司馬遼太郎のレビュー一覧
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久方振りの司馬遼太郎作品。時代もので、これが直木賞受賞作品ということであるが、司馬遼太郎の作品としては、代表作とはあまり言えないのではなかろうか。
それは逆に、この作品以降も自身を超える作品を創作していっていたことの、何よりの証跡であろう。
さてこの作品は、あまり今日主役となりにくい忍者を取り扱ったもので、集団として滅びた伊賀忍者の葛籠重蔵が、豊臣秀吉暗殺を実行していくことを中心に物語は進んでいく。伊賀忍者として全てを捧げてきた矜持を持ちながらも、何処かに重蔵自身気づいていくのであるが、次第に綻びが見え隠れしているところに、まさに忍者という職業の必要性が戦国期から変化していることを表れており、また淘汰されていくもののように見え、同僚の仕官をして、生きていこうとする風間五平などの人物など現実路線に変更していこうとするものもいる。
その中で、敵味方がありつつも、単に命のやり取りに終わらせずに、簡単な葛藤とまではいかないところの心の有り様で仕事をこなしていく忍者としての姿を重厚的に描いたことにこの作品の成功が見受けられる。
今日忍者が主役となりにくいといったことには、恐らくは幻術といったアクション性だけを重視したものではなく、この作品によりある一定基準の忍者の形が出来てしまったからではなかろうか。 -
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ようやく6巻までやってきた!
この巻は盛りだくさんの内容で、
盛りだくさんな上にめちゃくちゃ細かいエピソードが並んでいて…、
正直ちょっと疲れた。
寒くて辛くてめちゃくちゃ厳しい黒溝台の戦いから始まり、
ロシア革命へと暗躍する明石元次郎の活躍、これ、特に血の日曜日事件の詳細は興味深かった。
旅順を攻略した乃木軍が奉天会戦に向けて北進する様子。
ここは、前巻からも悪評高かった伊地知参謀長に代わり着任した小泉少将の墜落事故から、さらに病床の松永少将へと参謀長が代わる乃木希典の不運が印象に残る。
はたまた海軍サイドへと舞台は移り、来たるべく日本海海戦への序章に期待が高まったり、その前に奉天会戦への作戦のドタバタや本当に薄氷を突っ走るような危うさに、結果知っているのにハラハラさせられる。
来月、ドラマが再放送されるみたいだから、あと2巻、早いこと読んでしまわないとなー。
余談だけど、これを読んでアメリカのルーズベルト大統領って2人いたことに恥ずかしながら気がついた。
ニューディール政策の大統領はフランクリンで、日露戦争の仲介はセオドアだったんだね。
これが一番学びになったかも笑
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以下抜粋~
・ともかくも、関東・東北ともに、馬文化の国である。
それでこそ、十二世紀末、源氏の奮闘によって、鎌倉幕府ができたといえる。
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その点、平家は冴えなかった。
かれらは牛地帯を本拠としていたから、しかるべき武士でも、馬を一頭かにどうしかもっておらず、長途にわたる騎馬集団の移動作戦はできなかった。そういうあたり、源頼朝を擁した関東武士団は、あたかも騎馬民族であるかのように、ふんだんに乗り替馬をもっていたのである。
・ついでながら江戸時代となると、地方の時代だった。
日本の学問水準は地方課、地方出身者たちがささえ、首都のひとである江戸人はむしろ学問を野暮とする風さえあった。
そういう江戸期、特に後期、二百数十藩のなかで、会津藩の教育水準はおそらく肥前佐賀の鍋島藩とともに、日本第一等であったかもしれない。
・幕府にはコメを重んずるという原理があり、これが、経済よりも神学的にまでなっていたため、天保改革が失敗した。
諸藩はこの点、不見転のように尻軽で、カネ(拓殖興業)に身を売るような、無節操さがあった。
特に雄藩のなかで改革に成功したのは長州藩、薩摩藩で、土佐藩、肥前藩がこれに次いだ。
・・・
寛政期にはよくやったが、会津藩は封建制が精密であったせいか、体質として商工業になじまなかったようである。
なにぶん、危機救済をする財政家は、天才を必要とし、しかも全権を与えなければならない。このため、薩摩も長州も、茶坊主に全権をあたえたり(薩)、また50石の士を藩内閣の首班(長)にすえたりした。会津ではとてもそれができず、つなに世襲の重臣が担当した。 -
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坂の上の雲、5巻。
いよいよ二〇三高地の決戦。
旅順攻略がこんなにも困難を極めた原因は、司馬遼太郎の筆から見るに、どうしても第三軍司令部の、とくに参謀長の無能さによるところが大きいと思えてしまう。それに見合う資料をもとに書いているのでしょうが、ここまでけちょんけちょんだとちょっと気の毒になるくらいだ。
それに対して、児玉源太郎に対する書き方のカッコ良いこと。
黒溝台の章で少しだけ秋山好古がでてきたが、5巻のヒーローは児玉源太郎だった印象が強い。
それからバルチック艦隊の航行。
想像以上に大変だったんだな。
そして想像以上に日英同盟が効いてたんだな。
