西條奈加のレビュー一覧
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警官2人とゆうれい1人(?)のミステリー。
警官2名の凸凹感が素晴らしい。
こち亀の両津と中川ってわけでもないが、コンビとして、非常に完成されている。
そこに、3人目として、ゆうれいのツッコミが刺さりまくるという形。
舞台は秋葉原。
実在する名称も多く、馴染みやすい。
扱うテーマもそれらしく、フィギュアやメイドさんなど。
連作形式で1話あたりはコンパクトで読みやすい。
話が進むに連れて、徐々に色々な社会風刺もうたわれていく。
そのため、単なる娯楽小説ではない印象も受けた。
結末も一捻りされており、なるほど関心。
続けられそうな終わり方がされているので、是非とも続編を読みたい一作。 -
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四代家綱の時代。
江戸を出た弁才船が三河沖で遭難。
1ヶ月あまり漂流しバタン島に漂着。
島民に奴隷のように使われる。
そして、船乗りたちは自力で船を再建し日本へ戻ってくる。
これ、史実だという。
船の構造、専門用語などもわからないことは調べながら読み進めた。
「板子一枚下は地獄」
荷を乗せ波に揉まれ目的地に帰り着くまで皆で無事を祈る。
西條奈加さんの手により人間味あふれる作品に仕上がっている。
島民との交流も読み応えあり。
当時は多くの海難事故があったという。
命を落とすこと無く日本に戻ったからこそ
今の時代まで語り継がれている。
命あってのもの。
頭たちの声が聞こえてくるようだ。 -
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千駄木町の一角、心町(うらまち)。そこに流れる川の名前は心淋し川(うらさびしがわ)という。
趣があるのは名ばかりで淀んで汚くすえた臭いがする川である。
その川のどん詰まりにある貧乏長屋には心に淀みを持った訳ありの人々が暮らしている。
そこに住む訳ありの人々と差配の茂十の話だが、どの人も生き辛い悲しみや切なさを抱えている。6作収録されているが、最後の茂十の悲しい過去の話「灰の男」が読み手の心をグッと掴む話になっている。
「誰の心にも淀みはある。事々を流しちまった方がよほど楽なのに、こんなふうに物寂しく溜め込んじまう。でも、それが人ってもんでね」と茂十が言った言葉。
物事を簡単に割り切れたらどんな -
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浮気と借金を繰り返す亭主に愛想をつかすも、離縁する権利は亭主側にしかなくいいように使われてしまう絵乃。
そんな絵乃が出会ったのが、離縁の調停を得意とする公事宿「狸穴屋」の手代椋郎。
その出会いにより、絵乃は狸穴屋の手代見習いとして住み込みで働くことになる...。
江戸時代に弁護士事務所のような役割を果たす公事宿というものがあったなんて、初めて知った。
妻の方から離縁をすることができないということも知らなかった。
西條奈加さんの作品はいくつか読んでいるが、「人情味溢れる江戸時代」という分かりやすい括りにせず、
身分、格差など、あの時代の生きることの厳しさについてもきちんと描かれているところが -
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漂流物の歴史小説と言えば、無人島での12年にわたるサバイバルを描いた吉村昭の『漂流』、ロシア漂着後に艱難の末にペテルブルグまで行き女帝エカチェリーナ2世に謁見して帰国した大黒屋光太夫を描いた井上靖の『おろしあ国酔夢譚』などの名作があります。本書も上記と同じく実際に起こった事件(江戸時代の口書が残っている)を元に描かれた本格的な漂流物の歴史小説です。
流された先は現在のフィリピンの一部であるバタン島。そこで主人公達15人の日本人は未開の地の人々に捕らわれ、なかば奴隷のごとく働かされながら、まともな道具も無い状態で11人(3人死亡、1人は島に残った)が乗れる船を作って帰国しました。そうした史実的な