西條奈加のレビュー一覧

  • バタン島漂流記

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    ついつい手に取ってしまう西條奈加さん。今回は、今まで読んできたものとはやや趣きが異なる「漂流記」。実話に基づいていることを読後に知った。
    「万に一つ」の生還につながる「理由」に納得感があり、特に、多様なメンバーをとりまとめ一つの方向に進めていく知恵には、目を見開かされた。究極の状況だからこそ、何がほころびとなり、何がよすがとなるのか、鮮明に見えてくるのだろう。
    残酷なルールや振る舞いも、貧しく厳しい島の暮らしを成り立たせる視点では必須。そこに「未来への希望」が加わることで、変化が生まれていく。生還後の後日譚にはもの悲しさも漂うが、物語は清々しい笑顔で終わっていた。
    逞しく生き抜いていきたい。

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    2025年05月26日
  • うさぎ玉ほろほろ

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    南星屋シリーズを読み繋いできて本作を手に取りました。登場人物は皆愛すべきキャラクター。それぞれの心情描写が実に味わい深い。雲平の心の揺らぎを「水底をよぎる魚の影のように通り過ぎた」と表現したり、お永の決心が固いことを「古酒が新酒に戻ることは決してない」と表現したり…。思わず本から目を離して、言葉の一つ一つをじっくりと味わうのでした。さて、次は善人長屋シリーズの最新作を読むのが楽しみです。

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    2025年05月24日
  • アンソロジー 料理をつくる人

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    ファンタジーに、恋愛に、家族に、ゾッとするお話まで、「料理をつくる人」という1つのテーマで、こんなにもいろんな雰囲気の物語ができるとは。どれも前向きな結末があるなかで、千早茜さんの「白い食卓」だけは冷たく恐ろしいようなお話だったのでどうしても印象に残った。深緑野分さんの「メインディッシュを悪魔に」もキャラクターを想像しながら楽しく読めた。

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    2025年05月22日
  • バタン島漂流記

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    史実に基づいた漂流譚。バタン島は台湾の先あたりにある島なんですね。とりあえず生きて島に流れ着いたものの、奴隷のような扱いを受けながら何とか日本へ帰る手段を考える水夫たち。挙句、労働力と見なされなくなった者には過酷な運命が待ち受ける。原始的村社会を維持するためとはいえ、苛烈である。更には、ようやっと日本に戻ったら戻ったで、また別の試練が待ち受ける。当時の日本が鎖国中であったため、やむを得ないことではあるけれど。
    内容はすごく面白かったのですが、如何せん船に関する漢字が難しかったため、スラスラと読めなかったのが残念。

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    2025年05月18日
  • アンソロジー 料理をつくる人

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    アンソロジーって、作風掴むまで疲れること多いけど、
    どれも面白かったし、
    読みやすかった。
    料理を作ってくれる人に感謝。、

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    2025年05月17日
  • 姥玉みっつ

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    長屋の三人老女が娘を世話し始めて暮らす中娘の素性を巡って騒がしくなり。

    三婆の掛け合いが面白く、人情味溢れる王道の時代小説。大立ち回りこそないが三人の活躍が炸裂する後段はスカッと気持ちのいい流れで、ラストもいかにもな爽快感でした。

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    2025年05月16日
  • 亥子ころころ

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    前作「まるまるの毬」で江戸の菓子職人の人情話に心を温められ、引き続き本作を手に取りました。
    人は人と出会うことによって、人として成長していくものなのだとあらためて実感しました。
    特に、渡り職人の雲平の登場が、南星屋の人々の心を解きほぐし、前に進む力を与えていました。そして全話を通じて、南星屋のお菓子がいいタイミングで人々の五感に優しく染み込んで、心を癒していくのでした。
    それを読んでいるこちらも言葉でお菓子を味わうことかできて、またまた心温まるのでした。
    それから、自分の地元のお菓子が登場するとやはり嬉しくなるものですね。これは、三作目も読み味わわなくては…。

    ところで、南星屋のお菓子に使わ

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    2025年05月15日
  • 心淋し川

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    ネタバレ

    『首取物語』が面白かったので、こちらも読んでみた。やはり西條奈加作品はよい……!

    解説にもあったが、これも厳しさと優しさの物語。お気に入りは「はじめましょ」。希望に満ちたラストは見ているこちらも嬉しくなる。一方で怖かったのは「冬虫夏草」。親離れできない子どもの話かと思ったら、子どもなしには生きられない母親の話だった……。なるほど冬虫夏草。そして、物語全体を通してでてくる差配がいい味出していて、最終話でその人となりがあばかれるのだが、この心町で生き直した茂十の過去がまあ壮絶で……。でも、こういう町というか共同体の距離感は羨ましくもある。淀みを抱えて生きててもいいんだーって。

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    2025年05月14日
  • 無暁(むぎょう)の鈴(りん)

