司馬遼太郎のレビュー一覧
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この時期、嘉兵衛おぼろげながらかれ自身が生涯をかけてつくりあげた哲学の原型のようなものを、身のうちにつくりつつあった。
そのことは、かれの気質や嗜好と密接にむすびついている。
潮汐や風、星、船舶類の構造とおなじように、嘉兵衛は自分の心までを客観化してしまうところがあった。すくなくとも自分のすべてについて、自分の目からみても他人の目からみてもほぼ誤差がないところまで自分を鍛錬しようとしている。
つまりは正直ということであった。しかし不正直ほど楽なものはなく、正直ほど日常の鍛錬と勇気と自律の要るものはないとおもいはじめていた。
自分と自分の心をたえず客体化して見つづけておかねば、海におこ -
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燃えよ剣、を読み終えたことで生まれた新撰組への興味が赴くままに手に取った一冊。全15編からなる小話と、様々な隊士の生き様を通して、新撰組の雰囲気を楽しむことができた。個人的に好きなのは「前髪の惣三郎」かな。山崎と廊下ですれ違う際に頬を染める加納と、それを受けて困惑する山崎、という構図にはニヤニヤしてしまった。これは現代における「萌え」として立派に成り立つものだし、というか言ってしまえば燃えよ剣でも土方と沖田のやり取りに何度も萌えを感じることがあって、「ああ、これが腐女子の気持ちか……」なんて感心したりしていたわけで。いやだなあ、本の感想からだいぶ脱線してますよ、土方さん。
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これまでは司馬遼太郎氏の作品と言えば燃えよ剣しか読んだことが無く、また、その燃えよ剣がまったく合わなかった。他の作品も刊数が多く、チャレンジしにくい。
そんななか、たまたま本屋で手に取ったのが、この短編集であった。
七つの短編が綴られているが、なんと生き生きと、かつ緻密に主人公やその世界が描かれていることか。彼らが活躍する関ヶ原の時代や幕末の息吹を感じ、時代や運命の不思議さ(絵師や一介の野伏が表舞台にたって活躍する)と、それに翻弄される主人公たちに引き込まれる。
英雄というのは、時と置きどころを天が誤ると、天災のような害をすることがあるらしい
とは、なかなかに含蓄のある文章であり、心に残っ -
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歴史わかんない、熟語書き言葉わかんない勢にはぐぐりながらじゃないと読めない。
鴨川銭取橋が好き。暗躍戦略系がすきなので。
長州の間者、池田屋異聞も好き。山崎さんに感情移入した作品初めて。
新選組が清廉潔白に書かれてないのがいい。むしろ狡猾で残虐で不気味。とくに土方さん。新選組かっこいいとあがめる(そして鴨さんや薩長を悪者扱いする)だけの作品は読んでてスカッとはするけどそれはフィクションのヒーローものでいい。
虎徹にでてくる「若作」「(虎徹で死体を斬っても)水もたまらない」「小身育ち」「若打」ってぐぐっても出ないんですけど何?だれか教えて。
虎徹は感動したり面白いとは思わないけど、人間味