あらすじ
恋をした相手は人形だった。だが、人形はエキセントリックな天才作家自らの手で破壊されてしまう。修復を進める僕の目の前に、人形に生き写しの女優・聖(ひじり)が現れた。人形と女優が競演を果たすとき、僕らは? 日本推理作家協会賞受賞作家が新境地を開く、初めての長編ミステリー。(講談社文庫)
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Posted by ブクログ
“人形”に人生を翻弄される人物たちの物語。
隣屋の”如月まゆら”が作った人形に魅了されていた大学生の了。
ある日、いつも惚れ惚れ見ているあの人形と、全く同じ顔をした女優”聖”に出会う。
自分が執着しているのは、”まゆらドール”か、女優の”聖”か??
人物が交錯し、ストーリーは途中で二度三度四度五度覆されます。
成就しない恋への鬱憤を源に、人形を作り続けているのに気持ちが伝わらないまゆらの切なさ。
パトロンとして利用していた了のことを好きになってしまったものの、自分のことを”人形”としてしか見られていないように感じ、素直に感情を伝えられない聖子の切なさ。
聖子を自分の手で助けたことで、聖子に恋心を持っていることに気付いたものの、聖子に突然置き手紙を残して姿を消されてしまった了の切なさ。
とにかく切ないお話でした。
でも時を経て、聖子と了がまた再開する未来が見えるラストシーンが良かった!
Posted by ブクログ
恋をした相手は人形だった――。
人形師、パトロン、ストーカー、人形そっくりの少女――人形と、人形にそっくりな女性が出会う時、物語は思いもよらない方向へ歩み始める。
人形への愛情と、憎悪。嫉妬。
視点を変えながら進んでいく物語に少し混乱もするが、その謎が解けた時に、一つの悲しさをもって読むことができる。
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非常におもしろかった。
これまで読んだことのない感覚。
人形に恋した男の話。見る者を魅了する人形と、それを作った人形師、そしてその人形にそっくりな女と、それに魅せられたら男。
不思議な空気間で進む話。読み進めるに連れて徐々に引き込まれていく。
人形という欠点を持たない理想の形に、所有者の自己を投影し、想像力から個性を持たせる。
人と人形の関わり合いを通じて、他者に対する人の心の奥深くを垣間見ることができる。
Posted by ブクログ
とってもすき。
内容も、登場人物も、終わり方も全てが良かった
最後の方の展開は少しわざとらしい感じもしたけれど
それさえも良いと感じるほど、面白く感じた。
Posted by ブクログ
ここ数年の読書の中で一番のお気に入りです。
まさかの展開に度肝を抜かれた記憶があります。
加納朋子さんっぽくない作品ですが、そこがまた良かった。
Posted by ブクログ
球体関節人形は以前中野ブロードウェイのショーウィンドーでカスタム前のものを見たけど、
人の形を追求するのではなく、本当に理想をありったけ詰めこんだ造形物なんだなと感じた。
目の色や髪形・髪色、服装など自分の思うままに作れるのは面白いだろうけれども畏れ多い。
おこがましいというか。
あと、ハマったら抜けられなくなりそうな気がものすごーくします。ああいった趣味は。
読みながらこういう話好きだわーと思うほど私のツボにハマりました。
想いの矢印が色んな方向に行き交ってすれ違ってしまった切ない話だった。
皇なつきの絵で勝手に脳内再生された。
黒猫の三角漫画版での練ちゃんが聖のイメージとつながったのかと。
多分聖は練ちゃんみたいなびらびら服ではなくシンプルな服を着るんだとは思うけど。
油断していたのでミスリードにまんまと引っ掛かった。
まゆらが連れてきた若い男性=草太で、了と年恰好が似ている→二人の描写が混在しているのは分かったけど、
まさか了=おじさまだとは思いもしなかった。時系列もバラバラになっていたとは。
Posted by ブクログ
タイトルで買った本だったけど大正解でした。これは面白い。入り組んだ物語が収束していく様が最高に面白い。だからミステリは素敵で止められない、と思う。ラストが凄い好き。人形の存在が際だってこの物語の存在感をくっきりとそれでいて幻想的に仕上げている。すごいよー。
Posted by ブクログ
二度読み。
登場人物全員が人形に様々な形で翻弄される。
人形を作った本人でさえも。
男性たちがもっと、周りに目を向けられていたらと何度も思うような展開で、はがゆい。
了も創也も人形のことが第一で周りが見えていないがために大事なものを見失い、壊れてゆく。
人形の魅力にとりつかれた男たち。
愛情、嫉妬、憎しみ…紙一重。
人形を中心に様々な感情が入り乱れる。
好きな表現などもろもろ。
p41-3
人間と人形の差などないと思う了の考え
p68-10
