あらすじ
親子三代で菓子を商う「南星屋」は、 売り切れご免の繁盛店。武家の身分を捨て、職人となった治兵衛を主に、出戻り娘のお永と一粒種の看板娘、お君が切り盛りするこの店には、他人に言えぬ秘密があった。愛嬌があふれ、揺るぎない人の心の温かさを描いた、読み味絶品の時代小説。吉川英治文学新人賞受賞作。
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江戸時代に和菓子屋『南星屋』を営む、治兵衛、お永、お君の三世代家族。治兵衛の出生の秘密や、お永の元夫との関係、お君の縁談などの話が和菓子とからめて展開される。時代背景や、言葉遣いなどで少し入り込むのにとまどうけれど、家族の愛情や治兵衛の思慮深さが感じられ、読後感の良い話だった。この時代は武家や町民といった身分があって結婚を決めるのも仕事を決めるのも色々大変だったのだなあと思いつつ、結局のところそこにいるのは今も昔も人間で、同じようなことに悩んだり喜んだりするのだと感じた。
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読み始めて これはいつか読んだアンソロジーの中の一作だと気がついた。
あの時は誰の作かもあまり気にせず読んでいたけれど…
アンソロジーは宝の山ですねぇ。
この作品は武家の出でありながら菓子職人となった すでに還暦を迎えた菓子屋 南星屋の主 治兵衛が主人公。そして治兵衛には人に言えない出生の秘密があった。
今回は筋違いの恨みからヒドイことになってしまったけれど 文章にあったように 治兵衛は何ひとつ失くしてなどいない。本当に良かった。
次作を読むのが楽しみだ。「善人長屋」「狸穴屋」に続きまた一つ西條さんのシリーズものを読む楽しみが増えた。
個人的に石海が好きだ。五郎の時の彼も好きだ。
作中の銘菓をついつい検索してしまう。毎回どれか一つお取り寄せしてしまおうか… 治兵衛は渡り職人としてちゃんと全国を渡り歩いたというのに 申し訳ない!
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「善人長屋」シリーズで西條作品が好きになり
「千両かざり」を楽しんでから
こちらの「南星屋」シリーズに読み継いできました。
どの作品にも物語のカギを握る娘が登場しますね。
特に本作の“お君”は明るくお転婆な一面がありつつも
話を追うごとに一人の女性として成長していきます。
次作以降で治兵衛ら家族に見守られながら
お君がどんな菓子作りをするようになるのか
とても楽しみになりました。
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大好物の江戸市井モノ、人情職人気質モノ、飯(菓子)テロモノ。元気でおきゃんなお君ちゃんも可愛いし。吉川英治文学新人賞受賞作。次作も読むの楽しみ。
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この本に出てくる人々の顔や町並みが自然と浮かんでくる。
栄華や名誉にこだわらず、ただ今を生き、人と日常を大事にしている人々がとても温かかった。
時に内省し、変わらぬ日々を大事にしつつも、
時間による変化や自分を受け入れながら生きている姿は魅力に溢れていると感じる。
続編も楽しみである。
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何が食べたいかわからないけど、お腹も減ったのでたまたま入ったレストランで出されたのものが「え?私の食べたいもの知ってた?」と言いたくなるような、痒いところに手が届くちょうど良いお話でした。当たり前の感想ですが、和菓子が食べたくなりますので、何か調達してからお読みになるのがいいかと思います。
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おもしろかった。
治兵衛と石海の兄弟の絆に心が温まり涙が...
