【感想・ネタバレ】ゲルマニウムの夜 王国記 Iのレビュー

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花村萬月の名前を聞くと、サラダ油のシーン(!)で印象深い映画化タイトル「皆月」を思い浮かべる人も多いかもしれない。過激な性と暴力描写を得意とする作家だが、その根底にあるのは神への猜疑と冒涜である。
著者の「王国記シリーズ」の第一章目にあたる本作『ゲルマニウムの夜』の主人公・朧は、頭脳明晰だが人を殺し、育った修道院に舞い戻る。彼は人を殺し、純潔の修道女を犯しても、何の罰も下さない神を見限り、宗教者のなれのはて――王国の建立を決意する。
表題作の他に「王国の犬」、「舞踏会の夜」が収録されている。いずれも朧が修道院で神を疑い、信心深い神父とアスピラントを試し、自我に目覚めるまでの小編だ。修道院という本来神聖であるはずの場所で行われている暴力、虐待、同性愛の生々しく残酷な描写は圧巻。なお、2005年に大森立嗣監督・新井浩文主演で映画化もされている。

ユーザーレビュー

Posted by ブクログ 2017年12月18日

ピカレスクロマンとジャンル分けはできるのかもしれないけれど、ジャンル分けって不毛だなと思うだけの中身があるような気がする。読まれるべき毒のある小説だと思う。

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Posted by ブクログ 2017年09月27日

冷酷で暴力的で傲慢な男なのに、どうしたって主人公の朧に惹きつけられるし、読み進めるうちに親しみさえ覚えてしまう。まるでリヤカーを後押しする幼い収容生たちのように。最高のピカレスク小説。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2017年02月22日

私にはよくわからない芥川賞作品が多い中、これは面白かった!エロくてグロい描写が多いですが、哲学的なことも投げかけられます。宗教とはなんなのか?そう言えば、中世?には免罪符なるものがあったな、と思い出しながら読みました。

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Posted by ブクログ 2013年01月10日

良い意味でクレイジー。宗教的な題材ゆえ、うまく説明できないが、聖性と暴力という、対極に位置する要素を結節している点が巧みである。本作の舞台「王国」は宗教施設=聖域なのであるが、そこに漂うのは聖性ではなく暴力性である。また、主人公・瓏はタブーを犯し、神父にも神を愚弄するような質問をぶつけている。あきら...続きを読むかに「反宗教的」な人物ではあるが、しかし不思議なことに、どこか宗教的・哲学的な匂いもしている。暴力で宗教を描き、宗教で暴力を描いているのである。このようなアンビヴァレンツにうんと唸らされてしまった。また、巻末の対談も非常に興味深い。本文は人を選ぶ内容だと思うので、受けつけない場合はこちらだけでも読むことをおすすめする。なお、収録作では表題作がもっとも面白かった。

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Posted by ブクログ 2012年06月12日

祈りの反復(同じ言葉を同じリズムで唱える)ことと、性行為の反復はイコールではないか。それは自我なき反復、快楽の本質であり至上ではないか。

果敢な真理探究の姿勢と、思わず唸ってしまうような力強い文章。
清濁を“ぶちこんだ”ような、「混沌」とした物語を読み終えた後、しばし放心状態でした。

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Posted by ブクログ 2011年11月27日

人前でこういう本を読んでいると公言すると、確実にドン引きされる「王国記」の第一巻です。これは正直言って万人受けはしません。

これをはじめて読んだのが高校時代でした。先日、このシリーズで最新刊の『風の條』が手に入ったので跡でこれは紹介するとして最初にこの本を紹介したのですが、人を殺し、育った修道院...続きを読む兼教護院に舞い戻った青年・朧が農作業に従事する傍ら修道女を犯し、暴力の衝動に身を任せ、冒涜の限りを尽くすというあまりの内容なのであんまり人には正直勧められるものではありません。

実はこれは映画化されていて、俳優の大森南朋の兄が監督しているそうですが、原作の描写がほぼ忠実に映像化されていますので、あんまりお勧めでいるものではありません。人によっては不快感を催すものばかりでしょう。特にあらゆる汚濁にまみれてこのシリーズが構成されているというのは有名な話なので、ここでは詳細を省きますがまぁ、よくこれが映像化できたものだといまだに不思議に思います。もしご覧になる場合は自己責任でお願いします。

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Posted by ブクログ 2009年10月04日

花村萬月の書く文章は生きている、と思う。
黒いだけの文字から浮かび上がる鮮やかな色。
ハッキリと想像できるその色たち。
それは想像というよりも、
リアルで目の当たりにしているような感覚だ。
彼の描く色彩のブルースは、
男性的で荒廃的で、ときに美しくも悲しい。
宗教やホモセクシャルがテーマになってはい...続きを読むるが、
腐敗臭漂うその表現が、耽美であるとさえ感じる。

