西條奈加のレビュー一覧
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ネタバレ『首取物語』が面白かったので、こちらも読んでみた。やはり西條奈加作品はよい……!
解説にもあったが、これも厳しさと優しさの物語。お気に入りは「はじめましょ」。希望に満ちたラストは見ているこちらも嬉しくなる。一方で怖かったのは「冬虫夏草」。親離れできない子どもの話かと思ったら、子どもなしには生きられない母親の話だった……。なるほど冬虫夏草。そして、物語全体を通してでてくる差配がいい味出していて、最終話でその人となりがあばかれるのだが、この心町で生き直した茂十の過去がまあ壮絶で……。でも、こういう町というか共同体の距離感は羨ましくもある。淀みを抱えて生きててもいいんだーって。 -
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戸田家の庶子として生まれた垂水行之助は、あまりの利発さが災いしてか、義母と義兄から疎まれる。
行之助は我慢ができず、義母と義兄に暴力を振るったため、小菅村の西菅寺に預けられた。
住職から久斎と云う名を与えられ、小坊主として修行して13歳を迎えていた。
武家の出ということから兄僧から辛く当たられていたが、早朝に出掛ける水汲みの先で、村の娘のしのに会うことが唯一の楽しみだった。
しのの父親が亡くなり、葬儀代の代わりとしてしのは住職から陵辱され、それを苦に崖から身を投げて命を絶った。
絶望感に苛まれた久斎は寺を飛び出し、目的のない放浪者となる。
「もう自分の人生にもう朝は来ない」と考えた久斎は、無暁と名乗ることにする。
そんな時に同じ歳の放浪者の兵吉と出会い、二人して江戸に向かう。
二人は気が合い、運良く吉原でやくざ者として生計を立てることになる。
自分たちの今後に何となく見通しを立てることができるようになったころ、敵対する組との諍いで兵吉が命を落とす。
その意趣返しで無暁は人を殺め、八丈島へ島流しとなる。
無暁は一生を八丈島で終える覚悟を持っていたのだが、反目していた父親の力で恩赦が与えられ20数年振で江戸へ戻ることができた。
江戸に戻ってからの無暁は、世のため人の為になる僧を目指しての修行に入る。
無暁が寺から逃げ出して以来、どれ程の人たちに救われてきたのかを常に心に抱いている無暁は、何が人を口から救うことができるのかとの答えを求めての修行の過酷さが綴られている。 -
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お君ちゃん、
今日のお菓子は何だい?
頬が落ちて、心も温まる口福な時代小説。
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西條さんはずっと気になっていた著者のお一人です。
「心淋し川」も気になっていましたが、
テーマ的に本作の方が読みやすそうで手に取りました。
親子三代で営む菓子屋「南星屋」。
お値段はお手頃で庶民味方だけど、味は天下一品。
みんなから愛される菓子屋です。
その南星屋を舞台に起こる様々な出来事。
短編になっていて、それぞれにお菓子が登場します。
時代版「和菓子のアン」という作品もこんな感じなのかな?と思いながら(読んだことないので違っていたらすみません。苦笑)
各話で登場するお菓子をネットで検索して見ながら、
南星屋さんの家族愛と、
美味しそうなお菓子に癒されました。 -
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ネタバレ感想書くため再読完了。やっぱりいいです。
長屋の住人が自分を悪党と認識しながら、困っている人を助ける様、知恵や技を駆使する様に、玄人仕事のかっこよさがあって、爽快感があります。源平爺様、カッコ良すぎる。
魅力あるキャラたちの中で、異色なのが加助さん。いい人すぎて厄介ごとを持ち込んだり、みんなの「仕事」の邪魔をしたりと、ハラハラさせてくれますが、なんか憎めないお茶目なおっさん。
でも、彼にも後悔を伴う辛い過去があり、そこから逃れようと善行を強行してしまう歪みがあったことに、世の中ってグレーだなと感じます。
長屋のみんなが悪党ながら、明るく気持ちのいい人たちで、「善人長屋」の二つ名通りに、厄介事に手をだして巻き込まれながら、精一杯前向きに暮らす様に、ポジティブさが溢れ出しておりました。
安心して読める作品で、今度は続きが読みたいですね。 -
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知り合いの中学生が受けた高校入試で、この作品の一部が出題されました。
「おばちゃん、現代文は誰の作品が出ると思う?」
と尋ねられたので、過去問題集を見ながら、
「そうねぇ、この人の小説とか、読んでおく?」
と、したり顔で何人かの作家の名をあげておきました。去年の夏の話です。
けど、、
時代小説は、ノーマークでした!
