あらすじ
「前略 蔵王のダリア園から、ドッコ沼へ登るゴンドラ・リフトの中で、まさかあなたと再会するなんて、本当に想像すら出来ないことでした」運命的な事件ゆえ愛しながらも離婚した二人が、紅葉に染まる蔵王で十年の歳月を隔て再会した。そして、女は男に宛てて一通の手紙を書き綴る――。往復書簡が、それぞれの孤独を生きてきた男女の過去を埋め織りなす、愛と再生のロマン。
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Posted by ブクログ
●感想
登場人物に共感できるかできないかで作品を評価することはない。だらしなくどうしようもない、でもなんかモテる男と、女の芯の強さと素直さがよく描かれているところや、往復書簡形式で読者が彼らの秘密を知っていく、あるいは現在の二人の思いを知っていくという構造が好きだった。
色鮮やかな織物や季節を表す「錦繍」。さまざまな経験が一本一本の糸となり、一人の人生を織りなす、または複雑に人間関係が絡み合って織りなす人間模様、そういうことをタイトルはあらわしているのかな?と思った。過去の答え合わせをし、それぞれの未来へ進む二人。輝く糸、ものすごく暗い糸、穏やかな糸、切ない糸、熱い糸、冷たい糸…人生にはいろいろな糸があるからこそ全体として深みが出て輝くのだという思いを抱いた。
人生は、過去と現在と未来が繋がっていて、決して切り離して考えられるものはなく、過去の経験を背負い、今があり、それらを引きずりながらも前へ進むしかない。当たり前のことだが、そういう感覚があれば、いずれ過去になる今を大切にしないといけないという思いにもつながる。
●本概要
私はあなたにまさにひと目惚れでした。
愛し合いながらも離婚した二人が、紅葉に染まる蔵王で十年を隔て再会した――。往復書簡がそれぞれの過去と思慕を炙り出す。恋愛小説の金字塔。
会って話したのでは伝えようもない心の傷。14通の手紙が、それを書き尽くした。
「前略 蔵王のダリア園から、ドッコ沼へ登るゴンドラ・リフトの中で、まさかあなたと再会するなんて、本当に想像すら出来ないことでした」運命的な事件ゆえ愛しながらも離婚した二人が、紅葉に染まる蔵王で十年の歳月を隔て再会した。そして、女は男に宛てて一通の手紙を書き綴る――。往復書簡が、それぞれの孤独を生きてきた男女の過去を埋め織りなす、愛と再生のロマン。
Posted by ブクログ
秋の気配が近づき、紅葉もそう遠くない季節だからこその「錦繍」。宮本輝先生の小説を母国語で読める幸せを噛み締めております。別れた男女の往復書簡だけで、人生の機微、うつろう四季の壮大さ、美しさ、儚さがこんなに目に浮かんでくるものか、底知れない筆力。錦心繍口って宮本輝先生のためにある言葉でしょうか。
Posted by ブクログ
通信手段が高度に発達した現代では、手紙を書く機会がほとんど失われてしまっているが、手紙を書くという行為ほど、時間をかけて、読み手のことを想ったり、自分自身と真剣に向き合うことができる機会はないと思う。
2人は、手紙をしたためて、読み合うという過程を経て、互いの過去から現在の心情理解が深まり、未来へ向かって少し前向きな気持ちを持てるようになったのだと思う。
客観的に認識することが難しいような人間の心の機微が、2人の言葉によって紡ぎ出されていく様子が美しいと思った。
ただ、冷静な目で見てしまうと、有馬靖明は美しい言葉で飾りながら自身の不倫を美化しているように思えた。
元妻の勝沼亜紀に対しても、不倫相手の瀬尾由加子に対しても、現在の交際相手の玲子に対しても、自身の欲求をぶつけるだけぶつけて、尊厳を傷つけておきながら、どこか被害者ぶっているように思える。
私が勝沼亜紀だったら、途中で手紙を破り捨てるか、汚い言葉で、有馬靖明という人間の卑しさや、現在の夫の勝沼壮一郎の不倫も踏まえた男という性別に対する絶望感を吐露する怪文書のようなものを作り上げていたに違いない。
Posted by ブクログ
色々な作品を併読していて、時間がかかった。そんな中、やはりベテラン作品は文章がすんなり入ってきて心地良い。偶然の再会をきっかけに、手紙を交わすことで過去の傷を見つめ直す元夫婦の心情が丹念に描かれる。結末も自然で、爽やかな読後感に満たされる。
Posted by ブクログ
それぞれの登場人物が前向きに生きることを選択してくれてよかった。人は哀しみを抱えて生きていく生き物で、様々な過去がありながら懸命に今を生きるしかないのだと思った。
