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Posted by ブクログ
ずいぶん久しぶりに宮本輝の小説を読んだ。何でこんなにしばらく読むことなかったんだろうと思うくらいいい小説だった。いや、この小説がいいという以前に、宮本輝の小説ってやっぱりいいなと思った。貧しいけど品がある人々の物語という感じがするのだ。この小説なんかもそうで、物乞い生活をしていた幼い雅人とその母親の様子が悲惨さがなく仲よく明るく楽しそうに見えたというのなんか、物乞い生活の人をそういう描き方をするのも含めて象徴的だと思う。
しかし、自分なりに清貧だけど満足しているらしき暮らしをしているように見えた雅人だけど心のなかではずっと母親の面影だけを抱えて生きていたんだね。それはどこか実生活でありながら現実に価値をおかないような生活だったんじゃないだろうか。それが千春との間にせつができたことで、人生を清算しようという気持ちになりカシュガルで消息を絶ったんじゃないかなあ。あるいは生まれてくる子どもに亡き母の名をつけてくれるよう頼んだことでやることをやり尽くした気で消息を絶ったかもとも思う。
狼に育てられたため結局人間の生活に慣れることのなかった子のようだと書かれてもいたけど、心に巣食ったものに抗えないように雅人はその生い立ちや経験からそういうふうにしか生きられなかったのかなあ。ちょっと勝手な気もするし、一方でこれだけ周りに気にかけてくれる人がいるというのにかわいそうな人だという気もする。
Posted by ブクログ
中国旅行中にタクラマカン砂漠近郊の村から、自転車に乗ったまま忽然と姿を消した瀬戸雅人。
物語は、雅人の2歳年下の弟・紀代志と、彼の子を身ごもった千春の視点で進んでいく。
雅人は彼が8歳の時に、瀬戸家の養子となった。
それまでは、盲目の母と橋の下で物乞いをしていた。
母の死をきっかけに、紀代志の両親が雅人を養子にしたのだ。
進学を勧められながらも、中学を卒業してタツタ玩具に就職して30年以上。結婚もせず、地道に、地味なおもちゃを売って生き抜いきた雅人。
雅人が少年の頃から憧れていた「星宿海」。
そこから遠く離れた場所で、彼は突然に姿を消した。
「もし子供が女の子だったら『せつ』という名前をつけたいと思います」
「せつ」は雅人の実の母の名前。
宿命に翻弄され、どん底のような境遇にありながらも、強く明るく生き抜いた母子。
弟の紀代志が、恋人の千春が、雅人の人生をたどっていく中に、幾重にも深い人生の様相が見えてくる。
宿命の嵐に晒されても、人は生き抜いていく。
人間をだますのも人間。だが、人間を救うのも人間だ。
胸の奥に手を入れられて、心をがっちり捕まれたような重さがこの小説にはあった。
宮本輝の人間賛歌、ここにあり。
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