Yちゃん、ごめんよぉ。。。
見事、空振りしました。
フルスイングで空振りして、勢いあまってヘルメットを飛ばした上に、もんどりうって、地面にひざまずいてしまった気持ちです。バッターボックスの土が、ユニフォームの膝を汚します。あ~ぁ、お母さんに叱られる。。。w
(こんな書き方をするのは、センバツ高校野球の影響です。)(今も、エンモユカリモナイ学校の試合を眺めながら、これを書いています。)
ずっとバッターボックスにうずくまっていてもしかたがないので(邪魔なので)、出典の小説を読んでみることにしました。
わたしの出題予想も甘かったですが、この作品も、甘い和菓子屋さんのお話です。書名は『まるまるの毬』。毬は(いが)と読みます。連作短編小説です。
このお話の舞台は、お江戸麹町にある菓子屋「南星屋(なんぼしや)」です。
半蔵門から西に向かって、ゆるい弧を描く蛇のように長く伸びている麹町。その中ほど、六丁目の裏通りにあります。
少し引用しますね。
『間口一間(いっけん)のささやかな構えの店は、屋号の珍しさより他は、とりたてて目立つところもない。この辺りは北に番町、南に外桜田と、武家屋敷ばかりが軒をつらね、自ずと武家相手の店が多い。』
五七調に似たキレの良い文体。眼前に見ているような江戸の町の描写。きっと、作者の西條奈加(さいじょう なか)さんの頭の中には、VRのように江戸の町並みがあって、そこを歩きながら小説を描いているのでしょうね。
南星屋の店主は、治兵衛(じへえ)。十歳で五百石の旗本家の身分を捨てて、上野の菓子職人に弟子入りして修行を積み、その後は渡り職人として各地の菓子を学んだ人です。
今日も、昼の鐘とともに、中から板戸が外されて南星屋が開店します。表には、多くのお客が、滅多に江戸では食べられないお目当ての菓子を待っています。
さて、
知り合いの子の高校入試問題は、2作目の「若みどり」から出題されました。
ある日、武家の嫡男 十歳の、稲川翠之介(いながわ すいのすけ)が、治兵衛を訪ねてきて「弟子にしてください!」と頼みます。
治兵衛は弟子入り許可はしませんが、次の日から翠之介は、毎日、南星屋の菓子作りを見に来るようになりました。
半月ほどした頃の夕刻、翠之介の父親 崎十郎(さきじゅうろう)が南星屋に怒鳴り込んできます。
入試問題文は、「治兵衛を前にして、崎十郎が翠之介に対して、弟子入りをやめるよう説得する場面」をもとに作られていました。
祖父の頃は羽振りが良かった稲川家は、崎十郎の代になって窮乏しています。
崎十郎は、翠之介が貧乏暮らしを嫌がって、菓子屋に弟子入りしたいのだと思っています。
ところが、翠之介は、崎十郎が毎日、愚痴ばかり言っている姿が嫌で南星屋に逃れたのでした。
二人の話を聞いていた治兵衛は、翠之介が本当は崎十郎を強く慕い心配していることを見抜き、翠之介に遠国への修業を命じて動揺させ、弟子入りを思いとどまらせます。
説得の最後に、治兵衛は翠之介対し、「己のすべきことを修めて、それでも菓子屋になりてえなら、相談に乗りやしょう。それまでは、決してここへ来てはなりやせん。」と言います。
「それまでは、決してここへ来てはなりやせん。」と述べたのは、なぜか? 八十字以内で書きなさい。
が、問題でした。みなさんも原作を読んで、解答を試みてはいかがでしょうか。
「みどり」というお菓子の作り方(砂糖を幾度もかけて縁取る)を例えに、翠之介に身を縁取ることを説く治兵衛。素敵なお話でした。読みやすい表現に、美しいリズムの名文でもあります。15歳の受験生に読んでもらうのにぴったりな文章だと思いました。
ま、この出題ならイイかな(負け惜しみ)、と心のいがを収めて、まるまるの心を取り戻したわたし(みのり)なのでした。
よぉし、来年こそは、出題予想をジャストミートするぞぉ!
と、思ってみたものの、来年はもう予想する必要はないんだった。。。
あぁ、見逃し三振の気持ち。。。
でも、Yちゃんは、合格ホームランでした!⭐︎
良かった良かった♡
カキーン!⭐︎