宮本輝のレビュー一覧
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憧れることを諦めた人がこの作品を読むと、胸がちくちくすると思う。少なくとも私はそうだった。
若さとは愚かであることではなく、愚かしいほど純粋であることをわからされた。私は少なくとも、今はそのような歳ではないし、そのような人との出会いもない。主人公をあえてアラフォーの成年を選んだのは、宮本輝本人が苦労した歳であったからだと、作者のあとがきに記されていた。
陰鬱な変わらない日々を変えてくれた一人の老人。
「君の三十年後を見たい」と言われた成年。
その時になったら、あなたはここにはいないのに、と思う成年。それも分かった上で「つべこべ考えずに進め」と言う老人。
いずれ、分かる。
その言葉に期待を -
Posted by ブクログ
久しぶりに宮本輝さんの本を読みました。私のおススメの作家さんの一人です。私が勝手にイメージする宮本輝さんの本に登場する主人公は、①それなりの教養を備えている、②運を持っている、③自分を引き上げてくれる出会いや人とのつながりがある、の三つかな。なのですごく羨ましくて、自分もこんな人物になれたらいいなと思いながら読むことが多いです。
「草花たちの静かな誓い」は、もし読者が宮本輝さんについてなんの予備知識も無しに読むことになったとしたら、たぶん「ミステリーかな?」と感じてしまうかもしれません。でも本のタイトルはミステリーっぽくなくて「あれ?」と思うかも。そこが宮本輝さんらしいのですが。
この本 -
Posted by ブクログ
昭和30年代という戦後復興真っ只中の日本が舞台の小説。
「泥の河」は、大阪で食堂を営む家族と、舟で様々な地域を転々としながら生活を営む家族との何か切なくなるような話。
「螢川」は、富山に住む家族に降りかかる友人、親との死別などの悲劇、幼なじみとの淡い恋心を交えながら家族の揺れ動く心の描写に美しくも切なくなるような話。
どちらの話も時代に翻弄されたが故に避けられない悲劇が描かれているにも関わらず、所々に差し込まれる風景描写が非常に美しく、とても惹きつけられるものがあった。古き良き時代のノスタルジーを想起させてくれる素晴らしい表現なので、風景描写だけでも読んで損はない小説。
「朝陽はまだ姿 -
Posted by ブクログ
ネタバレ凄惨な人間生活。
熊吾の激しさ(暴力と経済力)が、そして運が回復してきたように感じる。
それと対になる、蘭月ビルの人々の生活。破滅的な生き方をする者、他人の生き血を吸う者、そうした生活の中でも文化的に精神的に生きる者、ぐれずに育つ子供たちの純真さ。
人間と人間の打ち合いの中で鍛えられる伸仁。
コンプラや、多様性、パワハラはなどなどは、大切なことだが、他方でこうした人間との打ち合いによる鍛え方の機会をなくすのかも知れない。だが、果たして、人間のそんなものが無くせるはずもなく、綺麗事とお題目だけで、楽園を実現することもできない。自分の中にも、そうした闇はあるし。自覚できない中で。。
そうした人間