あらすじ
安永四年、京都。当代一の絵師を目指す豊蔵と彦太郎は、ひょんなことで奇跡の出会いを果たす。喧嘩しながら才能を認め合い、切磋琢磨し腕を磨く若きふたり。鼻つまみ者の「ごんたくれ」と呼ばれた彼らは、求めた道の先に何を見たか? 京画壇の華やかなりし時代、実在した二人の奇想の絵師をモデルに、芸術を探求する人間の性と運命を描き出した、傑作時代長編。
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解説を読んで、豊蔵と彦太郎は実在しないのだと知り、とても驚いた。二人のみでなく登場人物みなが、生き難さを抱えながらも自分の内なる声に向き合い懸命に生きていく日々と、なぜか気になり魅かれ合ってしまう人と人との関係が、とてもリアルで、時代は違えども、確かに自分も同じ世界に生きていると思うことができた。
これまで画家や絵師の話はいくつか読んだが、本作は、素人でも目の前に情景がありありと浮かんでくる様がことに素晴らしく、重く暗くなりすぎないバランスも心地良かった。西條奈加さんの本には、いつも夢中になってしまう。
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池大雅、円山応挙、伊藤若冲などなど。
その周辺の人物や物語を、虚実織り交ぜ最後までドキドキさせてくれる。
絵師と絵画を中心に置きながらも、浮かんでくるのは人・人・人。
「人が好きで好きでたまらんのや」
人くさい絵を、みんな描くために、もがいてもがいて、絵筆を握っていたんだろーなぁ。
そんな向合う姿を感じました。
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京都に住む画家。筝白と胡雪、ごんたくれの二人は絵図ではなく絵を描こうとする。二人の人生が交わるたびに彼らの絵が変わる。彼らの心意気にだんだん引き込まれていく。
応挙や若冲が出てくるので実在の人かと思ったが、創作の人だった。読みながら彼らの描いた絵が目の前に浮かんでくる。美しい絵、恐ろしい絵、静かな絵、迫ってくる絵、楽しい絵。ふと 若冲の絵がテレビを賑わしていたのを思い出した。
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裕福な商家に生まれたが火事で一文無しになり、奉公に出された米屋を出奔、旅の砂絵師に師事して絵師となった、豊蔵・深山筝白。
武士の家に生まれるが家族との軋轢を抱え、家督を弟に譲って円山応挙の弟子となった、彦太郎・吉村胡雪。
片や、“変人”“狂人”と罵られ、片や尊大で身持ちが悪いと評判の『ごんたくれ』
会えば憎まれ口、皮肉の応酬で、喧嘩ばかり。
しかし、相手の絵には大きな魅力を感じるのを認めざるを得ない。
悔しいがうっかり褒めてしまう。
読んでいくうちに、だんだんと二人が可愛らしく感じられてきた。
絵を描くことに限らず、芸術は孤独な作業であり、憎しみと区別のつかないほどのライバル心があってこそ上達するものだ。
その人物評がどうであれ、作品がすべてなのである。
しかし、「職人でいい。職人でありたい」と言った応挙の言葉も、悪くはないと思う。
人が喜んでくれれば、それは絵師の喜びでもあるだろう。
最後に、彦太郎、豊蔵というごんたくれたちが、それぞれ仕掛けた、一世一代の“悪戯(イタズラ)”が、なんとも素晴らしく人を食っており、それでいて、実に愛おしいものだった。
とても気持ちのいい幕切れである。
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バラバラだった江戸時代の絵師の知識が繋がって、人物像が肉付けされてストーリーとなり、そういう意味でも嬉しい。
これからは美術館や博物館で彼らの作品に出会っても、親しみを持ってみることが出来ると思うと楽しみでしかない。
この作家の実在する人物の小説もどれも面白く、他作品もオススメ。
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実在した二人の絵師については全く知らず、他に登場した円山応挙も、名前を聞いたことがある程度…
でも、読みながら、応挙の描く絵、豊蔵の描く絵、彦太郎の描く絵、勝手にイメージできてしまう。
