宮本輝のレビュー一覧

  • 螢川・泥の河

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    マレーシアの首都、クアラルンプールは、川が交わるところという意味の地名なのだそうで、マレーシア旅行の飛行機での楽しみのために読んだ。のちに流転の海シリーズを書き上げるが、その要素が凝縮されている。著者が一貫して描き続けている父と子の関係性の機微や、女性の神秘的でありながら世俗的な二面性を見事に表現している。著者の美しい文章へのこだわりが光っていて、リズムよく、ちょっと小難しい視点で、懐かしくも痛々しい戦後の大阪や石川を描いた2作だった。

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    2025年12月20日
  • 慈雨の音―流転の海 第六部―(新潮文庫)

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    「慈雨の雨」とは、高度経済成長下で、松坂熊吾一家の周りに、慈しみの雨が降っていたという意味らしい。

    城崎温泉に住むヨネや、蘭月ビルの盲目の少女香根、海老原の死。また、北朝鮮に還る人びととの別れ(北朝鮮に帰らせまいとする、大韓民国系の人びととの間で争いが多発していたのは初めて知った)など、幾つもの別離が一家に押し寄せるが、松坂熊吾は、新しい事業に乗り出していく。

    相変わらず、濃いエピソード満載で、飽きさせない。
    熊吾も、時々癇癪を起こすが、年齢を重ねて温厚になっている。
    そして、伸仁が、いよいよ思春期に差し掛かるところまでが描かれる。

    とりあえず第七部に進みます。

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    2025年12月04日
  • 錦繍

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    東京も紅葉がたけなわ、久しぶりに読みたくなりました。

    往復書簡の形式。

    互いに愛し合いながらも思いもよらぬ別れで傷つきなお生きてきた元夫婦が、
    それぞれの人生で立ち直って生きていく話です。

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    2025年12月01日
  • 錦繍

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    書簡体小説といわれるものは、夏目漱石の「こころ」がはじめてでした。手紙は一方的なのですが、その人の感情が痛いほど感じとれるものだと思います。それを読んで泣いたのを覚えていますし、小説にはまったのもそれがきっかけだったような気がします。それほど強く衝撃を受けたものでした。
    「こころ」は往復ではなく片道のたった一通の手紙でしたが、「錦繍」の手紙は男女でやりとりされる往復で、最初から最後まで手紙のみ。
    昔夫婦だった二人が久しぶりに再会し、手紙のやり取りをはじめるのですが、1ページ目から心をぐっと掴まれます。読むのをやめることが出来なくなりました。
    内容は男女の激しいものですが、書簡体なので印象として

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    2025年11月28日
  • 道頓堀川

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    中年男性の人生振り返り読本

    宮本輝の川三部作のうち、最も中年男性の心情に迫った作品だ。確実に老いていく焦燥感を抱えつつ、人生を振り返り、取り返しのつかないことをした瞬間に人は何を考えるのか、人はどんな時に大きな谷間を越える瞬間的決断をするのか、思いを馳せることができる。🎱本作は昭和的価値観に基づき、肺と心臓を使わないものはスポーツではなくゲーム・博打とし、ビリヤードのスポーツ性を否定したり、ゲイを病気と決めつける印象的なシーンがある。しかし令和では、eスポーツもトランスジェンダーも肯定的だ。過ごし易い時代になった。🎱

    #深い

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    2025年11月27日
  • 潮音 第三巻

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    長い物語もいよいよ明治維新。富山の売薬目線で史実の見え方が変わる。弥一の冷静な視点も冴えつつ、見通せるからこその気鬱もリアル。次巻でどう決着がつくのか。弥一の物語を聞いているのは誰なのか、楽しみ。

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    2025年11月16日
  • ドナウの旅人(上)

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    昔、この方の別の作品を読んで、全然面白くなかったけれど。

    作品が違うから?私が理解できる年齢になったからか、これは読み応えがありました。

    文章を読むだけで、景色が想像できます。
    これを読んでドナウ地方に行くのもいいですね。
    最も今はこの時代と比べて、旅行しやすくなっているけれど。

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    2025年11月03日
  • 花の回廊―流転の海 第五部―(新潮文庫)

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    『流転の海』全九部中第五部。
    『新潮』2004.6〜2007.4

    昭和32年、松坂熊吾は大阪で再起をかけ、妻と共に電気もガスも通らず、ロウソクだけが灯りという空きビルに暮らす。
    10歳の伸仁(宮本輝がモデル)は尼崎の「蘭月ビル」という、まるで貧民窟のようなアパートに住む叔母に預けられる。
    そこの住民はみな貧しく、半分は朝鮮人であり、伸仁は凄絶な人間模様に巻き込まれて行くのだった。

    相変わらず、濃いエピソード満開で、そこでもしたたかに生きていく伸仁。
    しかし、作者が「どうしても書かなければならなかった一巻」と言っているように、のちの作家生活に大きな影響を与えているだろうことは間違いない。

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    2025年10月29日
  • 野の春―流転の海 第九部―(新潮文庫)

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    大河小説とは、よく言ったものだ。人間一人ひとりが雨粒としてこの世に生まれて、他の人と出会い、大きな流れとなって大河となる。主人公の熊吾は、粗野で弱い部分もありながら、世の中や人間を正しく、深く見つめ、その縁を繋いでいく。途中、大きな岩や嵐やいろいろな困難を乗り越えたり、流されたりしながら、人々の織りなす大河はさらに大きな海へと流れていく。途方もない年月を重ねて紡がれたこの小説だからこそ、これだけの流れを描くことができたし、何年もかけて読み終えた今、登場人物一人一人の人生がいろいろな思いを抱えながら、流れていく様をいっしょに流れて来たような錯覚を覚える。私は彼らと共にどこに流れ着いたのだろう?い