「匂いは神様が与えてくださった最高の快楽なんだよ」
という行(くだり)に、大きく頷いた私である。

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Posted by ブクログ 2009年10月04日

宗教ってどうなんよ!って内容の小説。おもろい。ナマナマしい。
これキッカケに洋書読んでみようかしら。

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Posted by ブクログ 2009年10月04日

芥川賞受賞作。
いまのところ近年の芥川賞作品では自分の中でトップにある作品。
暴力と背徳を正面から描いている。
読むのにも痛みを伴います。
暴力を唯一の真理として行動する主人公が、
自信の尊敬する年老いた神父と懺悔室で対決するシーンは鳥肌もの。

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Posted by ブクログ 2009年10月04日

初めて読んだ花村さんの作品。
キリスト教の修道院で働いている主人公と周りの人間の関わりから生まれる神への疑問。
主人公の言動が好きです。

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Posted by ブクログ 2009年10月04日

文句なしのハイレベルクラス、といった感じでした。主人公の設定とサブキャラの噛みあい方が非常に面白いところまで書かれています。
何よりすごいのはこの想像力と思想ですね。自分の世界の創世と一口にいってしまえばそれまでですが、ここまで自分の思っていることを展開できている小説を見たのは初めてです。文体も相当...続きを読む洗練されていてとても読みやすかったです。

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Posted by ブクログ 2009年10月04日

久しぶりに興味深いなあ、と思える小説でした。

ひとつは、扱っているテーマ。要するに、宗教とは何か、神とは何かというテーマに取り組もうという姿勢が、とても勇敢。その試みが成功しているかどうかは、読み手によって評価が非常に別れるだろうけど、僕は宗教に関して専門家ではないのでその点の判断はとりあえず置い...続きを読むておくとして、現在の日本文学でこういうことを、エンターテイメントと両立させつつやろうとしているその姿勢に好感を持ってしまったのだ。

作品世界は、どうも花村自身の個人的なキリスト教体験が基になっているようで、その意味で非常に問題提起もわかりやすい。神を否定して自ら秩序をうち立てようとする(=「超人」たろうとする)主人公「朧」が果してどのような結末を迎えるのか、そしてそのときおそらく示されるであろう王国を俯瞰する思想が何なのか、今から楽しみだ。(この作品じたいは『王国記』と題された長編の1部である)

ただ疑問ももちろんいくつかある。それはひとつはキリスト教を通じて超越者に迫る、という手法の有効性の問題。西洋社会のようなユニバーサリズムを持たない日本人にとっての超越者は、キリスト教における神とは微妙にズレていると思う。タブーの問題ひとつとっても、たとえば仏教では妻帯が可能だったりとかするし。その中で、日本文学においてあえてキリスト教を通じて超越者のあり方に迫る、という手法がなぜ選び取られたのか、そこに作者の個人的体験以外のなにがあるのか、という疑問は『王国記?』を読んだ現時点で、依然としてある。

換言すれば、キリスト教におけるタブーを「タブー」=普遍的に犯せないもの、として最初から固定化し、その上で反「タブー」として、「タブー」を犯すさまざまな登場人物を生み出していくことは、問題を単純な二元論に換言したきわめて恣意的といわれる恐れがある、ということだ。タブーのあり方は宗教によって異なるわけで、キリスト教的タブーを犯す人間を、究極的に非道徳的な存在としていくら強調しても、そもそもの「タブー」の設定に距離を感じてしまう=非キリスト教徒の僕としては、どこか冷めた目でこの野心的な作品を眺めざるを得ないのである。

だからこそ、先に述べたように「あえてキリスト教を通じて超越者のあり方に迫る、という手法がなぜ選び取られたのか」ということが、この長編を通じてどう応えられていくのかが、非常に興味深いのだ。まずは、全編通して読むことを楽しみにしたい。

それから、もうひとつは、未来の罪を犯す、という下りについて。このことについてこれまでの宗教研究者が思いを致していないとは到底思えないので、これまでの研究がどのような視点を持っているか興味深いのだけど不勉強にしてそういう方面の知識は全くない。そんなわけで、無知を承知で言うのだけど。

そもそも、キリスト教においては確かアウグスティヌスがそんなことを言っていた気もするのだけど、「すること」と「思うこと」は分けられるのではないか、ということがある。つまり朧が未来の罪として免罪符が与えられた、とした問題は、実は「思うこと」に対して許されたに過ぎず、「すること」に対して許しが与えられたわけではないのでは?という疑問を持ってしまうのだ。非常に宗教に対して厳格だったモスカ神父がそういう考え方を知らなかった、というのもどうにも不自然な気がしてしまうのだ。

とはいえ、曖昧な知識で書いているので、まあこれは意味のない指摘かもしれない。

まあそんなわけで、色々考える問題提起を与えてくれる小説、しかもそれがわかりやすいということで、とても興味深い小説でした。あと、文体も、鼻につくスノッブ臭味全開といった感じですが、なにより僕自身スノッブに憧れているところがあるので、平気です。こういう文章、書けるようになるのが大変だと思うし。

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Posted by ブクログ 2009年10月04日

どろどろでぐちゃぐちゃでえろだけど、1本芯が通っている感じですごく好きです。読んでてどきどきする。朧の瞳を見てみたい。

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Posted by ブクログ 2015年08月05日

花村萬月で芥川賞ときたら、鬱々としたバイオレンスというイメージだけど、そのとおり。本作は「ハードボイルド純文学」という感じ。

のっけから、暴力とリビドー、その下地が、それらを相容れないような宗教的に外界から切り離された世界。宗教の純潔さと現実の醜さ、性衝動と死体と汚物にまみれた、もう芥川賞選考員が...続きを読む大好きなテーマでしょ?

