西條奈加のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
読み始めて これはいつか読んだアンソロジーの中の一作だと気がついた。
あの時は誰の作かもあまり気にせず読んでいたけれど…
アンソロジーは宝の山ですねぇ。
この作品は武家の出でありながら菓子職人となった すでに還暦を迎えた菓子屋 南星屋の主 治兵衛が主人公。そして治兵衛には人に言えない出生の秘密があった。
今回は筋違いの恨みからヒドイことになってしまったけれど 文章にあったように 治兵衛は何ひとつ失くしてなどいない。本当に良かった。
次作を読むのが楽しみだ。「善人長屋」「狸穴屋」に続きまた一つ西條さんのシリーズものを読む楽しみが増えた。
個人的に石海が好きだ。五郎の時の彼も好きだ。
作中の銘菓をついつい検索してしまう。毎回どれか一つお取り寄せしてしまおうか… 治兵衛は渡り職人としてちゃんと全国を渡り歩いたというのに 申し訳ない!
-
Posted by ブクログ
とても良かった。
アイヌに魅せられた最上徳内の物語。
最初は、江戸時代が舞台の小説でやや堅く、読みづらい印象だったが、読んでいくうちにそれが気にならないくらい物語に引き込まれていった。
徳内の謙虚で内に情熱を秘めた人柄も、アイヌの人々の義理堅く温かい人柄もとても素敵で、幕府や藩の政治に虐げられながらも強く、真っ直ぐ生きようとする姿に胸を打たれた。
また、徳内と共にアイヌを旅してアイヌの人々と仲良くなる、そんな冒険ができてわくわくした。
アイヌへの情熱、アイヌの民との友愛や敬愛、師や仲間との絆、残酷な現実への憤り、それをどうにかしたいという優しさ、未知を探究する喜び、、とにかく心揺さぶられ色んな感情を味わえた一冊だった。
☆4.8 -
Posted by ブクログ
江戸時代 尾張家御用の植木等を積んだ弁財船が三河沖で遭難し33日間の漂流を経てフィリピンのバタン島に漂着。その後 島で船員達が自力で船を造り約2年の後故郷に戻ってきたという実話に基づいた話。漂流したのは15名。3名が島で死亡。1名が島に残り戻ったのは11名だった。
船の構造や部位、船員の役割など聞き慣れない言葉に少々戸惑ったが 船とは1人で動かせるものではなく各々が各々の仕事をする事によって初めて動くものなのだと改めて理解した。だからそれを知る事は15名の人となりを知るうえでも意味があると思う。
嵐の中 波にもまれる恐ろしさ。漂流中 気力が萎え自死を考えてしまう恐怖。漂着した島での野蛮で耐え難い掟。
辛い事の連続だがいつも少しだけ光がみえた。 特に島の暮らしでは馴染んでいくうちに言葉の壁を越えて段々に築かれていく島民との関係が良かった。
その後造った船で日本にどうにか帰国したが大団円とまではいかず 当時鎖国の状態にあった日本の事情もあり様々な制限が課せられる。 気持ちの良い終わり方ではなかったかもしれないが 私はとても納得のいく真摯な終わり方だと思った。
全体的に大変な苦労話なのだけれども終始 海の男達のおおらかさや豪胆さが気持ち良かった。
とても面白い本でした。
-
Posted by ブクログ
ネタバレ廻船問屋『飛鷹屋』の末弟・鷺之介の夢は、日々を穏やかに暮らすこと。
傍若無人でかしましい三人の姉たちに日々付き合わされるのが嫌で仕方ないのだ。
しかし、姉たちと出かけた先々で、なぜかいつも事件が…
いやぁ、面白かった!
人情ものでも、しんみりではなく、テンポよく笑わせ泣かせて、ぽかぽか気持があたたかくなる。
やりたい放題の姉たちに振り回されながら色々と気を揉む鷺之介が愛らしく、三人の姉たちもそれぞれ強い思いを持っていて、ただのわがまま放題でもないのも良い。まさに、とりどりみどり。
最後は、五人兄弟を優しく育んだ亡き母との大きな秘密が明かされ、鷺之介を大切に思う家族にほろり。
駄目押しに、ひそやかに酒を酌み交わす父と長兄のやりとりに、もう一度ほろり。 -
Posted by ブクログ
蝦夷地の研究者であったと思っていた。
最上徳内の話。
江戸時代、田沼意次が老中のころ。赤蝦夷風説考あたりは試験にも出たから知っている。ロシアの南下を危惧するのは昔も今も同じ。
江戸時代はまだ北海道にはアイヌの人々が多く暮らしていた。一応松前藩が蝦夷を管理していたが、それはもう奄美の島津家のごとく、隷属させ重労働を課していた。このやりくちは実に醜い。松前藩がひどい、和人がひどい。自然と共に精神性豊かに生きるアイヌを虐げた日本人が本当に情けない。
えどかを鎖国の時代、とは令和ではもう言わないかと。徳川が強い制限をかけ、オランダや清国を相手として貿易を独占していたというのが新しい見方かな?
日本の国土は全方向が海で実は閉ざせない土地でもある。ロシア船はひょいひょいと日本に現れていた。田沼意次が舵を取る幕府では、その備えに蝦夷の開発を企図し、まずは蝦夷を知るための見聞隊を送り込む。そこに最上徳内も加わる。
冒頭から徳内の人となりや能力、性格を描いたあと、蝦夷へ赴く事態が続く。勤勉で朴訥な人柄そのままにアイヌの人々と関わっていく姿をつづる。徳内とアイヌの少年フルゥの温かな交流はこの作品の柱。
同行する幕府の役人たちも冒険心に富んだ好漢が多く、旅の間は特に爽快で楽しかった。
田沼意次が失脚したあとの皆の不遇がどうしようもなく悲しく、政治を執る松平定信のケチくさい生真面目さが憎くなった。