ラスト最高です。
治兵衛の「大きな欲を出さず、無闇に敵を作らずに、ただ良い仕事をして人生を程良く送る」という生き方は、私の価値観とフィットしました。
しかし、治兵衛ほど人間ができていないので、為右衛門に対しては謝罪の一言も無しか!?と腹が立ちましたが笑
唐津銘菓という若みどりが気になって調べてみたところ、ネット販売でそれらしいものはなく、佐賀県まで行かないと食べられなそうでショック。食べたい。
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とても良かった。
誰かを想う気持ちに溢れた優しい一冊だった。
菓子店“南星屋”を舞台に元武家の店主、その娘と孫、僧侶である店主の弟の日常を描く。
日々持ち込まれる厄介ごとを家族で支え合いながら乗り越えていく、その姿に心揺さぶられた。
☆4.8
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これが職人の極みなんだろうな、見聞は大事だと、それを活かせる仕事に繋がるとか羨ましい。孫が途中で居なくなって、残念な感じがして、でも上手く終わらせた。そうか職人になれない女性だから、あんな感じになるかと、でも最後に創作お菓子を親娘三代で作る喜びが良い。この先どうなるのか分からないけど、孫に全てを教える気がする
心淋し川が良かったのでこちらも読んでみました。大鶉と南天月、食べてみたいなぁ。
人情話に初めて取り組んだのがこの作品だったそうですが、本当、この世界にずっといたいなあと思う作品でした。読み終わるのが名残惜しかった。
こちら続編があるんですね。続編も読みます!
こんなお店が近所にあったら、足繁く通ってしまいます!
悪意にさらされても、危機に瀕しても、娘や孫娘、弟と力を合わせて乗り越えていく清々しさが気持ちのよい作品でした。
何よりお菓子が美味しそう!
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武家の身分を捨て、菓子職人になるべく日本各地を修行行脚し、江戸に晴れて菓子屋『南星屋』を構える。
武家屋敷ばかりが軒を連ねる場所柄、周囲は菓子屋にしても立派な贈答品を扱う店がほとんど。
そんな中、父、娘、孫で営む南星屋は庶民にも口に出来る価格で商い、3人が暮らして行ければ十分という人柄と心意気。
義理人情や家族愛の作品!^_^!
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表紙絵の和菓子。
名前いっぱいあるけど、この場合、御座候よなー。
あ、でも江戸が舞台なら違うのか。
とか、ちょっとウキウキしながら読み始めるも、すぐに雲行き怪しくなってしまった。
あまりに何も起こらない。
趣のある和菓子の表現にごまかされてる気がする。
このままじゃ脱落する。
と思い始めたら、中盤の「大鶉」で待ったがかかる。
ほっとするも、ありきたりではあるなぁ、と少し逆戻り。
そして最終話の「南天月」
人情に厚い話で見事逆転。
その後を知りたいと魅力に落ちました。
どうやら、謎解きや事件があって当たり前になってしまっている。
戦国の世じゃない平和な時代って事も考慮すべきだったな。
脱落しないでほんとよかった。
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シンプルだけどやわらかくて美味しそうな装丁に惹かれて購入
西條奈加先生の作品は初めてだったが、綺麗であたたかくて読みやすかった
すべてが綺麗事だと嘘くさくて読んでて萎えてしまうけど、ほどほどに人間臭さもあってバランスがよかった
無性にお菓子が食べたくなった
罪深い作品だ
Posted by ブクログ
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お君ちゃん、
今日のお菓子は何だい?
頬が落ちて、心も温まる口福な時代小説。
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西條さんはずっと気になっていた著者のお一人です。
「心淋し川」も気になっていましたが、
テーマ的に本作の方が読みやすそうで手に取りました。
親子三代で営む菓子屋「南星屋」。
お値段はお手頃で庶民味方だけど、味は天下一品。
みんなから愛される菓子屋です。
その南星屋を舞台に起こる様々な出来事。
短編になっていて、それぞれにお菓子が登場します。
時代版「和菓子のアン」という作品もこんな感じなのかな?と思いながら(読んだことないので違っていたらすみません。苦笑)
各話で登場するお菓子をネットで検索して見ながら、
南星屋さんの家族愛と、
美味しそうなお菓子に癒されました。
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知り合いの中学生が受けた高校入試で、この作品の一部が出題されました。
「おばちゃん、現代文は誰の作品が出ると思う?」
と尋ねられたので、過去問題集を見ながら、
「そうねぇ、この人の小説とか、読んでおく?」
と、したり顔で何人かの作家の名をあげておきました。去年の夏の話です。
けど、、
時代小説は、ノーマークでした!
