花村萬月のレビュー一覧
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花村萬月で芥川賞ときたら、鬱々としたバイオレンスというイメージだけど、そのとおり。本作は「ハードボイルド純文学」という感じ。
のっけから、暴力とリビドー、その下地が、それらを相容れないような宗教的に外界から切り離された世界。宗教の純潔さと現実の醜さ、性衝動と死体と汚物にまみれた、もう芥川賞選考員が大好きなテーマでしょ?
文章の方は知識や薀蓄、絶妙な固有名詞を独特のリズム感で綴っていく。しかし乱暴なわけではなく、言葉選びもかなり丁寧にされていると感じた。決して奇をてらった文章ではない。
圧倒的な言葉の前に、読むしか無いという状況になるのは、昨今の芥川賞受賞作よりも優れているのではないかと思 -
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『王国記』シリーズの3作目。とはいいつつ、本作の舞台は「王国」つまりは修道院兼教護院を飛び出しており、語り手は2作品とも朧ではない。ただ、作品じたいのクオリティにはとくに影響しておらず、むしろ個人的には前作よりもおもしろく読めた。やはり眼を引くのは朧の人物造形で、間違っても立派な人間とは呼べないであろうが、それでもなぜか心惹かれてしまう。あまりに衒学的な場合、通常は厭味な感じになってしまうが、朧の場合はそれが幼さの象徴として機能していて、こういう描写のしかたはじつは非常にレヴェルが高いと思う。ほかにも、このシリーズには、人間的にはどうしようもなくクズで、実在していたら間違いなく心底軽蔑してしま
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「良心的」とされる大和の人びとが沖縄に見いだそうとする幻想を解体し、著者が体当たりで沖縄の実態に迫っていった記録ともいうべき本です。
「沖縄を撃つ!」と題された本書で、著者は沖縄に暮らす人びとへの批判的な言葉も率直に語ります。しかしそれは、これもまた大和の人びとの一部によく見られる、沖縄の地域エゴイズムに対する紋切り型の批判とははっきり異なっています。沖縄の人びとが目を背けてしまいがちな不都合な真実を、著者がみずからの舌と下半身に刻み付けていった実体験が記されています。
少し過剰に露悪的な振舞いをしているように感じてしまったのも事実ですが、ここまで降りてしまえば人間は皆同じだとでもいうよう -
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彼の人と違う感覚には驚かせられながらも、共感できる。ドラッカーはよかった。
食べ物の比喩がグロテスクでいい。
女のひとの描きかたが余りにも男目線過ぎやしないか、いや、この人の話に出てくる女が男の目線によって育ったタイプの女なのかも。いずれにしろ北斗のけん的な楽しみかたもできなくもない。
定石じゃない言葉、雨の日に、傘などさせるか
理性じゃない方を選択し続ける、かえって人間的だ。
ドラッカーは星5個、せいじとナッシングバットザブルースは4個、それ以外は突き抜けてなくて面白くなかった。
ブルースは悪くないけど、もう少し書き方を考えてほしい。
ただ、ドラッカーは、すごーくよかった。こんな風も小説を、 -
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はじめに『ゲルマニウムの夜』を読んだとき、「これはとんでもないシリーズだ」と思った。そのぐらい評価が高い作品の続篇なので、読む前にやたらとハードルが上がっていたせいかもしれない。本作ももちろん良い作品には違いないが、「あれ、こんなもんかな」という感じがしてやや拍子抜けしてしまった。ただ、赤羽修道士を主人公とした表題作はとくに傑作で、この作品のなかにはさほどキリスト教的要素は登場しない(そもそも赤羽は「元」修道士だ)が、それでも全篇にわたってそのテイストが万遍なく塗されていて、この「宗教以外で宗教を描く」というのがこのシリーズ最大の特徴であり魅力ではないだろうか。(しかも、なぜか内容はきわめて宗
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本書は衝撃的な作品を次々と発表する作家・花村萬月先生による『笑う萬月』『萬月療法』につづくエッセイ集の第三弾です。今回もまた硬軟織り交ぜた聖俗一致の『萬月節』が縦横無尽に炸裂しております。
本書は『笑う萬月』『萬月療法』につづく花村萬月先生によるエッセイ集の第三弾です。前の二つもかつて読んで、大笑いしつつ、「萬月節」の縦横無尽さに「なるほどなぁ」とうなづいていたものですが、本書を読んで、円熟味を増した筆致とそれでも下世話な話から、作家を志す人間のために新人賞の内幕から作品を送る際の警告にいたるまで、本当に聖俗一致のエッセイでした。
一読して現代の書き手というのは本当にネットとかかわりがある -
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読書会の課題図書でなかったら多分僕はこの作家を読むことはなかっただろう。
残酷性があるので抵抗があったが、読み進めていくうちに、主人公のことが好きになっていった。
性に関しては愛らしくすら思える。
残虐性と純愛さは実は近い場所にいるのかもしれない。
神、宗教、支配する者とされる者、偏愛と残虐。
抑制され、コントロールされた暴力。
言葉の奴隷、つまり神の奴隷。
花村萬月という人は、キリスト教を特に勉強もしていないようだし、聖書もドストエフスキーもトルストイも読んでいないらしい。つまり「自分の経験」+「自分の地力」みたいなものだけで作品を作っている。それは逆にすごいとも思えるし、そうでないとも -
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花村萬月の作品。ひさしぶりだわ~。
あれは10年くらい前だっけ?
『ぢん ぢん ぢん』読んだのは。
すっごい分厚い本だったけど、読み応えのあった本だったな~。
これは短編小説みたいな感じのする本でした。
うーん、かなり刺激のある斬新なストーリーでした。
読んでて気持ち悪くなった箇所が多々。。。あった。
うーん、読み終わった後、かなり考え込んじゃうよね~。
なんだか修道院なのに、外の話をしてるような
でも、それが神に許されちゃう。。。そんな矛盾を朧が証明してくれてるんだけど
こういうのってあり~???
でも、実際修道院で育った作者曰く、「あり」だそうですよ~。
んん、なんて言っていいか。。。