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錺職の老舗「椋屋」の娘・お凜は、女だてらに密かに銀線細工の修行をしている。跡目争いでざわめくなか現れた謎の男・時蔵は、江戸では見られない技で簪をつくり、一門に波紋を呼ぶ。天保の改革で贅沢品が禁じられ商いが難渋するなか、驚天動地の大注文が入る。江戸の町に活気を与えたいと、時蔵とお凜はこころをひとつにするが――。職人世界の粋と人情を描く本格時代小説。(『恋細工』改題)(解説・細谷正充)
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Posted by ブクログ
ひとに疎まれてばかりの時蔵と女錺師として生きたい凛との出会い。悲しくもあり素晴らしくもあり、切なくもありといろいろなおもいを噛みしめながら読み勧めました。周りの人々との軋轢や気遣いも、凄く丁寧に描かれた素敵な作品でした。
じっくり読めた。沁みた。険しい先行きに主人公が女性ってもの凄い応援した。物語が与一からどんどん繋がり、大事な後目を決めるという大きな舞台でした。ただでさえ癖が凄い職人の世界で、最初の紛争から心を一つにして行く、祭りも交えて気持ちがよくて粋ですね。なんか親方も出来ると思うけど、職人になって秋田に毎年行...続きを読むくとかいう、やっぱり粋なのかな。2人は夫婦になって欲しかったです。続けて2冊読んだし、満足の読書でした
天保の改革の頃、錺細工の老舗の跡目。五代目を誰にするか、剃刀のような鋭い職人を受け入れつつ、自分も細工作りを陰でするお凛。 巻を措く能わず。めちゃくちゃ面白かった。金属を使った江戸時代の細工なんて全く知らない。職人の世界も未知。跡目の話も。お凛を含む人物造形が素晴らしい。ストーリーも凄い。どんでん...続きを読む返しが何度もあった。
時代とか環境とか、思うに任せない中で、やりたいことを貫いていく主人公もいい。 周りの人の理解や関わりで、人はどんな過去を背負ってても、変われるんだっていうところもいい。 その人の中にあるものを、誰が見つけてくれるのか。そういう出会いが全ての人に訪れますように…。
思わず惚れ惚れしてしまう作品というべきか。いい小説を読んだなあ、としみじみと振り返ることのできる温かく爽やかな時代小説です。 ヒロインとなるのは飾り職の老舗「椋屋」の娘・お凛。若いながらも椋屋をおかみさんのように切り盛りしていたお凜は、次代の椋屋主人を決めるよう託されます。そして椋屋に先代口利きの...続きを読む新たな職人がやってくるのですが、これがなかなかのくせ者で…… とにかく人物描写が巧み。女性ながら細工に幼いころから情熱を注ぎ、一方で女性ゆえ男社会である職人の世界では自らの腕を発揮する機会のないお凛。そんな彼女の葛藤とそれでも断ち切れない細工への思い。そうした複雑な感情を巧みに描きます。 そして後継者争いのさなか椋屋に現れた謎の職人・時蔵。技術こそ間違いはないものの、性格に難ありで椋屋の職人たちの間には徐々に亀裂が入り始める。 椋屋をまとめなければいけないという責任のもと、時蔵に振り回されながらも奔走するお凛。一方でその卓越した技術や謎めいた人間性に徐々にお凜は惹かれ始める。 この恋愛感情の初々しさやみずみずしさも読んでいて非常によかった! お凛以外の登場人物もそれぞれがとても人間味があって生き生きしています。お凜の友人であるお千賀との信頼関係と友情も心が温かくなる。職人たちであったりお凜の仕事相手や仲のいい同心であったり、それぞれに思いや葛藤というものが描かれていて、そして見せ場がある。それが小説の中身をより強固にしていく。 天保の改革により芸術品がぜいたく品として取り締まられ窮地に立たされる椋屋。そこを乗り越えようとする職人たちの矜持! 小説の一番の魅力としてあるのは、やはりお凛の懸命さによるものと思います。後継者問題。職人たちの派閥争い。改革による仕事への締め付け。そして自分の細工の腕が認められることの喜びと挫折。女職人としての孤独。そして恋心。 様々なトラブルに対しお凜は懸命に真っ直ぐに挑む。NHKの朝ドラのようなヒロインの爽やかさと一生懸命さにまず共感し、そしてお凛以外の魅力的な登場人物たちにも心つかまれ、権力や社会の規範と対峙し職人としての矜持を貫く姿に思わず心打たれる。 時代小説らしい人情と矜持を真っ直ぐに描いた、心に爽やかな風が吹く見事な一作でした!
恋であり恋でなく、仕事に打ち込み、細工に没頭する職人の魂の触れ合いという絆を結んだのかな、と。 最後に訪れた人との会話に私は涙した。 読む人によってまた別の場面で泣くのだろう。 胸に来るポイントが多くて、読み応えがあった。 お千賀がすごく良い。応援したくなる人物が多かった。
時は江戸時代、天保の改革のころ。主人公は女錺職人・お凛。錺職の老舗・椋屋の四代目だった義兄が若くして亡くなり、五代目選びに巻き込まれる。四代目の指示に従い雇い入れた職人・時蔵への恋心。その恋は実らず、予想外の事態となるが、最後はほのぼの。読後感はとても良かった。
2009年刊行の『恋細工』を2011年に文庫化したものを、直木賞受賞で、改題の上再刊 江戸の錺職(金銀細工工房)椋屋の四代目親方が早世し、「次の親方を3年後に義妹で三代目の娘お凜が決めること」という遺言を残し、「平戸」という線細工の技術を持つ時蔵を入れる。孤高の時蔵は他の職人と折り合いが悪くトラブ...続きを読むルが続くが、お凜は平戸の技術を真似いくうちに時蔵に惹かれる。 しかし、水野忠邦の天保の改革によって奢侈として金銀細工は禁じられて、工房は危機に立たされるが、販売を担当する同族の生駒屋から、密かに千両で錺神輿の製作が依頼され、工房は一つになって取り組む。生駒屋の政界工作で神田祭で神輿が披露されると民衆からはやんやの喝采を浴びるが、時蔵は意匠をとがめられて捕らえられ、獄死してしまう。 3年経って、お凜を五代目にという四代目の真意が明かされるが、お凜は断って時蔵の残した意匠によって雪の結晶をあしらった香炉を製作して秋田藩に献上し、秋田から技術を修行しに銀細工師がやってくる。 『金春屋ゴメス』の印象が強烈すぎて、その後のこの作品は読んでいなかったが、なかなかの重厚なあじわい。
遅まきながら、受賞おめでとうございます。 「ごんたくれ」や「六花ふるふる」につながるような内容でした。 お義兄さんが素晴らしい‼︎
すごく好きです。 錺や細工、どんなものかと想像しながら読んでいました。いつだって何かに直向きなひとは格好いい。 女であるがゆえに職人になれないお凛、才がありすぎるゆえに苦難が多い時蔵、そして椋屋、生駒屋の人々。 みんなの化学反応のような変化が、本人たちは大変だろうけど、読み手からするとわくわくす...続きを読むるものでした。 歴史が絡むのでわからないことも多々あるのですが、ひたすらに自分のできることをと駆け抜ける彼らのように、読みふけってしまいました。
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千両かざり―女細工師お凜―(新潮文庫)
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西條奈加
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