あらすじ
荒れ狂う海と未知の島、そして未開の民。ため息すら、一瞬たりとも許されない――船大工を志すものの挫折し、水夫に鞍替えした和久郎は、屈託を抱えながらも廻船業に従事している。ある航海の折、船が難破に遭う。船乗りたちは大海原の真っ只中に漂う他ない。生還は絶望的な状況。だがそれは和久郎たちにとって、試練の始まりに過ぎなかった……。史実に残る海難事故を元に、直木賞作家が圧倒的迫力で描く海洋歴史冒険小説。
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Posted by ブクログ
江戸時代 尾張家御用の植木等を積んだ弁財船が三河沖で遭難し33日間の漂流を経てフィリピンのバタン島に漂着。その後 島で船員達が自力で船を造り約2年の後故郷に戻ってきたという実話に基づいた話。漂流したのは15名。3名が島で死亡。1名が島に残り戻ったのは11名だった。
船の構造や部位、船員の役割など聞き慣れない言葉に少々戸惑ったが 船とは1人で動かせるものではなく各々が各々の仕事をする事によって初めて動くものなのだと改めて理解した。だからそれを知る事は15名の人となりを知るうえでも意味があると思う。
嵐の中 波にもまれる恐ろしさ。漂流中 気力が萎え自死を考えてしまう恐怖。漂着した島での野蛮で耐え難い掟。
辛い事の連続だがいつも少しだけ光がみえた。 特に島の暮らしでは馴染んでいくうちに言葉の壁を越えて段々に築かれていく島民との関係が良かった。
その後造った船で日本にどうにか帰国したが大団円とまではいかず 当時鎖国の状態にあった日本の事情もあり様々な制限が課せられる。 気持ちの良い終わり方ではなかったかもしれないが 私はとても納得のいく真摯な終わり方だと思った。
全体的に大変な苦労話なのだけれども終始 海の男達のおおらかさや豪胆さが気持ち良かった。
とても面白い本でした。
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17世紀中頃、江戸時代。尾張から漂流した颯天丸。黒潮とその循環流に乗り、遠くフィリピンのバタン島に漂着する。言葉も通じぬ異国で絶望する15名の運命。史実に基づく小説、漂流譚。
江戸時代の船にまつわる専門的な用語にも注目。普通に会社で使う「すり合わせ」という言葉の語源を本書で知る。
鎖国下での船乗りの生命力には感嘆する。
Posted by ブクログ
★5 史実に基づいた江戸時代の漂流記、海の男たちの生き様を堪能できる歴史冒険小説 #バタン島漂流記
■あらすじ
徳川四代目家綱の時代、尾張と江戸を航路を結び、物品の輸送を行っていた。船には船頭をはじめ、十五名の船乗りたちが乗船していた。しかしある航海の途中、突然の荒波に船が難破してしまい、彼らは太平洋で漂流することに… もはや生還は絶望的であった。
■きっと読みたくなるレビュー
★5 こりゃまた素晴らしい歴史冒険小説。海の男たちの生き様をガッツリ堪能できる傑作です。当時の船乗りの仕事を体験できる、海洋冒険小説でもありますね。
そして本作はなんと史実に基づいた物語、いやはや読書というのは勉強になります。文明も未熟な400年も前の時代に、こんなことをやってのけ人たちが居たのか… 人間とは無限の可能性がありますね。
本作のイチ推しポイントは、海の男たちの生きた姿。大海原の漂流から始まり、異国の地での厳しい生活。ひとりひとりの生の躍動がビンビン伝わってくる。船乗りとしての気概、日本に帰還するという想い、そして十五人の友情を余すところなく描いています。
キャラクターがまたいいんすよ。特に門平と和久郎は幼馴染。若かりし頃から船乗りに従事している門平は、船づくりの職で悩んでいた和久郎を船乗りとして拾ってあげる。その後、様々な待ち受けている苦難も、その都度お互いを励まし合い困難を乗り越えていくんです。そりゃ物語ではあるんしょうけど、いい話じゃないですか。もう泣きそう。
また船頭や先輩の船乗りの男たちがカッコイイんすよ。私もこんな頼りがいのある男になりたい。彼らの力強さを見ていると、日頃から愚痴ばっかり言っている自分が恥ずかしくなっちゃう。勇気と元気をもらえました。
そして漂流後に到着したバタン島、異国の地での生活についても興味深く描かれていく。酷い扱いを受けるのですが、日本に帰還することへの熱い想いが溢れ出て、読む手に力が入るんですよ。
漂流はもちろん、その後も様々な試練が待ち受けるのですが、彼らは立ち向かっていくんすよ! 時には耐えがたい悲劇もあったりするのに… 彼らをなんとか日本に帰してあげたい、心からそう思わせてくれるんです。
