西條奈加のレビュー一覧

  • とりどりみどり

    Posted by ブクログ

    この人の描く良家のお坊ちゃんはほんとに可愛らしい。世間知らずだけど、友達と家族だけじゃなく使用人にも優しい。そんな子が個性的な三人の姉とちょっとしたことに巻き込まれていく連作短編集。この姉さんたちがどうも好きになれんな…と思ってたのは最初の一編だけで、一人一人にフォーカスを当てた話を読むたびにちょっとずつ好きになり、最後には家族の温かさに号泣。どうしても自分勝手な最後三ページしか登場しない父親と、ゴシップ記者みたいな三女がちょっと気にかかるので星4つ。あと私長女の母親みたいな気っぷのいい姐さんが多分すごく好きなのだ。

    0
    2024年08月25日
  • バタン島漂流記

    Posted by ブクログ

    江戸時代の実話を基にした小説。江戸から尾張へ向けて荷を積んだ舟が港を目前にして嵐の為、流されて今のフィリピンの北の島に辿り着く。言葉も通じない島民達との確執もありながら15人全員で日本に帰る希望を捨てずに暮らして行く様子が胸を打つ。和久郎と門平の友情、白鷺のシーンが哀しかった。

    0
    2024年08月20日
  • 隠居すごろく

    Posted by ブクログ

    糸問屋嶋屋六代目として勤め上げて還暦を機に隠居した徳兵衛。根っからの商人で暇を持て余すも孫の千代太が次から次へと拾い物をして持ち込む動物や人に振り回されるうちに第二のすごろくが始まる。
    最初は子供とはいえなんか持ち込んでは「お祖父様お願い!」の千代太や施されるのは嫌でも強請るのは当たり前の子供達にイライラした。読むのを止めようかと思い始めた時に千代太屋が立ち上がりそこからは楽しく読めた。最後は徳兵衛さんのお葬式で幸せな第二のすごろくの上がりを感じて嬉しかった。

    0
    2024年08月17日
  • 善人長屋

    Posted by ブクログ

    善人ばかりだと言われる長屋の住人はみな裏稼業を持つ者ばかり。唯一の善人加助が持ち込む難題をみんなで解決する連作短編集。

    面白かった。悪人なのに人情あふれる人達。それぞれの過去や江戸時代らしい設定とストーリー展開。素晴らしく良かった。

    0
    2024年08月12日
  • 秋葉原先留交番ゆうれい付き

    Posted by ブクログ

    秋葉原の交番に現れた足だけの幽霊。便宜上足子さんと呼び交番に持ち込まれる事件を解決しながら足子さんの事件を追う。
    典型的なモラハラ父親で家族みんなが逃げ出して、残された父親はその後どうなったのかな。
    お母さんが逃げ込んだのが新興宗教と出てきて嫌な想像をしたけど本当に人に寄り添ういい人たちでよかった。
    「神のために人がいる」宗教ではなく「人のために神がいる」宗教だった。
    足子さんはこのまま交番に居続けていくのかな?

    0
    2024年08月12日
  • 姥玉みっつ

    Posted by ブクログ

    西條作品はやっぱ安定感があるといいますか、大きく当たり外れることがないので良いですね。…にしても、三人寄れば姦しいとはよく言ったもので…私はこの三人の中だとお麓さん寄りだと思うので、良くも悪くも人間関係の濃厚な時代や地域に生きてなくて良かったと思ったり(^^;)

    0
    2024年08月11日
  • 心淋し川

    Posted by ブクログ

    小さなドブ川沿いに暮らす人々。一番良かったのは「はじめましょ」かな。飯屋を営む与吾蔵が出会った幼い女の子。自分が昔捨てた女との再会、明かされる事実。三人の明るい未来を予感させるものだった。怖かったのは「冬虫夏草」。母の息子への歪んだ愛情、息子の理不尽さはそんな母へのせめてもの抵抗なのか。「灰の男」長屋の差配人の過去、息子の仇を十二年間見守る不思議な関係。

