他のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ映画化された表題作を含むSF短編集。
めっっっっっっちゃ面白かった…なにこれ…作者が天才すぎる…
確かに難しくはあるんだけどだからこそ、なるほど!!そういうことか!!となる瞬間が気持ち良すぎてありえないくらい興奮してしまった。ドーパミンがすごい。
完全に端から端まで理解できたわけではないので一応星4だが5でもいい。
「バビロンの塔」
情景を想像するのが難しかったけど、天と地は繋がっているという結末が気持ち良すぎて感動。どう生きてたら思いつくんだ…
「理解」
人知を超えた天才になった者の思考。そして天才同士のバトル。知的レベルが上がるごとに文章も難解になっている気がしてその連動が面白かった。
「理解」の意味が最初は全く分からなかったけど、それまでは何の意味もなさなかった記憶が「理解」というコマンドを受けることで自己を破壊させる意味をなすという解釈でいいのかな…?この解釈が浮かんだときは、なるほど…すご…と興奮した。
全体的にかなり難しい話ではあった。
「ゼロで割る」
ずっと信じていたものが真実ではないと自分で証明してしまった。宗教から覚めるときのようなものなのだろうか。それが数学をテーマとして描かれているのが凄い…
作中で述べられている数学の解釈が、確かになあ…と納得してしまうもので脱帽。
「あなたの人生の物語」
めっっっっちゃ面白い!!!最高!!
新たな言語の習得法が『プロジェクト・ヘイル・メアリー』で観たのと同じでやっぱりこれが主流なのか!!と思った。
大学で言語学を齧ったことがあったのでヘプタポッドの持つ言語、文字についてかなり理解できて嬉しかった。フェルマーの原理も、物理学を全く知らない私でも理解できる説明だった。
因果論と目的論の対立という構図が非常に興味深い。
そして全てを知っているとしてもそこに至るまでの過程には意味がある。夫と愛し合い娘が生まれ、彼女を愛し育て、その後失くすことと娘が最初からいないことは全く違う。知識と経験は異なるものである。丁度『サンキュー、チャック』を見たばかりなのだが、少し通じるものがあった。
最後のそういうことか…!!!が最高に気持ち良くて温かい気持ちになった。
「七十二文字」
ちょっとややこしくて難しかったな…
ただオートマトンが職人の仕事を奪うんじゃないかという懸念は現代におけるAIと人間との関係を彷彿とさせて理解しやすかった。
「人類科学の進化」
約4ページのショートショートなのに大満足。
古いものを解釈するのではなく、自分たちより進歩した先にあるものを解釈するというアイデアが面白い。根っこの部分は同じなのかも。
確かに自分の子供が知能が高くても高すぎて自分の理解の及ばない存在になるくらいだったら、平凡でも理解できる存在であってほしいと思うのは分かるな…
「地獄とは神の不在なり」
自分が無宗教者なのでそこまでして神を求め信じる理由とは…ってつい思ってしまったけど、逆に不安定で不条理で理解不能な存在である神だからこそ誰でもいつでもすがれるのかもしれない。
確かに最後にニールが行き着いたのが究極の信仰かもしれないが、ちょっと可哀想だなとは思ってしまう。本人はもうそんなこと思わないんだろうが。
天使降臨という比喩的な話をリアルに存在するものとして描いているのが面白い。
「顔の美醜について」
あまりにも現代にぴったりな作品。"カリー"という選択肢が増えるのは良いことだけどそれを強制するのは違うよね……これはどんな技術にも言えるが。 -
Posted by ブクログ
ブラム・ストーカーの『吸血鬼ドラキュラ』が発表されたのが1897年。本書では英語圏最初の吸血鬼小説と言われるポリドリの「吸血鬼ラスヴァン」(1819)を始めとした吸血鬼の代名詞ともなった”ドラキュラ”以前の吸血鬼小説のアンソロジーである(例外一作あり)。
なかなかヴァリエーションに富んでいて面白い。奴隷制批判をも込めた怪作と言ってよいダーシー『黒い吸血鬼ーサントドミンゴの伝説』(1819)と、芸術家の創造エネルギーを奪い取るサイキックヴァンパイアとの対決を描いたヴィエレック『魔王の館』(1907)が特に面白く読めた。
