花村萬月のレビュー一覧
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初・花村萬月。本書は確か、トヨザキ書評から。まずは前半だけど、イメージとしては池永永一作品。先輩・後輩は逆だけど、自分が読んだ順がそうなんだから仕方ない。キャラ設定にも共通するものを感じた。頻繁に出てくる作者自身による時代背景の説明は、ある一定のオチャラケ感を維持するためには有効だけど、個人的にはあまり好きじゃない手法。東村アキコが『雪花の虎』でもやってるけど、歴史ものを書くに当たっては、専門家からの細かいバッシングを予防するために必要なのかも。島原の乱が物語のピークになりそうな展開だけど、現実離れしたこの世界観の中、どんな展開を見せるのか。後半も気にはなる。
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ネタバレ天才が天才の原石を磨く小説。
ワクワク感よりも焦燥感でジリジリしてくる。
何も持っていない自分にジリジリする。
若い時に読んでいたら腿のトコロをンギー!ってガシガシしたはず。
渇望?
憧憬?
磨かれてゆく原石に待ち受ける栄光と
時折顔を覗かせる破滅に残るページは僅か。
思わず、本当に思いもかけず涙が流れたのが
最前列で主人公「桜」を追いかけていた「ストーカー紛い」に思われていた男の発した
「よかったです。最高です。その、もう、最高です」
の言葉に思わず流れた涙。
不器用で不格好でも愚直に吐き出す言葉。
おそらく何も持たず希望も持てない中の僅かな、でも強烈な光に吸い寄せられた言葉。
光を進む者に -
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ひとりの冴えない見た目(異常な自意識から自らそう貶めていった)の男舎人憲夫。彼は自らをサディスティックが行き過ぎて反転した結果のマゾヒストであり、自らに加えられる加虐のすべてが悦びに変換されてしまう。
彼は宮島弥生の小説「浄夜」の登場人物であり、その実在は不明にされている。
彼は何者なのか。彼のいう物語とはどこにたどり着くのか。
とにかく、なにが面白くて読んでいるのか分からないけれど面白くて暇さえあれば読んでいた。これとても面白かったけれど、ラストも含めて好きだけれど、誰にこの本を勧められるだろう(笑)いや花村さんの読者のひとにしたら「通常運転だよ」と言われるかもしれないけれど。いや、本当に -
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花村萬月さんの作品を読むのは本書が2作品目!
一作目の作品『永遠の島』で性と暴力の表現に辟易としてしまい、10年近く花村氏の作品から遠ざかる。
本書を手にした理由は題名がカッコいいから!
ロック オブ モーゼスという響きが何故かしっくりきて良い!
10年前に花村萬月氏の作品を勧めてくれた友人と久しぶりに会いたいと思った!
主人公の朝倉桜は天才ギタリストのモーゼと出会う!モーゼに惹かれた桜は同時に音楽にも惹かれ、モーゼの下で着々と音楽の道を進んで行く青春ストーリー!
所々に散りばめられた音楽の薀蓄も面白い!
音楽知識が無くても楽しめます! -
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花村版武蔵の第6巻目で最終巻。
本巻では、歴史も絡み、あれよあれよと有名な対戦相手たちを戦うというテンポの良さに驚いていたら、最終巻でした。
吉川版が自分の武蔵の原体験になるので、ようやく本堂に入ったかと思っていただけに呆気なかったです。
本蔵院胤栄や柳生石舟斎との出会い、宍戸、奥蔵院、吉岡、小次郎との戦いというこれまでの武蔵小説の名場面がこの巻に集中しているので、これまでの巻はこの巻のためにあったといえると思います。
さらに、小次郎との戦いがクライマックスなのは他の小説と大差ないのですが、戦いの最中にこれまで出会った人たちの回想とその影響の考察が数ページにわたって続くところが、これまでの物 -
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終戦直後の新宿での話。
任侠モノと言えば確かにそうなのだけれども、わずか70年前の東京をこの目で見ているかの様な描写に、ついつい任侠モノだと言うことを忘れてのめり込んで読んでしまいました。
ちなみに私、映像での暴力シーンが本当に苦手で
血なんか出ちゃったもんなら即座にテレビを消す。
他人の血を見ることも苦手なら、自分の血ですら
うわぁ…となるくらい血を見るのが苦手です。
でも何故か文字なら平気なんです。
多分、頭の中で血が出てくるシーンにモザイクをかけているんでしょうね。
この小説は割と暴力的。でもって性描写も中々凄いものがあります。
苦手な人は苦手だろうなぁと思うジャンルですが、私は5 -
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こんな過激な沖縄本がかつてあっただろうか。沖縄をこころから愛する芥川賞作家による沖縄紀行である。グルメもあれば、観光地もでてくる。けれど、そんなものはこの本をなるべく無難のものにしようとする筆者の隠れ蓑である。
彼は沖縄は普通の場所で、普通の人が住んでいることを強調する。そして、沖縄人はみんないい人だとか、沖縄には差別がないとか、沖縄をユートピア視するヤマト人を差別主義者だと糾弾する。
彼の主張は最後の「ヤマトをぶち殺せ!」という言葉に集約されている。沖縄人はヤマトによって「いい人」にされている。飼いならされている。民主主義で基地問題は解決しない。ヤマトを憎み、怒りを持続させよ。言葉ではなく情 -
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ネタバレこの父親に育てられてよく道をはずさなかったと思うよ。
一時期、児童福祉施設に入所したらしいけど。
たった4年でこんな濃い時間を過ごせたんだね。
でも死んだ時は開放感と喜びでいっぱいだったというのはわかる。
でもこの父親、インテリで明治大学を出てラテン語、英語、ドイツ語など語学は堪能だったみたいだ。
家具ばど拾ってきた資材で器用に作ったり。
でも、働かないってのはダメンズだよな。
この母親がなにしろ立派。
出産も子育ても一人でこなし、果てはだんな(自宅で)の死後の処置まで電話で医師に聞いて施したらしい。
偏愛だったけど、父親からも母親からも愛されたというのが著者の確固たる自信になっているのだろ