花村萬月のレビュー一覧

  • 皆月

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    ダメ人間達の人生再生物語。挫折あり 破壊行為あり 愛も裏切りもあり 人も死ぬ。

    失なうものが何もない彼らの行動は社会性がなく はちゃめちゃだけど その分 子供のように単純で純粋と感じ うらやましくもなりました。
    自分がリアルにそうなれるかと言われたらなれないと思うけど 読んでいる間 彼らと同化し そういう意味では小説ならではの体験、醍醐味を味わいました。

    ストーリーは非現実的なところもあったけど 純粋で切なく 理屈では割り切れない部分を美しく読ませてくれました。

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    2015年08月21日
  • ゲルマニウムの夜 王国記 I

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    花村萬月で芥川賞ときたら、鬱々としたバイオレンスというイメージだけど、そのとおり。本作は「ハードボイルド純文学」という感じ。

    のっけから、暴力とリビドー、その下地が、それらを相容れないような宗教的に外界から切り離された世界。宗教の純潔さと現実の醜さ、性衝動と死体と汚物にまみれた、もう芥川賞選考員が大好きなテーマでしょ?

    文章の方は知識や薀蓄、絶妙な固有名詞を独特のリズム感で綴っていく。しかし乱暴なわけではなく、言葉選びもかなり丁寧にされていると感じた。決して奇をてらった文章ではない。

    圧倒的な言葉の前に、読むしか無いという状況になるのは、昨今の芥川賞受賞作よりも優れているのではないかと思

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    2015年08月05日
  • 重金属青年団

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     花村萬月6冊目、こちらはデビュー作から3冊目になる。『ゲルマニウムの夜』(芥川賞受賞作)から8年前の作品、闇の深さはまだ許容範囲内(理解可能)として、このぐらいにとどめておけないところが花村萬月たる所以のなだろう。そう言いながらも、池上冬樹の解説を読んで『なで肩の狐』が無性に読みたくなる。

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    2015年06月21日
  • 汀にて 王国記 III

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    『王国記』シリーズの3作目。とはいいつつ、本作の舞台は「王国」つまりは修道院兼教護院を飛び出しており、語り手は2作品とも朧ではない。ただ、作品じたいのクオリティにはとくに影響しておらず、むしろ個人的には前作よりもおもしろく読めた。やはり眼を引くのは朧の人物造形で、間違っても立派な人間とは呼べないであろうが、それでもなぜか心惹かれてしまう。あまりに衒学的な場合、通常は厭味な感じになってしまうが、朧の場合はそれが幼さの象徴として機能していて、こういう描写のしかたはじつは非常にレヴェルが高いと思う。ほかにも、このシリーズには、人間的にはどうしようもなくクズで、実在していたら間違いなく心底軽蔑してしま

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    2015年06月20日
  • 沖縄を撃つ!

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    「良心的」とされる大和の人びとが沖縄に見いだそうとする幻想を解体し、著者が体当たりで沖縄の実態に迫っていった記録ともいうべき本です。

    「沖縄を撃つ!」と題された本書で、著者は沖縄に暮らす人びとへの批判的な言葉も率直に語ります。しかしそれは、これもまた大和の人びとの一部によく見られる、沖縄の地域エゴイズムに対する紋切り型の批判とははっきり異なっています。沖縄の人びとが目を背けてしまいがちな不都合な真実を、著者がみずからの舌と下半身に刻み付けていった実体験が記されています。

    少し過剰に露悪的な振舞いをしているように感じてしまったのも事実ですが、ここまで降りてしまえば人間は皆同じだとでもいうよう

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    2015年06月04日
  • ワルツ(下)

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    2014.8.19ー59
    この結末。なるほど、でもあり、やはり城山の死は個人的には残念でもあり。
    「人間は泣きながらこの世に生まれる。この世に生まれることは苦痛であり、悲しいことなのだ。生まれた瞬間に唯一の定めである死に向かって生きはじめる」ついつい忘れがちなこの件を心に戒めて生きようと思わせられる。

