感情タグBEST3
Posted by ブクログ 2015年12月21日
こんな過激な沖縄本がかつてあっただろうか。沖縄をこころから愛する芥川賞作家による沖縄紀行である。グルメもあれば、観光地もでてくる。けれど、そんなものはこの本をなるべく無難のものにしようとする筆者の隠れ蓑である。
彼は沖縄は普通の場所で、普通の人が住んでいることを強調する。そして、沖縄人はみんないい人...続きを読むだとか、沖縄には差別がないとか、沖縄をユートピア視するヤマト人を差別主義者だと糾弾する。
彼の主張は最後の「ヤマトをぶち殺せ!」という言葉に集約されている。沖縄人はヤマトによって「いい人」にされている。飼いならされている。民主主義で基地問題は解決しない。ヤマトを憎み、怒りを持続させよ。言葉ではなく情念でヤマトに本音をぶつけろ!
登場するのは、アメラジアン、売春婦、ホームレス…。抑圧され差別されている弱者への強い連携と共感をベースに、ヤマトや沖縄のインテリを糾弾している。
沖縄への見方が一変する、刺激的な本だ。
Posted by ブクログ 2015年06月04日
「良心的」とされる大和の人びとが沖縄に見いだそうとする幻想を解体し、著者が体当たりで沖縄の実態に迫っていった記録ともいうべき本です。
「沖縄を撃つ!」と題された本書で、著者は沖縄に暮らす人びとへの批判的な言葉も率直に語ります。しかしそれは、これもまた大和の人びとの一部によく見られる、沖縄の地域エゴ...続きを読むイズムに対する紋切り型の批判とははっきり異なっています。沖縄の人びとが目を背けてしまいがちな不都合な真実を、著者がみずからの舌と下半身に刻み付けていった実体験が記されています。
少し過剰に露悪的な振舞いをしているように感じてしまったのも事実ですが、ここまで降りてしまえば人間は皆同じだとでもいうような著者の率直なスタンスには敬意を表したいと思います。むろん、これは沖縄に固有の問題ではないので、著者の人間観に対する共感ということになるのですが。