Yちゃん、ごめんよぉ。。。
見事、空振りしました。
フルスイングで空振りして、勢いあまってヘルメットを飛ばした上に、もんどりうって、地面にひざまずいてしまった気持ちです。バッターボックスの土が、ユニフォームの膝を汚します。あ~ぁ、お母さんに叱られる。。。w
(こんな書き方をするのは、センバツ高校野球の影響です。)(今も、エンモユカリモナイ学校の試合を眺めながら、これを書いています。)
ずっとバッターボックスにうずくまっていてもしかたがないので(邪魔なので)、出典の小説を読んでみることにしました。
わたしの出題予想も甘かったですが、この作品も、甘い和菓子屋さんのお話です。書名は『まるまるの毬』。毬は(いが)と読みます。連作短編小説です。
このお話の舞台は、お江戸麹町にある菓子屋「南星屋(なんぼしや)」です。
半蔵門から西に向かって、ゆるい弧を描く蛇のように長く伸びている麹町。その中ほど、六丁目の裏通りにあります。
少し引用しますね。
『間口一間(いっけん)のささやかな構えの店は、屋号の珍しさより他は、とりたてて目立つところもない。この辺りは北に番町、南に外桜田と、武家屋敷ばかりが軒をつらね、自ずと武家相手の店が多い。』
五七調に似たキレの良い文体。眼前に見ているような江戸の町の描写。きっと、作者の西條奈加(さいじょう なか)さんの頭の中には、VRのように江戸の町並みがあって、そこを歩きながら小説を描いているのでしょうね。
南星屋の店主は、治兵衛(じへえ)。十歳で五百石の旗本家の身分を捨てて、上野の菓子職人に弟子入りして修行を積み、その後は渡り職人として各地の菓子を学んだ人です。
今日も、昼の鐘とともに、中から板戸が外されて南星屋が開店します。表には、多くのお客が、滅多に江戸では食べられないお目当ての菓子を待っています。
さて、
知り合いの子の高校入試問題は、2作目の「若みどり」から出題されました。
ある日、武家の嫡男 十歳の、稲川翠之介(いながわ すいのすけ)が、治兵衛を訪ねてきて「弟子にしてください!」と頼みます。
治兵衛は弟子入り許可はしませんが、次の日から翠之介は、毎日、南星屋の菓子作りを見に来るようになりました。
半月ほどした頃の夕刻、翠之介の父親 崎十郎(さきじゅうろう)が南星屋に怒鳴り込んできます。
入試問題文は、「治兵衛を前にして、崎十郎が翠之介に対して、弟子入りをやめるよう説得する場面」をもとに作られていました。
祖父の頃は羽振りが良かった稲川家は、崎十郎の代になって窮乏しています。
崎十郎は、翠之介が貧乏暮らしを嫌がって、菓子屋に弟子入りしたいのだと思っています。
ところが、翠之介は、崎十郎が毎日、愚痴ばかり言っている姿が嫌で南星屋に逃れたのでした。
二人の話を聞いていた治兵衛は、翠之介が本当は崎十郎を強く慕い心配していることを見抜き、翠之介に遠国への修業を命じて動揺させ、弟子入りを思いとどまらせます。
説得の最後に、治兵衛は翠之介対し、「己のすべきことを修めて、それでも菓子屋になりてえなら、相談に乗りやしょう。それまでは、決してここへ来てはなりやせん。」と言います。
「それまでは、決してここへ来てはなりやせん。」と述べたのは、なぜか? 八十字以内で書きなさい。
が、問題でした。みなさんも原作を読んで、解答を試みてはいかがでしょうか。
「みどり」というお菓子の作り方(砂糖を幾度もかけて縁取る)を例えに、翠之介に身を縁取ることを説く治兵衛。素敵なお話でした。読みやすい表現に、美しいリズムの名文でもあります。15歳の受験生に読んでもらうのにぴったりな文章だと思いました。
ま、この出題ならイイかな(負け惜しみ)、と心のいがを収めて、まるまるの心を取り戻したわたし(みのり)なのでした。
よぉし、来年こそは、出題予想をジャストミートするぞぉ!
