宮本輝のレビュー一覧
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いいなあ。牧野康平さん。いい人生だなあ。
主人公の牧野康平は東京の旧板橋宿商店街の中華そば屋の店主であったが、二年前に奥さんの蘭子さんが亡くなったのをきっかけに休業したままになっていた。
ある時、店の二階の自分の蔵書棚の前に寝転がり、長年の積読であった「神の歴史 ユダヤ・キリスト・イスラーム教全史」という本を読んでいるとパラリと一枚の葉書が落ちてきた。それは、二十年以上前に妻に小坂真砂雄という男性から届いた葉書だった。それには
「大学生活最後の夏休みに灯台巡りをしました。見たかった灯台すべて見て満足しています…」という文章とどこかの岬らしいジグザグの線が書かれていて、妻の蘭子は「小坂真 -
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ネタバレ主人公と同じ年代というのもあり、久々にのめり込んで読んでしまった。人にはそれぞれ考えや歴史があり、それを纏って生きている。それを誰にいうでもなく自慢するでもなく嘆くのでもなく。
なのに見た目や振る舞いだけで人を判断していた主人公はそれを後悔をしていた。それは自分にもある性質なので主人公とともに反省をした。
後半の、終戦後の北朝鮮からの脱出劇は、実際に経験された方から伺った内容をもとにしているとのこと。なので読むのがとても辛かったし、とても恐ろしかった。
この「水のかたち」は宮本輝氏の作品の中でも私にとって感銘を受けた作品の上位になった。
(おこがましくてすみません) -
ネタバレ
幸せな主人公
読む人によって誰が主人公になるかは、変わってくるのだろう。
タイトルを見る限りそれは直樹ではないような気がするが。
社会と親族の荒波を乗り越えてきた直樹の実力と人を見抜く力は凄いのだが、平岩によってこの登場人物の多くは、幸せと成功を掴む。なんという大きな人間であろうか。
そして、それによって奇しくも自分自身か最高の人生へと昇華されていく。
彼にとっては幼くして亡くなった息子の分身でもある佑樹と2人で歩く至高のひととき。
自身が生涯をかけて取り組んだ仕事を、はからずも1番認めてくれた佑樹との会話。そのシーンがしっかりと読者には見えたのではないだろうか。
それにしても、直樹はなんと幸せな人なの -
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九つの短編からなる短編集です。最初に文庫化されたのが1993年なので、もう31年も前に書かれた作品です。
宮本輝さんの師匠?だった池上義一さんから「いい短編が書けない作家は信用するな」と言われ一念発起し短編に挑戦し、何度も何度もダメ出しされた末にようやくOKをもらって出来上がった作品なんだそうです。
解説は森絵都さんで、宮本作品を読む理由について次のように書かれていました。
(すごく端折ってしまって申し訳ありません)
『インスタグラムだとかSNSには明るく楽しげでポジティブな人々の営みがさらけだされているけど、私たちの日常はそんなに明るく楽しいのだろうか?宮本作品には、何も気取っていな