【感想・ネタバレ】午後の磔刑 王国記 VIのレビュー

あらすじ

修道院を離れ、赤羽たちが共同生活をおくる「悠久寮」に身を寄せる教子。数々の奇蹟によって集団を虜にする朧の息子・太郎は、五歳とは思えぬ言辞で教子を翻弄、やがて彼女は太郎に「神」を直観するに至る。ミュージシャンになったジャンと新たな一歩を踏み出した教子は――。
危うい予兆に満ちた「王国記」シリーズ第六弾。

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花村萬月の名前を聞くと、サラダ油のシーン(!)で印象深い映画化タイトル「皆月」を思い浮かべる人も多いかもしれない。過激な性と暴力描写を得意とする作家だが、その根底にあるのは神への猜疑と冒涜である。
著者の「王国記シリーズ」の第一章目にあたる本作『ゲルマニウムの夜』の主人公・朧は、頭脳明晰だが人を殺し、育った修道院に舞い戻る。彼は人を殺し、純潔の修道女を犯しても、何の罰も下さない神を見限り、宗教者のなれのはて――王国の建立を決意する。
表題作の他に「王国の犬」、「舞踏会の夜」が収録されている。いずれも朧が修道院で神を疑い、信心深い神父とアスピラントを試し、自我に目覚めるまでの小編だ。修道院という本来神聖であるはずの場所で行われている暴力、虐待、同性愛の生々しく残酷な描写は圧巻。なお、2005年に大森立嗣監督・新井浩文主演で映画化もされている。

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