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Posted by ブクログ
エッセイでありながら小説的でもあり、それらの境目を不思議な感覚で味わえる一冊でした。19編それぞれに描かれた生と死が様々な表情を見せてくれます。ほほえましかったり悲しかったり、切なかったりやさしかったり、ときには恐ろしかったり不気味だったり。
お気に入りは『パニック障害がもたらしたもの』です。私もパニック障害(と併発していたうつ病)に苦しんだ時期があり、共感したとともになにか救われたような気がしました。宮本輝さんが出会ったお医者さんがおっしゃっていたという「天才は、ほとんどこの病気を持っています」という言葉を鵜呑みにしようかなと思います。できる限りストレスを少なく、もっとシンプルに生きていきたいです。
解説の行定勲さんとの対談番組(「SWITCHインタビュー 達人達(たち)」)も以前に拝見しました。むしろそこで初めて宮本輝さんを存じ上げ、そのときは「ゆるい雰囲気がなんとなくすてきな人だなあ」と感じただけなのですが、その後に短編集である『星々の悲しみ』を拝読して虜になりました。
この『いのちの姿 完全版』は、宮本輝さんの他の小説やエッセイをもっと楽しみたいなと思わせてくれる作品です。この一冊に出会えてよかった。
Posted by ブクログ
「小説は書き出し、随筆は最後の一行」と言われる。作家生活43年、著作も100冊を超える作家ともなると、この要諦を縦横に使い、随筆の形を借りた小説、あるいは小説の器の中に随筆を盛り込むといった芸当ができるんだなぁと陶然としながら読み了えた。あとがきにこんな文章を寄せている。「『これ以上書くと創作の領域に至る…』という、ぎりぎりの分水嶺あたりをうろつきながらエッセイというジャンルを超える企みを貫くことができた。」本書はまさしくこの一文に集約される。
異父兄の存在を知り、後年密かに兄を訪ねていく話、27歳の時に突如襲われたパニック症候群によりサラリーマンを辞め、小説家になろうと決意に至った話、シルクロードやドナウ河の長期に亘る取材の中での交流と邂逅…、これまでの人生の歩みで得た「経験値の引き出し」をひとつずつ開け、その中のエピソードにまた別のエピソード加えたり、掛けたりしながら小説に反映してきたことを語る。
秋の夜長、読書の愉しさを玩昧できる、もってこいの一冊。
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