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Posted by ブクログ
思わず惚れ惚れしてしまう作品というべきか。いい小説を読んだなあ、としみじみと振り返ることのできる温かく爽やかな時代小説です。
ヒロインとなるのは飾り職の老舗「椋屋」の娘・お凛。若いながらも椋屋をおかみさんのように切り盛りしていたお凜は、次代の椋屋主人を決めるよう託されます。そして椋屋に先代口利きの新たな職人がやってくるのですが、これがなかなかのくせ者で……
とにかく人物描写が巧み。女性ながら細工に幼いころから情熱を注ぎ、一方で女性ゆえ男社会である職人の世界では自らの腕を発揮する機会のないお凛。そんな彼女の葛藤とそれでも断ち切れない細工への思い。そうした複雑な感情を巧みに描きます。
そして後継者争いのさなか椋屋に現れた謎の職人・時蔵。技術こそ間違いはないものの、性格に難ありで椋屋の職人たちの間には徐々に亀裂が入り始める。
椋屋をまとめなければいけないという責任のもと、時蔵に振り回されながらも奔走するお凛。一方でその卓越した技術や謎めいた人間性に徐々にお凜は惹かれ始める。
この恋愛感情の初々しさやみずみずしさも読んでいて非常によかった!
お凛以外の登場人物もそれぞれがとても人間味があって生き生きしています。お凜の友人であるお千賀との信頼関係と友情も心が温かくなる。職人たちであったりお凜の仕事相手や仲のいい同心であったり、それぞれに思いや葛藤というものが描かれていて、そして見せ場がある。それが小説の中身をより強固にしていく。
天保の改革により芸術品がぜいたく品として取り締まられ窮地に立たされる椋屋。そこを乗り越えようとする職人たちの矜持!
小説の一番の魅力としてあるのは、やはりお凛の懸命さによるものと思います。後継者問題。職人たちの派閥争い。改革による仕事への締め付け。そして自分の細工の腕が認められることの喜びと挫折。女職人としての孤独。そして恋心。
様々なトラブルに対しお凜は懸命に真っ直ぐに挑む。NHKの朝ドラのようなヒロインの爽やかさと一生懸命さにまず共感し、そしてお凛以外の魅力的な登場人物たちにも心つかまれ、権力や社会の規範と対峙し職人としての矜持を貫く姿に思わず心打たれる。
時代小説らしい人情と矜持を真っ直ぐに描いた、心に爽やかな風が吹く見事な一作でした!
Posted by ブクログ
2009年刊行の『恋細工』を2011年に文庫化したものを、直木賞受賞で、改題の上再刊
江戸の錺職(金銀細工工房)椋屋の四代目親方が早世し、「次の親方を3年後に義妹で三代目の娘お凜が決めること」という遺言を残し、「平戸」という線細工の技術を持つ時蔵を入れる。孤高の時蔵は他の職人と折り合いが悪くトラブルが続くが、お凜は平戸の技術を真似いくうちに時蔵に惹かれる。
しかし、水野忠邦の天保の改革によって奢侈として金銀細工は禁じられて、工房は危機に立たされるが、販売を担当する同族の生駒屋から、密かに千両で錺神輿の製作が依頼され、工房は一つになって取り組む。生駒屋の政界工作で神田祭で神輿が披露されると民衆からはやんやの喝采を浴びるが、時蔵は意匠をとがめられて捕らえられ、獄死してしまう。
3年経って、お凜を五代目にという四代目の真意が明かされるが、お凜は断って時蔵の残した意匠によって雪の結晶をあしらった香炉を製作して秋田藩に献上し、秋田から技術を修行しに銀細工師がやってくる。
『金春屋ゴメス』の印象が強烈すぎて、その後のこの作品は読んでいなかったが、なかなかの重厚なあじわい。
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小説・文芸
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