、
読み進めても全くドライブがかからなかったなぁ〜と、
読みながら自分なりに思ってたけど、
ラストの解説に同じような事が書いてあった。
『連載中(1926〜1927)は余り好評ではなかった。…この小説の大部分を占めるパノラマ島の描写が退屈がられたようである。』
大正ラスト年から昭和初年の読者と、
令和7年2月の私の感想、全くもって同じです。
後半の『石榴』は、まぁお話し自体が短いのもあるけど、
あっという間に読み終わった。
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全2編収録の作品集。
8月に三重県の鳥羽に旅行したので読んでみた。江戸川乱歩は24歳ごろから1年半ほど鳥羽に住んでいたそう。表題作「パノラマ島綺譚」の舞台はそんな鳥羽の海にある島が舞台。
「自身の空想である(悪)夢の島を作り上げる男の話」だということはなんとなく知っていたが、想像よりも犯罪小説の色が強くて驚いた。同時収録されてる短編「石榴」とは同じトリックが使われており、ラストの雰囲気も近いものを感じる。
“古風な物語の癖として、クライマックスの次には、カタストロフィという曲者が、ちゃんと待ち構えていた筈です。”(「パノラマ島綺譚」)
二つの物語のカタストロフィは、とても江戸川乱歩らしいな、と思った。
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11冊目『パノラマ島綺譚 江戸川乱歩ベストセレクション⑥』
(江戸川乱歩 著、2009年5月、KADOKAWA)
1926〜1927年にかけて連載されていた表題作の他、1934年に発表された中編『石榴』も収録。
どちらも乱歩らしい耽美でグロテスク、そして奇天烈な作品である。
「そして、丁度その時、まるで申合せでもした様に、打上げられた花火の、巨大な金色の花弁は、クッキリと黒天鵞絨の空を区切って、下界の花園や、泉や、そこにもつれ合う二つの肉塊を、ふりそそぐ金粉の中にとじこめて行くのでした」
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入れ替わりトリックを用いた殺人事件が題材。
しなし、トリックそのものよりも奇怪、混沌、摩訶不思議に満ち満ちた人工島の描写にこそ乱歩の真骨頂があるのだろう。海底トンネル、錯視を利用した造形物、動物のように主人に傅く人間…人によれば桃源郷にも映る景色の数々を想像するだけで恐ろしいような、それでいてどこか心地の良さを感じてくるから不思議。
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パノラマ島奇譚 石榴の2本
石榴の方が印象深かった。裏を読んでそのまた裏を読んで。。ジャンケンでそれを瞬時に判断できる人物。。凄いな。。
そして、美人だから惚れられるわけでもないのか、手に入れたからこそ他へいくのか。。。
パノラマは、主人公の創造する世界観を表現するには
他人の力が大分必要なわけだが、従った理由が気になった。。単純なお金なのか、説得しうるほどの魅力がその世界観にあったのか。。。
色々想像してしまう。
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解説でも書かれている通り、犯罪そのものより
パノラマ島の描写が半分を占めるのが特徴的だった
そして同時収録の石榴はごくスタンダードな推理小説だった
発売された当時は評判が芳しくなかったらしいが、個人的にこちらの石榴のほうが好きだった
オチはどちらもあっさりした印象
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パノラマ島の情景がクレイジー過ぎて脳内で想像できなかった…(笑)上級者向けだ…。
乱歩先生の頭の中もクレイジーなんだなって思ったのでした。素晴らしいです
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『パノラマ島綺譚』、『石榴』収録。
パノラマ島綺譚
江戸川乱歩独特の不気味さと美しさが一際目立つ作品。
ただ、自分の想像力の足りなさでイメージがうまくできない場面がいくつかあったのが残念。
石榴
個人的にすごく好き。
最後の大どんでん返しには衝撃でした。
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ミステリーというより幻想小説といった感じの作品です。
人見の妄想を実現した「パノラマ島」の描写が素晴らしいです。美しさと狂気が入り交じった何とも言えない雰囲気が堪りません。非常に乱歩らしい作品だと思います。
「石榴」はラストのどんでん返しは想定内でしたが、切れ味は抜群。良作だと思います。
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一人の貧乏書生が、自分と瓜二つの学友が死んだ知らせを聞き
彼になりすましてその莫大な財産を手に入れようと企む
巧妙な手口でその友人の妻を含む周囲の人を欺くと、小さな島を手に入れる
そこに彼の長年の理想であった自然美にも勝る人工自然、狂気に満たされたパノラマを作り上げる
誰にも偽者であることを感づかれない自信があったが、唯一の不安点は妻だった
長年連れ添った妻を欺けるかどうか 妻とは距離をおいていた
だが知らず内に妻を愛してしまっていた
しかし完成間近で妻に彼が偽物であることが感付かれてしまう
妻をやむなく殺すことを決意
愛する妻をパノラマ島に案内する
美しく狂った世界の中でたった2人
愛しく美しい妻の首を静かに絞める
彼の楽園を脅かすものはいなくなったかに思えたが、
予期せぬところに昔の自分の影を見つけられてしまう。
美しい景色を大勢の美しい裸の人々が景色を彩る様子は
桃源郷というよりはソドムにも見える
狂った世界
すばらしい世界
残念だったのは景色などの描写がいまいちだったこと