西條奈加のレビュー一覧
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ほんの無心な過ちから、小鬼は心優しい女の子を死なせてしまった。彼女の砕け散った魂を再び繋ぎ合わせるため、小鬼はなんと1000年にも及ぶ長い放浪の旅に出る!
人間界を渡り歩き、執着や後悔に囚われた人々の心のしこりを解きほぐしながら、人を闇に落としてしまう「鬼芽(おにめ)」を集めていくんだ。これはただのファンタジーじゃない、間違いなく「超強力な涙腺崩壊系小説」!
彼と一緒に人々の悲喜こもごもを見届けていくと、それぞれの痛みの裏には涙なしでは語れない深い理由があることに気づくはず。読み終わった後は絶対に目が真っ赤になるけど、心はとっても温かくなる。 -
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一穂ミチさん目当てで読み始めた一冊。
序盤は、読んでいる間はそれなりに気分が高揚して、まさにタイトル通り「ほろよい気分」にはさせてくれる。だけど、いざ読み終わってみると、あとに残る余韻があまりにもサラリとしすぎていて、どこか物足りなさが残る読後感だった。
お目当ての一穂ミチさんの一編を読み終えたときは、思わず「やったね!」と心の中で思った。やっぱりこの作家の描くものは毒薬だ!「ほろよい」どころか悪酔いしそうな、人間の不穏な心理描写は健在で、この強烈な一杯は楽しめた。
他にも、下戸だと言い出せない青年の葛藤を描いた一編には、男だからこそ「飲めない」と言えないリアルな空気感を感じて、身につまされるところもあり、そこまでは良かったのだが……。
後半に進むにつれて、お酒そのものの捉え方に大きな疑問と物足りなさが募った。
感情を吐き出すためだけでなく、嬉しいとき、お祝いのとき、純粋にその味を楽しむときなど、お酒にはもっとポジティブなパワーがあるはず。本作はお酒自体を好むというより「料理」や「その場の人間関係」を際立たせるための引き立て役として扱われている印象が強すぎる。
女性作家陣によるアンソロジーということもあってか、お酒そのもののこだわりや深い味わいをじっくり描くよりは、シチュエーションや食とのペアリングに全振りの世界観。お酒そのものが主役の描写を期待していた身としては、少しがっかりさせられた。
一穂ミチさんの“毒”は味わえたものの、お酒好きとしては深みや余韻がもう少し欲しかったな、と感じてしまう一冊だった。 -
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ネタバレおもしろかったです。
物語は全6話で構成された、連作短編です。
社会の底辺の貧しい環境にあっても、
主人公たちが小さな希望や幸せを願って、寄り添いながら生きていく姿が胸に……。
各短編に登場する人物たちが交錯し、最後には
長屋全体の連帯感へと収束していきます。
川のよどみに囚われていた人々が未来へ向けて動き出すのです。
孤独の「点」が、お互いを救う「線」になって行きます。
「澱み」から「流れ」へ
流れないドブ川(心淋し川)のほとりから、それぞれの人生の「流れ」を取り戻すラストへと進みます。
人は他者と関わることで、過去の傷を乗り越え、
生き直せることを……。
作品の完成度もかなり高いです。
第一話でグッと読み心をつかんで、
最終話で、ちゃんと最大に盛り上がるように
作ってあります。
「川」と「長屋」の使い方も、なるほどナルホド。
ただそこにあって、何もなさないのですが。
この川と長屋が、この物語にはなくてはならない
エレメントです。
流れないドブ川という舞台設定そのものが、
登場人物たちの「行き詰まった人生」の
完璧な暗喩(メタファー)になっています。
視覚だけでなく、川の臭い、じめじめした空気感なども感じられました。
秀作です。 -
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大好きな南星屋シリーズの最新作を文庫で。久しぶりに読む。江戸は麹町にある和菓子屋の話で、短編が詰まった人情物。国中を旅して地方の菓子のレシピを書き留めて歩いていた主が、江戸に腰を落ち着け、出戻りの娘と孫娘と3人で人気の菓子店を営んでいる。
前作で雲平という中年の菓子職人を新たに店の仲間に加えて迎えた3作目。冒頭に登場する旅好き菓子好きの中間が、なにやら事件に巻き込まれて行方不明になるところから始まる。
その謎が物語を貫く縦のモチーフではあるが、後続の話はしばしこの事件から離れた日常に起こる事件や騒動とそれを粋に解決する南星屋のエピソードになる。毎度登場する菓子がなんともおいしそうで、人情話もほどよくあたたか。
和尚の若き日の修行時代をささえた少女と菓子のエピソード、近所の菓子屋の兄弟の後継ぎ問題を解決する菓子、娘の元旦那の新しい縁を彩る菓子、様々だ。表紙や扉絵の菓子のイラストにも目が釘付けだ。
やがて最終話には件の中間の話に戻り、もちろん大団円である。とても好きなバランス感のシリーズである。大好きなのに出版間隔が長いシリーズで残念…と思いきや、文庫のあとがきには、まさにいま文芸雑誌でシリーズの新しい話を連載中とのこと。そのうち新作が出版されるかもしれない。楽しみだ。