西條奈加のレビュー一覧
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『まるまるの毬』の続編。
今度は南星屋に、新しい風が入ってくる。江戸麹町で評判の菓子舗『南星屋』で行き倒れた男を介抱した。男の名は雲平。旅の菓子職人で、人を探しに江戸に来たという。人探しを助けると申し出た南星屋治兵衛は、折悪しく怪我をして、菓子作りもままならぬ。治兵衛への礼に仕事を手伝う雲平であるが、これが滅法腕が良くて―。
とまあこんな導入。題名のもとになった亥の子餅は、雲平の尋ね人の名にちなんでいる。今回もまたおいしそうなお菓子の表紙。どう転ぶのか分からぬ展開で、つい先を読ませる。
雲平という人物はどういう男か。彼が探す友人の亥之吉は、どうも旗本のご隠居の死に絡んでいるらしいが、これまたどういう仔細なのか。そして、治兵衛一家の中で、雲平にこころを揺らす、治兵衛の娘お永。お永は夫婦別れして、夫との間も複雑で、ただ惚れた腫れたでは済まぬ微妙な状態。そして孫のお君も、前巻で、故あって恋に破れ、ようやく元気になりかけたところ。
こう並べて見ただけで、気になるところがいっぱいである。下世話と言われれば仕方がないが、読まずにいられない。幸いなことに、雲平という新たな登場人物は、実に気持ちのいい人で、彼を知らず知らず、こちらも好きになっていく。そんな人物なのが嬉しい。
治兵衛と雲平が、丁々発止、阿吽の呼吸で、見事なお菓子を作ってゆく。その職人魂をぜひお読み頂きたい。和菓子に興味のある方ならば、きっと楽しまれよう。治兵衛の菓子作りの知恵袋である菓子帖も、ふと思い出したが、実在の名店『とらや』のホームページにある『和菓子を知る』というコンテンツを見てみると、こうであったか、ああであったかと想像でき実に楽しい。
今回も、事件は収まるべきところに収まるが、人の心のありようだけは、すぐに決着を見せない。連作小説独特の上手い惹きだが、それだけではなくて、ただのめでたしでない、心のゆらぎや、真面目に生きるゆえの葛藤がそうすぐにケリのつくものでもない。そのリアルさがいい。
きっとシリーズラストは、この作者様なら、そうひどいことにはしないでくれるだろう、という信頼が、ちらっと去来する。まだ2冊読んだだけの、未知なる作者。実績は十分な作家さんだが、なにせ見知ったばかり。それでこんな気持ちを起こさせるなんて。すごいかも。うん。すごいかも。ふふふ。次の本も早く読みたいな。
昨日読み終わっていたのに、どうも心配事は降ってくるわ体調もすぐれないわ、よろしくない。だが、私には本がある。書くことがある。いいではないか。早く読みゃ偉いってもんでなし。落ち着いて次を待つのも乙粋というものだ。 -
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ネタバレ最上徳内という人がどんな人物であったのか、この作品で初めて知ることができた。創作ではあるけれど、魅力的に描かれていた。徳内はいろいろな人との縁を得るが、善人ゆえの運がついて回ったようだ。
そして、徳内が出会うアイヌたちの、なんと魅力的なことだろう。この小説を読んで一番に感じたのは、じつはそのことだった。松前で出会うイタクニップ、アッケシで出会う少年フルウとその家族。古老のムシウカ。厚岸アイヌの惣乙名イコトイ。勇ましいツキノエ。
徳内が果てしない景色の広がる蝦夷地に足を踏み入れてまず感じたのも、自然の厳しさと、そこに暮らすアイヌたちの素晴らしさだった。彼らは家族を大切にし、礼儀を重んじ、知恵もユーモアも兼ね備え、決して野蛮な夷人などではなかった。徳内が言葉を学び、アイヌの懐に入っていくと、彼らの知恵なしに、蝦夷地で暮らすことは不可能と悟る。
徳内を連れてきた武士たちも、クナシリへゆきたい徳内をアッケシに留め置いて、アイヌ語の習得を勧めた。松前藩の通史では都合よく訳されて、アイヌの真意が伝わらないためだったからだが、徳内もアイヌ語の習得を強く望んだ。チーム大石逸平が協力して、松前藩の浅利幸兵衛や、守役の小者をうまく巻いて、連携プレー。竿持ちの徳内と武士の身分の隔てを感じさせない、ユーモラスな描写が心地よかった。
松前藩はアイヌを過酷な使役につかせる労役者、交易と言いながら略奪の対象として都合よく利用し、アイヌの文化と人権を蔑ろにしてきた。このために和人にも、幕府の武士たちにも、アイヌにも悲劇が生まれたのだ。シャクシャインの戦いが何故起きたかが、こんなにもよくわかる物語。
徳内はのちに、皮肉にも、慕う青島俊蔵を不遇の死に追いやった定信の命で、見分隊としてアイヌへの御救(おすくい)交易のための調査に蝦夷地へ向かう事になる。
その後のアイヌたちのことは語られないが、徳内はのちに何度も繰り返される悲劇を知ったらなんと思っただろうか。 -
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西條奈加の連作ミステリ作品『秋葉原先留交番ゆうれい付き』を読みました。
西條奈加の作品は、昨年7月に読んだ『はむ・はたる』以来… 時代小説じゃない作品は初めて読みますね。
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著者新境地の人情ミステリ!
