宮本輝のレビュー一覧

  • 私たちが好きだったこと
    宮本輝の小説はすべてがハッピーに終わらず、現実というのは山あれば谷もあるというのを暗に示しているような話が多いがこれもそう。

    結果的に見れば、主人公は大学に行かせる手助けをして、医者になれる道筋を作った挙げ句違う男に乗り換えられて恋は終わる悲しいストーリー。
    しかし女がひどいかといえば、このままだ...続きを読む
  • 螢川・泥の河
    太宰治賞受賞作「泥の河」、芥川賞受賞作「螢川」。名作である。
    古典とも言われる名作は、何回読み返しても、また違う感動があります。
    暗鬱な北陸の風土に、生き抜いていく人間の哀愁、命というものの叫びというものが、読み手に強烈に跳ね返ってくる。若い頃では感じ得ない感情を、感動がここにはある。
  • 螢川・泥の河
    「泥の河」と「螢川」の二篇。前者は太宰治賞、後者は芥川賞を受賞しています。両作品ともに性の目覚めにある少年が主人公。その目に映る大人の弱さ、泥臭さ、悲しさと、自然の儚さ、雄大さ、不気味さ、厳しさ……色とりどりに目まぐるしく変わる描写が叙情たっぷりでした。

    少年は身近な者の死によって、常に死が意識下...続きを読む
  • 螢川・泥の河
    『戦後の貧しさの中で…力強く生き抜く子どもたち』

    太宰治賞作品「泥の河」
    芥川賞作品「螢川」

    どちらも、昭和の薫り漂う時代背景のもと、子どもの視点から見た大人の世界、生と死、恋心を精緻な描写で描きだす。
    戦後間もない貧しい環境の中、必死に生き抜く力強さを感じた。
  • 水のかたち 下
    今まで読んだ宮本輝の中で1番好きかもしれない
    水の流れのままにではなくて、水のかたちのままに
    『善き人』の強さを最近強く感じる自分にとって、なんだか救われたような気持ちになる話だった
  • 流転の海―第一部―
    熊吾

    過ぎるほどの人間臭み

    豪胆さと脆さ

    こんな境遇、時代背景に自己投影できる人などいないけれど

    共感できる

    共感というよりは、男性として惚れる、憧れる男ですね

    この小説の存在で、今年は寝正月になったと言っても過言ではない
  • 螢川・泥の河
    文学的表現が美しく、内容も素晴らしい。
    こんな文学に出会えて良かったと心から思います。

    泥の河 太宰治賞
    螢川  芥川賞  

  • 青が散る(下)
    燎平のテニスの成長ぶりに目を見張った。
    また、ガリバーの躍進ぶり(歌手だけでなく私生活も)も非常に驚いた。
    一方、安斎の死は非常に残念でやり切れなさを覚えた。
    そして、燎平と夏子の関係は今後どのようになるのだろうか?

    最高の一冊でした!
  • 田園発 港行き自転車 下
     何か運命に引き寄せられるように登場人物が富山に集まっていく様がおもしろかった。
     登場人物もそれぞれ事情を抱えつつも嫌味のない感じで魅力的だった。それもあって話の中に入り込みやすかった。特に千春と佑樹のコンビは、田舎でゆっくり育った良さみたいなのが出てるような気がして好きだった。
     本の中では富山...続きを読む
  • 森のなかの海(上)
    まだ上巻ですが、面白くって一気に読み終わってしまいました。

    出だしこそ阪神淡路大震災の被害状況のあまりのむごさに、ちょっと読む手がとまりかけたのですが、夫と姑の不実から離婚へ、ひょんなことから奥飛騨の山荘に住むことになり…と、どんどん先が気になってしまいます。

    冷静に考えると、ちょっとした知り合...続きを読む
  • 道頓堀川
    橋から眺める道頓堀の光芒が目に映る様だった。朝陽を浴びた寂しげな街並み、ネオン輝く夜の歓楽街。川には歴史があり、そこで暮らす者にも人生がある。男の過去への後悔が川の濁りに似ている。歓楽街の光彩は過去を照らすが、決して未来は照らさない寂しさも孕んでいた。
  • 野の春―流転の海 第九部―(新潮文庫)
    とうとう最終巻まで読み終わってしまいました。
    第八部で妻子と別居することになり、殺伐とした第九部になるのかと思いきや、意外にものどかな日常が綴られていきます。
    一緒には暮らさないけれども、家族として互いを思いやりながら暮らす熊吾と房江は、もしかすると初めて穏やかな生活を手に入れたのかもしれません。
    ...続きを読む
  • 星々の悲しみ
    一つ一つ、綺麗な物語だと思った。
    人間のドロドロした感情、妬みや裏切り、執着など、負の部分が描かれているけれど、目を背けさせたいのではなく、ましてや正義感や正論で矯正しようというのでもない。淡々とした丁寧な文章が、非常に好ましく心地良かった。
  • 野の春―流転の海 第九部―(新潮文庫)
    ようやく読み終わりました。
    熊のおっちゃん、房江さんみたいな奥さんでホンマに良かった。
    もう一度通読したいと思いますが、今すぐは無理かな。
  • 星々の悲しみ
    短編集。発行されたのは1981年。でも20代前後の青年が抱える不安や期待っていうのは時代を経ても変わらないな、と思った。
    情景描写がとても心地良い感じ。そのシチュエーションがありのまま浮かんでくるような。シチュエーション自体も、現実味がある感じで好き。
    だけど、毎回最後が難しい。わからないから、何度...続きを読む
  • 草花たちの静かな誓い
    ミステリだと思い手に取った。想像していた内容とは違っていたのだが、とても良い一冊に出会えた。

    すっと物語に惹き込まれ、社会の光と陰を覗き見た気がした。ストーリーの展開に想像はついたのだけれど、それでも彼らの感情や行動を見守らずにはいられなかった。
    人間の表と裏、愛と憎しみ、尊敬と失望。時には人間で...続きを読む
  • 野の春―流転の海 第九部―(新潮文庫)
    この本を書き上げるために作家になられた。父の仇をうつために三十七年かけて「流転の海」を書き尽くした。これに心が動かないはずがない。
  • 草花たちの静かな誓い
    高校受験勉強時の問題集で出会った螢川に衝撃を受けて以来、ずっとファンです。この作品もやっぱり自分の中にスッと入ってくる文章、楽しめました。ミステリーとして読むと、もしかすると「?」となるかもしれませんが…
  • 星宿海への道
    ずいぶん久しぶりに宮本輝の小説を読んだ。何でこんなにしばらく読むことなかったんだろうと思うくらいいい小説だった。いや、この小説がいいという以前に、宮本輝の小説ってやっぱりいいなと思った。貧しいけど品がある人々の物語という感じがするのだ。この小説なんかもそうで、物乞い生活をしていた幼い雅人とその母親の...続きを読む
  • 野の春―流転の海 第九部―(新潮文庫)
    遂に最終章となった。
    松坂熊吾が71歳の人生を全うした。
    この小説からは多くの事を学んだ。
    男として、父親としての生き方を。
    大将と呼ばれ、人に対して優しく
    世話好きな熊吾は、その人の良さと
    経営者として、どんぶりな経営で人に騙されて、横領されたりして生活が苦しくなるが、
    なんとか逞しく生きていく。...続きを読む