文章の方は知識や薀蓄、絶妙な固有名詞を独特のリズム感で綴っていく。しかし乱暴なわけではなく、言葉選びもかなり丁寧にされていると感じた。決して奇をてらった文章ではない。

圧倒的な言葉の前に、読むしか無いという状況になるのは、昨今の芥川賞受賞作よりも優れているのではないかと思う。口に石を噛ませてから殴る蹴る、溶けていく豚の死体、痰を入れたレーションをすすらせるなど、最初から最後まで、もう目を背けたくなるような文章ばかりだが、それを踏まえても、続きを読ませてしまう文章力は素晴らしい。

背徳版の「車輪の下」であろう。

なお、文庫版にあたって、フランシス・ベーコンの表紙を変えてしまったのはなぜだろう?ベーコンの絵のイメージと合致した内容と言えたのに。

とはいえ、続けてこのシリーズを読む体力はございません。あと、まったく子供向けじゃないのであしからず。

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Posted by ブクログ 2013年03月16日

読書会の課題図書でなかったら多分僕はこの作家を読むことはなかっただろう。
残酷性があるので抵抗があったが、読み進めていくうちに、主人公のことが好きになっていった。
性に関しては愛らしくすら思える。
残虐性と純愛さは実は近い場所にいるのかもしれない。

神、宗教、支配する者とされる者、偏愛と残虐。
...続きを読む制され、コントロールされた暴力。
言葉の奴隷、つまり神の奴隷。

花村萬月という人は、キリスト教を特に勉強もしていないようだし、聖書もドストエフスキーもトルストイも読んでいないらしい。つまり「自分の経験」+「自分の地力」みたいなものだけで作品を作っている。それは逆にすごいとも思えるし、そうでないとも思える。

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Posted by ブクログ 2012年11月26日

花村萬月の作品。ひさしぶりだわ~。
あれは10年くらい前だっけ?
『ぢん ぢん ぢん』読んだのは。
すっごい分厚い本だったけど、読み応えのあった本だったな~。

これは短編小説みたいな感じのする本でした。

うーん、かなり刺激のある斬新なストーリーでした。
読んでて気持ち悪くなった箇所が多々。。。あ...続きを読むった。
うーん、読み終わった後、かなり考え込んじゃうよね~。
なんだか修道院なのに、外の話をしてるような
でも、それが神に許されちゃう。。。そんな矛盾を朧が証明してくれてるんだけど
こういうのってあり~???
でも、実際修道院で育った作者曰く、「あり」だそうですよ~。
んん、なんて言っていいか。。。。

ただね、私としてはここまで書かれてかなりグロテスクな内容なんだけど
芥川賞受賞出来るんだ~、って思った。。。。

私小説の王道ですね~。

まぁ、後記に載ってる対談「神を信じるか?」っていうのはね、
私としては、信じる者だけ信じればいいし、
信じたいときだけ信じればいいんじゃない?って思うのよね。
その人の思想の自由だから
とやかく言って答えを見つけるって方が間違ってるのよ。

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Posted by ブクログ 2010年09月23日

キリスト教とは何か?信仰とは何か?
信仰から最も遠いと思われる主人公が、最も神を信仰しているという矛盾を感じる。そこが面白い。

7巻まで刊行。第一部は9巻までの予定。

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Posted by ブクログ 2013年11月04日

 第119回芥川賞受賞。
 とっても衝撃的な内容だ。こうゆうのは妄想すれども、常識ではありえないと思いたい。または思っていたい。なぜなら神聖であるべきキリスト教会での世俗にまみれた行にはけっして気分が晴れやかになるものではない。弱者に向けられる過激な暴力描写なども然り。闇が深い。

 この小説は読ん...続きを読むで気分が晴れやかにならないが評価は高い。なぜなのだろう、たぶん自分とはかけ離れた世界のお話なのだと、安全な場所から映画を観るような気分で居られるからなのだ。

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Posted by ブクログ 2009年12月16日

書き出しでぐっと引き込まれ、あまりに痛々しい展開とその描写の数々に目を覆いたくなるも、目が離せず読破。冒頭の第一文にはなにか不思議な魔法が掛けられているのかもしれません。

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Posted by ブクログ 2009年10月04日

強烈な印象を与える本だった。
これでもかといわんばかりの血なまぐさい描写とはかけ離れた冷静な主人公の心が対照的で、怖さが増幅させられた。
この作品の舞台は確か修道院だったよね・・・。
扱いの難しそうな内容なのに普通に最後まで読めてしまった。
花村萬月恐るべし!!

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