宮本輝のレビュー一覧

  • 森のなかの海(下)

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    ネタバレ

    深いストーリー、泣けた。

    希美子に家や財産を託して亡くなった西岡カナ江とその若き日の恋人、室谷宗弥、そして二人の息子である典弥の数奇な人生が明かされる。宿命としか言いようがない、家族としてはある意味不幸な人生を生きながらも、それぞれがとても人として深いものをもっていたことが救いだと感じた。

    そして、希美子や、やさぐれ気味の震災孤児たちの再生に、知性と寛容さ、人間の幅を感じさせる希美子の父や、個性的ながら姉想いの妹の存在も大きいと思う。
    知性と教養のある人は、魅力的だな。。

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    2020年05月31日
  • 田園発 港行き自転車 下

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    雪子がアメリカ文学を教えている老人から教わったエミリ・ディキンスンの詩

    もし私が一人の生命の苦しみをやわらげ
    一人の苦痛をさますことができるなら
    気を失った駒鳥を
    巣にもどすことができるなら
    私の生きるのは無駄ではない

    の一節が印象的。

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    2020年05月16日
  • 優駿(下)

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    再読完了、やはり当方が読んだ古今東西のhorse racingものでNo.1。
    古き良き時代から社台、もっといえばノーザン1強への競馬シーンとしてはあまり面白くないともいえる流れが背景に見え隠れするなど、リアリティという意味でも出色。
    また、そんな知識無くとも人間ドラマとして結構重厚だし、ちょっとした推理的要素も兼ね備えている。
    東京優駿が無観客で施行されることとなった今こそ読みたいMasterpieceであること、当方レベルでは何ですが保証します。

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    2020年05月07日
  • 田園発 港行き自転車 下

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    読み終わった後の爽快感。
    おおらかな富山の田園。
    大人の人間模様が織りなす京都の花街。
    その中で人は関わり合い、成長していく。
    この物語は、自然とそこに暮らす人々が善意のもと、大きく変わっていくものだ。
    そして周りの大人たちが祐樹に与える無償の愛はこの物語の希望である。

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    2020年05月03日
  • 優駿(上)

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    1987年吉川英治文学賞受賞

    個人的宮本作品金字塔。
    人物の主観が章ごとに変わり2回転ほどする。
    どの章も生への執着が強く感じられとても良かった。

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    2020年03月09日
  • 水のかたち 上

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    ネタバレ

    評価が1から5まであって驚く。

    骨董の価値はその人が決めたそれで良いというのと同じだと思った。 本来の価値とは違う次元の価値。

    志乃子の価値を見誤ったのは すべての読者ではないかと思う。それを後半覆される。 どこにでもいる普通の主婦のはずだったのに。

    「自然にすなおで、自然に謙虚で、自然に礼儀ただしい。」
    これが水のかたち。

    ちょっと都合が良すぎないか?と誰もが思うだろう幸運が押し寄せているが 志乃子はずっと続くなどとは思っていない。

    たとえば 今 当たり前に思っている日々の出来事も 思い上がり故に当たり前に感じているのかもしれない。幸運なのだ。

    もう一つの文机に関わる話は実話であ

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    2020年02月23日
  • 星宿海への道

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    「星宿海への道」
    読み終わった後、鳥肌がたつような一冊。

    弟の語り口から壮絶な過去を持つ兄との回想シーンから始まる。
    全ては繋がっている。
    輪廻転成や縁を感じずにはいられない。

    本来の星海宿、兄が想う星海宿。
    母が見た星海宿、全てはつまるところ繋がっていた。

    家族というものをもう一度じっくり考えてみたい人におすすめ。

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    2019年12月30日
  • 星々の悲しみ

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    タイトルにもなっている「星々の悲しみ」が一番印象に残ったが、他の作品もいずれもとても良かった。
    宮本輝の小説はどれも叙情的で少し物悲しくて、でも読後は胸にストンと落ちてくるような不思議な気持ち良さを感じる。その感覚が癖になってどんどん読んでしまう。
    読んでいると自然と「生と死」について考えさせられる。死は容赦なく誰にでもやってくる。同じ死でもやはり若い人が死ぬのはとりわけ辛い。日々後悔のないように生きなければならない。

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    2019年11月24日
  • 田園発 港行き自転車 上

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    物語は15年前カガワサイクルの社長が出張先とは関係のない富山滑川駅で病死した先を娘と友人が辿る旅から始まる。

    北陸街道を自転車で巡る様子、富山湾やそれぞれの港町、そして黒部内陸の田園風景、川にかかる愛本橋の姿。
    行ったことのない見たことのない場所を地図を広げ確認して想像することが楽しくなる。父の死の謎は下巻に続くがこの本の素敵なところは風景描写と土地の空気感がそこかしこの文章にあふれているところです。
    下巻が楽しみ。

    京都の花街の描写も読んでいてあれこれ思います。

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    2019年11月20日
  • 青が散る(下)

