花村萬月のレビュー一覧
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読書会の課題図書でなかったら多分僕はこの作家を読むことはなかっただろう。
残酷性があるので抵抗があったが、読み進めていくうちに、主人公のことが好きになっていった。
性に関しては愛らしくすら思える。
残虐性と純愛さは実は近い場所にいるのかもしれない。
神、宗教、支配する者とされる者、偏愛と残虐。
抑制され、コントロールされた暴力。
言葉の奴隷、つまり神の奴隷。
花村萬月という人は、キリスト教を特に勉強もしていないようだし、聖書もドストエフスキーもトルストイも読んでいないらしい。つまり「自分の経験」+「自分の地力」みたいなものだけで作品を作っている。それは逆にすごいとも思えるし、そうでないとも思える。 -
Posted by ブクログ
花村萬月の作品。ひさしぶりだわ~。
あれは10年くらい前だっけ?
『ぢん ぢん ぢん』読んだのは。
すっごい分厚い本だったけど、読み応えのあった本だったな~。
これは短編小説みたいな感じのする本でした。
うーん、かなり刺激のある斬新なストーリーでした。
読んでて気持ち悪くなった箇所が多々。。。あった。
うーん、読み終わった後、かなり考え込んじゃうよね~。
なんだか修道院なのに、外の話をしてるような
でも、それが神に許されちゃう。。。そんな矛盾を朧が証明してくれてるんだけど
こういうのってあり~???
でも、実際修道院で育った作者曰く、「あり」だそうですよ~。
んん、なんて言っていいか。。。。
ただね、私としてはここまで書かれてかなりグロテスクな内容なんだけど
芥川賞受賞出来るんだ~、って思った。。。。
私小説の王道ですね~。
まぁ、後記に載ってる対談「神を信じるか?」っていうのはね、
私としては、信じる者だけ信じればいいし、
信じたいときだけ信じればいいんじゃない?って思うのよね。
その人の思想の自由だから
とやかく言って答えを見つけるって方が間違ってるのよ。 -
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花村萬月の本は、暴走している。アウトサイダーの視点で、社会を破壊するような迫力がある。
この皆月は、物語として妙な雰囲気が漂っている。この主人公の諏訪徳雄は橋の建築設計士で、コンピュータ・オタクである。いわゆる真っ当なかたぎの人だ。その妻沙夜子は妙に影が薄い。沙夜子がコツコツ貯めた1千万円の貯金とともに蒸発してしまった。
主婦がつまらなくなったのか。お金に目がくらんだのか。よくわからないが離れていく。
理由がわからないというのは、作者自身が意図したものだろう。しかし、なぜ追いかけねばならないのだろう。
花村萬月は、セックスの場面の描写がうまいのである。官能小説の描写ではなく文学的なのだ。
しがない 中年の目線からのセックス。妻にうらぎられてソープの女に恋をする。純情なのだ。白い下着に欲情をおぼえて、自分で戸惑う。ニンゲンっておろかな生き物であることを自覚しても、どうしようもなくおろかなのである。人が好きになるということは、かくもおろかなことだと丁寧に説明するのにはなんともいえない。言い訳がましく、正当な生き方だと思い込もうとする。
沙夜子の弟アキラはヤクザである。花村萬月の物語には、欠かせないキャラクターなのだろう。作者自身の投影がアキラなのかもしれない。そしてアキラを丹念に描く。
アキラという青年のはにかみ、はじらい、なさけなさ、凶暴さ。いまどきこういう青年がいるかと思うほどの直情さ。直情があふれかえっている。問題を暴力的なチカラで解決しようとするところが、満月的なルールとして素敵としている。青年は暴力的でなければならないのだ。
花村萬月の描き出す破天荒な世界が、文字できちんと構成されていることにたぐい稀な才能を感じる。萬月の言葉の豊饒さを堪能しつつ、自分がましな生き方をしているなぁという安心感を与えてくれる。 -
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ネタバレ随分、久し振りの更新--;
ある方から、
仮にもモノカキを目指す者であれば読んでおいてきっと損はない、
との勧めを受けて一気読みした。
端的なあらすじとしては、才能のある作家未満の物書き志望者が、編集者とねんごろになった末に、めでたく作家としてデビューするまでを、その女性編集者の視点から描いた、虚実併せ持った物語である。
実際今月末に応募〆切を迎える「群像新人文学賞」の選考過程、新人賞の舞台裏、出版業界の空気、編集者の仕事ぶりや思い、作家の生態、プロとアマチュアを隔てるものの正体、表現という行為及び才能についての考察等々、少々耳の痛い話も含め、示唆に富む内容が目白押し。
これまでに散々、出版業界や創作に関するあれこれは読んできているので、断片的に知っていることは多かったが、編集者の仕事を通してそれらが線になってすっきりしたような気がする。