と、思ってみたものの、来年はもう予想する必要はないんだった。。。
あぁ、見逃し三振の気持ち。。。
でも、Yちゃんは、合格ホームランでした!⭐︎
良かった良かった♡
カキーン!⭐︎
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武家の家を出て諸国を巡り修行をして菓子職人の腕を磨き南星屋を営む治兵衛、娘のお栄、孫のお君。
江戸時代は今みたいに気軽に旅には行けないし物産展やアンテナショップがあるわけじゃないし諸国の銘菓を出す南星屋が繁盛するのは頷ける。治兵衛の家族は実家も含めてお互いを思い合って温かな家族で理不尽としか言いようのない苦難も乗り越える。続編もあるようなのでまた楽しみなシリーズに出会うことができました。
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南星屋シリーズ第一弾。
武家の身分を捨て、菓子屋になろうと決心し、諸国を16年も周り、各地で修行をして、麹町に南星屋を開いた治兵衛。旅先で妻を亡くし、娘と孫娘の親子三代で和菓子屋を営んでいる。
将軍家の御落胤という秘密をもつ治兵衛。娘のお永は夫の浮気が原因で娘のお君を連れて、実家である南星屋に戻ってきている。いろいろ問題を抱えている家族であるが、家族みんなで、いろいろな問題を乗り越えていく。
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江戸の菓子屋、南星屋は店主があちこちで食べた経験から毎日のように違う菓子が食べられる、庶民的な店。店主の治兵衛、出戻り娘のお永、孫のお君の三人で切り盛りする。ある藩の門外不出の菓子を売っていたと疑われる件、武士の子が弟子入りしたいと願う件などの連作短編集。
とても良かった。義理と人情という言葉で簡単には片付けられない人の思いと絶妙なストーリー展開。菓子の話がスムーズに添付され、様々な和菓子が食べたくなる。
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お菓子や南星屋の治兵衛、お永、お君を中心に描かれる時代小説。家柄が身分や結婚などさまざまなことに大きく影響する時代に暖かい家族を中心に繰り広げられる人間模様。お君の可愛さ、治兵衛の人の良さ、孫との関係にホロリとする。
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全七エピソードそれぞれの「カスドース」「大鶉」など和菓子のタイトルがつけられていて、もちろんそのお菓子が大きく関わる展開になっている。
時代小説はかなり久しぶりで、まったりした展開に初めはやや食傷気味だったけど、次第にハマって登場人物を見守る感じになっていった。
何より楽しいのは描かれているお菓子の数々。
洋菓子もいいけど、和菓子はほっこりする♡
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お江戸にある大繁盛の菓子店、南星屋のお話。
武家の身分を捨てて職人になり、旅をしながら各地の菓子を習得してそれを再現して商売してる。治兵衛の欲を出さず、自分や身内を卑下することもない人柄が良く、思ったより穏やかで読みやすい本だった。
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全国の名産のお菓子の中から日に3品だけ作って売り切れ御免という、本当に存在したなら画期的であったであろうユニークなお菓子屋が舞台の物語。
それぞれのお菓子にまつわる人情話や、豪快でユニークな弟など読みどころがたくさんありますが、将軍の落胤という仕掛けは必要だったかな?
ちょっと話が大きくなり過ぎて、小さなお菓子屋には合わないと思いました。
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江戸の街中で評判の菓子店南星屋。菓子職人で店主の治兵衛とその娘の母娘が店を切り盛りしながら仲睦まじく生きる姿を描いたホームドラマ風時代小説。
出生に隠された秘密を持つ治兵衛と登場人物たちの関係に見える人情の機微に触れながら物語は進んでゆく。親子三代が三人三様に世の波風(それも結構な難儀) に揉まれながらも明るく生きる背景に家族の絆が強く感じられ、その大切さを思う。
人の世の幸せは互いの配慮が築く良き人間関係にありと再確認できる心潤う作品。