終盤はもう何も言えない、男たちの人生丸ごと肌で感じてしまい、マジで涙を流してしまいました。
歴史小説ではありますが、わかりづらい文章やセリフもほとんどなく、むしろ読みやすい。さすが直木賞受賞の作家先生。どなたにもおすすめできる、エンタメ抜群の冒険小説でした。
■ぜっさん推しポイント
人間って嫌なことがあると、ついボヤいちゃいますよね~ 何もかもイヤになって、最終的には厭世的になってしまうこともある。
元気がでないということもあると思うんですが、そんな時にぜひ読んで欲しい本ですね。この本には、いかに真剣に生きるのか、生命に対する執着が余すところなくに描かれていました。
Posted by ブクログ
西條奈加さんはまたしても全く予想もしなかったすごい話を書き上げましたな。大人の冒険譚というべきか,ワクワク・ドキドキが止まらない,そして最後はちょっと切ないお話。
内容は,江戸時代に荷を運ぶ船が嵐に遭い,舵も帆も壊れて漂流することになるというもの。そして幾多の危機を乗り越え,乗員が奇跡的に全員無事でたどり着いたところは...。彼らは果たして故郷に戻ってこられるのか。江戸幕府の鎖国政策がどういうものかということも今まで知っていた知識とは別の観点で理解できた気がする。
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私の大好きなジャンルである漂流記。これも掛け値なしに面白かった。言葉の通じない異国にたどり着くというところが、どこか旅をしている気にさせるからだろうか。荒くれ者の船乗りたちが、色々ぶつかり合いながらも、力を合わせて、生き延びるというシチュエーションが好きというのもある。
他の漂流記と違うところは、自分たちで作った船で日本に帰り着いたところ。はじめから船の構造がとても細かく描写されていたが、後半造船する場面に繋げる意味もあったのかも。
西條奈加さんの文章も素直で読みやすく、ひさびさに心躍る読書だった。
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ついつい手に取ってしまう西條奈加さん。今回は、今まで読んできたものとはやや趣きが異なる「漂流記」。実話に基づいていることを読後に知った。
「万に一つ」の生還につながる「理由」に納得感があり、特に、多様なメンバーをとりまとめ一つの方向に進めていく知恵には、目を見開かされた。究極の状況だからこそ、何がほころびとなり、何がよすがとなるのか、鮮明に見えてくるのだろう。
残酷なルールや振る舞いも、貧しく厳しい島の暮らしを成り立たせる視点では必須。そこに「未来への希望」が加わることで、変化が生まれていく。生還後の後日譚にはもの悲しさも漂うが、物語は清々しい笑顔で終わっていた。
逞しく生き抜いていきたい。
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史実に基づいた漂流譚。バタン島は台湾の先あたりにある島なんですね。とりあえず生きて島に流れ着いたものの、奴隷のような扱いを受けながら何とか日本へ帰る手段を考える水夫たち。挙句、労働力と見なされなくなった者には過酷な運命が待ち受ける。原始的村社会を維持するためとはいえ、苛烈である。更には、ようやっと日本に戻ったら戻ったで、また別の試練が待ち受ける。当時の日本が鎖国中であったため、やむを得ないことではあるけれど。
内容はすごく面白かったのですが、如何せん船に関する漢字が難しかったため、スラスラと読めなかったのが残念。
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江戸時代にバタン島に漂流して、何年もかかって日本に戻ってくる物語。漂流から流れ着いた島での奴隷のような生活、そしてありものの材料で船を作って帰国するまでの船員達の苦悩と希望が伝わってきた。
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寛文8年(1668)、江戸から母港となる尾張に向けて航海中の颯天丸(はやてまる)は、母港に到着寸前に突然の嵐に見舞われて難破、そして漂流することになる。
乗組員は全員で15名、絶望の淵から三つの島を見つけ、なんとかその内の一つに上陸する。
そこには先住民が暮らしていて、上陸早々に諍いを起こしてしまう。
