西條奈加のレビュー一覧
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今の時代にも通じる、世を動かす上の思惑で右往左往させられ、地獄の苦しみを耐える庶民。そんな庶民のために働いてくれる遠山の金さんと、その部下、高安門佑。鷹のように鋭い顔なので鷹門と呼ばれています。主役の鷹門が私のモロ好みで、読み終えてしまうのが寂しく、割に読むのが早い方なので前半面白すぎて読み進め、鷹門に魅せられると、別れるのが寂しく。少しずつ噛み締めるように読み、しかしとうとう読み終えてしまいました。
今や鷹門のような男はそうはいません。男性もムダ毛まで処理し、パックし、美を追及する時代。
鷹のように鋭い顔の男など淘汰されてしまいました。怖がられる容貌の人はことさら優しい人になります。生まれた -
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武士が主人公のお話は堅苦しそうで、どうかなと思いながら読み始めたが、武一や彼の父親と道場の師匠など身分にこだわらない人々のおかげで楽しげな会話が多く、宿場町で気軽に呑む場面も良い。
箱根の関という、有名だが実態を見聞きしたことがあまり無かった機関が細かく描かれて興味深い。関所での少し退屈な日常業務と時々起こる小さな事件、現代のサラリーマンにもありそうな人間関係など、バランスがよく読みやすかった。
出産を迎えた夫婦を救う「相撲始末」に心温まる。赤子だろうと女には女手形が必要とは驚き呆れた。
友人たちも上司もそれぞれ個性的でとても魅力的。足軽の衛吉君は表彰ものだ。
終盤の大事件に迫っていくにつれ -
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ネタバレ初西條奈加がこの作品でエエのか?すごく良くできた近未来SFだが、時代小説を読まずして、この本でエエのか?
死刑に代わる贖罪システムとして開発される0号。被害者の記憶を加害者に追体験させるシステムなのだが、このシステム開発者の一人が、父親殺しの犯人に私的に使ったことから物語が動きはじめる。
記憶をいじること、他人の意識を埋め込まれること、これらが頭脳にどう影響を及ぼし、それが人類にとってどういう変化をもたらすのか?個人の生活への影響から最終章ではテロリストの兵器として全世界に影響をもたらす様まで描かれており、非常に興味深い。風呂敷をたたみつつ広げつつ物語を収束させるという高等テクニックはさす -
購入済み
祖母に仕込まれた口入屋稼業を江戸で始めることになる藤。もちろんそう簡単にはいかないけれど、その才覚と仲間の助けで切れ抜けていくストーリーに、どんどん引き込まれて応援してしまっていました。
困難な場面でも、増子屋のお品さんの浮世離れしたところに気持ちが救われるようで、そこもまた読んでいて楽しいポイントでした。
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西條さんの時代小説に登場する主人公の女性たちは皆、その時代の当たり前の女の幸せとは異なるものを求め、男たちに理不尽な仕打ちを受けても言い返せる強さがあって好きだ。
お路が舅姑と夫と、腹を立てながらもうまくやっていき、自分がいなければ回らないことは時に生き甲斐にもなっている。
代筆が行き詰まって舅に鬱憤をぶちまけた後飛び出して行った街なかで、著作を待ち焦がれる読者たちの声を耳にし覚醒する場面が清々しい。
『読物、絵画、詩歌、芝居、舞踊、音曲…… 衣食住に関わりないこれらを、何故、人は求めるのか?』
感染症対策において「不要不急」と自粛を求められる今の世にも通ずる問いのようで、強く心に残る場面だっ -
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江戸時代、町人文化の花開いた時代につづく、粛清の時代を経て、曲亭馬琴の里見八犬伝を通じての、馬琴の長男の嫁、お路の一生を描く作品。
西條奈加さんの本は、私にとってハズレはない。
今回の本の内容も、すばらしい。
蘭学粛清、華美厳禁で多数の文化人が手鎖、没収、板木の焼却など幕府からの圧力を与えられ、あるものは筆を折り、あるものは投獄され、あるものは自死。
そんな時代の中でも、時代考証を始め、細部にまでこだわりを貫く馬琴の強情でしつこい性格で、幕府の付け入る隙を与えなかった。
馬琴以外の妻や子は体が弱く、嫁入りしたお路が一家の運営することになる。
一度離縁を申し出家出するが、馬琴の病で、戻 -
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″真面目で気のいい人ばかり″と噂の「善人長屋」。
しかし陰に回れば差配も店子も裏稼業の凄腕揃い。
そんな悪党の巣に、根っからの善人、加助が迷い込んだ。人助けが生き甲斐で、他人の面倒を買って出る底なしのお人好し・・・。加助が持ち込む厄介ごとで長屋はいつも大騒動、しぶしぶ店子たちは闇の稼業で鳴らした腕を揮う!
心淋し川で注目した西條奈加さんの本を読んでみようと思いどんな作品があるかと探すと、上の7行の善人長屋の帯に書かれていた文言で今作に興味が沸いた。
まぁ1話完結しながら少しずつ話が進むんだろうなと思ったがその通り。
そして想像より面白かった。
読み進める毎に深まる登場人物のキャラクターが面