感情タグBEST3
Posted by ブクログ 2023年06月29日
エッセイをあまり読んだことがなく、難しそうと敬遠していたのだが、とても読み進めやすい内容であった。
本書の中で、見えない闇や本質に触れる描写があったが、自分が思っている以上に人には様々な事情があるし、背景がある。
人の事情や背景に触れたときに、自分が初めて感じられることがあるのではないかと思った。
Posted by ブクログ 2019年08月19日
エッセイでありながら小説的でもあり、それらの境目を不思議な感覚で味わえる一冊でした。19編それぞれに描かれた生と死が様々な表情を見せてくれます。ほほえましかったり悲しかったり、切なかったりやさしかったり、ときには恐ろしかったり不気味だったり。
お気に入りは『パニック障害がもたらしたもの』です。私...続きを読むもパニック障害(と併発していたうつ病)に苦しんだ時期があり、共感したとともになにか救われたような気がしました。宮本輝さんが出会ったお医者さんがおっしゃっていたという「天才は、ほとんどこの病気を持っています」という言葉を鵜呑みにしようかなと思います。できる限りストレスを少なく、もっとシンプルに生きていきたいです。
解説の行定勲さんとの対談番組(「SWITCHインタビュー 達人達(たち)」)も以前に拝見しました。むしろそこで初めて宮本輝さんを存じ上げ、そのときは「ゆるい雰囲気がなんとなくすてきな人だなあ」と感じただけなのですが、その後に短編集である『星々の悲しみ』を拝読して虜になりました。
この『いのちの姿 完全版』は、宮本輝さんの他の小説やエッセイをもっと楽しみたいなと思わせてくれる作品です。この一冊に出会えてよかった。
Posted by ブクログ 2017年11月07日
「小説は書き出し、随筆は最後の一行」と言われる。作家生活43年、著作も100冊を超える作家ともなると、この要諦を縦横に使い、随筆の形を借りた小説、あるいは小説の器の中に随筆を盛り込むといった芸当ができるんだなぁと陶然としながら読み了えた。あとがきにこんな文章を寄せている。「『これ以上書くと創作の領域...続きを読むに至る…』という、ぎりぎりの分水嶺あたりをうろつきながらエッセイというジャンルを超える企みを貫くことができた。」本書はまさしくこの一文に集約される。
異父兄の存在を知り、後年密かに兄を訪ねていく話、27歳の時に突如襲われたパニック症候群によりサラリーマンを辞め、小説家になろうと決意に至った話、シルクロードやドナウ河の長期に亘る取材の中での交流と邂逅…、これまでの人生の歩みで得た「経験値の引き出し」をひとつずつ開け、その中のエピソードにまた別のエピソード加えたり、掛けたりしながら小説に反映してきたことを語る。
秋の夜長、読書の愉しさを玩昧できる、もってこいの一冊。
Posted by ブクログ 2023年12月05日
作者あとがきより
「小説にしてしまうとあまりに小説になりすぎる」という思い出や経験を……「これ以上書くと創作の領域だというぎりぎりの分水嶺あたりをうろつきながら」書かれたそうだ。
書かれたもの総て「いのち」にかかわること。
「いのち」とは? 命でも生命でもなく。
前のエッセイ集は「命の器」
「どん...続きを読むな人と出会うかはその人の器次第」と書いてあった。
これはグサッと刺さる。
解説の行定勲監督は
「どの登場人物にも嘘がないのは、「どれだけの人生に触れ、そのどの急所に目を向けてきたか」にあると思う。」
「真実は一つではない。その出来事のどんな側面に何を感じるかで違ってくるという宮本さんのものの見方」と。
このエッセイ『いのちの姿』の解説なのですが…宮本輝さんを読むヒントでしょうか。
今までに読めた小説に関わる背景やきっかけが興味深い。
そういえば 私は『泥の河』を小説だと思っていなかったような気がする。創作は作り事でも「嘘がない」からかもしれない。
Posted by ブクログ 2021年11月21日
宮本輝さんのエッセイ集です。
宮本さんがさまざまな経験をされている事がわかる小説でしたが、なぜか、とても静かな気持ちで読める小説でした。落ち着いて静かに読みたい時におすすめの一冊です。
Posted by ブクログ 2018年03月20日
宮本輝の初期の小説にはいるも”死”の影があったのはこういう訳だったのかとちょっと納得した。
なにせ幼い頃から事件の末の死、災害による死、トンネル長屋での死、著者の父が”お前には行くところ行く所で厄介ごとに遭遇するちゅう星まわりみたいなのがあるのかもしれん”と言わしめたように。
でも、それは言い換えれ...続きを読むば作家になるべく星まわりとも言えよう。
さまざまな経験、体験(家庭環境、結核、パニック障害、阪神大震災、シルクロードの旅、)をその繊細な感受性でとらえ骨太の純文学へと昇華させていったんだなとこのエッセイを読んで改めて感じた。
父親違いの兄がいてひと目顔だけでも見たいと思ってその家のまわりを何度も行き来した章と
おでん屋の夫婦の章(元ヤクザの夫が殺されて生まれたばかりの男の子をお豆腐屋さんに養子に出す)がとりわけ印象に残った。
Posted by ブクログ 2017年11月01日
未収録だった五篇を収録した完全版。京都の料亭・和久傳発行「桑兪」というエッセイ誌に10年にわたり連載されたもの。
かつての仕事の出会いが縁で小説「水のかたち」に挿入されるきっかけとなった経緯。人との出会いの大切さを感じた。
小学校四年生、トンネル長屋と呼ばれる長屋で一年間過ごしたエピソードなど...続きを読むは、まさに事実は小説より奇なり。
また、映画監督・行定勲氏の巻末に寄せられた解説も素晴らしい!
Posted by ブクログ 2022年03月12日
カバーを失くしてしまった上、しばらく本棚にしまいこんでいた。
ポツリポツリと読んでる。
決して順調とは言えないのだけど、ゆったりとした静かな時間がこのエッセイには流れている。
気持ちが静かでクリアになる。
また再読してみたい。
Posted by ブクログ 2020年11月28日
自伝的随筆集。自分の人生を後から振り返ってみてもこんなにバラエティー豊かなエピソードは出てこない気がする。それともこれは小説家という職業の鋭い観察眼と類まれな筆力のなせるわざ?
Posted by ブクログ 2019年12月22日
筆者の育ちのルーツは大阪の堂島の外れ、大阪湾に注ぐ河口付近であると。今や一大テーマパークで賑わうあの辺りにも、たしかにその日暮らしを精一杯生き抜く貧しい人たちの姿があった。