宮本輝のレビュー一覧

  • 水のかたち 上
    評価が1から5まであって驚く。

    骨董の価値はその人が決めたそれで良いというのと同じだと思った。 本来の価値とは違う次元の価値。

    志乃子の価値を見誤ったのは すべての読者ではないかと思う。それを後半覆される。 どこにでもいる普通の主婦のはずだったのに。

    「自然にすなおで、自然に謙虚で、自然に礼儀...続きを読む
  • 星宿海への道
    「星宿海への道」
    読み終わった後、鳥肌がたつような一冊。

    弟の語り口から壮絶な過去を持つ兄との回想シーンから始まる。
    全ては繋がっている。
    輪廻転成や縁を感じずにはいられない。

    本来の星海宿、兄が想う星海宿。
    母が見た星海宿、全てはつまるところ繋がっていた。

    家族というものをもう一度じっくり考...続きを読む
  • 星々の悲しみ
    タイトルにもなっている「星々の悲しみ」が一番印象に残ったが、他の作品もいずれもとても良かった。
    宮本輝の小説はどれも叙情的で少し物悲しくて、でも読後は胸にストンと落ちてくるような不思議な気持ち良さを感じる。その感覚が癖になってどんどん読んでしまう。
    読んでいると自然と「生と死」について考えさせられる...続きを読む
  • 田園発 港行き自転車 上
    物語は15年前カガワサイクルの社長が出張先とは関係のない富山滑川駅で病死した先を娘と友人が辿る旅から始まる。

    北陸街道を自転車で巡る様子、富山湾やそれぞれの港町、そして黒部内陸の田園風景、川にかかる愛本橋の姿。
    行ったことのない見たことのない場所を地図を広げ確認して想像することが楽しくなる。父の死...続きを読む
  • 青が散る(下)
    上巻よりも下巻のほうが面白い。下巻のために上巻を読むべき。読後感:切ない。大人でも子供でもない、ある一定の期間だけに許される感情が描かれている。
  • 春の夢
    忍耐の大切さを教えてくれる。また読みたい。青春のエネルギーと不安定感。ふとしたときにあの世に一歩踏み出してしまうかもしれないような危うさと、その中でも何がなんでも生きてやろうという熱情と。
  • オレンジの壺(下)
    祖父が秘めていた秘密をなぜ佐和子にだけしか糸口を開かなかったのか、彼女の生き様や性格を見ていれば納得できるような気がする。
    彼女は情に生き、祖父が犯した罪をすべて溶かしてくれるような人物だと思う。すべてを許し、人のためを思う考えを持つ彼女だからこそ祖父は秘密をあかしたのではないだろうか。
    マリーのそ...続きを読む
  • オレンジの壺(上)
    自分の離婚をきっかけに、祖父との日記との距離を縮める。なぜ祖父が佐和子だけにしか自分の秘密をみられないようにしたのか。祖父が佐和子に知ってほしかった秘密とは。秘密と謎が佐和子を闇に引きずり込む。その闇に佐和子は夢中になっていく。
  • 愉楽の園
    私はこれまでに7度タイに行ったことがある。
    この小説を読んでタイで過ごした気分になり読み進むのが楽しみでしょうがなかった。
    タイの暑さや湿度や匂いまでも感じられるような気がした。
    単なる恋愛小説かと読んでいると不思議な人物や出来事などミステリーにも思えてくる。
  • 錦繍
  • いのちの姿 完全版
     エッセイでありながら小説的でもあり、それらの境目を不思議な感覚で味わえる一冊でした。19編それぞれに描かれた生と死が様々な表情を見せてくれます。ほほえましかったり悲しかったり、切なかったりやさしかったり、ときには恐ろしかったり不気味だったり。
     お気に入りは『パニック障害がもたらしたもの』です。私...続きを読む
  • 優駿(下)
    メモりたくなるような指南がたくさん出てきました。宮本輝の小説はそんなことがたくさんあります。ストーリーも楽しく読ませて頂きました。
  • 優駿(上)
    面白くどんどん読めた。久々の宮本輝、やっぱりいい。騎手も大変な稼業だな。引き込まれて読んだ。勝ち負けの世界に身を置くのは厳しい。強くないと生きていけない。人間のイヤなところ、汚いところ、あぶり出されています。
  • 花の降る午後
    誠実でまっすぐで聡明な主人公の典子。
    亡き夫への想いを胸にしまいながら、神戸の老舗レストランを切り盛りしていく姿、周りの人を大切に愛していく姿は誰もが幸せを願いたくなります。

    偶然にも私と同い年の主人公。この年の女性が感じる正直な思い、若くもなく年寄りでもない自分。恋でも仕事でも何かを新しく始める...続きを読む
  • 星宿海への道
    中国旅行中にタクラマカン砂漠近郊の村から、自転車に乗ったまま忽然と姿を消した瀬戸雅人。

    物語は、雅人の2歳年下の弟・紀代志と、彼の子を身ごもった千春の視点で進んでいく。

    雅人は彼が8歳の時に、瀬戸家の養子となった。

    それまでは、盲目の母と橋の下で物乞いをしていた。

    母の死をきっかけに、紀代志...続きを読む
  • 長流の畔―流転の海 第八部―(新潮文庫)
    いよいよ物語も佳境に入ってきた。ハッピーエンドではないのかもしれないけれど、完結が本当に楽しみ。どんな一文で締めくくるんだろう。
  • 私たちが好きだったこと
    感想というか好きな部分。

    「個人のプライバシーに唾吐いて、言いたい放題、書きたい放題。それを読むやつも、なるほどそうなのかて、いとも簡単に信じ込む。どいつもこいつも、口舌の徒になる。俺は、そんなふうになりたくないんだ。逢ったこともなければ、話をしたこともない人を、誉めたり、けなしたりするのは犯罪だ...続きを読む
  • 花の回廊―流転の海 第五部―
    蘭月ビルが中心に展開する。伸仁の体験はすごい、としか言いようが無い。同じ年代の娘が私にもいるが、とても伸仁のような人生経験はさせられていない。

    この小説は大河だ。大きな流れの中で、読者はストーリーに迫ったり、離れたり。私自身も読み始めてから、相当な時間がかかってしまっている。

    一つには、何か悪い...続きを読む
  • 血脈の火―流転の海 第三部―
    カンタンな流れで言うと、大阪に戻ってきて、中華料理屋、雀荘。消防のホースの修繕。プロパンガス。きんつば屋。と仕事を変えていく。台風などいろんな事件があって、うまくいかないが、松坂熊吾のアイデアと実行力で次々と新規事業をモノにしていく。

    個人的には、松坂熊吾の糖尿病発覚が大きい。伸仁は7歳にしてヤク...続きを読む
  • 地の星―流転の海 第二部―
    後書きで北上次郎さんが主人公松坂熊吾について記述して言い得ているのでメモする。『やくざも恐れぬ獰猛さを持ちながら涙もろく、事業の才覚は鋭いくせに自ら進んで人に騙されるお人好し。さしたる学歴はもたないのに古今東西の書を引用し、妻を愛しながら次々に愛人を作り、さらに嫉妬深く、真摯で、知的で、ひとことで言...続きを読む