花村萬月のレビュー一覧

  • 掌篇歳時記 春夏

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    24節気を3等分した72候があることを知って、日本には季節を細かく愛でる文化があったのだと再認識した.その季節感を念頭に置いて、著名な作家が短編を綴るという贅沢な本だが今回は春夏を読んだ.村田喜代子の雷乃発声(かみなりすなわちこえをはっす)が面白かった.戦前の裕福な家庭に育った姉妹だが、それぞれにねえやがいて、様々な世話をするという、今では考えられない家庭内のやり取りが出てくる.あんな時代があったことは、映画や小説の中でしか接することはできないが、この姉妹の会話からその情景が想像できることが新しい発見をしたような感じだった.

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    2019年11月06日
  • 惜春

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    内容(「BOOK」データベースより)
    琵琶湖のほとり、田圃の真ん中で派手なネオンを輝かせる雄琴のソープランド街。そのひとつ、“城”のオーナーに騙され、佐山豊は東京から連れてこられた。二十歳の童貞青年は理不尽な労働環境に悲嘆し、姐さんたちの身辺の世話に悶々とする―。彼女たちは汚れているのか。童貞青年が苦悩する感動青春小説。

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    2019年11月05日
  • 決戦!桶狭間

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    決戦!シリーズ

    木下昌輝さんの岡部元信の本当の忠義、宮本昌孝さんの今川氏真は、特に、面白かった。
    氏真に関しては、最近色々な作家さんが書き始めていて、評価も様々出されるようになり、興味深い。

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    2019年08月25日
  • 掌篇歳時記 春夏

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    トップバッターの 瀬戸内先生のが 一番俗っぽかったな と思うほど 瀬戸内先生 相変わらず かわいらしい人を書くんですね ほぼほぼ 幻想的で不思議な短編 ちょっと読むには 分かりにくいものもある 芥川賞作家が多いからでしょうか

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    2019年08月22日
  • 決戦!桶狭間

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    桶狭間の戦いをテーマにしたアンソロジー。前回読んだ関ヶ原に比べて戦の経緯が複雑で理解に苦しむ部分もあったが、一方で各話のバラエティも豊富で、それぞれの物語のレベルが高い。

    砂原浩太郎『いのちがけ』、富樫倫太郎『わが気をつがんや』、宮本昌孝『非足の人』がお気に入り。特に『非足の人』は桶狭間での今川氏真をピックアップするという非常に珍しいテーマの中、放蕩息子を無能の人と描きながらも彼の内面の覚悟の一片を光らせる演出が面白いと感じた。

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    2019年08月03日
  • アガルタ 上巻

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    初・花村萬月。本書は確か、トヨザキ書評から。まずは前半だけど、イメージとしては池永永一作品。先輩・後輩は逆だけど、自分が読んだ順がそうなんだから仕方ない。キャラ設定にも共通するものを感じた。頻繁に出てくる作者自身による時代背景の説明は、ある一定のオチャラケ感を維持するためには有効だけど、個人的にはあまり好きじゃない手法。東村アキコが『雪花の虎』でもやってるけど、歴史ものを書くに当たっては、専門家からの細かいバッシングを予防するために必要なのかも。島原の乱が物語のピークになりそうな展開だけど、現実離れしたこの世界観の中、どんな展開を見せるのか。後半も気にはなる。

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    2019年07月23日
  • 自由に至る旅 ――オートバイの魅力・野宿の愉しみ

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    バイクでの旅と言っても、バイク野宿旅(キャンプではないです)の話で、さらに言えば旅そのものの話はそれほどはありません。。非常にこだわりのある内容なので、100%賛同できる人はいないのではないかと思いますが、バイク乗りならばうなずける部分も結構あります。

