あらすじ
※本書は、角川書店単行本『隠居すごろく』を文庫化した作品となります。重複購入にご注意ください。
巣鴨で六代続く糸問屋の主人を務めた徳兵衛。還暦を機に引退し、悠々自適な隠居生活を楽しもうとしていたが、孫の千代太が訪れたことで人生第二のすごろくが動き始めた……。心温まる人情時代小説!
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
「思いやりとは、決して安い同情ではない。
考えも性質も境遇も異なる相手と、共に生きようとする精神にほかならない」p367
ことについて、
心躍らせ、はらはらし、喜び、物語を楽しみながらも考えさせられました。
Posted by ブクログ
前半はなかなか読み進めることができず、途中でやめてしまおうかなあと一瞬思ったりもしましたが、最後まで読んで本当に良かったです。
隠居した徳兵衛の周りで思いがけず起こる様々な出来事にこっちまでハラハラしたり心温まったり。全ての登場人物がこのお話には欠かせない。電車の中で何度もうるっとし、なんとか我慢しながら最後まで読みました。
Posted by ブクログ
とっても良い話でした。
仕事一筋で趣味もなく、「質素倹約」「働かざる者食うべからず」が人生哲学だった糸問屋の主人の徳兵衛が還暦を機に隠居をする。老後はのんびり何もせず、静かに暮らそうと思っていたが、話は思わぬ方向へ進んでいく。厳しくて怒りっぽくしわい男、徳兵衛が第2の人生を金儲けではなく人助けのために生きることになるのだが、そこには純真無垢な孫の千代太の存在がある。
老後は人助けのために生きたいと思っていてもなかなか出来ないのに、思ってない人が変わっていく心の変化が読んでいて楽しいし、心動かされる作品です。
Posted by ブクログ
巣鴨の糸問屋の六代目徳兵衛は商売に身を捧げた人生を終え、隠居することにした。
ところが孫の千代太が隠居宅に来たことにより生活は一変する。千代太がその優しい性根で仲間を作り、困難に取り組み、成長することを助けるにつれて徳兵衛の心にも変化が。充実した老後の人生とはかくあるものだなぁ。
Posted by ブクログ
いやー、もう大好き!
ご隠居の徳兵衛も千代太も、みんなみんな優しくてかわいい。手習も組紐も、子供芝居も全部全部かわいい。ほっこり。
何度も読み返したいほっこり具合だった。
Posted by ブクログ
巣鴨で老舗の糸問屋を営む6代目の徳兵衛だが、還暦を機に突然の引退宣言。慌てる長男と番頭達。歴代の偶数店主が店を傾かせたことから、金に皺く、口煩い頑固爺いとなっていた。妻を店に残し、隠居所へ一人で入ったものの、趣味も持たなかったことからやる事が無い。手習所に馴染め無いことから、孫が隠居所へ入り浸るようになる。この孫が強情な孫で、犬を拾ってきたり、汚い子供達を拾ってきたり、何度注意しても拾って来る。最初の方は祖父と孫がひど過ぎて読みづらいが、徐々に徳兵衛が変わってくる。拾ってきた子供達やその親達も巻き込んで、皆んなの生活が成り立つように商売を考え始める。最後は隠居所が20名ぐらいの人達を毎日受け入れて、私設寺子屋や組紐生産工場に変わって行く。
代を譲った長男に店が傾くほどの大トラブルがあったものの、心が離れていた妻との邂逅もあり、亡くなるまでの隠居生活10年間は第二の双六の良い上がりを迎えたようだ。
Posted by ブクログ
定年退職して、4年。旅行に出かけたり、ジムや料理教室に通ったり。そんな日々を過ごしながら、かつての教員の仕事に関わる仕事も週の半分してきた。別の仕事に就く仲間もいたが、自分にはこれしかできないと思って時間を使ってきた。この本、迷いを吹っ飛ばし、自信を持ってこれから過ごしていける、覚悟をもらった。
Posted by ブクログ
心暖まる人情時代小説、まさに!主人公のご隠居さんが、融通の利かない素直でもない奥さまに優しくもないじいさまなんだけど、変わっていく、というか本来の人のよさが表に出始めるというか、ぶつぶつ言いながら楽しみを見出だしてしまうあたりがニヤッとしてしまう。卑怯な相手に大声できる啖呵とか最高。他の登場人物もとにかくみんな魅力的で応援したくなる。
