司馬遼太郎のレビュー一覧
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ネタバレ禅であるかぎり、悟りをひらかねば田舎の一ヶ寺のあるじでさえなれない。恵瓊もまた恵心のもとできびしく修行してやがて印可を得た。悟道に達したということになるが、一般に悟りというのはあるいは得ることができても、それを維持することが困難なように思える。生涯、それを維持するために精神を充実させつづける必要があるが、ふつうは、俗世間のおもしろおかしさのために、ただの人間以下にもどってしまうことが多い。
もどったところで、禅僧としての地位の高さから世間はそうは見ず、また当人も自分自身を自分に対して弁護するために多くの禅語や禅宗独特の修辞を動員したりする。たとえば、自分は融通無碍の境地にあるのだと思い込む -
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ネタバレ戦争、政治という諸価値の入りまじったややこしい事象を、官兵衛は心理というものに帰納して考えようとする。
心理という、このあたらしい言葉で彼の行き方を解こうとするのは、用語として粗雑の気味もあるが、要するに官兵衛は、ひとの情の機微の中に生きている。ひとの機微の中に生きるためには自分を殺さねばならない。
(私情を殺せば、たいていの人の心や物事はよく見えてくるものだ)
官兵衛は早くから気づいていた。官兵衛に私情があるとすれば、一つしかない。が、平素は忘れている。むろん、かれの父親にも洩らしたことがなく、かれ自身、真剣にそれを考えてみるということなどもなく、要するに、いまの日常からいえば桁の外れ -
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ついに本能寺の変が起こり、高松城を水攻めしていた秀吉は毛利軍とすかさず和睦し、東に転じて、光秀を討つ。教科書ですべての日本人が知っている筋書きである。しかし、そうした決断力や行動力以上に、本著の上下巻を通じて書かれているのが、秀吉の外交手腕であろう。毛利氏も、時を追って本能寺の変を知ることとなるが、決して追撃はしなかった。していれば、秀吉に打撃を与えることができたであろうがしなかった。既に、誰が天下人となる事を理解していたのである。
そして、信長筆頭家老であった、柴田勝家との対決し、諸大名がどちらへ付くかという葛藤が書かれている。その後の関ヶ原で行われていたような政治的駆け引きが既にここで行 -
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【感想】
本物語の10分の7が終わり、ようやく西南戦争が始まるかぁ。
開戦に至る数々の過程を省略すべきではないが、「やっと」感が強い。
むしろあと3巻ですべて終結するのかと思うと寂しさもあるが・・・
幕末は英雄だった西郷隆盛の凋落が本作品には詰まっている。
自身の能力が低下したからなのか、それとも周りのプッシュに諦めを持ち、投げやりの上で開戦する決意を持ったのか。
おそらく後者だろう
西郷自身の手記がないため、彼が抱えていた苦悩と絶望に関しては一切わからないが、彼が決してただの虚像ではないと信じたい。
終盤になるにつれて、西郷と大久保の差を感じる作品になってきた。
【あらすじ】
明治十