作家さんって、すごいなぁ。
絵師として厳しい芸術の道を生きる二人のごんたくれ。
「あらゆる難に蝕まれ、嫉妬や恨みや欲にまみれて、それでも人は生き続ける。すべてひっくるめての人間だ
」と作品の中で表現されているが、そんなごんたくれが、とても愛すべき存在に思えた。
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西條奈加さんの小説は、どれも面白くて一気に読んでしまう。
ごんたくれは、絵師の物語。まるで本当に居た人のよう。
職人として求められる絵を描くか、自分の描きたい物を描くか。という視点で、モデルになった絵師の絵を見てみたくなりました。
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歴史に名を連ねる絵師達が生きた、その時代に自分いるかのように錯覚しました。
それぞれの人物が生きて動いている姿を見ているかのよう。
歴史上の人物としてでなく、とても「人間」らしく身近に感じられ、感情移入しながら読みました。
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良い意味での腐れ縁みたいな天才ふたりの関係性や、豊蔵と砂絵の師匠との旅暮らし、池大雅らとの交流場面などが良い。
絵を文章で表現する技術に驚く。想像力をいっぱいに働かせて読んだが、モデルとなった絵師たちや、応挙の絵なども機会あればたくさん鑑賞し、その後また読み直してみたい。壮大だった。
音楽の世界、天才たちの世界を文で表した恩田陸さんの「蜜蜂と遠雷」をふと思い出したりもした。
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奇想の画家と呼ばれた曾我蕭白と長沢芦雪をモデルにした日本画をテーマにした本作。
蕭白をモデルにした深山箏白こと豊三と吉村胡雪こと彦太郎。
円山応挙がもてはやされる中でひたすら彼の絵を只の写しと言い切り、彼とは違う道を行く筝白と応挙の弟子であり何かと箏白と争うことになる胡雪。
この時代の絵が好きな人なら、読んでいた楽しくてたまらない多くの画人が登場します。(最愛の若冲も♪)
自分が求める絵とは何なのか、それはどこにあるのか、妻子も師匠も置き去りにして考える胡雪がとても魅力的です。
そして、池太雅、玉蘭夫婦とも親交があり、自らの絵に自信を持って我が道を行く筝白。
実は互いが一番近い場所にいたのではないかと、読みながら思っていました。
美しい絵には魔が宿るような気がするのは、それは画家の魂が込められているのかもしれませんね。
奇想の画家、それは人の苦しみや悲しみと共にあるからそう感じるのかもしれません。
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江戸中期。日本画、水墨画の絵師達の物語。
主人公二人は架空の人物だが、その他は円山応挙、伊藤若冲、池大雅、与謝蕪村などお歴々が登場。
しかし、架空とは言え、モデルは曾我蕭白、長沢芦雪。
彼らの日本画を見てから読むと、より深みが増すだろう。
奇才、奇想と称された京画壇の二人の芸術への探求、人間の追求が描かれる。
物語の展開もさることながら、絵画を言葉や文章で表現する西條氏の筆は素晴らしい。
相変わらず心洗われる爽やかさだなー。
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面と向かえば罵詈雑言を浴びせ合うくせに、互いの作品を通して誰よりも多くを語り合える。
ふたりの絵師の、対極にいるようでいて、心の奥底の本質で響き合う様が、愛おしい。
巻末の解説で、絵師を題材にした傑作時代小説が奇跡的に同時期に刊行された、とあった。
そんな事は知らなかったが、『若冲』面白かった。
本作も、面白かった。
ので、そこに挙げられていた3冊目も早速「読みたい」本に登録。
虚実とり混ぜて、さまざまな絵師の姿を、さまざまな作品から読むうちに、脳内でジオラマのように世界が立体的に立ち上がってくるような感覚が楽しめる。現在に残る作品で、その世界と現実に繋がる感覚感覚も楽しめる。
面白いなぁ。