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    2025年10月21日
  • 青が散る(下)

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    青が散ったなぁ。
    大学生の青春。

    人間、自分の命が1番大切。
    大きな心で押しの一手。
    生きていたいだけの人間の駱駝。

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    2025年10月17日
  • 潮音 第二巻

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    時代の急変にあわせて
    ストーリーも急展開。
    幕末の混乱のなかで奮闘する
    薬売りたちの活劇にワクワクするが、大きな歴史の流れへの言及も見逃せない。続きが気になる。

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    2025年10月13日
  • 螢川・泥の河

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    「あーよかった!」という読後感を残して忘れてしまう小説があるが、この『泥の河』と『螢川』は情景が深く沈み忘れられない小説。
    『泥の河』は昭和三十年の大阪。馬車引きは子どもの頃、目にしていた。乾いた馬糞を遊び道具にする逞しい子どもがいた。でも、水上生活者は想像するしかない。天神祭りの出来事、そして哀しい別れ。その情景は少年時代の不安や哀しみと共鳴する。
    『螢川』の舞台は富山。思春期の少年の心は想像に難くない。でも、四人が金縛りにあうほどの螢川の情景は、はるかに想像を超えていた。華麗なおとぎ絵ではない。
    「寂寞と舞う微生物の屍のように、はかりしれない沈黙と死臭を孕んで光の澱と化し、天空へ天空へと光

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    2025年09月27日
  • 血脈の火―流転の海 第三部―(新潮文庫)

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    また大阪に戻り、小さな日常的なドラマがいくつも起こる。大きく育った伸仁も次第に魅力的になっている。登場人物や、起こる事柄はとても多い。でも話の流れが混乱させない作りになっているところにこの作者の技量があるのだろう。

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    2025年09月27日
  • 幻の光

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    他人の内面を暴き立てるでなく、ただ自分の中身を観察する。こういうひそやかな小説にこそ、日々が宿るのかもしれない。

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    2025年09月19日
  • 螢川・泥の河

    「螢川」「泥の河」について

    「螢川」
    宮本輝の芥川賞受賞作「螢川」は宮本文学の永遠の傑作だ。この小説の舞台は富山。
    主人公は中学三年生の竜夫。昭和三十七年三月から物語は始まる。

    この物語において、竜夫の父の死や竜夫の友人・関根の死が主人公の人生に陰翳をもたらす。
    同級生の英子に想いを寄せる竜夫の恋心にすら、友人の死の影が伸びてゆき、そこに思春期の複雑な心理の綾が描き出される。

    宮本作品では登場人物がどんなに若年であろうと、厳然とした死が突きつけられる。
    しかし、惑いながらも死を受け止め前を向いて生きてゆく登場人物たちに、私は読みながら知らぬ間に心が鼓舞されているのだ。

    この「螢川」では四月に大雪に見舞われると、螢の

    #切ない #感動する

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    2025年08月28日
  • 灯台からの響き

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    灯台巡りがしたくなりました。
    そこで起きる人間ドラマが、また宮本輝節が効いていてよい。

    宮本輝さんの本は、いつも旅がしたくなるんだよなぁ。

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    2025年08月27日
  • 螢川・泥の河

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    物語がよくできていて、それを登場人物が力強く引っ張っていき、構成もすばらしいバランスなので、ラストの感動に繋がる。
    デビュー当時から一流としか言いようがない!

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    2025年08月27日
  • 地の星―流転の海 第二部―(新潮文庫)

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    何故、田舎暮らしを決意した男とその家族の話がこんなにも面白いのだろう。流転の海で出会った人達とのドラマの続きも、故郷での昔馴染みとのあれこれも、それぞれの生き方を見事に描いており、読み応えがある。悲しいところや辛いところもあるにはあるが、熊吾の人柄と才覚で一つは一つ乗り越えていく様には勇気をもらえる。この続き、熊吾がいかに大阪でまた花を咲かせるのかが楽しみである。

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    2025年08月19日
  • 螢川・泥の河

    購入済み

    今は昔の「すかみたいな死に方」

    昭和30年代を時代背景とした両作は、事故や病気で、人が「すかみたいな死に方」をする。このあたり、令和初期には、ややリアリティを感じ難く、数十年を経た今日の庶民生活の向上に(現在の物価高等の困窮を軽視するつもりはないが)感慨深い。🏞️両作いずれも心に沁み入りつつ、知識と感性の全てを注ぎ込んでもなお、理解も納得も十全でないところがある。「一滴だと透明なのにむつみあうと鉛色になる」等の描写は、到底腑に落ちたとは言えない。読書人としての未熟を感じつつ、だからこそ読書は面白いと想えた。🏞️

    #感動する

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    2025年08月13日
  • 流転の海―第一部―(新潮文庫)

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    出会えたことに感謝する小説。
    描かれている物語は戦後を生き抜く人々のことなので、決して軽くない。なのにこんなに読みやすく書くことができる宮本輝という作家に驚いた。
    登場人物も非常に魅力的である。熊吾は今の価値観ではかると問題だらけだが、全く憎むことのできないチャーミングなおじさんである。その周りの人々も尽くしたり裏切ったりしながらもそれぞれに魅力があり、どの登場人物にも肩入れできるような物語。

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    2025年08月06日