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    戸田家の庶子として生まれた垂水行之助は、あまりの利発さが災いしてか、義母と義兄から疎まれる。
    行之助は我慢ができず、義母と義兄に暴力を振るったため、小菅村の西菅寺に預けられた。
    住職から久斎と云う名を与えられ、小坊主として修行して13歳を迎えていた。
    武家の出ということから兄僧から辛く当たられていたが、早朝に出掛ける水汲みの先で、村の娘のしのに会うことが唯一の楽しみだった。
    しのの父親が亡くなり、葬儀代の代わりとしてしのは住職から陵辱され、それを苦に崖から身を投げて命を絶った。
    絶望感に苛まれた久斎は寺を飛び出し、目的のない放浪者となる。
    「もう自分の人生にもう朝は来ない」と考えた久斎は、無暁

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    2025年05月12日
  • 六つの村を越えて髭をなびかせる者

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    西條奈加作品には珍しいとも思った。読み終えてい、西條奈加作品に違いない。ただただ涙出る素晴らしい話でした。ぜひご一読をお勧めします。

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    2025年05月11日
  • 姥玉みっつ

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    有難いとは、有るに難し。なぜだかこの長編の中でこの一文が頭に残る。婆様たちの勝手さに辟易しつつ、その図々しさと紙一重の思いやりにだんだん慣れてきて、お麓さんの気持ちがなんだか分かる気がした。
    いつも出てくる商人や町人とちょっと違うこどもの描かれ方だけど、やっぱり面白かった。

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    2025年05月05日
  • 千両かざり―女細工師お凜―(新潮文庫)

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    善人長屋シリーズで西條さんの作品に出会い、続いて本作を手に取りました。天保の頃の世情も絡めつつ、職人の世界に生きる娘の奮闘ぶりを応援しながら読み進めました。収まりそうなところには収まらないドキドキ感で、物語の最後まで引っ張り込まれました。

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    2025年05月04日
  • ほろよい読書 おかわり

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    お酒をテーマにした5人の作家による短編集。
    青山美智子さんの「きのこルクテル」が好き。
    美人のバーテンダーとお酒の飲めない青年の思いをつなぐノンアルコールカクテル。
    彼女の趣味であるきのこ栽培を通して二人の距離が近づいていく。
    心が穏やかになる優しい作品。

    他の4作品も読み応えがあった。

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    2025年04月25日
  • よろずを引くもの

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    ネタバレ

    人生いろいろ。どんな人物も何かを抱えて生きている。
    そうした人の心にするりと入ってしまうお蔦さんは偉大。

    今回は表題作と『孤高の猫』が心に染み入りました。

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    2025年04月24日
  • まるまるの毬

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    お君ちゃん、
    今日のお菓子は何だい?

    頬が落ちて、心も温まる口福な時代小説。
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    西條さんはずっと気になっていた著者のお一人です。
    「心淋し川」も気になっていましたが、
    テーマ的に本作の方が読みやすそうで手に取りました。

    親子三代で営む菓子屋「南星屋」。
    お値段はお手頃で庶民味方だけど、味は天下一品。
    みんなから愛される菓子屋です。

    その南星屋を舞台に起こる様々な出来事。
    短編になっていて、それぞれ

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    2025年04月22日
  • 隠居すごろく

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    最初は面白いのか?と思いながら読んだが、ページが進むにつれ話の展開に引き込まれた。
    幼い孫が隠居の祖父を引っ掻き回し、厳しいだけの人から温和な人に変えていく様子や、周りの人々とのやりとり、次々と起こる事件が面白い。
    最後の章は目頭が熱くなった。

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    2025年04月22日
  • 六つの村を越えて髭をなびかせる者

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    川越さんの「熱源」と同じくアイヌのお話。
    江戸時代の幕府も絡んで読ませてくれました。
    徳内とアイヌのみんなとの強い絆が美しく、心地よい感動を与えていただきました❗

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    2025年04月15日
  • バタン島漂流記

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    江戸から尾張に帰る船が漂流し、何とかたどり着いたバタン島で奴隷の様な生活をしながらも帰郷の夢を抱き続けるその執念に感服。

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    2025年04月14日
  • 善人長屋

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    ネタバレ

    感想書くため再読完了。やっぱりいいです。
    長屋の住人が自分を悪党と認識しながら、困っている人を助ける様、知恵や技を駆使する様に、玄人仕事のかっこよさがあって、爽快感があります。源平爺様、カッコ良すぎる。
    魅力あるキャラたちの中で、異色なのが加助さん。いい人すぎて厄介ごとを持ち込んだり、みんなの「仕事」の邪魔をしたりと、ハラハラさせてくれますが、なんか憎めないお茶目なおっさん。
    でも、彼にも後悔を伴う辛い過去があり、そこから逃れようと善行を強行してしまう歪みがあったことに、世の中ってグレーだなと感じます。

    長屋のみんなが悪党ながら、明るく気持ちのいい人たちで、「善人長屋」の二つ名通りに、厄介事

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    2025年04月14日
  • 六つの村を越えて髭をなびかせる者

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    西條奈加ていう人は、一種の「豪傑」だ。何しろ、「寛政の改革」を成し遂げた松平定信を「頭の固い、わからず屋の青二才」と断じてしまうのだから。しかし、その青二才のせいで、というか、おかげで、蝦夷地開拓が進んだというのは、歴史というのは面白い。

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    2025年04月12日