司馬遼太郎のレビュー一覧
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ウクライナ情勢に関連して増刷され平積みになっている司馬遼太郎の作品。坂の上の雲、菜の花の沖でロシアについて書いた司馬遼太郎がその時に触れたロシアの一側面をまとめている。
司馬遼太郎といえばモンゴルというイメージが私にはあるのだけれど、そのモンゴルという大地、草原地帯の遊牧民との関係性からロシアの国家観を描いている。
クリミアから中央アジア、シベリアへと続く草原地帯における遊牧民から圧迫を受け続け、次第に克服し内部に取り込んでいく過程が、ロシアの非ヨーロッパ的なアイデンティティとして通奏していて、ロシアのユーラシア主義はここから続いているということがわかる。ロシアのシベリアへの進出はアメリカにお -
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下巻、高松城の水攻めから、天下統一のために家康を懐柔させるところで幕は閉じる。個人的には九州征伐、北条征伐を行うところまでは進めて行って欲しかったところではある。
しかしその後の朝鮮出兵ともなると、権力に魅入ら、闇を纏い、最後には枯れ衰える秀吉を描くことに、著者は抵抗があったのかも知れず、話の盛り上がりに欠けるところが見えていたのかもしれない。
信長に見出されたことで開花した自身の能力を最大限に発揮して、他の者との違う視点と工夫で戦を展開していく姿に読者は引きずり込まれ、さらに後半ともなると、他者に対する気配り以上の演者として(それは信長に仕えたから養えたものなのかもしれないが)振る舞う -
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主人公は信長というよりも光秀なのではないかと思われる。また、主人公ではないが、細川藤孝は影の主役に位置付けられる。
ただ、信長にしろ光秀にしろ、斎藤道三の弟子であり後継者として位置付けられている。その意味で、この物語はやはり道三よる国盗りについての話だといえる。すなわち、道三は美濃という国を盗ったがそこまでであり天下は盗れず、それを受け継いだ信長は多くの国を盗ったが天下を盗る寸前で道三のもう1人の弟子である光秀に討たれ、光秀が一時的にではあるが天下を盗った。その意味で、この物語は信長と光秀に交代しつつ、道三による国盗りという点では一貫していると言えるだろう。 -
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秀吉の前半生に持っていたであろう天性の明るさを十二分にまで描き、その出世していく姿に対して、小説の力で見事なまでに面白さを加味しているところに、加速度的にのめり込ませられた。
当時としては、現代よりも当然として自身の能力よりも重要視されている家柄などのことに加えて、自身のコンプレックス(猿顔、血筋、身体能力等)をいかに単純に逆転していくかといったものでなく、あまり描き過ぎていないところがいいのかも知れない。
それ故に人たらしは何処か納得はするものの、真似のできない、捉えどころのない秀吉自身しか有せない、個性(とでもいいのか)と浮かび上がる。
下巻に秀吉の影がどの様に濃くなるか、気になる