了の人形に対する思い
p140-13
聖に対しての彼の望み
p163
聖に対しての渇望
p194-12
まゆらが思う子供の本質
p215
p244-12
p250-16
p251
p259-8(p195)
愛しかたの齟齬、乖離
p256~p257
女性側から見た男性の姿
何故感じとれないか…。
p260~p261
人形について
p265
見る角度によって景色は変わる
p291の後ろ3~p292
了が初めて知る人付き合いのルールについて
p309
まゆらという人間
創也にはずっとわからないであろうこと
p322-3
人形を見るときの人間の勝手な願望、心のうち
p345
聖の思いと了という人間について
p346-11
歪な関係の例え
p346-12~p347-1
聖の感情が強く出ているところ
p350
子供から大人へ
p360
成長
Posted by ブクログ
加納朋子初の長編。
「ガラスの麒麟」を上回る暗さで、彼女らしくない作品だと最初は思っていたのですが、この読後感は間違いなく加納作品のそれですね。
3章にまとめられた構成がやや独特。本格ミステリを期待してしまうと、肩透かしを食う面もあるのかもしれません。だけど、こんなまとめ方ができるってのはさすが加納朋子。ファンとしては満足のいく展開です。
勿論"仕掛け"そのものもしっかり作られていて、まんまと騙されました。もう一度読み直さないといけませんね、これ。
Posted by ブクログ
人形に恋をする、という設定に惹かれて。
中盤くらいまでは登場人物が持つ執着心がおそろしく、ある人形師が作る人形もどこか不気味に思えたが、続きが気になりスラスラと読めた。
謎が明かされる場面では少し混乱するかもしれない。
最後の最後ではあたたかい気持ちにさせられた。
Posted by ブクログ
恋した相手は、人形だった」というフレーズに興味を引かれ購入したのだけど、結構面白かった。こういう雰囲気のお話、嫌いじゃない。
登場人物同士の関係・つながりが、話が進むのと同時進行で少しずつ少しずつ明かされていくんだけど、「おぼろげな」理解しか出来ないような描き方にわざとしていて、そのおぼろげだったつながりが最後の最後で「あぁ〜!!そういうことだったんか!!」ってようやく分かるという感じです。
Posted by ブクログ
初の長編ミステリらしい
個人的には連作短編の方が好きだなぁ・・・
日常系ハートフルミステリとは違い、結構重い
そして、トリックの種明かしが中盤であって
「え~~~?!」となる
一応伏線らしきものはあるけど、このトリックは意味があるのかなぁ?
そこら辺が納得行かない
でもまぁ、なんだかんだ言って、結局は登場人物の未来に少し明かりが点った終わり方なのは加納さんらしい
Posted by ブクログ
世界観もストーリーもとても好みだった一冊。
美しい人形や、ダークな雰囲気が好きな人にオススメ。
はまる人ははまるんじゃないかな。
読み終わって、満足して、もいちど読み返して気付いた。
騙された!
終わりまで読んだ後再読すると、新たな発見がある本です。
Posted by ブクログ
聖子
高校在籍時から劇団に所属している。高校卒業後、お金持ちのパトロンを見つける。聖と名乗る。
あやこ
聖子と遠い親戚で同い年の女の子。聖子が訪ねておよそ一年後に病気で死んだ。
了
三つの頃、押し入ってきた強盗に両親が殺された。親戚の家に引き取られる。高校を卒業した年、養父母はヨーロッパへ旅立ち、飛行機事故で亡くなる。
薫子
聖子の姉。二十歳になった途端、付き合ってた彼氏と結婚した。二年後に実家に戻ってくる。一人娘を保育園に預け、ホステスとして働いている。
桜子
聖子の姉。したたかな女。
聖子の父
自分が作った家庭の中に自分が望む幻想が存在しないと知るや、逃げるように去っていった。、
聖子の母
父が出て行った後、ホステスになった。
安藤零
聖子の劇団の座長兼脚本兼役者。
美保
聖子より年下の劇団員。ストレートヘアの和風美女だけど、見かけと違って中身は相当な跳ねっ返り。
佐久間
聖子の遠い親戚。あやこの母。あやこが亡くなった後、あやこが可愛がっていた人形に子供の名前をつけて生きているように振る舞っている。
如月まゆら
人形師。
牧原
創作人形の講師。
小野寺
聖子のパトロン。
創也の祖父
岩槻の雛人形職人。頭部のみを作る専門職。頭師。信頼する衣装師が亡くなったのを機に、人形作りを辞めた。
創也の母
創也の父
裕福な宝石商。
三好創也
有名な宝石店のオーナー。まゆらドールを販売する会社「創也企画」を起こす。
ハルノマユコ
春野真由子。創也が病院で知り合った。自傷癖があり精神科に通っている。天性の人形師。如月まゆら。
田倉
精神科の医師。
しょぼくれた老人
アンティークショップと喫茶店を兼ねたような店の主人。
草太
まゆらの子。
創也企画唯一の従業員
