宮本輝のレビュー一覧
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とんでもない本に巡り合えた。
人が幸せに生きていく上で必要な素養の全てかここに在る。
この作者の「優駿」を読んで、是非他の作品も読みたくなり、この本に辿り着いた。
1984年の第一刷発行であるが、
全く古さを感じないどころか、まさに現代(いま)を予言しているかの様な作者の慧眼に舌を巻く。
宝石の様な言葉が至る所に溢れている。
いみじくも…
巻末のあとがきにて、自らをドンキホーテに擬え、「宇宙の闇と秩序を全ての人間の内部から掘り起こそうと目論み始めたのです」と語っている。
なんと途方も無い決意で書かれた小説なのだろう…。
作者自らが予測した第五部を大きく越えて、第九部で完結した -
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ネタバレ額に白い星印を捺された漆黒の仔馬、オラシオン、祈り。
オラシオンの誕生、育成から宿命のダービー戦までの三年間。
二分何十秒かで決まる勝負の世界。
和具平八郎の私生児として15年間生きた誠は「お父さんの腎臓をください。お願いですから」と言いながら亡くなっていきました。
平八郎は「俺は生涯、俺を許さん」と言うほかありませんでした。
平八郎の秘書の多田は久美子と一線を越えようとして、手前で逃げられ、そして平八郎をも裏切ります。
そして騎手仲間の寺尾を殺したと思い込んでいる騎手の奈良がオラシオンに乗ります。
トカイファームの渡海千造は亡くなりますが、息子の博正と平八郎、久美子には共通の夢が生 -
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ネタバレ北海道の静内、渡海千造の営む小さな牧場のトカイファーム。
そこへ息子の渡海博正と同い年で大学生の和具久美子が大阪から和具工業の社長であり、父の和具平八郎とともに、今、生まれようとする仔馬を見にやってきます。
生まれてくる仔馬はウラジミールとハナカゲの子のサラブレッドで、のちに和具の秘書の多田により「オラシオン」スペイン語で祈りと名付けられます。
仔馬は平八郎が三千万円で買いとり、平八郎は久美子に隠し子がいるという秘密を母に内緒にするかわりに譲ります。
久美子は父の隠し子の誠が同じ血液型の血縁である父からの腎臓を提供され手術をしないと生きられない病気であると知り、誠の入院先の病院に逢いに行 -
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ネタバレ宮本輝の小説はすべてがハッピーに終わらず、現実というのは山あれば谷もあるというのを暗に示しているような話が多いがこれもそう。
結果的に見れば、主人公は大学に行かせる手助けをして、医者になれる道筋を作った挙げ句違う男に乗り換えられて恋は終わる悲しいストーリー。
しかし女がひどいかといえば、このままだと破産する男から金の心配せず大学生活を送ることができる男に乗り換え、結婚後も安泰なわけで誠に合理的。
でもこれじゃあ主人公はバッドエンドじゃないかと思いそうだが、本当の「愛」ってやつを受け取った四人での生活は、今後彼が得ようと思っても得られない経験であるだろうし、無駄ではないんじゃなかろうか。いやそ