もちろんあくまでフィクションであるし、著者の理想・希望的な部分もあるようにも思うので、鵜呑みにすることはできないが。
また、性描写が少々過剰な気もするが、嫌悪を抱くほどではないし、作品の主題に寄与こそすれ、いささかもこれを損なうものではない。
さて、語れるほど著者の作品郡をあれこれ読んでいるわけではないが、
これまで読んだ数冊に共通して抱く思いとして最も強いのは、
艶のある文章だな、
ということだ。
世界観は好みではない。
露悪趣味的だったり、人の汚い部分をあえて選んで描いてるのだろうと思う記述は、生理的に進んで読みたいと思うテーマではないことが多い。
それに、登場人物の気持ちの変化が落ち着かなくて、お尻の座りが悪い。
繊細と思えば大胆で粗雑、奔放と思えば小心、自虐的と思えば不遜。
なかなか正体がつかめないことに加え、時代錯誤的なヒロイズムが鼻につくことがあったりで、共感し感情移入することはほとんどない。
だが、どうしても途中で投げ出すことはできない。
なぜといえば、間違いなく「幸福な読書体験」を提供してくれるからだ。
嫌悪を抱きながらも、鮮やかに目の前に人物や風景が浮かびあがり、その背後には光さえ感じることができ、鼓膜には文中の会話や自然の息吹が踊り込み激しく跳びはね、生き生きとした汚物は鋭く鼻の粘膜を刺激し、風がほほに触れたかと思うと、口に甘かったり苦かったり酸っぱかったりする。まさに登場人物らの思考と知覚を追体験しているのだ。そしてそうした体験を通し、自分の生をあるいは性を実感することが出来る。
凡百の作家の作品にはないこの心地良さこそが、著者の言う「センス」「才能」のたまものであることに間違いはなく、文句なしに著者を、現代文学を代表する作家の一人たらしめている理由となるのだろう。 -
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『だが、納得したい。できうることなら、心の底からあきらめたい…だから…』
『高価な物など求めてはいなかったと思う。欲しいのは気持ちだ。それが夫婦というものではないか。』
『セックスは、終わる。私が射精をすることによって完結してしまう。しかし、こうしてふたりで支えあって歩いているぶんには、当分持続するだろう。』
『私を必要としている人間がいる。これほどの幸福が他にあるだろうか。』
『法律とかは関係ないの。なにをやろうとあたしの勝手よ。基本的にそう思ってるもん。』
『人間の性は、性欲を発散するためでもなく、子孫を残すためのものでもない。性の根元にあるのは、孤独だ。この世界にたった独りでいることに対する不安だ。だから、他人を求めるのだ。』
『世の中の馬鹿な人をいちいち相手にしていたら、何もできなくなっちゃうよ。』
『かまわない。生きている。問題ない。さあ、行こう』
『 ー わたしも、あなたも、アキラも、あのころわたしのまわりにいた人間は、みんなお月様だった。自分では光ることができず、他人の光を反射するのがやっと』
『あなたは嘘さえつかずに、ひたすら誠実な月だった。いつもおなじ面だけをわたしに向け続けた。あなたは自分の裏側、月の裏側を決してわたしに見せようとはしなかった。』 -
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作者の花村さんはすこしやんちゃすぎるバイク乗りなので、おばさんライダーの私にはあまり参考にはならなかったが、バイクで旅をするのは、いろいろなしがらみから離れ、自由になれるというところには共感できた。
時刻表や宿泊地に縛られることなく、道があれば進み、興味があれば立ち止まり、夜になれば野宿する。
そこには新しい自分の発見や出会いがあり、また、一生忘れられない景色を見ることができる。
雨で体が半分地面にのめり込んだまま眠り続けるなんてことは私には到底できないしやりたくもないのだが、人間はどんな環境にでも慣れることができるそうである。
これからの人生で、もう駄目だ、というような状況に会ったときに、この言葉を思い出すだろうなと思った。 -
Posted by ブクログ
『ベッシー・スミス。自動車事故だ。血がどんどん流れてるけど、医者は誰も彼女を診ようとしなかった ー 色が黒いからさ。ベッシーは、出血多量で死んだんだ。格好いいことを言わせてもらえば、ベッシーの血の色は、何色だったんだろうな?』
『感じるってさ、いいことか、わるいことかわからないね』
『体は立ち直ってるんだ。いいかげん、心もな』
『そォ。おまえ、最近、香水つけすぎじゃない?』
『欲求不満なのよ』
『やらせもしねえくせして、そんなセリフを吐くなよ』
『文句を言いたいなら、ヨシタケくんに直接言いなよ。あたしからヨシタケくんに伝わることを期待してるんじゃ迷惑だよ』
『どォ? 京都は』
『ひかりもこだまも停まるから、えらい』
『気持ちいいだけ、なんて嘘。いつだって痛みがいっしょで、だからあたしたちは一緒にいるんだ。』