宮本輝のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ハンガリーからの留学生ボラージュが、総勢13人の大家族である城田家で3年間暮らす話。
時代は少し昔なんだろうね、城田家は家族の繋がりが良い意味でも悪い意味でも強い、典型的な日本の家庭。
13人も家族が入れば問題も山積みだ。その上に留学生が来たらそれはもう。
色んな価値観があるし、対立は絶えない。
どの問題も厄介で簡単には解決されない。でもそこが良い。
キレイごとが書かれていないので、読みがたえがある。
それぞれが成長する様子に感動を覚えますし、勇気も貰いました。
みんなの異なる個性が如実に表れてて面白いです。
あと、ボラージュの熱心な勉強姿には刺激をもらいました。
勉強熱心な留学生に対しては -
Posted by ブクログ
関西に所縁のある四編。土地の知識があるのでより満喫できた気がする。
・『幻の光』何て言ったらいいものか。なぜそんな言葉を言ったのかわからない、なぜそんな行動をしたのかわからない、という主人公ゆみ子の支離滅裂がわかりすぎて辛い。
・『夜桜』宮本輝の小説のよさって、人が生きているところなんだろうなと思った。こういう話を作ろうとか、こういう主張をしようとかではなく、登場人物が息をしたことによって物語が生まれている。
・『こうもり』こうもりの記憶。こうもりのようだった頃の個人的な記憶と重なった。
・『寝台車』他者のなかを通り抜ける心地よさ。これは他の話にも共通するけど、物語のなかを通り抜ける気持ちよさ -
Posted by ブクログ
馬主の電機メーカーはついに吸収合併。しかもその遠因はオラシオンの獲得にあった。また、馬主の娘が事実上の馬主となる。その娘も父の隠し子について気づく。さらに父の秘書も。動揺する娘と秘書の危険な逢引、そして寸前での娘の祈り。また、オラシオンの生産者のガンによる他界。オラシオンを追い、新聞記者を辞めて、競馬情報の世界で一山当てようとしている男とその愛人。そして、「オラシオン」に祈りを込めた青年。かれらの「祈り」を込めて、オラシオンは日本ダービーに臨む。しかし、体調は万全ではない。疲れが残っているようだ。その異常に、馬主の娘が気付く。そして、「ゲートオープン」・・・・騎手の不安な気持ち、そして、予想外
-
Posted by ブクログ
きれいな、ゆたかな世界。
私には聴こえるだろうか。
○倦まず弛まず焦らず、ひとつずつ進めて完成させる。それが仕事というものなのだ(135頁)
○アクセルを踏みながらブレーキも一緒に踏むような生き方はあきまへんで
○勢いのあるときは、がんがん行きなはれ。それは年齢とは関係おまへん。若い人が伸びてくれんと、国は滅びますよってに(141頁)
・確信を持ってイメージすること
○ぼくは、雨あがりの、薄ぐもりの空の下の、濡れた鉄橋のように生きている(379頁)
2015.07.17 再読
・かっこよくなくても清潔に生きる。
・していい、ふり。
・冥利が悪いことはない。 -
Posted by ブクログ
れぞ宮本輝の世界!!
あくまでも私の中での宮本輝さんのイメージですが。
久々に大満足。
特別哀しいできごとがある訳でもなく、ごく普通の日常(多少のゴタゴタはあるけど)が描かれてるだけなのに、なんだか泣けた。
読み終わって幸せな気持ちになれた。
もしも10年前に「10年後、地図の場所でお待ちしています。ぼくはその時、あなたに結婚を申し込むつもりです」なんて手紙をくれた高校生が自分の目の前に現れて、しかも今でも想い続けてくれてたら、それってすごいドキドキだよなぁ。
いい年して私ってばまだ「白馬に乗った王子様」思考があるのかもしれない。。。
宮本輝さんは「日本という国の民度がひどく低下してい -
Posted by ブクログ
表紙の裸婦絵は高山辰雄でとても印象深い。
表題作「幻の光」ほか短編3作を所収で、どれもしっとりとした雰囲気の中で人間の情念を丹念に描いた作品になっている。
「幻の光」は前夫の自殺した理由をわからず空虚にさまよう心を抱えながら再婚し、奥能登曾々木で暮らす主人公が、前夫に語りかけることで自らと対話するというスタイルをとる。兵庫尼崎での貧乏で暗い少女時代から、前夫との生活の中での会話、曾々木での安定した生活という人生の流れの中で、様々なエピソードが繊細な描写で深い余韻を残してくれる。すうっと消えていった祖母の話や大阪駅で見送ってくれた知り合いのおばちゃん、曾々木で蟹を獲りに行って遭難したと思われたお