【感想・ネタバレ】戦前日本モダンホラー傑作選 バビロンの吸血鬼のレビュー

あらすじ

「大正末期から昭和十年代半ばにかけての十数年間は都市部を中心に「昭和モダン」と呼ばれるスマートで軽快な大衆文化が栄え、人々がこぞって新奇な刺激と快楽を追い求めた時代であった。同時に、生活様式の変化にともなって昔ながらの怪談とは趣きを異にする新しいスタイルの怪奇小説が生まれ、娯楽として享受された時代でもある」(序文より)この時代の研究者が精選した21篇。当時ホラー小説の分野で中心的な存在だった〈新青年〉誌掲載作を除外し、犯罪実話雑誌から少年誌まで幅広い媒体から集めた。/【目次】序文 恐怖が娯楽だった時代 会津信吾/高田義一郎「疾病(しっぺい)の脅威」/椎名頼己「屍蝋(しろう)荘奇談」/渡邊洲蔵「亡命せる異人幽霊」/西田鷹止「火星の人間」/角田喜久雄「肉」/十菱愛彦「青銅の燭台(しょくだい)」/庄野義信「紅棒で描いた殺人画」/夢川佐市「鱶(ふか)」/小川好子「殺人と遊戯と」/妹尾アキ夫「硝子箱の眼」/宮里良保「墓地下(ぼちした)の研究所」/喜多槐三「蛇」/那珂良二「毒ガスと恋人の眼」/高垣眸「バビロンの吸血鬼」/城田シュレーダー「食人植物サラセニア」/阿部徳蔵「首切術の娘」/米村正一「恐怖鬼侫魔(きねま)倶楽部奇譚」/小山甲三「インデヤンの手」/横瀬夜雨「早すぎた埋葬」/岩佐東一郎「死亡放送」/竹村猛児「人の居ないエレヴエーター」

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Posted by ブクログ

 大正期から昭和10年代前半までに発表されたホラー短編を集めたアンソロジー。ただし、当時ホラー小説で中心的な存在だった<新青年>以外のものを収録している。要はマイナーな作品を集めたと言えるだろう。各編には、編者による作者の紹介と解説がついている。それぞれ、調べられる限りの詳細なものだと思われる。

 こうしたマニアックな本は、残念ながら増刷される可能性は低いと思われる。今買っておかないと後悔するかもしれない。積読でも良いから購入を薦める。
 
 なお、ホラー小説は「怪談」と違って、ジトーッと肌にまつわりつくような湿気がないように感じる。気候風土や生活様式の違いがあるのだろうか。

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2025年07月30日

Posted by ブクログ

大正から昭和初期にかけてに博文館の「新青年」意外の雑誌などに発表された怪奇・恐怖小説を集めたアンソロジー。
「新青年」以外からとるという縛りゆえか、角田喜久雄と「豹の眼」の高垣眸を除けば(エロ関係の読み物で高田義一郎は知っていたが)知らない作家ばかりだが、逆にそれがこのアンソロジーをバラエティに富んだものにしている。

収録作の中では、高田義一郎の「疾病の脅威」が後の赤塚不二夫を思わせるグロテスクなコメディで印象的。米村正一の「恐怖鬼侫魔倶楽部奇譚」は日本におけるスナッフ映画を題材にした先駆的な作品。岩佐東一郎「死亡放送」は明日死亡する予定の人物のリストがラジオ放送で読み上げられるという今時の都市伝説を思わせる内容。

全体的に当時のエロ・グロ・ナンセンスブームを色濃く反映した作品が多く、今読んでも十二分に愉しめるクオリティはある。

作品毎に編者による詳しい解説が付されているのもマイナー作家のアンソロジーとして非常にありがたい。

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2025年07月19日

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