司馬遼太郎のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ
「たとえば、軍艦というものはいちど海洋航海に出て帰ってくると、船底にかきがらがいっぱいくっついて船あしがうんと落ちる。
人間もおなじで、経験は必要じゃが、経験によってふえる智恵のとおなじ分量だけのかきがらが頭につく。
智恵だけとってかきがらを捨てるということは人間にとって大切なことじゃが、老人になればなるほどこれができぬ。」
「人間だけではない。国も古びる、海軍も古びる。かきがらだらけになる。」
「山本権兵衛という海軍省の大番頭は、かきがらというものを知っている。日清戦争をはじめるにあたって、戊辰以来の元勲的な海軍幹部のほとんどを首切ってしまった。この大整理は海軍のかきがら落しじ -
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真の主人公は
上巻より遥かに緊迫度を増した話が続いている下巻である。内務卿大久保利通の政治家ぶり悪人ぶりが見事に描かれている。この作品の主人公は一見 江藤新平のようであるが、真の主人公は大久保利通である。
大久保利通の狙いであった「見せしめとして江藤新平を死刑にして士族の反乱を抑える。」という目的は達成できたのだろうか?この後、士族の反乱は神風連の乱 秋月の乱 萩の乱 と続き、西南戦争へつながってゆくのだが。小説としての魅力はやはり描いている人物の魅力の違いだろうか、「翔ぶが如く」よりは劣ってしまうのはやむを得ない。