風野真知雄のレビュー一覧
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購入済み
宝箱
7人の作家の小品集で、江戸人情小話が、いっぱい。どれも、ちょっぴり切なく、ホロリとさせられる。次々と色々な話が、ポンポン出てくる宝箱のようだった。
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歴史探偵・月村弘平が大活躍
「近田流星」と言うファッションデザイナーが葛飾北斎ゆかりの地で殺害されると言う衝撃的なプロローグでした。また、「エースをねらえ!」や「7つの黄金郷」の原作者の山本鈴美香先生の出身地であります山梨県で第2の殺人事件が発生し、一連の事件に「宗教」がからんでいたと言うあらすじは筆を折った直後の山本鈴美香先生を生々しく連想させる素晴らしいものでした。そして、主人公の「月村弘平」と言う歴史研究家が「ミステリと言う勿れ」の主人公の「久能整」と言う男の子と同じく「カレー好き」なのも大変面白いです。
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復讐の連鎖と仇討をさせたい人情に対し、それに対する信仰と実社会(法律)による救い、秩序の維持と信念が窺える物語。
人情に長けた根岸が、断固として個人による復讐をさせてはならないと断言する。復讐をする者、しようとする者自体を救うという信念。
そして、『この世のことは、この世で裁く。天の裁きはまたのちにくだるだろう』という言葉に、良識を感じ、深く感じ入った。
人を殺してヤクザをしても浮世の徒花に溺れた生き方には馬鹿馬鹿しさしか残らぬことや、
消えてしまうことはなく、全ては形を変えて存在しているのではという話の結び(質量保存の法則を思い出す)は、
生死一如、死は断絶ではないというグリーフケアと、生 -
購入済み
魚之進の独特な仕事ぶり
月浦魚之進は南町奉行所の町廻り同心だが、今は味見方として江戸市中の食い物の動向を探る役目に就いている。本来、南蛮渡来の香料や砂糖などの抜け荷の取り締まりが主なお役目であった。この際に魚之進の兄の波之進が犠牲になってしまった。抜け荷の実態がほぼ明らかになり、味見方の役目を潰すという話しもあったが、江戸の町人たちの暮らしを把握するのに必要な役目だというので、南町奉行所筒井和泉守の計らいで存続された。
今回の物語は、ぬるぬる御膳とひげ抜きどじょう、婆子丼、歯形豆腐という聞き慣れない食べ物が出ている。
信憑性はわからないが、話しは非常に面白い。兄の波之進に比べればその容姿や仕事の取り仕切り方は格段 -
Posted by ブクログ
ちょうど同じくらいの孫がいる私にとって、このシリーズは実にツボなのだ。
腕利きの目付けを隠居した桃太郎。
嫡男が芸者と関係しできた女児の孫。
その可愛さに家を出て孫をあらゆる災難や危険から守ろうと長屋住まいで、しかもおんぶまでしての孫の守り。
若い頃は悪いことも程よく経験した腕利き目付けは長屋連中の謎解きまで買って出る。
今回は頭はいいヤクザとの対抗戦。
命を狙われて愛しい桃子(孫)とも会えない日々。
事件の解決に全力を注ぐ。
目付け仲間の朝比奈とのジジィコンビの会話も思い切りツボ。
読み進めて本のしまいになるのが惜しいくらいいい時間なのだ。 -
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Posted by ブクログ
私の大好きな作家、風野真知雄。
この時代小説は、面白いだけじゃない。
室町幕府末期、唯一剣を極めることにだけ、人生を捧げた人物である。
物語はすでに60代半ばを過ぎ70歳に手が届きそうな剣豪の日常を淡々と物語る。
一度は領地を持つ殿様として過ごすも、全てを手放し剣の修行の旅を続ける。日本各地には彼を師匠と仰ぐ人物が何人も存在し、旅をしては弟子の住まいを尋ね、稽古をする。
まだ日本の国は統一なされず、軍割拠の状態。
まだまだ剣の腕は売り物にもなった時代だ。
この物語は、実は大きな主題は他にあり、
強いということは?生きること、死ぬこと。
常に自分の今を把握し、剣も戦い方も変えていた卜伝。