全編わりと細かすぎるぐらいの描写や、その後やその周辺について余談がめちゃくちゃ多くて、この巻はなかなか読み進まなかった。
1次資料、どれだけたくさん当たって書いたんだろう…。
凄いけど、正直ちょっと退屈だったな。
ともあれあと3巻、
そして日露戦争も佳境中の佳境。
シンプルに戦闘のしんどい表現も多いけど、頑張って読むぞ。 -
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25年をかけて日本ばかりでなく世界中の道を辿った司馬遼太郎の始まりの旅が近江の国からです。琵琶湖のある滋賀県。京都、奈良といった古都に近接しており歴史上の要衝。司馬さんの足跡を読むと周辺は古来から街道を様々な人々が行き交ったことがわかります。
琵琶湖西岸で日本人のルーツに思いを馳せ、織田信長が越前攻略の際に退却したみち、朽木谷や朽木氏の檀那寺の興聖寺を廻る。この寺は第12代将軍の足利義晴が身を潜めていた場所でその庭を観る…
甲州街道、小仏峠をを越え、大和盆地の葛城山では古代民族の鴨族の一言主の神の祭主を訪ねたりします。これを読むと旅はその土地の古来からの由来がわかってこそ、意義を深めるのだとつくづく思います。
司馬遼太郎がこの旅を始めてから最早半世紀が過ぎてしまいました。多くの読者がその足跡を追ったでしょうし、私も琵琶湖周辺など行ってみたいと思うのところは多々あります。しかし、風景は変わってしまったところが多いのだろうと思います。
長州路で訪ねている山口の瑠璃光寺も現在改修中でした。 -
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坂の上の雲、4巻。
地理がわかってないとなかなか情景が想像出来にくい、日露戦争のど真ん中。
ウラジオストックに逃げる旅順艦隊、追う東郷。1隻たりとも逃してはいけない艦隊の殲滅を目的とする息を詰めるような黄海の戦い。
さらには、陸では遼陽会戦が始まり、これは本当に史実なのか?こんなギリギリの綱渡りで本当に日本がロシアに勝ったという歴史になるんだろうか?と、読みながら何度も思った。
この戦争、日本が優れていたわけでも、ロシアが弱かったわけでもない。
ただどちらともがある所ではわちゃわちゃのぐちゃぐちゃで、ある所では奇跡としか思えないような得体の知れない勢いが突出したり…。
たぶん古今東西の戦争のほとんどは、始まってみてはじめてどちらもが予想外の出来事に振り回されながら、紙一重でどちらかに勝敗が決まるというものなのかもしれないと思った。
こんなもの、始まってしまえば誰もコントロールなんかできない。とんでもない量の変数からなる不確定要素が多すぎる。
それにしてもこれは小説なのかな。
巻を追うごとにそう思ってしまう。
歴史のある一場面を司馬遼太郎と一緒に彼の視線を共有しながら眺めているような気持ちになる。
乃木希典や伊地知幸介に対する感想は、正しい所もあれど、著者のバイアスが多いに掛かっているのだろうとも思う。
彼らは確かに無能ではあったのだろうけど、第三軍への命令系統の不安定さがについて、その背後をちゃんと知らない後世の一読者にとっては、彼のバイアスを鵜呑みにするのも危険な気がした。
さて、遂に旅順要塞を本当にどうにかしないとどうにもならないところまでやってきた。
次回、本格的に203高地を攻める件にはいるのでしょう。
息が詰まる展開…。 -
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完結巻。嗚呼、長かった物語もこれで終わりか。戦争の終結に至る過程はなんとも言えぬ思いで読んだ——ロジェストヴェンスキーが主将だったから露は負けたのだ。他の軍人だったならここまでの大敗はしなかっただろう。本当にどうしようもないヤツだ…。何があそこまでの強者を演出していたのか、不思議なくらいだ。
・・で、反対に日本のトップこと東郷であるが、故・野村克也みたいなひとだなぁ、と。
秋山兄弟を通して、日露戦争…いや"戦争"の何たるかをよーく学べた気がします。
(※後に、この快勝が太平洋戦争へと駆り立て、敗北へと導く原因のひとつなのですね…。)
愛媛旅行がきっかけで、ほぼ一年くらい掛けましたが、読んで良かったなぁと心から思いました。星三つ半。 -
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大坂方の中枢にいる大野修理は、この土壇場にありながら、戦略より政略でいこうとしていた。豊臣家の威光がなお、有効だと信じて。「不幸な計算ちがい」(p266)である。
この大坂方のおバカさんを利用することで、狸おやじである家康の本領が発揮される。冬の陣の和睦の席で、なんと家康は本多正純(上野)に対して「上野も修理にあやかれ」(p522)と修理をたてにたてた。戦国を生き抜いた一代権力者におだてられ、修理は「一大感動を発してしまった」(p523)。もちろん大ウソである。しかしこれが、家康の大いなる布石。バカを中枢に留めておき、真田幸村らの意見が通らぬようにする策略だった。
家康の意図通りになる大坂方。その中枢を見届けたスパイの小幡勘兵衛は「愛想がつきた」(p581)。ここまでアホだとは…である。いくら有能な部下を抱えても、上がバカなら同じこと。日本型組織の現実を見せつけられるようで、生々しい。