宮本輝のレビュー一覧
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宮本輝さんの本は、主人公がよく独り言をいう。語り口は朴訥な農家の人が丁寧に陽気に作物を作るのに似ている。読後爽やかな気分が吹き抜ける。
90歳になった徳子おばあちゃんから、90歳の晩餐会を開きたい、それも本格的にと連絡を受ける。なんでも300万弟に出資したところ350万円返ってきてしまったから、それなら老い先短い身。晩餐会でぱあっと食べちゃえというのだ。しかもローブデコルテにタキシードのドレスコード。当日はカメラマンも思い出のために入る。シェフはエリゼ宮でシェフをしていて、そろそろ帰国しようかなという元教え子が務める。
祖母は戦時中に2週間婚姻した夫に死なれ、懐剣で胸をついて自刃しようとし -
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錦繍以来の宮本輝さんの小説
徳子おばあちゃんが大切な家族を招き90歳を祝う晩餐会を開催する。
元教師の徳子おばあちゃんが本当に素敵だった。いやおばあちゃんを中心とした家族全員素敵でした。それぞれを主役としたお話を読みたいぐらい。
教え子達の協力のもと行われた晩餐会は抜かりなく滞りなく気遣いのなんたるかを教えてくれた。天晴れでした。
自分の人生に関わった人々すべての生命を褒め称える晩餐会。敬意と讃嘆。
徳子おばあちゃんのものへの審美眼も素敵だった。見ていると幸福になり、やがて幸福そのものになる。そうやって探し集めてきた幸福なものを孫たちの特性に合わせて分け与えていた。
ものに宿る幸福とともに受 -
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宮本輝の自伝的小説『流転の海』第七部。
あと2冊で終わりとなる。
第一部を読んだ時は、松坂熊吾に対して嫌悪の情が強く、最後まで読み通せるか不安だったが、今は終わるのが惜しいという気になっている。
それは、歳をとった熊吾が、若い頃のように、すぐに暴力に訴えるということがなくなったからかもしれない。
人を差別することなく、面倒をみる熊吾の性格に気づいたからかも(人助けをすることが快感なのだろう、と自分でも分析している)。
または、この物語に慣れてきて、登場人物に親しみを持つようになってきたからかも。
今回は、前半あまり起伏のない内容が続くが、後半またもや、というストーリー。
そんななかでも、美食 -
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泥の河を読んで
私は同じ時代に大阪の狭い長屋に生まれましたが、そのような船があるとは知りませんでした。幼い頃はまだ皆んなが貧しく洗濯機もない時代。裏口で大きなたらいに水を出し洗濯板でゴシゴシ。お隣のおばさん達も皆んな朝から洗濯していて、そういえば、冬は母が熱湯を持ってきて少しずつたらいに入れました。
川では、枝を落としただけの幹の太い木を数本縛り、男の人がその上に立ち、長い竿を操りながら船のようにして大木を運んでいました。ポンポン船も大好きで、よく橋の上から眺めました。父が「昔は、よう土左衛門が流されてきたんやで」と言っていたのを思い出しました。それがそんな昔の話ではなかったのだと小説を読んで -
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高校生の頃に夢中になって読んだ本を再読。
当時は海外に行ったことがなく、西ドイツからルーマニアにかけての情景は全て想像の中でしかなかった。
大人になって実際にドイツ・ハンガリーなどの東欧諸国を訪れたことで、ドナウ川の流れやヨーロッパの果てしない平野、駅に降り立った時の寂寞感が私の中で現実のものとなった。
母・絹子とその愛人の長瀬、娘の麻沙子とドイツ人の恋人シギィ。
四人の複雑な関係のまま進んでいく旅路は、一編の叙情詩のように感じられる。
高校生の頃に憧れた麻沙子に近づけているかはわからないが、それでもこの作品が私の人生に影響を与えたことは間違いない。 -
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ネタバレ読み終わって数日、反芻するようにこのシリーズを考えては少し涙を流す、ということを繰り返した。
これほど読み応えのある小説とは。想像をしていた物語の遥か上を行った。
それぞれの登場人物が、最高に幸福ではなく、かといって絶望的に不幸でもなく、本当に現実的にある範囲で描かれる。
熊吾と房江にはあとほんの少しだけ、幸せな時間をあげてほしいと願ってしまった。また3人での生活ができるようになるとか、一本松に行けるとか、せめて3人で会話する時間がもう少しあるとか。
でも最後は3人で過ごせた。最悪のような場所かとも言えるが、「野の春」を感じることのできた場所でもある。
多くの人の人生に関わった熊吾が、最後見送 -
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「慈雨の雨」とは、高度経済成長下で、松坂熊吾一家の周りに、慈しみの雨が降っていたという意味らしい。
城崎温泉に住むヨネや、蘭月ビルの盲目の少女香根、海老原の死。また、北朝鮮に還る人びととの別れ(北朝鮮に帰らせまいとする、大韓民国系の人びととの間で争いが多発していたのは初めて知った)など、幾つもの別離が一家に押し寄せるが、松坂熊吾は、新しい事業に乗り出していく。
相変わらず、濃いエピソード満載で、飽きさせない。
熊吾も、時々癇癪を起こすが、年齢を重ねて温厚になっている。
そして、伸仁が、いよいよ思春期に差し掛かるところまでが描かれる。
とりあえず第七部に進みます。