Posted by ブクログ
情に流されず仕事一筋に生きてきた徳兵衛と、情にもろい孫の千代太が好対照。他の登場人物たちもみんな好感が持てる。政二郎とか善三とか、脇役もいいんだよな。
ユーモアがあって、切ないところもほっこりするところもある。読後感も良くて、やっぱり西條奈加さんの江戸人情物はいいなあ、と思った。
Posted by ブクログ
西條さんの書き振りには不安がありません。読みながら、厳しさ、不安、緊張を強いられる作品が多いものの、優しさや温かさがどんどん増幅して、幸せな読後感を味わえるのを知っているので。時代物の難解な背景、人物の絡みについては、毎作品、冒頭で「説明」とも思えるほど詳細に、ストーリーに練り込まれているので、歴史に疎い私でも楽しめます。心を射抜く人生訓、処世術の数々にも唸らせられます。私にとって、2023ラストの一冊になったので、2024に生きる一節を…。
p382 「状況の良し悪しは重要ではない。前を向く明るさと、容易に潰されね気概さえあれば、たいていの苦難は凌げるものだ。」
徳兵衛同様、吝嗇な私は、続編が文庫になるのを待って、再び千代太たちに会いにいきます。みなさま、よいお年を…。
Posted by ブクログ
読書メーターが横向きになってる。ずーっと縦にして書いてて煩わしいと。よきかなよきかなだよ。善人長屋からだが、どの作品も特徴がありしっかり面白い。前回読んだ関超えぬとも色合いが違う。とにかく徳兵衛なんだけど、出だしのサイコロの上がり目だと思った隠居が2回目のサイコロって、そこだけで食いついた。それで思った通り出来事が起きた、まさか寺小屋の様な、新しい商売が始まるなんて。確かに一回の釣りで飽きるとか、逆に身についた商いからアイデアが浮かぶ、いかりや長介の様に怖いけど懐かれたんだよ。線香立ては切ないけど
Posted by ブクログ
隠居の徳兵衛さんと孫の子どもたちが活躍するけど、現代ではなくこの時代だから成り立つ話だと思った。徳兵衛さんも楽しかったんだろうな。行ったことがある場所だったので地図があるとイメージしやすくて良かった。
Posted by ブクログ
初めての西條奈加さんの作品。
短気でケチ、一文の得にもならない他人への情など絶対にごめんだというおじいさんが、隠居を機に孫の持ち込む厄介ごとに巻き込まれてるうちに他人への情愛、商いへの情熱を持っていく。
この人情味あふれる描写、登場する人物一人一人が個性に溢れていて素敵な作品だった。久々に読んでいて温かい気持ちになれる作品に出会えたと思う。
Posted by ブクログ
仕事一筋で打ち込んできてさあ隠居するぞ!第2の人生楽しむぞ!と用意周到に進めてきたのに孫にわちゃわちゃにされるご隠居のお話( ^ω^ )
江戸の町人の暮らしぶりと人情を見事に書ききった素晴らしいお話でした
長い…読み切れるかな…と何度も手にしては置いてを繰り返した本でしたが、読み出すと続きが気になり寝る間を惜しんで…と久しぶりに熱中して読める本に出会えて読み終わった後の爽快感も一入です
Posted by ブクログ
温かいもので心が満たされる素敵なラスト。
最後の一行までいい…。何とも感慨深く幸せな涙がこぼれてしまいました。
隠居生活を送る徳兵衛を心配し、孫の千代太が訪ねてきたことから、孤独な隠居生活は一変!
物語の様相も千代太がやってくるようになってからあれよあれよと様変わりしていく…。
これは、読めば読むほどに引き込まれます。
無邪気な子どもの予想外の行動やお願いに、徳兵衛も翻弄されっぱなし。徳兵衛の慌てる姿が何とも微笑ましい。
徳兵衛が千代太と一緒に多くの人の情にふれ、助け合い成長していく。
他人の人生に関わり責任の一端を担うとともに、力を合わせ楽しむ心も孫と共有。ともに成長していく様子には目を細めてしまいます。
「商一筋」だった頃とは違う、これまでにない第二の人生を送り始める徳兵衛。
幼かった千代太の成長ぶりも眩しい。
読みながら、千代太と一緒に、また徳兵衛と一緒に人生勉強をしているようにも思えました。実に深い。
表題の「隠居すごろく」とは上手いこと言うなぁ。
ラストは感動で胸がいっぱい。
とても素敵な作品でした。
.
