他のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
この本の電子書籍が手に入って、なんとなく斜め読みしてみた。
辞書のようなもの、、と思っていたら、違った。
まず、文章を書いている人がすごい。
著 / 小泉悠/上脇博之/武田砂鉄/塚田穂高/五野井郁夫/水無田気流/小嶋華津子/塩田祐子/小林美穂子/山本章子/鶴岡路人/立山良司/鈴木エイト/森山至貴/やくみつる/生島淳/常見陽平/ほか
そうそうたるメンバーが、テーマごとに世相を切っていた。読み応えある文章。
続いて、2024に流行った言葉の解説が続く。
今は亡き森永卓郎さんも「貯蓄から投資」は危険な政策 と厳しく語っている。
全体的に反政府的。
最近言われるところの「右翼」が好まない言葉 -
Posted by ブクログ
映画「メッセージ」の原作である表題作が収められた、短編集である。
どれも良い読書体験ができたが、やはり映画を先に見た私としては「あなたの人生の物語」が一番印象深い。
地球外の知的生命体との交流によって目覚めを経験し、時間軸が狂うことで人生を理解することになる女性。
過去から未来へ続いていく時間軸の中では、言わば知らぬが仏の状態で手探りの道になる。
これが普通の考え方である。
でも未来に起こることを知っていたら?
それが悲しく耐え難い出来事だったとしたら?
進もうとしている道をそれでも歩めるだろうか?
覚悟と理解が必要だ。
進むと決める覚悟。
行くの?なぜ?その答えを自分で理解すること。
「 -
Posted by ブクログ
ネタバレとても面白かった。
一つ一つの短編が骨太であり、読むのに時間がかかってしまったが、楽しい読書体験だった。
一つづつ振り返っていこうと思う。
「バビロンの塔」
この短編集の中で一番読みやすかった。
情景描写が見事だった。
「理解」
詳細な描写に思わず読み込んでしまった。
「ゼロで割る」
一回読んだだけでは意味があまりわからなかったが、何回か読み直したり、考察サイトを見ることでやっと理解できた。
レネーは自身が発見した形式的発見によって自分の中の既存の世界が崩れてしまい、自殺未遂をしてしまうほど追い込まれる。恋人であるカールは、自身がかつて自殺未遂をした際、その時の恋人に傷を癒してもらった経 -
Posted by ブクログ
大正期から昭和10年代前半までに発表されたホラー短編を集めたアンソロジー。ただし、当時ホラー小説で中心的な存在だった<新青年>以外のものを収録している。要はマイナーな作品を集めたと言えるだろう。各編には、編者による作者の紹介と解説がついている。それぞれ、調べられる限りの詳細なものだと思われる。
こうしたマニアックな本は、残念ながら増刷される可能性は低いと思われる。今買っておかないと後悔するかもしれない。積読でも良いから購入を薦める。
なお、ホラー小説は「怪談」と違って、ジトーッと肌にまつわりつくような湿気がないように感じる。気候風土や生活様式の違いがあるのだろうか。 -
Posted by ブクログ
大正から昭和初期にかけてに博文館の「新青年」意外の雑誌などに発表された怪奇・恐怖小説を集めたアンソロジー。
「新青年」以外からとるという縛りゆえか、角田喜久雄と「豹の眼」の高垣眸を除けば(エロ関係の読み物で高田義一郎は知っていたが)知らない作家ばかりだが、逆にそれがこのアンソロジーをバラエティに富んだものにしている。
収録作の中では、高田義一郎の「疾病の脅威」が後の赤塚不二夫を思わせるグロテスクなコメディで印象的。米村正一の「恐怖鬼侫魔倶楽部奇譚」は日本におけるスナッフ映画を題材にした先駆的な作品。岩佐東一郎「死亡放送」は明日死亡する予定の人物のリストがラジオ放送で読み上げられるという今時の -
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憑き物のはなしばかり集めたアンソロジー。
それぞれ味わい深いのだけれども、いちばんきになったのが冨士玉目『わたしはわたし』。これは祖父のアルバムを見たら自分の写真があって、しかも現在のあり得ない写真で、後ろに知らない女が写っていて徐々に侵食されているようなはなしだった。写真の中に怪異だが何かが潜んでいて精神に入りこまれたのか、自分の思っていた自分の顔が自分じゃなくなってきているはなしでめちゃくちゃ面白いと思った。
とにかくこの短さで全体を把握できる文章力とかどの作家さんも素晴らしいと思う。現実にあることを創作じゃなく語るって面白すぎて震えるくらい好きだ。怪談好きになって良かったなぁと改めて思っ -
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ネタバレ短編集。「あなたの人生の物語」、「地獄とは神の不在なり」、「顔の美醜について」の3つが好き。
「あなたの人生の物語」について
突然現われたエイリアンとコミュニケーションをとろうとする言語学者の話だった。
このエイリアンはヘプタポッドと呼ばれることになるのだけど、そのヘプタポッドがとにかく変。頭の下に足みたいな手が生えているので、僕の頭のなかではずっとタコさんウインナーがヘプタポッドだった。歩きかたも変わっている。目が頭の周りについているので前に進むときも後ろへ戻るときも方針転換する必要がないのだ。なので後ろに下るときは、こちらへ来たときの逆再生のように見えてちょっと気持ちわるい。
時間の捉え方 -
Posted by ブクログ
ネタバレ『ゼロで割る』
本質的な理解などできない、意味がないということを、魂と同じように信じていたものから突きつけられてしまった孤独と、それが理解できず苦しむ孤独、分かり合えないものを数学的な視点と重ね合わせて描かれている。絶望と、伸ばした手の行き場がない苦しみがこの数学的問題に直面した数学者たちの痛みをわずかでも伝えてくれるような錯覚をいだいた。
『あなたの人生の物語』
どうやったらこんなお話が生まれるんだろう。ヘプタポッドたちの文字に関する化学的な部分の理解は私には難しくて理解しきれなかったけれど、結果としてそこにありながら過去、未来、現在が同時に同じように存在し、その全てを同じように知覚するこ -
Posted by ブクログ
表題作を含む全15編のミステリ短編小説アンソロジー。もともとは『ギリシャの犯罪』という人気アンソロジーシリーズの第5巻に当たるものだそう。
SF傑作選はギリシャ語→英語→日本語の重訳でしたが、こちらは直でギリシャ語→日本語っぽい。
ミステリと聞いてパッと連想された「名探偵の華麗な解決劇」といった作品は少なく、犯人の視点に立った犯罪小説が多く収録されている印象。どれも1967〜74年の軍事独裁政権時代や2010年代の財政危機。移民、環境問題などに端を発しており、自国に対する息苦しさや無力感を漂わせる作品も多い。しかし、それでも中にはギリシャに対する希望や祈りを込めた作品も見られ、深い一冊である -
Posted by ブクログ
ネタバレ映画「メッセージ」の原作が短編だったという理由と、映画で描かれたことを小説ではどのように表現されているのか、という好奇心で読み始めた次第だ。
この作品は短編集で、8篇の物語で構成されている。当然ながら映画原作でもある表題作から読んでみたが、映画のような緊迫した争いごとは特に描かれていない。それよりも言語のデザインを逐次的から同時的に変えることで時間を超越するという発想にこそ重きを置いて、主人公のプライベートなエピソードはその補完として扱われているのだろうと初見では読み取ったのだが、いまひとつ自信のないまま最初の1ページ(「バビロンの塔」)から本作を改めて読み始める。
「バビロンの塔」は円筒
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