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江戸、千駄木町の一角は心(うら)町と呼ばれ、そこには「心淋し川」と呼ばれる小さく淀んだ川が流れていた。川のどん詰まりには古びた長屋が建ち並び、そこに暮らす人々もまた、人生という川の流れに行き詰まり、もがいていた。青物卸の大隅屋六兵衛が囲っている年増で不美人な妾のおりきは、六兵衛が持ち込んだ張形をながめているうち、悪戯心から小刀で仏像を彫りだし…(「閨仏」)。飯屋を営む与吾蔵は、根津権現で小さな唄声を聞く。荒れた日々を過ごしていた与吾蔵が捨ててしまった女がよく口にしていた唄だった…(「はじめましょ」)など、生きる喜びと哀しみが織りなす全六話。第164回直木賞受賞作。
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Posted by ブクログ
私は千駄木の生まれ。当時とは大きく様変わりしているとはいえ、根津権現周辺の描写が目に浮かんだ。心淋し川が淀んだ川で、そこに集まる人々も一物ある人だらけなので少し複雑な気持ちが所々湧いてくるのだが、物語に意外性もあり先へ先へと読み進められた。登場人物は皆、どこかしら陰があり深いところへ心理描写が届いていて、多少なりとも誰しもが抱える心の暗部に触れることがあると思う。後味悪い結末もあるが、そうしたことから不思議と自分の中に溜まった澱が抜けるような、清められるような不思議な体験ができた。10月に旧安田庭園にて本書のイベントがある。楽しみにしている。
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小説・文芸
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