Posted by ブクログ
自信を持って人に勧めたい。
この作者さんの本は初めてですけど、心理描写がすごく素敵です。時代ものはとっつきにくさがあって避けてたのですごすごく読みやすかったです。
Posted by ブクログ
隠居こそ、人生の上がりだと思って仕事してきていざ仕事を止めて隠居してみたもののする事がない。
そんな徳兵衛がなし崩し的に巻き込まれて巻き込んで隠居暮らしを楽しんでいく話。
『仕事を楽しむ心がある。楽しいうちは投げ出すこともなく苦労を苦労とも思わぬもの。
…
楽しいだけでは済みませんがなんといいますかやり甲斐といった方がよいのかもしれませんね。
…仕事なのだから、つらくともあたりまえ。堪えるよりほかにならろう。』
仕事だからこそ、ちゃんとやる。だけど同じくやるんでも楽しんでできたらいいね。
私にはそこがいちばんぐさっときた。
西加奈子、他のも読んでみたくなりました。
Posted by ブクログ
これは傑作! 笑えて、泣いて、考えさせられて、いやーいい小説でした。子供達のかわいいこと! 手習いや飽きて遊びまわってるところ、泣いたり、芝居をしたり、全てが目に浮かぶよう。ミステリーを主に読んでいると後味の悪い物があったりするから、か偶にはこんな小説を読みたくなる。愉しい読書でしたよ。
Posted by ブクログ
江戸時代のお話で、人の会話は今の言葉と違い、読むのに時間がかかってしまった。でも、じっくり味わえた。
嶋屋の主人を務め上げると言う1枚目のすごろくを終えたご隠居が、周りに振り回されつつも、とても生き生き生きする様は、まるですごろくをの上でサイコロの出る目は運任せ。その時々の出来事に体当たりする様は、これまでの人生よりも彩りがあり、人に慕われ囲まれて生きていく素敵さを感じることができた。
Posted by ブクログ
最初は面白いのか?と思いながら読んだが、ページが進むにつれ話の展開に引き込まれた。
幼い孫が隠居の祖父を引っ掻き回し、厳しいだけの人から温和な人に変えていく様子や、周りの人々とのやりとり、次々と起こる事件が面白い。
最後の章は目頭が熱くなった。
Posted by ブクログ
糸問屋嶋屋六代目として勤め上げて還暦を機に隠居した徳兵衛。根っからの商人で暇を持て余すも孫の千代太が次から次へと拾い物をして持ち込む動物や人に振り回されるうちに第二のすごろくが始まる。
最初は子供とはいえなんか持ち込んでは「お祖父様お願い!」の千代太や施されるのは嫌でも強請るのは当たり前の子供達にイライラした。読むのを止めようかと思い始めた時に千代太屋が立ち上がりそこからは楽しく読めた。最後は徳兵衛さんのお葬式で幸せな第二のすごろくの上がりを感じて嬉しかった。
Posted by ブクログ
Audibleにて。
隠居したお爺さんと、その孫、そこに集まって来た子ども達のほのぼのいい話。
タイトルにあるすごろくの意味がわかった時、うるっと来た。あがりの無いすごろくが、ずーっと続いていくって良い表現。
Posted by ブクログ
居場所を見つけていく話だった。
すごろくのように、少しずつ転がって、ぴたりぴたりと収まっていく。
多少戻りはあっても、盤そのものがひっくり返されるようなことは起こらない。
読後感の良い作品だった。
続編があるという。この、ぴたりと収まった後、子どもたちの更なる成長が見られるのだろうか。あるいはご隠居の?それともお登勢さんの?
とても楽しみだ。
Posted by ブクログ
しわい屋で短気な主が、隠居後に変わっていくお話。
すっごく面白くて、登場人物皆が生き生きと描かれて面白かった❗読みながら、このわちゃわちゃした感じ大好きだわーって感じた……から、最後のさらりと描かれてた部分が凄く辛く悲しかった。正直、読後感しんどかった。
隠居後の話だからあってもおかしくはないけど、個人的でワガママな感想としては描いて欲しくなかったので星四個(泣)
Posted by ブクログ
商売ばかりで家族を顧みてこなかった糸問屋のご隠居が、隠居所に遊びに来る孫に振り回されているうちに家族愛と人間愛に目覚める。
基本的に善人しか出てこないが、例外的に登場する敵役の憎々しいさまがアクセントとなって、その後の大団円を盛り上げる。
一文の得にもならないのに子供たちの芝居の台本と演出、さらには手習いの師匠まで買って出る銀麓の存在がいい。
趣味もなく、隠居所で暇を持て余していたご隠居が、一連の出来ごとのあとでは数十年の女子供に囲まれ、慕われるさまは、人生捨てたものではないと思わせる。
「情けは人の為ならず」
Posted by ブクログ