武器を持っていない颯天丸の乗組員たちは、住民たちの下男として働く道しか術はなく、極限状態に近い暮らしを強いられる。
主人公の平水夫である和久郎は、いっとき船大工を目指して修行していたのだが挫折し、颯天丸で働く幼馴染の門平を頼って水夫となった。
そんな時に嵐に遭遇し、漂流することになってしまった。
なんとか乗組員全員が島に上陸し、先住民たちの下男として働かざるを得ない状態となったとはいえ、命だけは存えることができた。
そしてこの島が南方にあるルソン島ということが判明し、なんとか故郷に帰る術はないものかと算段するのだが、なかなか光明を見出すことはできなかった。
絶望の淵に叩き憑られる度に、乗組員の気持ちに寄り添い、元気づけるのは常に幼馴染の門平だった。
そんな暮らしの中、指導者としての船頭を筆頭に3名が命を落とす。
残った乗組員たちにとって指導的立場の人が居なくなり、故郷に帰る算段も見えなくなってしまう。
しかし頼りなく臆病だった和久郎は、亡くなった3名の魂を故郷へ連れ帰ることを心に決め、帰郷を目指すことになる。
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1668年、四代目将軍徳川家綱の時代に実際にあった漂流事件を題材にしたお話です。当時は風が頼みの航海とは知ってましたが、まさか羅針盤も無しに操船していたとは知りませんでした。漂着した島では原住民にすべてを奪われ、ろくな道具も無しに船を造り、やっとの思いで帰国できたと思ったら厳しい取り調べを受け、最後には二度と船に乗ってはならないと――嵐に遭ってやむを得ず外国に漂着したのに、そんな罰があったとは知らず、あまりにも気の毒でなりませんでした。
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漂流の恐怖やその後の暮らしの過酷さは書かれているものの、さほど悲惨さ凄惨さはなく、どちらかというと冒険物語であり仲間との関係性の中での若者の成長物語。時代背景や当時の船乗りの暮らしぶりもわかって興味深かった。
異国での生活風習は、受け入れがたく思うところもある一方で、神仏頼みでげんを担ぐ日本人のマインドも独特だろうと思った。異文化交流や多文化共生にもかかわるところ。さまざまな読み方で楽しめる一冊。
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寛文8年、徳川幕府が開かれて65年、家綱の時代。船大工から船乗りに転職した和久郎は、同じ村の幼馴染の門平たちと尾張の新しい船、颯天丸で江戸から帰る途中、嵐に飲まれた。1ヶ月後、漂着したのはバタン島。15人の乗員は島で下人とされ、こき使われた。大きな船を持つという言葉につられ、隣村に逃げるが、結局は下人とされてしまう。船があったのはかなり昔の事だった。そして、ある日頭がいなくなった。そして楫取の巳左衞門も。その島には年寄りはいなかった。絶望的な中で、しかし、言葉をなんとなく理解してきた門平が村長に船作りを願い出る。船大工見習いをしていた和久郎がいるからこその脱出作戦の始まりだった。
史実に基づくフィクションだったよう。はじめから船の構造を詳しく書いていて、情報多すぎてよくわからない状態に陥っていたのだけど、それは後半の伏線だった。
バタン島は木はたくさんあるが、金属がないため、釘まで木で作る。和久郎は棟梁を務めるが、漆の代わりになるものを作る者あり、筵を編む者あり、みんなが出来る事をやって、ようやく船が完成する。ここまでで、結構苦労しているが、まだまだ先は長い。
15人の船乗りとは、十五少年漂流記へのオマージュなのかな。それにしても、この時代だからこその仕打ちに悲しくなる。
Posted by ブクログ
漂流して潮のかげんでフィリピン北部のバタン島に着いてしまうことが度々あったようです。こちらは江戸時代の初期1668年に漂流した15人の水夫たちの史実に基づいたフィクションです。15人中、2人は殺害され、1人は事故死、1人は島に残り、11人が無事日本へと帰還します。
原住民が酷すぎる。積荷を強奪して船を壊して奴隷にするとか。働きの悪い年寄り2人は殺害するし、島で働く分には労働力としてある程度自由もあったようですけど口伝だけで文字を持たない文明レベルの原住民に家畜のように扱われるとか・・・
原住民を信用させて舟を作って日本に戻っるとかこれが史実であったところが感動します。
現地妻を娶って1人島に残った人もいるようですが、