    0
    2024年08月08日
  • 秋葉原先留交番ゆうれい付き

    Posted by ブクログ

    警官2人とゆうれい1人(?)のミステリー。

    警官2名の凸凹感が素晴らしい。
    こち亀の両津と中川ってわけでもないが、コンビとして、非常に完成されている。
    そこに、3人目として、ゆうれいのツッコミが刺さりまくるという形。

    舞台は秋葉原。
    実在する名称も多く、馴染みやすい。
    扱うテーマもそれらしく、フィギュアやメイドさんなど。

    連作形式で1話あたりはコンパクトで読みやすい。
    話が進むに連れて、徐々に色々な社会風刺もうたわれていく。
    そのため、単なる娯楽小説ではない印象も受けた。

    結末も一捻りされており、なるほど関心。
    続けられそうな終わり方がされているので、是非とも続編を読みたい一作。

    0
    2024年08月08日
  • バタン島漂流記

    Posted by ブクログ

    四代家綱の時代。
    江戸を出た弁才船が三河沖で遭難。
    1ヶ月あまり漂流しバタン島に漂着。
    島民に奴隷のように使われる。
    そして、船乗りたちは自力で船を再建し日本へ戻ってくる。
    これ、史実だという。

    船の構造、専門用語などもわからないことは調べながら読み進めた。
    「板子一枚下は地獄」
    荷を乗せ波に揉まれ目的地に帰り着くまで皆で無事を祈る。
    西條奈加さんの手により人間味あふれる作品に仕上がっている。
    島民との交流も読み応えあり。

    当時は多くの海難事故があったという。
    命を落とすこと無く日本に戻ったからこそ
    今の時代まで語り継がれている。
    命あってのもの。
    頭たちの声が聞こえてくるようだ。

    0
    2024年08月02日
  • 隠居すごろく

    Posted by ブクログ

    Audibleにて。

    隠居したお爺さんと、その孫、そこに集まって来た子ども達のほのぼのいい話。
    タイトルにあるすごろくの意味がわかった時、うるっと来た。あがりの無いすごろくが、ずーっと続いていくって良い表現。

    0
    2024年07月26日
  • バタン島漂流記

    Posted by ブクログ

    途中から小生の子どもの頃に読んだ十五少年漂流記を思い出しながら読んだ。もう昔のことなので内容など全く覚えていない。本書は十五人の水夫が図らずも乗った船が難破してバタン島に漂着し日本に戻る苦難の道のりの話しだ。それも鎖国時代のこと。生還したとはいえ彼等の御苦労は大変なものだ。なかなか細部まで語られていて素晴らしかった。

    0
    2024年07月24日
  • 秋葉原先留交番ゆうれい付き

    Posted by ブクログ

    西條奈加さんは時代小説の人と思いきや、現代物も良作をお書きになる。
    ゆうれい付きなのでちょっとだけホラーっぽいかな。とはいえそんなに怖くはない。
    ゴリラ系オタクの権田さんと、イケメンで武術ができるけど脳みそが残念な向谷さんが、足だけの幽霊の通称足子さんがどうして足子さんになってしまったのか?を解き明かすミステリーが軸になった作品。
    機能不全家族だったり、秋葉原のメイドカフェだってり、それなりに時事的な問題を含ませつつ、さすが西條さんという人情もの。

    続きもありそうな雰囲気だけど、本当に続きはあるのだろうか。あるなら読みたい。

    0
    2024年07月24日
  • 心淋し川

    Posted by ブクログ

    千駄木町の一角、心町(うらまち)。そこに流れる川の名前は心淋し川(うらさびしがわ)という。
    趣があるのは名ばかりで淀んで汚くすえた臭いがする川である。
    その川のどん詰まりにある貧乏長屋には心に淀みを持った訳ありの人々が暮らしている。
    そこに住む訳ありの人々と差配の茂十の話だが、どの人も生き辛い悲しみや切なさを抱えている。6作収録されているが、最後の茂十の悲しい過去の話「灰の男」が読み手の心をグッと掴む話になっている。
    「誰の心にも淀みはある。事々を流しちまった方がよほど楽なのに、こんなふうに物寂しく溜め込んじまう。でも、それが人ってもんでね」と茂十が言った言葉。
    物事を簡単に割り切れたらどんな