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    2014年08月19日
  • ワルツ(上)

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    204.8.10ー57
    花村満月炸裂のエログロさや、戦後の混乱期の悲惨さの中にも、これは大人の為の任侠世界を舞台とした童話ではないかと思わせるものがある。

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    2014年08月10日
  • 私の庭 北海無頼篇(下)

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    私の庭シリーズ完結編でした。
    3編の読み応えは十分でしたが、気づけば読み終わっていたという感想です。

    元介は若過ぎるため、若干違和感を感じましたが、権介の超人的描写により押し切られました。

    権介の判断とか考え方は、結局爺の影響が大きいとはいっても、蝦夷を自分の庭と捉える権介独自の思考はアイヌの影響を強く受けたのだと思いました。

    実際のモデルはあっても、そこからの飛躍が花村萬月らしく、私の庭シリーズはボクの中に深く刻まれた小説となりました。

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    2014年06月04日
  • 私の庭 蝦夷地篇(下)

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    権介と茂吉の性格は対照的ですが 、権介はある種超越した性質を持つことから、ボクは茂吉側の視点に立ちました。

    蝦夷でのサバイバルは想像の世界でしかありませんが、強烈な寒さとアイヌの知恵は、旅を知る花村萬月の経験が裏打ちされた描写だと感じました。

    権介と茂吉は再会するのでしょうが、何処でどんな形で再会するのか続編が楽しみです。

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    2014年06月04日
  • 私の庭 浅草篇(下)

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    権介は蝦夷に渡るのか、私の庭とは蝦夷なのかという視点を持って読み進めるには、圧倒的過ぎる量で、ただ権介を追うことしかできませんでした。
    幕末の目まぐるしい社会の変化には一見無関係のように見える権介ですが、結局時代に翻弄されているのだとも感じました。

    ずっと権介を見ていたいという気持ちで続編を読むのが楽しみです。

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    2014年06月04日
  • ヘビィ・ゲージ

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    彼の人と違う感覚には驚かせられながらも、共感できる。ドラッカーはよかった。
    食べ物の比喩がグロテスクでいい。
    女のひとの描きかたが余りにも男目線過ぎやしないか、いや、この人の話に出てくる女が男の目線によって育ったタイプの女なのかも。いずれにしろ北斗のけん的な楽しみかたもできなくもない。
    定石じゃない言葉、雨の日に、傘などさせるか
    理性じゃない方を選択し続ける、かえって人間的だ。
    ドラッカーは星5個、せいじとナッシングバットザブルースは4個、それ以外は突き抜けてなくて面白くなかった。
    ブルースは悪くないけど、もう少し書き方を考えてほしい。
    ただ、ドラッカーは、すごーくよかった。こんな風も小説を、

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    2014年06月01日
  • 父の文章教室

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    著者が、5歳の頃から4年間に渡って、小説家志望の父親から施された、常軌を逸した英才教育と、その父の死によって開放された著者のその後の放浪が語られています。

    片時も心の休まる暇のない少年時代を冷静に振り返って、父から与えられたものと自分自身で獲得したものが何なのかを計りなおしているような語り口が印象的です。しかし改めて考えなおしてみると、このような少年であったからこそ、本書で語られているような異様な英才教育をくぐり抜け、小説家となりえたのではないか、と納得してしまいました。

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    2014年03月07日
  • ブエナ・ビスタ 王国記 II

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    はじめに『ゲルマニウムの夜』を読んだとき、「これはとんでもないシリーズだ」と思った。そのぐらい評価が高い作品の続篇なので、読む前にやたらとハードルが上がっていたせいかもしれない。本作ももちろん良い作品には違いないが、「あれ、こんなもんかな」という感じがしてやや拍子抜けしてしまった。ただ、赤羽修道士を主人公とした表題作はとくに傑作で、この作品のなかにはさほどキリスト教的要素は登場しない(そもそも赤羽は「元」修道士だ)が、それでも全篇にわたってそのテイストが万遍なく塗されていて、この「宗教以外で宗教を描く」というのがこのシリーズ最大の特徴であり魅力ではないだろうか。(しかも、なぜか内容はきわめて宗