その後この島でどんな扱いを受けたのか気になるところですが、言葉や文化に日本的なものの影響あたえたりとか、野蛮な原住民が年配をいたわる意識とか持ってくれれば残った意味もあるのかなって思いました。
日本に帰れた11人もいろいろ試練が待ってた様子が浦島太郎のように面白く仕上げられてて、1680年には逆にバタン島の漁民23人が宮崎県に漂着した史実もあってこれもうまく物語に取り入れてるのは流石でした。
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江戸時代初期に新造船颯天丸で江戸を出帆した一行が、不意の嵐に見舞われ遭難してしまう。楫も帆も失い、水や食糧も底を尽きかけたとき、前方に3つの島影を発見する。
“バタン島”なんてふざけた名前だと思ったがフィリピンに属する実在の島で、Wikipediaによればこうした出来事は実際に何度も起きているのだそうだ。
前半の嵐との戦い、後半の島での辛苦など読み応えのある海洋冒険小説だった。15名の船乗りたちの性格や人間性の書き分けも素晴らしかった。
Posted by ブクログ
直木賞作家 西條加奈作品
1668年 徳川4代家綱の頃 江戸幕府は鎖国の時代
尾張から材木を積んで江戸へ向け出港した船が、江戸で荷を下ろし
今度は尾張藩への植木などを積んで帰還するはずが、悪天候にあい外洋へと流され
フィリピン バタン島へ漂着した。その史実をもとに 書かれた作品
主人公 和久郎は船大工になろうとしたが その道をあきらめ、幼馴染の門平の乗る尾州廻船で水夫になる。
情があり知恵もある「船頭」志郎兵衛のもと
個性豊かで諍いもあるが、仕事には手を抜かない海の男たち15人
江戸からの帰り 悪天候にあい 様々な困難を乗り越えながら漂着したのは
見たこともない肌の色をした ことばもわからぬ島だった。
乗組員それぞれが個性豊かで、前半は荒波をみんながア適材適所
知恵を出し合いながら乗り越えていく。
手に汗握る展開で 読む手が止まらない。
縦割り社会の役割 船乗りの男気 未知の国・島民たちとの駆け引き・・・
主人公たちのやり取りなどはフィクションだとわかっているものの
船に乗り 生死をさまよいながらも「母国に帰ろう」とする熱い想いは
グッと迫るものがある。
尾張大野村(愛知県常滑市)に残された資料を基に NHKが『池内博之の漂流アドベンチャー』でヨットでチャレンジしたそうだが そちらも見たかった。
男くさい漂流アドベンチャーです。おすすめ。
Posted by ブクログ
寛文8年(1668年)、尾張大野村から出航した商船が嵐に遭い、台湾とフィリピンルソン島の間にあるバタン島に漂着した実話に基づく冒険小説。
同様の漂流物は、吉村昭の「漂流」や「大黒屋光太夫」などがあるが、漂流した船乗りが帰国のため、自力で船を作るという点で他と差別化できている。
史実や文献を調べ、船の構造や船員個々の役割分担、ランビキという海水から真水を精製する知恵と工夫が詳細に描かれているのもこの作品ならではの特徴だ。
ストーリーは、15人の漂流者の人間関係、苦境を耐え抜く精神力を根底に、嵐の中での漂流シーン、島での奴隷のような生活、島民との友情の芽生えなど波乱万丈で予期せぬ展開が魅力。
1年7か月ぶりに帰国するまでの間に培われる船員たちの絆、帰国してからの苦悩など、多くの感動的な場面も散りばめられている。
Posted by ブクログ
自分だったら、どうする?止まるか万に一つの無事航海に賭けるか。帰国しても妻は再婚。仕方ないとはいえ哀しい。鎖国政策、ここまで徹底?「異国への渡りようを覚えた者たちを船に乗せる訳にはいかない」あまりに狭量だけど…
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江戸時代の実話を基にした小説。江戸から尾張へ向けて荷を積んだ舟が港を目前にして嵐の為、流されて今のフィリピンの北の島に辿り着く。言葉も通じない島民達との確執もありながら15人全員で日本に帰る希望を捨てずに暮らして行く様子が胸を打つ。和久郎と門平の友情、白鷺のシーンが哀しかった。
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四代家綱の時代。
江戸を出た弁才船が三河沖で遭難。
1ヶ月あまり漂流しバタン島に漂着。
島民に奴隷のように使われる。
そして、船乗りたちは自力で船を再建し日本へ戻ってくる。
これ、史実だという。
船の構造、専門用語などもわからないことは調べながら読み進めた。
「板子一枚下は地獄」
荷を乗せ波に揉まれ目的地に帰り着くまで皆で無事を祈る。