人を好きになることは厄介事を引き受けるようなもので、苦しみが必ずおまけのようについてくる でも仕方ないものだとも思う。
瀬尾由香子は誰かに愛されて欲しかった、かわいそう( ; ; )
Posted by ブクログ
美しい文章とは「これ」のことか、と思いました。
読みやすく、くどく無いのに頭の中に鮮明に思い浮かぶ情緒深い景色。
生と死だったり業だったりの話でいまいち理解しきれませんでした。
この本の主張をまるきり理解するには僕は若造すぎるのかもしれません。
出直します。
Posted by ブクログ
読んだ後なんとも言えない気持ちになる。でも、心の中に強い芯みたいなものがある感覚になる。
お互いのことを深く理解し合った人がいる、という事実は、たとえ一緒にならなくとも、心強いもの
Posted by ブクログ
私は若造なので「ゆかこ、ゆかこうるさいわねえええ!!!奥さんにもっと謝りなさいよ!!」とか思っちゃった。結婚ってマジで何?とは思うんだけどこの本の主題ってそこじゃないんやろな。過去を乗り越えて現実を見つめ直して1歩進んでいくっていう物語なんだろな。個人的には令子ほんとに強い女だなと思った。恋人?の元奥さんとの手紙読んで「私元奥さんのこと好き」って泣けねえよどういうことだよ、、、、。
Posted by ブクログ
素晴らしい作品。この一冊で男女の関係だけでなく、過去と未来、生と死、人間の背負う業など数々の事を考えさせられた。お互いの手紙によって物語が進んでいくという形式が時の流れと心情の変化を上手く運んでいた。この作品にだいぶ喰らってる。
人間には業があり、それに沿って人生が展開していく。人によってはその業は決して容易いものではなく受け入れがたいものかも知れない。ただ諦めて自死を選ぶのではなく、その業を受け入れた上でイマを必死に生きることで未来へと歩みを続ける。
「生きていることと、死んでいることは、もしかしたら同じことなのかもしれない」この宇宙の、生命の不思議なのカラクリはまだ俺の人生では理解できてない。
Posted by ブクログ
何かでおすすめ作品として取り上げられていて気になって手に取った作品。三島由紀夫とか志賀直哉とか古い純文学系も好きな自分としては文章が美しく、それでいて読みやすく心が掴まれた。二人の書簡でのやりとり、一方的になってしまうもつれた感じも含めて空気感が好きだったし、読んだあと何度も読み返したいと心から思った。2人はなぜ別れてしまったのかこれからどうなるのか読みながらグイグイ引き込まれた
Posted by ブクログ
文学の森 2026年6月クールのテーマ作品
過去から現在につながり、そして未来へとつながる。
過去に引きずられず今を精一杯生きることが、きっと自分にとって一番ふさわしい未来につながると感じた。
数十年ぶりの再読だが、宮本輝さんの美しい文章は心地よいなぁ。
Posted by ブクログ
心が震えました。
昭和60年に発行されているのですね。
男と女、人生について、どこかで聞いたことあるような話なのに、文体や語り方によって深く引き込まれる物語になっています。
ぱっと見薄い1冊の中に、すごく身の詰まった物語が入っていて、読後しばらく動けませんでした。(お勧めされて、古いのでこわごわ読んだのですがほんとに読んで良かったです。)
宮本輝、他にも読んでみようと思います。
Posted by ブクログ
今こそ読みたい、日本文学の金字塔
一気読みしてしまいました。
手紙だけでこれほどまでに豊かな情景と、複雑な人間の感情を表現できるのかと驚かされます。
切ない再会から始まり、絶望を越えて生き直そうとする二人の姿には、普遍的な強さを感じました。
私にとってこの本は、モーツァルトの音楽と出会わせてくれた大切な一冊でもあります。
作中で触れられるその調べをきっかけに聴き始め、今でも私の日常に欠かせないものとなっています。
美しい日本語と音楽の深みに触れたい時に、ぜひ手に取ってほしい名作です。
Posted by ブクログ
「耳でも聞きたい」そう思った小説は初めてだった。
往復書簡だからなのか、読んでいる時も頭の中で誰かが読んでいるようなイメージがあった。
読み終えるまでの過程はすごくモヤモヤしたのに、終わってしまったららすぐにまた最初のページを開いてしまった。
本当に不思議な魅力のある本。
モーツァルトの39番シンフォニィを聴いてしまうし、蔵王のダリア園からドッコ沼へ登るゴンドラ・リフトに乗ってみたいと思う。
綺麗なだけのお話では決してない。
だけど、妙に心に残る言葉や景色は何だろう。
手紙の中で綴られる素直な気持ちや、どうしようもなくても生きる生命の美しさなのかな。