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    2019年06月22日
  • 決戦!桶狭間

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    好きな「決戦 ! 」シリーズである。
    桶狭間については織田信長が奇襲戦で今川義元を討ち取ったと言う事は知っているが細かい事には知識が無かった。
    多少は作られている部分はあるとしても、細部を知りこの歴史を転換させる戦に思いを馳せる事が出来た。
    特に「いのちがけ」、「わが気をつがんや」、「義元の首」は秀作だと思う。

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    2019年05月07日
  • ロック・オブ・モーゼス

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    ネタバレ

    天才が天才の原石を磨く小説。
    ワクワク感よりも焦燥感でジリジリしてくる。
    何も持っていない自分にジリジリする。
    若い時に読んでいたら腿のトコロをンギー!ってガシガシしたはず。
    渇望?
    憧憬?
    磨かれてゆく原石に待ち受ける栄光と
    時折顔を覗かせる破滅に残るページは僅か。
    思わず、本当に思いもかけず涙が流れたのが
    最前列で主人公「桜」を追いかけていた「ストーカー紛い」に思われていた男の発した
    「よかったです。最高です。その、もう、最高です」
    の言葉に思わず流れた涙。
    不器用で不格好でも愚直に吐き出す言葉。
    おそらく何も持たず希望も持てない中の僅かな、でも強烈な光に吸い寄せられた言葉。
    光を進む者に

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    2019年03月10日
  • ジャンゴ

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    凄まじい。表現がとかやなくて、気持ちが凄まじい。でもこれって冷静な心で書かれてるのかなぁ、なんて不思議に思う。やっぱ文章ってすごい。

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    2019年02月28日
  • 惜春

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    花村萬月、やはり面白い。大人版、重松清だと思う。物語が大きく動かなくても、登場人物の心は大きく揺れ動く。小さな物語の中で、大きく揺れる人間の心情がこんなにも面白いなんて。いや、驚くべきは引き込むように書いている筆者の力量か。人の心の機微だけで、物語は書ける。この圧倒的な事実の前に、ただ恐れ慄く。

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    2018年07月29日
  • 舎人の部屋

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    ひとりの冴えない見た目(異常な自意識から自らそう貶めていった)の男舎人憲夫。彼は自らをサディスティックが行き過ぎて反転した結果のマゾヒストであり、自らに加えられる加虐のすべてが悦びに変換されてしまう。
    彼は宮島弥生の小説「浄夜」の登場人物であり、その実在は不明にされている。
    彼は何者なのか。彼のいう物語とはどこにたどり着くのか。

    とにかく、なにが面白くて読んでいるのか分からないけれど面白くて暇さえあれば読んでいた。これとても面白かったけれど、ラストも含めて好きだけれど、誰にこの本を勧められるだろう(笑)いや花村さんの読者のひとにしたら「通常運転だよ」と言われるかもしれないけれど。いや、本当に

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    2018年07月26日
  • ロック・オブ・モーゼス

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    花村萬月さんの作品を読むのは本書が2作品目!
    一作目の作品『永遠の島』で性と暴力の表現に辟易としてしまい、10年近く花村氏の作品から遠ざかる。

    本書を手にした理由は題名がカッコいいから!
    ロック オブ モーゼスという響きが何故かしっくりきて良い!

    10年前に花村萬月氏の作品を勧めてくれた友人と久しぶりに会いたいと思った!


    主人公の朝倉桜は天才ギタリストのモーゼと出会う!モーゼに惹かれた桜は同時に音楽にも惹かれ、モーゼの下で着々と音楽の道を進んで行く青春ストーリー!

    所々に散りばめられた音楽の薀蓄も面白い!
    音楽知識が無くても楽しめます!