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    2013年10月01日
  • ブルース

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    ネタバレ

    冒頭の暴力描写に引いた。
    我慢して読み進めると、
    わかりやすい、エンターテイメント色の濃い、
    カタルシスの連続。
    幼い男の物語だし、語り手もまたそうである。
    女が描けていないなんていっても、
    そんなの関係ない、って感じだ。
    格好つけている。

    作品の暗さと救いのなさとは別に、
    描きたくて描いたんだろうなという
    微笑ましさが残った。

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    2013年09月04日
  • 萬月な日々

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    本書は衝撃的な作品を次々と発表する作家・花村萬月先生による『笑う萬月』『萬月療法』につづくエッセイ集の第三弾です。今回もまた硬軟織り交ぜた聖俗一致の『萬月節』が縦横無尽に炸裂しております。

    本書は『笑う萬月』『萬月療法』につづく花村萬月先生によるエッセイ集の第三弾です。前の二つもかつて読んで、大笑いしつつ、「萬月節」の縦横無尽さに「なるほどなぁ」とうなづいていたものですが、本書を読んで、円熟味を増した筆致とそれでも下世話な話から、作家を志す人間のために新人賞の内幕から作品を送る際の警告にいたるまで、本当に聖俗一致のエッセイでした。

    一読して現代の書き手というのは本当にネットとかかわりがある

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    2013年06月22日
  • ゲルマニウムの夜 王国記 I

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    読書会の課題図書でなかったら多分僕はこの作家を読むことはなかっただろう。
    残酷性があるので抵抗があったが、読み進めていくうちに、主人公のことが好きになっていった。
    性に関しては愛らしくすら思える。
    残虐性と純愛さは実は近い場所にいるのかもしれない。

    神、宗教、支配する者とされる者、偏愛と残虐。
    抑制され、コントロールされた暴力。
    言葉の奴隷、つまり神の奴隷。

    花村萬月という人は、キリスト教を特に勉強もしていないようだし、聖書もドストエフスキーもトルストイも読んでいないらしい。つまり「自分の経験」+「自分の地力」みたいなものだけで作品を作っている。それは逆にすごいとも思えるし、そうでないとも

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    2013年03月16日
  • ブルース

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    テクニックは関係なく伝えたい衝動があるならそれがブルース。

    格好良すぎる。
    猥雑でめちゃくちゃな展開だけど
    すらすらと一気にのめり込んで読んでしまいました。

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    2013年01月19日
  • ゲルマニウムの夜 王国記 I

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    花村萬月の作品。ひさしぶりだわ~。
    あれは10年くらい前だっけ?
    『ぢん ぢん ぢん』読んだのは。
    すっごい分厚い本だったけど、読み応えのあった本だったな~。

    これは短編小説みたいな感じのする本でした。

    うーん、かなり刺激のある斬新なストーリーでした。
    読んでて気持ち悪くなった箇所が多々。。。あった。
    うーん、読み終わった後、かなり考え込んじゃうよね~。
    なんだか修道院なのに、外の話をしてるような
    でも、それが神に許されちゃう。。。そんな矛盾を朧が証明してくれてるんだけど
    こういうのってあり~???
    でも、実際修道院で育った作者曰く、「あり」だそうですよ~。
    んん、なんて言っていいか。。。

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    2012年11月26日
  • ヘビィ・ゲージ

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    マイナスすぎて逆にプラスです。
    負の部分がめちゃめちゃ描かれているのですが、なぜか前向きな気分になります。

    ブルースだぜ~

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    2012年11月20日
  • 皆月

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    「みんな、月でした。がまんの限界です。さようなら」。この言葉を残して妻が突然いなくなります。 しょぼくれた40男が、新しい自分を発見していく物語です。中年版ビルドゥングスロマンというところでしょうか。自己再生ものの定番ですが、ロードノベルでもあります。

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    2012年10月29日