老舗の主、嶋屋徳兵衛の隠居話。仕事一筋の生活に終止符を打ったは良いけれど待っていたのは味わったことのない孤独感。その時が来れば誰もが感じる孤独感
優しい孫の登場で色々ありながらだけれども、第二のすごろくに生き甲斐を見つけた徳兵衛は幸せ者です
勘七、おはち親子と徳兵衛の話や、36年ぶりに「おまえさま」と呼ばれた徳兵衛と妻登勢との話やら目頭がたびたび熱くなりました
Posted by ブクログ
人の変化、子どもの成長、そういったものがしみじみと心に迫る感じのいい時代小説でした。
主人公となるのは代々続く糸問屋の主人だった徳兵衛。店を息子に任せ悠々自適にすごそうと考えていたものの、趣味も見つからず暇を持て余す日々。そんな中、徳兵衛の元に孫の千代太が訪れるようになり、徳兵衛の周囲はにわかに騒がしくなっていきます。
まず徳兵衛の心理の書き方が絶妙。引退を引き留められるかと思いきや、思ったほどの反応は得られず、自分より女将さんのほうが頼られる瞬間に悶々としたり、そんな女将=妻にどこか遠慮がちになったり。
隠居する徳兵衛のこの年ならではの悲哀、というほど大げさなものではないけど、自尊心と寂しさ、物足りなさ、が色々混ざったなんとも言えない感情が巧みにそして、おかしく描かれます。自分はまだそういう年齢じゃないけど、なんというか妙に刺さった。上の年代ならより深く突き刺さりそう。
そんな徳兵衛の元に訪れた孫の千代太。心の優しい千代太は捨てられた動物を拾ってきて、徳兵衛に飼ってほしいと頼む。それを徳兵衛が説き伏せたことで、事態はさらに大きくなっていく。
この小説のもう一人の主人公が千代太。優しくも世間知らずで、幼い言動故に友達を傷つけてしまう。そんな千代太や友人たちを見かね、徳兵衛は渋々ながら子どもたちに力を貸すことに。
世間知らずで甘えん坊だった千代太の著しい成長。友達を助けたい、そのために何ができるか必死で考え、責任を背負い成長していく姿の爽やかさ。一方で徳兵衛は手を貸しながらも、あるところでは手を引き、子どもたちに自立をうながすよう考えさせる。そのさじ加減も絶妙。
徳兵衛の啖呵やかんしゃくも味があっていい。礼儀の知らない子どもや、子どもを放り出す母親、権力を嵩に着た大人などへの啖呵は小気味よくて、こういう気持ちよさも時代小説ならではだと思います。
千代太に関わっていく中で、徳兵衛自身にも変化が生じます。自分の中になんとなく生まれていた偏見が正され、儲けとはまた違った商売の楽しみを見いだし、千代太をはじめとした人々の変化や成長に心を動かされるようになる。そして徳兵衛自身の家族の向き合い方の問題にもつながっていきます。
登場人物がどんどん増えていくのに、それが余計という感じはせず、わいわいがやがやといった楽しさがどんどん膨れていく。そしてかたくなだった徳兵衛の心も徐々にほぐれていく。
作中で描かれる問題もけっこう現代につながるところがあります。子どもの教育格差や貧困。女性の労働問題。そうしたものを一切合切飲み込み、突き進んでいくのもとても気持ちよかった。
登場人物みんな、大人も子どもも男性も女性も関係なく、みんなどこか粋で魅力あふれる人物ばかりでした。個人的に徳兵衛の妻のお登勢が好きでした。
徳兵衛はなぜか決まり悪くて、お登勢に隠れて色々やっているのに、周りの人がお登勢に注進して、徳兵衛の知らないところで差配を振るっているのとかおかしかったし、そんな二人の酸いも甘いも超えた夫婦としての関係性もまたよかったです。
Posted by ブクログ
とっても良かった。「ほっこりする」とはこのことだなぁ。
最後数行がとっても暖かくて、じんわりと暖かい涙が滲む。
散々働き尽くして、さあ隠居生活始めるぞ!と意気込む徳兵衛が千代太を筆頭にした子供達のドタバタに巻き込まれる姿にクスッとくる。
何だかんだ文句言いつつ突き放せない徳兵衛が愛しい。
商い一筋だった頭が固くて面倒臭い(!)おじいちゃんといった印象の徳兵衛だったけれど、
子供達や出会う人々の「人情」に触れて徐々に変わっていく様子にとても優しい気持ちになる。
同時に千代太が徳兵衛から「商い」を教わり成長していく姿も見ていてとても嬉しい。
子供達のやり取りも可愛くて、時に頼もしくて読んでいて楽しかったなぁ。
お芝居の場面はちびっこが可愛くってきゅんきゅんしてしまった。
江戸の商いや暮らしについて知れて楽しかった。昔も今も商いの基本は変わらないんだな。
『江戸版お仕事小説』としても楽しめた!
しかし数字にてんで弱い私。お金については難しくてピンと来てないけれど。米……?匁……?
時代小説は大好きだけど難しい内容のものも多くて、分厚いものはいつも躊躇いがち。
そんな躊躇はなんのその。面白くってさらさらと読んでしまった。
西條奈加さんの時代小説好きだなぁ。