加納朋子のレビュー一覧
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駒子シリーズ第三弾。
「スペース「バック・スペース」の中編二本の連作。
駒子が瀬尾さんに読んで頂きたい手紙があると言って渡す手紙は、前略はるか様で始まる長文。
「スペース」は、人と人との空白の物語で、これは誰が書いた手紙なんだろうと疑問に思いながら読み進め、「バック・スペース」でもやっとした頭の中が、冴え渡るような感覚になる。
なるほど、自分がいるべき場所を懸命に探そうとして辿り着いた居場所なんだとわかる。
バスに置いてけぼりを喰らったまどかが、バス運転士と結ばれるというのも運命的である。
今回は、駒子と瀬尾さんのやりとりは少なかったが、2人の気持ちがうっすらと感じられたような気が -
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ようやく今年の一冊目。
就活に失敗しゲームの世界に逃げ込んでニートしていた主人公が親に愛想をつかされ伯父の遺産だという孤島に送り込まれたところから始まるお話。
島に放り出されてからは、お金の問題を解決しようとニート仲間を募って共同生活をやろうとしたり、ブログでアフィリエイト収入が入るようになったり、島の人たちにもうまく溶け込むし、直近までニートしていた割にはうまく行き過ぎ。
加えて、若い人にはああいうゲームになぞらえるのが分かり易いのだろうか、こっちは頻出するゲームの描写にイマイチ馴染めず、中盤まではさっぱり興が乗らなかった。
終盤になって、“あいなまタン出産事件”以降、色々動いてこの作者ら -
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父と母の浪費癖のせいで自己破産状態に追い込まれた雨宮家。一人娘の照代は、両親の遠い親戚と言われる、佐々良に住む鈴木久代というおばあさんのところに預けられた。厳しい久代のもと、これまで贅沢が当たり前に暮らしていた照代は、学校にも行けず美味しくない質素な食事で暮らすしか無いが、そんな折、久代の家で不思議な少女の幽霊を見かける。
照代の目線で、見知らぬ土地で質素に暮らしつつ、厳しい老婆久代や、意思疎通の難しい近所の老婆や親子たちと暮らしていくという人情ドラマ的なストーリーである。
「不思議なことが起こる」という佐々良の町と言う割に、ファンタジー的な展開はそこそこに、15歳の少女が放り出され、うま -
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秋永真琴『ファインダー越しの、』:創刊号に載ってた『フォトジェニック」の森島さんが再登場で嬉しい。まだ続きがありそうで楽しみ。ただ、私は、完全に森島さんの興味対象外の「素朴な(婉曲表現)男性たち」たる「みやっちさん」側の人間なんで、ちょっとへこむ。
「自分は写真写りが悪い」という認識に「いやいや、だいたい実物通りに写ってますが?」、「そういうネガティブなのか自分に自信があるのかよくわからない人より、あたしのほうが前向きで幸せじゃないかな。」とばっさり切り捨てられて、かなり、ぐさっと来たけど、おっしゃるとおり。素敵です。みらいさん。
真門浩平『ルナティック・レトリバー』:単純に面白く読んで、こ -
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97年の出版です。加納朋子さんはミステリー作家ですが、殺人事件とは無縁の「日常の謎」を解く展開が特徴と思っていました。
しかし本作は、美しく聡明な女子高生が通り魔に殺されたことから始まる、6編からなる連作短編集でした。
章ごとに語り手が変わり、それぞれ小さな謎とその解決があります。そして、各章で登場人物が交錯し、最終章で大きな謎が解決される構成になっています。
ミステリーとしての謎・伏線回収に、スッキリしない感覚をもちましたが、人間心理の謎・深さ・共感の側面からすると、著者の願いが込められた温かい作品になっていると感じました。
全編を貫いて、女子高生本来の青春を謳歌する〝動〟と、ガラ