    0
    2024年07月21日
  • 亥子ころころ

    Posted by ブクログ

    行き倒れた菓子職人雲平を怪我をした治兵衛の助っ人として雇う南星屋。雲平の弟弟子が出奔した謎を追う。お茶て優雅な趣味だけどとにかくお金がかかるからね。この時代の旗本は物価が値上がりしたのに幕府からの禄は変わらず懐具合が厳しかったから値札も確かめず買ってくる趣味人は頭痛の種だね。どんなに素晴らしい茶道具でも家を潰してまで集めるものじゃないだろ。
    雲平が南星屋に残ったことでこの先お栄と、と言うこともあるのかな。

    0
    2024年07月21日
  • わかれ縁 狸穴屋お始末日記

    Posted by ブクログ

    浮気と借金を繰り返す亭主に愛想をつかすも、離縁する権利は亭主側にしかなくいいように使われてしまう絵乃。
    そんな絵乃が出会ったのが、離縁の調停を得意とする公事宿「狸穴屋」の手代椋郎。
    その出会いにより、絵乃は狸穴屋の手代見習いとして住み込みで働くことになる...。

    江戸時代に弁護士事務所のような役割を果たす公事宿というものがあったなんて、初めて知った。
    妻の方から離縁をすることができないということも知らなかった。

    西條奈加さんの作品はいくつか読んでいるが、「人情味溢れる江戸時代」という分かりやすい括りにせず、
    身分、格差など、あの時代の生きることの厳しさについてもきちんと描かれているところが

    0
    2024年07月20日
  • 婿どの相逢席

    Posted by ブクログ

    よくある?時代小説なのかなーと読んでみたが、それだけではなく、ちょっと感動してしまった。
    親の気持ち、子供の気持ち、最後は涙してしまった。
    鈴之助さんの優しさが胸に染みる。
    鈴之助の奥さんのお千瀬ちゃんの妹たちもかわいい。

    0
    2024年07月19日
  • バタン島漂流記

    Posted by ブクログ

    漂流物の歴史小説と言えば、無人島での12年にわたるサバイバルを描いた吉村昭の『漂流』、ロシア漂着後に艱難の末にペテルブルグまで行き女帝エカチェリーナ2世に謁見して帰国した大黒屋光太夫を描いた井上靖の『おろしあ国酔夢譚』などの名作があります。本書も上記と同じく実際に起こった事件(江戸時代の口書が残っている)を元に描かれた本格的な漂流物の歴史小説です。
    流された先は現在のフィリピンの一部であるバタン島。そこで主人公達15人の日本人は未開の地の人々に捕らわれ、なかば奴隷のごとく働かされながら、まともな道具も無い状態で11人(3人死亡、1人は島に残った)が乗れる船を作って帰国しました。そうした史実的な

    0
    2024年07月19日
  • まるまるの毬

    Posted by ブクログ

    武家の家を出て諸国を巡り修行をして菓子職人の腕を磨き南星屋を営む治兵衛、娘のお栄、孫のお君。
    江戸時代は今みたいに気軽に旅には行けないし物産展やアンテナショップがあるわけじゃないし諸国の銘菓を出す南星屋が繁盛するのは頷ける。治兵衛の家族は実家も含めてお互いを思い合って温かな家族で理不尽としか言いようのない苦難も乗り越える。続編もあるようなのでまた楽しみなシリーズに出会うことができました。

    0
    2024年07月18日
  • 姥玉みっつ

    Posted by ブクログ

    婆が3人集まれば、お菓子の烏羽玉この京菓子のよう。和歌がそえられ、旅の楽しみに和歌はいつの時代も変わらないものと心を楽しませてくれました。

    0
    2024年07月11日
  • うさぎ玉ほろほろ

    Posted by ブクログ

    何とも言えない心に響く温かさと、また心がパッと晴れ渡る痛快さを包括した作品でした。
    江戸時代の人情が本全体に染み渡り、作品を読んでいる側もいつのまにか同じ時代の空気を吸っているかのような錯覚をおこしてしまう。そして登場人物達が穏やかな慎ましい生活を仲良く永遠に過ごせることを心から願ってしまう。そんな心温まる作品でした。

    0
    2024年07月10日