Posted by ブクログ
★4〜4.5 特に、読後感がすばらしかった。
手紙だけの本ってすごい。
古い作品ゆえ、古臭い文体で気になった所は多いにあったが、古いが故の美しさに徐々に沼り、
時代のせいか、男は浮気をして当然、みたいなところとかが受け入れられなかったけど、
別れて数年後に、偶然再会したことから、手紙をやり取りし、最終的にはお互いがお互いの道を強く歩み出すところがよかった。
終盤の紅葉の中での父と娘のやり取りもぐっときた。
現在のダンナが、愛人と子供まで育てていた事が最後の最後でさらりと書かれてた。
生と死についても多く触れられていた。
死んでも命は宇宙を漂い、また、人の中にも残る。
ねずみが猫に食べられてるまさにその時、亜紀と息子は満天の星空を見上げていた。
世界は色々ある。
生きている、死んでいるにとどまらず、『命』を交わらせている事が『錦繍』だと私は感じた。
Posted by ブクログ
1985年に出版された本書。最近のものしか読んでこなかった自分にとっては新鮮な文体だった。
時代背景としてはまだまだ男権的な日本で、女性の台頭が始まろうかとしている頃ではないだろうか。
終始手紙の交換を通じて物語は進んでいくから、主人公は2人いるように思う。
かつて夫婦であった2人がそれぞれの視点で過去を振り返り吐露していく。
物語に山場があるわけでもクライマックスらしいものがあるわけでもなかったが、ちょっとした合間の時間に読むのには丁度よい面白さだった。
マイナスも特になかったかな。
前半、ひしひしと離別の後悔が伝わってきて、勢いで結婚することはあっても勢いで離婚することは控えた方がよいな、と心得た一冊でした。
Posted by ブクログ
文章が美しく、全て読み終わるとタイトルも秀逸だと思った。
男性側のデリカシーの無さや、それでいて聞かれたことに対してなかなか直球で答えないところにイラっとしながらも(笑)、次の手紙が気になってどんどん読めた。
一方で、ところどころ出てくるスピリチュアルな部分は全てを理解するのは難しかった。
離婚した2人ではあるが、一緒に過ごした幸せな時間や愛情は確かにあって(だからこそ男性のしたことに腹が立つのだが)、最終的には、お互いの幸せを心の中で願いながらもそれぞれが前を向いて進んでいく。結ばれなかったとしても、人生においてそのように思える人がいることは尊いと感じた。
人には幸せな瞬間だけではなく、辛い経験や後悔・嫉妬などの様々な感情もあるが、それら全てが織り重なってその人だけの錦繍になるのではないかと、タイトルについても考えさせられた。
全ての手紙を読み終えた後で、また最初から読みたくなる一冊だった。
Posted by ブクログ
宮本輝とは、余韻を感じさせるのが上手な作家である。最後の方になると、読み終えたくなくなる気持ちになるし、読み終えた後は、物語の中にしっかり浸っていたくなる。
登場人物がそれぞれ嫌なところもありながら、魅力的な愛すべき存在として描かれているのも素晴らしい。
Posted by ブクログ
義母が宮本輝さん好きらしく、私も読んでみた。
往復書簡で綴られる静謐な文章。
「今」に対する受け止め方が変わっていく場面が印象に残った。自分の不幸を他人のせいにしたりなどしたが、そうではない、これは私の業でもあるという気付き。
もう少し大人になってから再読したいと感じた。
Posted by ブクログ
昔の本だから読みにくいかなと思いきやつらつら読めます。読みやすい。読後はなんだか郷愁というか子供時代の事や田舎のこととか色々蘇ってきてめっちゃセンチメンタルになります。でも良かった。
Posted by ブクログ
会社の先輩から純文学が読めるなら、これを読んでほしいと半ば強引に読むことになりました。
正直なところかつての文豪の作品でも、いわゆる純文学と括られる作品はなかなかハードル高めのものが多いイメージがありますよね。
錦繍は元夫婦と言う関係性の2人が偶然の再会をしたことから始まり、手紙と言う手段で過去を精算していく物語。
手紙だけのやり取りがここまで奥行きを出し引き込ませるのかと、正直驚きました。
素直に面白かったです、新しい作品ばかり読もうとしてましたがもっと色々な作品に触れてみたいと思わせられました。
Posted by ブクログ
手紙のやり取りだけの構成は斬新だった。そしてその文体の美しさに引き込まれた。
がしかし!いろいろ言いたいことがある。
いやそもそも、不倫相手と心中という運命的な事件のゆえに愛し合いながらも離婚した夫婦…だとぉ?!
