花村萬月のレビュー一覧
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終戦直後の新宿での話。
任侠モノと言えば確かにそうなのだけれども、わずか70年前の東京をこの目で見ているかの様な描写に、ついつい任侠モノだと言うことを忘れてのめり込んで読んでしまいました。
ちなみに私、映像での暴力シーンが本当に苦手で
血なんか出ちゃったもんなら即座にテレビを消す。
他人の血を見ることも苦手なら、自分の血ですら
うわぁ…となるくらい血を見るのが苦手です。
でも何故か文字なら平気なんです。
多分、頭の中で血が出てくるシーンにモザイクをかけているんでしょうね。
この小説は割と暴力的。でもって性描写も中々凄いものがあります。
苦手な人は苦手だろうなぁと思うジャンルですが、私は500ページ以上ある本をまさに一気読みで読んでしまいました。
軸になる三人がそれぞれ出会い、中巻でどうなるのかが楽しみ。 -
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こんな過激な沖縄本がかつてあっただろうか。沖縄をこころから愛する芥川賞作家による沖縄紀行である。グルメもあれば、観光地もでてくる。けれど、そんなものはこの本をなるべく無難のものにしようとする筆者の隠れ蓑である。
彼は沖縄は普通の場所で、普通の人が住んでいることを強調する。そして、沖縄人はみんないい人だとか、沖縄には差別がないとか、沖縄をユートピア視するヤマト人を差別主義者だと糾弾する。
彼の主張は最後の「ヤマトをぶち殺せ!」という言葉に集約されている。沖縄人はヤマトによって「いい人」にされている。飼いならされている。民主主義で基地問題は解決しない。ヤマトを憎み、怒りを持続させよ。言葉ではなく情念でヤマトに本音をぶつけろ!
登場するのは、アメラジアン、売春婦、ホームレス…。抑圧され差別されている弱者への強い連携と共感をベースに、ヤマトや沖縄のインテリを糾弾している。
沖縄への見方が一変する、刺激的な本だ。 -
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ネタバレこの父親に育てられてよく道をはずさなかったと思うよ。
一時期、児童福祉施設に入所したらしいけど。
たった4年でこんな濃い時間を過ごせたんだね。
でも死んだ時は開放感と喜びでいっぱいだったというのはわかる。
でもこの父親、インテリで明治大学を出てラテン語、英語、ドイツ語など語学は堪能だったみたいだ。
家具ばど拾ってきた資材で器用に作ったり。
でも、働かないってのはダメンズだよな。
この母親がなにしろ立派。
出産も子育ても一人でこなし、果てはだんな(自宅で)の死後の処置まで電話で医師に聞いて施したらしい。
偏愛だったけど、父親からも母親からも愛されたというのが著者の確固たる自信になっているのだろう。 -
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花村萬月で芥川賞ときたら、鬱々としたバイオレンスというイメージだけど、そのとおり。本作は「ハードボイルド純文学」という感じ。
のっけから、暴力とリビドー、その下地が、それらを相容れないような宗教的に外界から切り離された世界。宗教の純潔さと現実の醜さ、性衝動と死体と汚物にまみれた、もう芥川賞選考員が大好きなテーマでしょ?
文章の方は知識や薀蓄、絶妙な固有名詞を独特のリズム感で綴っていく。しかし乱暴なわけではなく、言葉選びもかなり丁寧にされていると感じた。決して奇をてらった文章ではない。
圧倒的な言葉の前に、読むしか無いという状況になるのは、昨今の芥川賞受賞作よりも優れているのではないかと思う。口に石を噛ませてから殴る蹴る、溶けていく豚の死体、痰を入れたレーションをすすらせるなど、最初から最後まで、もう目を背けたくなるような文章ばかりだが、それを踏まえても、続きを読ませてしまう文章力は素晴らしい。
背徳版の「車輪の下」であろう。
なお、文庫版にあたって、フランシス・ベーコンの表紙を変えてしまったのはなぜだろう?ベーコンの絵のイメージと合致した内容と言えたのに。
とはいえ、続けてこのシリーズを読む体力はございません。あと、まったく子供向けじゃないのであしからず。 -
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『王国記』シリーズの3作目。とはいいつつ、本作の舞台は「王国」つまりは修道院兼教護院を飛び出しており、語り手は2作品とも朧ではない。ただ、作品じたいのクオリティにはとくに影響しておらず、むしろ個人的には前作よりもおもしろく読めた。やはり眼を引くのは朧の人物造形で、間違っても立派な人間とは呼べないであろうが、それでもなぜか心惹かれてしまう。あまりに衒学的な場合、通常は厭味な感じになってしまうが、朧の場合はそれが幼さの象徴として機能していて、こういう描写のしかたはじつは非常にレヴェルが高いと思う。ほかにも、このシリーズには、人間的にはどうしようもなくクズで、実在していたら間違いなく心底軽蔑してしまうような人物が何人も登場するが、それにもかかわらず、彼らの一挙手一投足を読んだあとにはなぜだか共感してしまうことが多い。なぜだろうと考えてみれば、それはやはり善人であれ悪人であれ誰もが多かれ少なかれ抱いているような感情を率直に描いているからではないか。トマス・ホッブスは「万人の万人に対する闘争」という語句で「自然状態」を規定したが、ちょうど人間の本質がそのようなところにあるとすれば、このシリーズで描かれている世界は、まさにこのことにほかならない。ヘンにウソで彩らない姿勢が、嫌悪感よりもむしろ行為を抱かせる結果となっている。わたしがこのシリーズに惹かれてしまう理由も、こういったところにあるのかもしれない。