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これはゆっくり読んではいけないやつだった。もう頭がこんがらがった。
「ゲーム」と分かった時はその意図が分からず、読者を騙したかっただけならそりゃないわ…と思ったけど、後になって理由が判明。
事件後が長く感じたけど、ラストは良かった。
でも共感できる主人公ではなかったな。
Posted by ブクログ
耽美的な人形奇譚、芸術家の狂気の物語を期待した向きは、第三部が始まった時点で梯子を外されることになる。「孤高の芸術家」も人間嫌いの少年も市井の幸せみたいなものを求めていた、と明かされるわけで。ほとんどの登場人物が何らかの形で肯定される中で、具眼の士を気取って、凡俗を嫌ったパトロンだけがとことん否定されて終るのも象徴的。
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今頃お気に入りになったこの作者、4冊目。
初めての長編だが、作者としても初めての長編だった由。
天才的な人形作家、人形に惹かれる青年、人形とそっくりの女優、そのパトロン。
青年と女優が交互に語るパートで進められ、第2章からはパトロンのパートも加わって進む話は、読み終えてしまえば結構凝った作りだったことも知れるが、そのトリックよりも寧ろ雰囲気の良さやヒロインのある種のかわいらしさのほうに惹かれた。
これまで読んだ話とは多少テイストが異なっていたが、ほのぼのしたエピローグも含め、重苦しい話の割にはあまり暗くならなかったところは、この作者ならではか。
Posted by ブクログ
ミステリが好きで、球体関節人形に魅せられていて、といえば、読むしかない! とブックガイドを見てからずっと気になっていた本。
正直、少し肩すかしの感。
人形に関する哲学でおおきくはずれているものは見受けられない。
(ただし少女人形を家族の文脈でとらえるのは、
人形の見た目に流された結果だと思う。
人形は家族ではなく他者である。)
しかし人形哲学に対し、ミステリ部分がやや卑俗にすぎる。
この種の叙述トリックも感心しない。
決して悪い作家ではないと思うのだが。
合わなかっただけか、自分の見方が偏向しているせいか。
他の作品も読んでから判断しなおしたい。
Posted by ブクログ
著者の作品では甘い甘い日常系ミステリと幼稚な女性主人公ばかりに触れてきたので、「おおすごい!よく頑張ったなー!」というのが第一の読後感。
ドールという道具(押韻)もなかなか興味深いものがありました。
仕掛けとラストは、やっぱり甘いと言えるかもしれないけれど、充分読みごたえを感じました。
Posted by ブクログ
人物のみでなく時系列までがごちゃまぜ…しっかり騙されました。
ストーリー自体にはそれほど惹かれなかった、まゆらドール自体の凄みとかがもっと伝わってくるとよかったと思う。
Posted by ブクログ
ー恋をした相手は人形だったー
人形の作者である如月まゆら、まゆらに人形を製作させるきっかけをつくった創也、その人形に魅せられた了、その目の前に現れた人形に生き写しの聖。
主に物語は聖の視点と、了の視点から展開されていく。届かぬ恋情が行き交い、ある事件の発生に向けて歯車が動き始める。
全体的に重たく暗い雰囲気ではあるが、その世界に引き込まれる形で読み進めることができた。
後半にかけて曖昧だった謎が次々と解き明かされていく様子が、やや難解で混乱するものの面白い。
ー 人間同士の恋愛とて、さまざまな方向性を持ち、誤解とすれ違いで溢れかえっている。本書に描かれているのが異形の恋だというのなら、そもそも恋自体が異形の情熱ではないか。本書はふとそんなことも考えさせ、読者それぞれが抱いている愛のかたちを振り返らせるに違いない。 ー
Posted by ブクログ
幻の人形、まゆらドールをとりまく物語。
まゆら人形に魅せられた了。
まゆらドールを生み出させる創也。
人形のような美貌の女優、聖。
人形を作り続ける、まゆら。
それぞれの視点と時間軸が交差して、悲劇が起きる。
バレエの「コッペリア」を題材にしている。
このごろバレエついているのでなんだかうれしくて手にとったけれど。
あまりにも入り組んで絡まるので、だんだんと混乱してくる。
そこが罠なわけだけど、絡まりすぎかなあ。
とにかく聖が可愛いかった。
最後は彼女のがんばりのおかげか納まるところにおさまった。
「みーんなそうなんだから。恋愛ごっこ、恋人ごっこ、家族ごっこ、仲良しごっこ…みんなそうやって、観客をだましているだけなのよ。」
だとすれば、これまでの僕はルールをしらないままでゲームに参加していたことになる。
Posted by ブクログ
人形に魅せられ翻弄された人たちの、
哀しくそして素敵な物語。
みんな不幸になって終わりなのか.....鬱....と思いきや
最後にチョット救われるので、読後感やよし。