本書には長大な吸血鬼小説として名高い『吸血鬼ヴァ―二―』(1847)の抄訳も収録されているのだが、奇想天外シリーズで全訳と銘打って第一巻が刊行されたヴァ―二―は完結するのだろうか? -
Posted by ブクログ
ネタバレ夏来健次氏編訳による19世紀ヴィクトリア朝期の英国を舞台にした幽霊譚アンソロジー・シリーズ。「クリスマス」「ロンドン」に続く第3弾は「幽霊屋敷」がテーマ。本を一棟の屋敷に見立て、章立てを翼、各作品を部屋とした構成がユニーク。全13編収録。
発表されたのはどれも19世紀中盤~末頃のためか、舞台になる"屋敷"の殆んどはいわゆるカントリー・ハウス……郊外や田舎にある貴族の豪壮な邸宅になる(例外は高級住宅街の一軒と思しいホワイトヘッド「幽霊屋敷」、荒涼としたウェールズの海岸に立つ灯台が舞台のウッズ「岩礁の幽霊灯台」か)。
とはいえ出現する幽霊―その姿が可視不可視はさておき―は千差万別で、別れを告げた恋人の前に現れる女性の幽霊、亡くなった母親を求める不良児の姿なき哀願の声、遺産相続人の孫を助けてやって欲しいと依頼する老人の幽霊から、屋敷に棲み関りの深い人物の死を告げる存在、屋敷に取り憑き何の因縁もない居住者を恐怖に陥れる霊、家と財産を奪った一族に復讐する女性の亡霊etc……とバラエティに富む。そんな中で異彩を放つのが、購入した領主屋敷に幽霊を出現させようと奔走する成金男を描いたA.C.ドイル「ゴアズソープ屋敷の幽霊選び」で、幽霊屋敷怪談や当時の幽霊を持て囃すような(一部の)風潮を茶化したようなユーモラスな作品。ドイル20代前半の作品だが、まさか後年になって本人が心霊学に傾倒するようになるとはw
血腥い話や不条理話は少なめのためか全体の怖さ度も控えめ。勤め先をクビになった青年がゴーストハンターと探偵役を担う破目になるC.リデル「開いた窓」と、屋敷に集った客たちが奇譚を披露するW.マッドフォード「ブレイクスリー屋敷の幽霊談議」、灯台守が居付かないウェールズの海岸の灯台にまつわる、収録作中では最もホラー度が高いと思えた経歴不明の無名作家チャールズ・F・F・ウッズ「岩礁の幽霊灯台」などが個人的には楽しく読めた。 -
Posted by ブクログ
英国ヴィクトリア朝時代の幽霊屋敷譚の佳作13編を紹介する。
●英/米・女流「幽霊屋敷」競作
幽霊屋敷 エマ・ホワイトヘッド
・・・亡き愛しい人の霊は彼を隣の幽霊屋敷に導く。
幽霊屋敷 マーガレット・ヴァーン
・・・閉ざされた部屋で聞こえた亡霊の声?それは私の?
●ふたつの「開いた扉」競作
開いた扉 シャーロット・リデル
・・・ラドロー屋敷の開かれた扉。潜むのはミステリー。
開いた扉 マーガレット・オリファント
・・・病の息子を救うため、廃墟の扉口での声を探る。
●幽霊談議小説競作
ブレイクスリー屋敷の幽霊談議ウィリアム・マッドフォード
・・・幽霊からの依頼。呪われた地の女霊の話。
奇談の屋敷 アンドルー・ラング
・・・書斎の霊。円塔での死。見えない気配。霊柩馬車。
●J・E・プレストン・マドックの二屋敷
バロカン屋敷の幽霊 J・E・プレストン・マドック
・・・その屋敷の幽霊は死を告げる。誰に?誰の?
ライスリップ僧院屋敷の幽霊 J・E・プレストン・マドック
・・・死体は隠せても、その霊までは隠せない。
●応報と理不尽
パディントン領主屋敷の幽霊 チャールズ・オリア
・・・かくのごとく廃屋となったのは、主の罪と罰。
ヨークシャーの幽霊屋敷 ダドリー・コステロ
・・・不可解な死のあった屋敷に響く音。大音声の恐怖。
農場屋敷の幽霊 フランシス・ブラウン
・・・あの女があそこにいる。笑い声は凶兆への導き。
●異色競作/無名作家と巨匠
岩礁の幽霊灯台 チャールズ・F・F・ウッズ
・・・閉ざされた灯台での怪異は過去の事件の光景。
ゴアズソープ屋敷の幽霊選び アーサー・コナン・ドイル
・・・ここには幽霊がいない。幽霊が欲しい!
ユーモアと皮肉で彩られた話の顛末は?
編者あとがき――幽けき扉、霊への階
時は英国ヴィクトリア朝時代。主役は幽霊屋敷。
古式ゆかしい屋敷の描写が重厚な作品が並ぶ。
それらと恐怖への誘いの語りが濃密だが、
なかなかの佳作がある一方、
作品によっては筋立てや人物設定の甘さがあるものも。
それでも、この時代の恐怖小説の一端が味わえました。