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    2018年07月03日
  • イグナシオ

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    破戒的、暴力的だけど、宗教的。ペシミスティックでもあり、紫色の小説だった。イグナシオが様々な人と出会い、愛や温もりを知るたびに、その自我は密かに、しかし確実に崩壊へ進んでいく。差別を定義するのはすごく難しいけど、あいつに言われるのはいいが、こいつに言われると腹が立つ、と超主観的に説明していたイグナシオの理論には共感できる。多分、差別なんてそんなもんだ。深く、エグい。

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    2017年08月11日
  • 武蔵(六)

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    花村版武蔵の第6巻目で最終巻。

    本巻では、歴史も絡み、あれよあれよと有名な対戦相手たちを戦うというテンポの良さに驚いていたら、最終巻でした。
    吉川版が自分の武蔵の原体験になるので、ようやく本堂に入ったかと思っていただけに呆気なかったです。
    本蔵院胤栄や柳生石舟斎との出会い、宍戸、奥蔵院、吉岡、小次郎との戦いというこれまでの武蔵小説の名場面がこの巻に集中しているので、これまでの巻はこの巻のためにあったといえると思います。
    さらに、小次郎との戦いがクライマックスなのは他の小説と大差ないのですが、戦いの最中にこれまで出会った人たちの回想とその影響の考察が数ページにわたって続くところが、これまでの物

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    2017年07月22日
  • ワルツ(上)

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    終戦直後の新宿での話。
    任侠モノと言えば確かにそうなのだけれども、わずか70年前の東京をこの目で見ているかの様な描写に、ついつい任侠モノだと言うことを忘れてのめり込んで読んでしまいました。

    ちなみに私、映像での暴力シーンが本当に苦手で
    血なんか出ちゃったもんなら即座にテレビを消す。
    他人の血を見ることも苦手なら、自分の血ですら
    うわぁ…となるくらい血を見るのが苦手です。

    でも何故か文字なら平気なんです。
    多分、頭の中で血が出てくるシーンにモザイクをかけているんでしょうね。

    この小説は割と暴力的。でもって性描写も中々凄いものがあります。
    苦手な人は苦手だろうなぁと思うジャンルですが、私は5

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    2016年06月09日
  • 皆月

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    奥さんに貯金を持ち逃げされたコンピュータおたくのダンナが、なぜかヤクザ者の義弟とソープ嬢とともに奥さんを捜すドタバタのような小説。おもしろかった。

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    2016年02月11日
  • 沖縄を撃つ!

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    こんな過激な沖縄本がかつてあっただろうか。沖縄をこころから愛する芥川賞作家による沖縄紀行である。グルメもあれば、観光地もでてくる。けれど、そんなものはこの本をなるべく無難のものにしようとする筆者の隠れ蓑である。
    彼は沖縄は普通の場所で、普通の人が住んでいることを強調する。そして、沖縄人はみんないい人だとか、沖縄には差別がないとか、沖縄をユートピア視するヤマト人を差別主義者だと糾弾する。
    彼の主張は最後の「ヤマトをぶち殺せ!」という言葉に集約されている。沖縄人はヤマトによって「いい人」にされている。飼いならされている。民主主義で基地問題は解決しない。ヤマトを憎み、怒りを持続させよ。言葉ではなく情

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    2015年12月21日
  • 武蔵(四)

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    2年近くも間が開いたら今までの話はさっぱり(笑。今回もエロ度満点ですが、関ヶ原の合戦の描写はなかなかにグロいです。現代に生まれてきてよかったww

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    2015年10月30日
  • 父の文章教室

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    ネタバレ

    この父親に育てられてよく道をはずさなかったと思うよ。
    一時期、児童福祉施設に入所したらしいけど。

    たった4年でこんな濃い時間を過ごせたんだね。
    でも死んだ時は開放感と喜びでいっぱいだったというのはわかる。
    でもこの父親、インテリで明治大学を出てラテン語、英語、ドイツ語など語学は堪能だったみたいだ。
    家具ばど拾ってきた資材で器用に作ったり。
    でも、働かないってのはダメンズだよな。
    この母親がなにしろ立派。
    出産も子育ても一人でこなし、果てはだんな(自宅で)の死後の処置まで電話で医師に聞いて施したらしい。
    偏愛だったけど、父親からも母親からも愛されたというのが著者の確固たる自信になっているのだろ

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    2015年08月26日