電気とオタクの街――秋葉原。
その交番に勤める権田は、筋金入りのオタク警官。
対してコンビを組む長身イケメン警官・向谷は頭はからっぽだが、類い稀なコミュニケーション能力の持ち主。
ひいては美脚の「足だけの幽霊」を連れてきてしまった。
2人は「足子」さんと呼び、彼女の死の理由を探し始める。
フィギア盗難、抱きつき魔、迷子、メイド喫茶のいさかい……ご当地ならではの「謎」に凸凹警官が挑む、新境地人情ミステリ!
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2015年(平成27年)10月に刊行され、2018年(平成30年)4月に文庫化された作品… ファンタジー+コメディタッチの人情ミステリでしたね、、、
軽めの作品を読みたくて本書を選択しましたが、軽めのタッチの中に奥深いテーマが織り込んであったし、謎が解けることに伴い思わずホロッとさせられ胸を打つような展開もあり、ユーモアとシリアスのバランスが良く、しっかいと読み応えがある作品でした… 面白かったし、感動できました。
■オタクの仁義
■メイドたちのララバイ
■ラッキーゴースト
■金曜日のグリービー
■泣けない白雪姫
■解説 大矢博子
超イケメンで女性に優しい社交家だが、オツムの方がかなり残念、行く先々で女性と問題を起こしているボンクラ警官で社交性の高さがこうじて幽霊まで見える警官・向谷弦(むこうやゆづる)と、秋葉原・先留交番に勤務し、東大出身で頭は抜群に切れるが、毒舌で聡明オタク気質の警官・権田利夫… そして、向谷が勤務していた奥多摩の稲香(いねか)村駐在所から連れてきた、自分が誰にどのように殺されたのかわからず、会話さえできない、足だけが見える幽霊・渡井季穂(わたらいきほ)、、、
イケメンボンクラ警官とブサメンオタク警官、そして足だけの幽霊という奇妙なトリオは、秋葉原のディープな住人たちが巻き起こす地域に根ざした小さな事件を解決しつつ、季穂を殺害した犯人を追うことに… オタクの聖地で奇妙なトリオが犯人捜し!コミカルなのに胸を打つ物語。
ユーモア全開で素っ頓狂な物語と思いきや、ミステリ的な展開も愉しめるし、現代の家庭環境や趣味嗜好に関する問題点も扱われており、なかなかの読み応え… フィギュア誘拐事件、メイドカフェ従業員への抱き着き魔事件、行方不明の子どもの捜索等、一話ずつ物語が進むごとに愉しさに痛みや苦しみが混じりこむ展開が秀逸、、、
肯定されず否定され続ける哀しみが伝わってくる物語でした… 幽霊視点での語りや突っ込みも印象的でしたねー 良かった! ぜひ、シリーズ化してほしいなぁ。 -
Posted by ブクログ
「 まるまるの毬 」に続くシリーズ第2弾!
南星屋で味わえる日本各地のお菓子が楽しみで早々に手に取りました。
手首を負傷した治兵衛と人探しで行き倒れ南星屋でお世話になることになった雲平。
成り行きでお店を手伝うことになり、お永とお君も加わり4人で相談しながらお菓子を考える様子が微笑ましい。
そんな何気ない日常にすごく幸せを感じました。
雲平が探している失踪した弟分・亥之吉の行方とその理由。
お店の周りをうろつくお武家らしき子ども。
いったい何がどうなっているのか。
登場人物それぞれが歩む人生。
お菓子も人間模様もますます楽しみな展開!
美味しくて人情味あふれる時代小説の世界観にすっかり魅せられております。