宮本輝のレビュー一覧
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カンタンな流れで言うと、大阪に戻ってきて、中華料理屋、雀荘。消防のホースの修繕。プロパンガス。きんつば屋。と仕事を変えていく。台風などいろんな事件があって、うまくいかないが、松坂熊吾のアイデアと実行力で次々と新規事業をモノにしていく。
個人的には、松坂熊吾の糖尿病発覚が大きい。伸仁は7歳にしてヤクザと賭けマージャンをしたりストリップ嬢に花束を贈ったりしている。さらに義母の失踪、杉野信哉との確執、麻衣子が丸尾千代麿が愛人に産ませた子、伊佐男の子どもを産んだ浦辺ヨネとその子との同居生活などが描かれる。
相変わらず松坂熊吾のキャラクターが抜群で、これまで読んだ小説の中でベストキャラクターはこの人 -
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後書きで北上次郎さんが主人公松坂熊吾について記述して言い得ているのでメモする。『やくざも恐れぬ獰猛さを持ちながら涙もろく、事業の才覚は鋭いくせに自ら進んで人に騙されるお人好し。さしたる学歴はもたないのに古今東西の書を引用し、妻を愛しながら次々に愛人を作り、さらに嫉妬深く、真摯で、知的で、ひとことで言えば、野放図ないかさま師』
田舎に引きこもったので物語としては静かなものになるかと思ったら、増田伊佐男というヤクザが彼の邪魔をするし、横領した井草を尋ねたり、ダンスホールをつくったり、選挙参謀をしたりいそがしい。動くたびに周囲の人が亡くなっていく。
松坂熊吾の造形がとにかくスゴイのだが、出てくる -
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表題作を含む全7作品からなる短編小説集。物語の多くは若者を主人公とし、青春時代に関わった人たちとの微妙な心理・感情を描いています。
子どもでも大人でもない、もしくは子どもから大人になろうとしている主人公たちの目線を通して、生と死から感じられる残酷さ、若者から見た大人の性事情、奇妙な癖や趣味を持った人に接したときの不気味さなどをとても丁寧な筆致で感じられました。ものすごく重たいわけでもなく、かといって空虚なわけでもない、なんとも感慨深い内容です。
ここ10ヶ月ほどをかけて、この短編集をじっくり2回読みました。1回読み終わった時点ではなにかわかったような、それでいてなにもわかっていないような -
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骸骨ビルと言う場所の意味、阿部轍正の存在、そして茂木泰造の思い。終わりに向けて動き出す…。
パパちゃんに対し周囲からは邪推され陰口を叩かれる中、自己保身しか考えていなかった役所が子供たちを引き取りたいと言ってきた時に、彼が言った言葉。
「人間としての誇りは捨てんが、小さな自尊心なんていつでも捨てるで」
これもパパちゃん。
「人間はその根本の部分に必ず何等かの癖を隠しているものだ。…つらい苦しいことからは逃げるという癖を持つ人間もいる。そのときどきの気分で表情や態度が変わるという癖を持つ人間もいる。…そのことをしっかりと自覚しろ。」
私に言われているようだ。
ヴィクトル・フラン -
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四十七歳でサラリーマンをやめ、第二の人生に向けてある仕事に就いた八木沢省三郎。その仕事は土地開発会社で、大阪に戦前からあるビルに住んでいる人々を荒立てず、穏やかに転居をさせると言うものであった。
そのビルは、妻のある男が建てその夫婦の死後、男の愛人の子・杉山轍正が相続したものであった。彼がフィリピン群島にて戦争を生き延び、ビルで住み始めた時、そこには戦争により孤児となった姉弟が入り込み、何とかその生を繋ぐように日々を生きていた。彼はパパちゃんと呼ばれながら、長短ありながらも四十人以上もの孤児を、病気で生家からでざるをえなかった茂木と共に育てていった。
だが、一人の孤児の裏切りにより、世間 -
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ビルの住人の戦後の話は、まだまだ続く。そして、成人に達してからの住人の日頃の生活、性質などが少しずつ明らかになっていく。
父親代わり、母親代わりの二人が住人の戦災孤児の精神構造構築に与えた影響のすごさが描かれている。
そして、除却するための条件について、色んな思惑が語られる。
濡れ衣を着せられた父親代わりの人間性も、少しずつ明らかにされ、また、母親代わりのもう一方の主人公の心の奥底のことも次第にわかってくる。
最終段階に至るまでの関係者の行動・思いが作者のすばらしいタッチで描かれていた。
関わった人間の99%は、納得いく形でこの物語は終わる。
世の中で生じる様々な現象、100%すての人間が納得 -
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大阪の十三というところに戦前から建っていた堅牢でイワクありげな建物「骸骨ビル」の除却という業務に、ひょんなことから関わった主人公が、様々な人間模様、それも戦前戦後のどさくさで、好むと好まざるに関わらず、悲壮的な宿命を負った戦災孤児の人間模様を絡めながら、話は、読者を引き込んでしまいます。
人間置かれた環境で、様々な職業につかざるを得ない、インフォーマルな世界を作者独特のタッチで書き進む。
主要な登場人物がこのビルの歴史的に背負った背景を語っていくというスタイルだ。
そして、除却を請け負った主人公の心の動くも同時進行で描かれていく。
そして、下巻へと続いていこのである。 -
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「小説は書き出し、随筆は最後の一行」と言われる。作家生活43年、著作も100冊を超える作家ともなると、この要諦を縦横に使い、随筆の形を借りた小説、あるいは小説の器の中に随筆を盛り込むといった芸当ができるんだなぁと陶然としながら読み了えた。あとがきにこんな文章を寄せている。「『これ以上書くと創作の領域に至る…』という、ぎりぎりの分水嶺あたりをうろつきながらエッセイというジャンルを超える企みを貫くことができた。」本書はまさしくこの一文に集約される。
異父兄の存在を知り、後年密かに兄を訪ねていく話、27歳の時に突如襲われたパニック症候群によりサラリーマンを辞め、小説家になろうと決意に至った話、シル