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    上巻よりも下巻のほうが面白い。下巻のために上巻を読むべき。読後感:切ない。大人でも子供でもない、ある一定の期間だけに許される感情が描かれている。

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    2019年11月02日
  • 春の夢

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    忍耐の大切さを教えてくれる。また読みたい。青春のエネルギーと不安定感。ふとしたときにあの世に一歩踏み出してしまうかもしれないような危うさと、その中でも何がなんでも生きてやろうという熱情と。

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    2019年10月27日
  • オレンジの壺(下)

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    祖父が秘めていた秘密をなぜ佐和子にだけしか糸口を開かなかったのか、彼女の生き様や性格を見ていれば納得できるような気がする。
    彼女は情に生き、祖父が犯した罪をすべて溶かしてくれるような人物だと思う。すべてを許し、人のためを思う考えを持つ彼女だからこそ祖父は秘密をあかしたのではないだろうか。
    マリーのその後、佐和子と滝井、ドイツ人娼婦、なぞはたくさんあるが著書がそれを読者に投げかけている終わり方。マリーやアントセンに会わずじまいだったが、それが彼女が考える今一番いい終わり方だったんだろうと思う。思い出したくない過去としてマリーたちをそっとしておくことも彼女としての気遣いだったのだろう。

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    2019年10月21日
  • オレンジの壺(上)

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    自分の離婚をきっかけに、祖父との日記との距離を縮める。なぜ祖父が佐和子だけにしか自分の秘密をみられないようにしたのか。祖父が佐和子に知ってほしかった秘密とは。秘密と謎が佐和子を闇に引きずり込む。その闇に佐和子は夢中になっていく。

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    2019年10月21日
  • 愉楽の園

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    私はこれまでに7度タイに行ったことがある。
    この小説を読んでタイで過ごした気分になり読み進むのが楽しみでしょうがなかった。
    タイの暑さや湿度や匂いまでも感じられるような気がした。
    単なる恋愛小説かと読んでいると不思議な人物や出来事などミステリーにも思えてくる。

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    2019年09月23日
  • 錦繍

    購入済み

    映画化されることを期待します、

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    2019年09月06日
  • いのちの姿 完全版

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     エッセイでありながら小説的でもあり、それらの境目を不思議な感覚で味わえる一冊でした。19編それぞれに描かれた生と死が様々な表情を見せてくれます。ほほえましかったり悲しかったり、切なかったりやさしかったり、ときには恐ろしかったり不気味だったり。
     お気に入りは『パニック障害がもたらしたもの』です。私もパニック障害(と併発していたうつ病)に苦しんだ時期があり、共感したとともになにか救われたような気がしました。宮本輝さんが出会ったお医者さんがおっしゃっていたという「天才は、ほとんどこの病気を持っています」という言葉を鵜呑みにしようかなと思います。できる限りストレスを少なく、もっとシンプルに生きてい

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    2019年08月19日
  • 優駿(下)

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    メモりたくなるような指南がたくさん出てきました。宮本輝の小説はそんなことがたくさんあります。ストーリーも楽しく読ませて頂きました。

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    2019年08月11日
  • 優駿(上)

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    面白くどんどん読めた。久々の宮本輝、やっぱりいい。騎手も大変な稼業だな。引き込まれて読んだ。勝ち負けの世界に身を置くのは厳しい。強くないと生きていけない。人間のイヤなところ、汚いところ、あぶり出されています。

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    2019年08月09日
  • 花の降る午後

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    誠実でまっすぐで聡明な主人公の典子。
    亡き夫への想いを胸にしまいながら、神戸の老舗レストランを切り盛りしていく姿、周りの人を大切に愛していく姿は誰もが幸せを願いたくなります。

    偶然にも私と同い年の主人公。この年の女性が感じる正直な思い、若くもなく年寄りでもない自分。恋でも仕事でも何かを新しく始めるには遅いような、でもこの歳になっても1人の女性であることは変わらない気持ちを持っているということに自分自身も戸惑ったり罪悪感を感じたり自制をかけている姿は歯がゆくもあり共感できることでもあります。

    たくさんのストーリーが折り重なっており結末が分からない箇所もあります。それでもこの物語を読んでいると

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    2019年07月15日
  • 星宿海への道

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    中国旅行中にタクラマカン砂漠近郊の村から、自転車に乗ったまま忽然と姿を消した瀬戸雅人。

    物語は、雅人の2歳年下の弟・紀代志と、彼の子を身ごもった千春の視点で進んでいく。

    雅人は彼が8歳の時に、瀬戸家の養子となった。

    それまでは、盲目の母と橋の下で物乞いをしていた。

    母の死をきっかけに、紀代志の両親が雅人を養子にしたのだ。

    進学を勧められながらも、中学を卒業してタツタ玩具に就職して30年以上。結婚もせず、地道に、地味なおもちゃを売って生き抜いきた雅人。

    雅人が少年の頃から憧れていた「星宿海」。

    そこから遠く離れた場所で、彼は突然に姿を消した。

    「もし子供が女の子だったら『せつ』と

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    2019年07月12日