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「良心的」とされる大和の人びとが沖縄に見いだそうとする幻想を解体し、著者が体当たりで沖縄の実態に迫っていった記録ともいうべき本です。
「沖縄を撃つ!」と題された本書で、著者は沖縄に暮らす人びとへの批判的な言葉も率直に語ります。しかしそれは、これもまた大和の人びとの一部によく見られる、沖縄の地域エゴイズムに対する紋切り型の批判とははっきり異なっています。沖縄の人びとが目を背けてしまいがちな不都合な真実を、著者がみずからの舌と下半身に刻み付けていった実体験が記されています。
少し過剰に露悪的な振舞いをしているように感じてしまったのも事実ですが、ここまで降りてしまえば人間は皆同じだとでもいうような著者の率直なスタンスには敬意を表したいと思います。むろん、これは沖縄に固有の問題ではないので、著者の人間観に対する共感ということになるのですが。 -
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彼の人と違う感覚には驚かせられながらも、共感できる。ドラッカーはよかった。
食べ物の比喩がグロテスクでいい。
女のひとの描きかたが余りにも男目線過ぎやしないか、いや、この人の話に出てくる女が男の目線によって育ったタイプの女なのかも。いずれにしろ北斗のけん的な楽しみかたもできなくもない。
定石じゃない言葉、雨の日に、傘などさせるか
理性じゃない方を選択し続ける、かえって人間的だ。
ドラッカーは星5個、せいじとナッシングバットザブルースは4個、それ以外は突き抜けてなくて面白くなかった。
ブルースは悪くないけど、もう少し書き方を考えてほしい。
ただ、ドラッカーは、すごーくよかった。こんな風も小説を、書けるなら、おれにもできるかも! -
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はじめに『ゲルマニウムの夜』を読んだとき、「これはとんでもないシリーズだ」と思った。そのぐらい評価が高い作品の続篇なので、読む前にやたらとハードルが上がっていたせいかもしれない。本作ももちろん良い作品には違いないが、「あれ、こんなもんかな」という感じがしてやや拍子抜けしてしまった。ただ、赤羽修道士を主人公とした表題作はとくに傑作で、この作品のなかにはさほどキリスト教的要素は登場しない(そもそも赤羽は「元」修道士だ)が、それでも全篇にわたってそのテイストが万遍なく塗されていて、この「宗教以外で宗教を描く」というのがこのシリーズ最大の特徴であり魅力ではないだろうか。(しかも、なぜか内容はきわめて宗教的だ。)こういう、アンビヴァレンスな感じ、逆説的な感じがすばらしい。このことを踏まえると、1作目より本作の評価が落ちてしまう理由として、併録された「刈生の春」における描きかたがあるのではないだろうか。この作品では、修道院の農場での過酷な生活を通して、指導者たちの「欺瞞」を映し出しているが、朧が直接不満を漏らすなど、その方法がどうも露骨すぎるのだ。もっと間接的に、比喩的にこの部分が描かれていれば、もっと高く評価することができたことだろう。ただ、視点や舞台や筋書を大きく変えても、根柢に流れるテーマがまったくブレないあたりはさすがの筆力である。この「王国」の行く末を、もうすこしだけ見守ってみようと思う。
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本書は衝撃的な作品を次々と発表する作家・花村萬月先生による『笑う萬月』『萬月療法』につづくエッセイ集の第三弾です。今回もまた硬軟織り交ぜた聖俗一致の『萬月節』が縦横無尽に炸裂しております。
本書は『笑う萬月』『萬月療法』につづく花村萬月先生によるエッセイ集の第三弾です。前の二つもかつて読んで、大笑いしつつ、「萬月節」の縦横無尽さに「なるほどなぁ」とうなづいていたものですが、本書を読んで、円熟味を増した筆致とそれでも下世話な話から、作家を志す人間のために新人賞の内幕から作品を送る際の警告にいたるまで、本当に聖俗一致のエッセイでした。
一読して現代の書き手というのは本当にネットとかかわりがあるんだな、ということでした。だからこの駄文も本人の目に触れるということが前提で書いているんですけれど、それでも花村氏のネットとの適度な距離のとり方やウィキペディアをよく見つつも、作品を執筆する際には何の役にも立たず、人の手をいくつも経た上で精査された者がやっぱりいいというのは、「本物」の書き手の一人なんだな、ということを思うのでした。
さらには「アウトサイダー」に関する記述が本当に自分の身にもつまされていたり、自身が若いときに全国各地の「原発道路」を走って、そのひとつで警備員に取り囲まれたときの話は本当に面白かったです。最後に花村氏の愛犬であるパグのブビヲがこの世を去ったことを告白しているのですが、
「ブビヲの存在を他の犬に置き換えることができない」
という言葉の中に、喪失の悲しみが集約されているような気がしてならないのです。とにもかくにも笑えて、うなづけて、最後はすこし哀しい。そんなエッセイでございました。