花村萬月のレビュー一覧
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花村萬月の本は、暴走している。アウトサイダーの視点で、社会を破壊するような迫力がある。
この皆月は、物語として妙な雰囲気が漂っている。この主人公の諏訪徳雄は橋の建築設計士で、コンピュータ・オタクである。いわゆる真っ当なかたぎの人だ。その妻沙夜子は妙に影が薄い。沙夜子がコツコツ貯めた1千万円の貯金とともに蒸発してしまった。
主婦がつまらなくなったのか。お金に目がくらんだのか。よくわからないが離れていく。
理由がわからないというのは、作者自身が意図したものだろう。しかし、なぜ追いかけねばならないのだろう。
花村萬月は、セックスの場面の描写がうまいのである。官能小説の描写ではなく文学的なのだ。
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ネタバレ随分、久し振りの更新--;
ある方から、
仮にもモノカキを目指す者であれば読んでおいてきっと損はない、
との勧めを受けて一気読みした。
端的なあらすじとしては、才能のある作家未満の物書き志望者が、編集者とねんごろになった末に、めでたく作家としてデビューするまでを、その女性編集者の視点から描いた、虚実併せ持った物語である。
実際今月末に応募〆切を迎える「群像新人文学賞」の選考過程、新人賞の舞台裏、出版業界の空気、編集者の仕事ぶりや思い、作家の生態、プロとアマチュアを隔てるものの正体、表現という行為及び才能についての考察等々、少々耳の痛い話も含め、示唆に富む内容が目白押し。
これまでに散々 -
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『だが、納得したい。できうることなら、心の底からあきらめたい…だから…』
『高価な物など求めてはいなかったと思う。欲しいのは気持ちだ。それが夫婦というものではないか。』
『セックスは、終わる。私が射精をすることによって完結してしまう。しかし、こうしてふたりで支えあって歩いているぶんには、当分持続するだろう。』
『私を必要としている人間がいる。これほどの幸福が他にあるだろうか。』
『法律とかは関係ないの。なにをやろうとあたしの勝手よ。基本的にそう思ってるもん。』
『人間の性は、性欲を発散するためでもなく、子孫を残すためのものでもない。性の根元にあるのは、孤独だ。この世界にたった独りでい -
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作者の花村さんはすこしやんちゃすぎるバイク乗りなので、おばさんライダーの私にはあまり参考にはならなかったが、バイクで旅をするのは、いろいろなしがらみから離れ、自由になれるというところには共感できた。
時刻表や宿泊地に縛られることなく、道があれば進み、興味があれば立ち止まり、夜になれば野宿する。
そこには新しい自分の発見や出会いがあり、また、一生忘れられない景色を見ることができる。
雨で体が半分地面にのめり込んだまま眠り続けるなんてことは私には到底できないしやりたくもないのだが、人間はどんな環境にでも慣れることができるそうである。
これからの人生で、もう駄目だ、というような状況に会ったときに、こ -
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『ベッシー・スミス。自動車事故だ。血がどんどん流れてるけど、医者は誰も彼女を診ようとしなかった ー 色が黒いからさ。ベッシーは、出血多量で死んだんだ。格好いいことを言わせてもらえば、ベッシーの血の色は、何色だったんだろうな?』
『感じるってさ、いいことか、わるいことかわからないね』
『体は立ち直ってるんだ。いいかげん、心もな』
『そォ。おまえ、最近、香水つけすぎじゃない?』
『欲求不満なのよ』
『やらせもしねえくせして、そんなセリフを吐くなよ』
『文句を言いたいなら、ヨシタケくんに直接言いなよ。あたしからヨシタケくんに伝わることを期待してるんじゃ迷惑だよ』
『どォ? 京都は』
『ひか -
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「文芸出版界の内実を曝す問題作」と帯のコピーにあり、興味を惹かれ、購入して即読んだ。
「群像」編集部の女性編集者を主人公に、作家志望の男達や作者花村萬月自身が登場し、文芸誌の新人賞の裏事情などが語られる。その点は興味深かったが、実際に作品を貫くモチーフのほとんどは「セックス」「ドラッグ」「暴力」で、女の読者であるわたしには耐え難いものがあった。
だが、それだけ嫌悪感を感じさせながらも、この小説は途中で読むのをやめさせない力がある。
文中、花村萬月が、「感性的に嫌悪を抱いても、なおかつ惹きよせられてしまうもの」、その「センス」を持つものが小説であり小説家であると語る。確かにこの作品にはその「セン