西條奈加さんの手により人間味あふれる作品に仕上がっている。
島民との交流も読み応えあり。
当時は多くの海難事故があったという。
命を落とすこと無く日本に戻ったからこそ
今の時代まで語り継がれている。
命あってのもの。
頭たちの声が聞こえてくるようだ。
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途中から小生の子どもの頃に読んだ十五少年漂流記を思い出しながら読んだ。もう昔のことなので内容など全く覚えていない。本書は十五人の水夫が図らずも乗った船が難破してバタン島に漂着し日本に戻る苦難の道のりの話しだ。それも鎖国時代のこと。生還したとはいえ彼等の御苦労は大変なものだ。なかなか細部まで語られていて素晴らしかった。
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漂流物の歴史小説と言えば、無人島での12年にわたるサバイバルを描いた吉村昭の『漂流』、ロシア漂着後に艱難の末にペテルブルグまで行き女帝エカチェリーナ2世に謁見して帰国した大黒屋光太夫を描いた井上靖の『おろしあ国酔夢譚』などの名作があります。本書も上記と同じく実際に起こった事件(江戸時代の口書が残っている)を元に描かれた本格的な漂流物の歴史小説です。
流された先は現在のフィリピンの一部であるバタン島。そこで主人公達15人の日本人は未開の地の人々に捕らわれ、なかば奴隷のごとく働かされながら、まともな道具も無い状態で11人(3人死亡、1人は島に残った)が乗れる船を作って帰国しました。そうした史実的な面白さもありますが、何と言っても15人の船乗りの人間物語が秀逸でした。
ちなみに・・。
物語の前半の遭難シーンで、結構詳しく当時の船(弁才船)の構造が語られます。実は私、内部構造にまでこだわって再現した弁才船模型を図面から作った経験があり、他の人では理解が難し辛いだろう説明が良く理解出来るのです。もっとも物語は江戸初期、私の模型は江戸中期なので、炊場(かしきば。炊飯所)の位置が違ったりしていましたが。
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子供の頃から「ロビンソン・クルーソー」や「十五少年漂流記」、アニメ「ふしぎな島のフローネ」などの漂流モノ無人島モノが大好きでした。
大人になってから読んだ小説ですぐに思いつくのが、
ウィリアム・ゴールディング「蝿の王」
吉村昭「漂流」「アメリカ彦蔵」
津本陽「椿と花水木」
宇佐美 まこと「ボニン浄土」
です。
この「バタン島漂流記」もは"ザ・漂流モノ"と言える作品ではありますが、流れつく島が無人ではないため、現地人や船仲間と交流が主になります。
生存サバイバル物語というよりは、人情物語という方がしっくりくると感じました。
Posted by ブクログ
史実の海難事故をもとに、バタン島に漂流した船乗りたちを描いている歴史小説。
江戸時代の船で遭難して生き残り、更に漂流先で船を作って再度日本に戻ってくることは奇跡的。
漂流しているときの絶望感がすごすぎて、海は大きくて怖いものだと感じてしまった。ただ、仲間が頭を信じてついていくところは熱い気持ちにさせられた。
極限状態で仲間を信じる、陸を信じる、生きて帰れることを信じる、、、本当に難しい。それを克服してしのいだ時は読み手までほっとしてしまった。
バタン島で出会った人々との暮らし習慣など、厳しいこともあったが、生きて帰ることができてよかった。
Posted by ブクログ
男の意気地や団結ってなんやねんって毎度思うのにやっぱ感激させられてしまう。
異国に流されてまでの主従関係。結束力、人情。
まっすぐな男たちのお話です。
Posted by ブクログ
漂流記、というだけあって、漂流中や流れ着いた島での暮らしなど、かなり詳細に描かれている。まざまざと目に浮かぶほどの徹底ぶりで臨場感はあるのだけど、時に少ししつこく感じるタイミングも正直あったものの、それが物語の熱量となって後半一気に読み切ることができた。
Posted by ブクログ
大事なところだから詳しい説明になっているのだとは思うけれど、船の造りや乗組員の役職などなじみが無さ過ぎてなかなか頭に入ってこず…
苦難が多い漂流、バタン島での生活とつらい展開が続くところも、読み進めるのに苦労した理由
頭や楫取ももちろん、門平には死んでほしくなかった
史実に基づいている物語、知らなかった事を知れるのは面白かった