亜紀よ!目を覚ますのよ!ってところからツッコミを入れなければならない。
夫が不倫相手と心中事件を起こしたのよ?
それでも愛する?はぁ?
なわけあるかい!ドン引きで秒で追い出すわよ!
世の男性の頭の中って、こんなにご都合良いのかしら?
そして有馬に物申す!!あなたの伝えたいことは、相手が聞きたいこととズレているのだわよ!さらに傷を抉ってきてんじゃないわよ!
という具合に、全くデリカシーのない有馬に途中からうんざりしつつ、でもそこがこの物語の面白みでもあるのだけれど。聞こえのよいことばかりなら、面白みが薄々になってしまうから。
そこで忘れてはならない、事件の張本人である不倫相手の由加子。
有馬にとっての由加子という存在は、有馬が唯一カッコイイ男を演じていられる相手だったんじゃないだろうか、、
家に帰れば婿養子として、亜紀の夫としての価値がどうしても引っ付いてくる。
由加子と共にしている時間だけが、有馬が有馬靖明として存在できる瞬間だった、、
帰れば、また亜紀の付属品となるのだから。
対して由加子の有馬に対する想いとは、、
有馬へ言った「あなたは家に帰っていくじゃない」このひと言に全てが詰まってる。
由加子は「有馬の全部が欲しい」
有馬は「由加子といる自分が好き」
愛の矢印が違う方をむいているのよ。残酷だわね。けれども世の不倫の男女とは大体がこのようなもの。報われない。不倫なんて結局はエゴイズムでしかないと私は思う。
というわけで、どっぷり余韻に浸れる作品であることは間違いない!
Posted by ブクログ
何年も積読していたこちらをやっと
読み終えました。
久しぶりに純文学に触れましたが
意外にも一気読みでした。
とある事件をきっかけに、別れた元夫婦が
偶然再開し、別れた理由や当時の気持ちを
互いに書簡としてやり取りした記録。
美しい文章のやり取りは一部あるものの
この2人の気持ちに全く入りきれず
結局のところ何がしたかったのか。。
没入出来ないまま終わってしまった。
純粋にハッピーエンドでもなくかと言って
イアミスでもなく、終始ぼんやりとした印象。
単に自分が共感できなかったと言えば
そうかもしれないけれど、やり取りに
身も蓋もないと言うか。
読み返すことはないかな。
有名作品ではあるけれど、万人ウケするわけ
ではないのですね。純文学は難しい。
Posted by ブクログ
一度壊れた関係は修復するのは難しい。それでも人の心は時々刻々と変化し続けるもの。
時間の経過と人の心情変化を文通形式でうまく描いた作品でした。
Posted by ブクログ
初めての書簡体小説だった.時代感が合わないなと思ったら40年前の作品だった.
なんで手に取ったのか覚えてないけど,今でも読めるようなロマンチックでリアリスティックな内容だったなー
Posted by ブクログ
離婚した男女が手紙を通して過去を語り合い、過去を再解釈しそれぞれが前へ向いて進んでいく話。
モーツァルトを聴きながら読んだ。
女性目線からだと亜紀が不憫でならない。どこにも置けない切ない気持ちになった。
生きていることと、死んでいることとは、もしかしたら同じことかもしれない。
生きてると辛いことが多くてこんな風に感じることが多い。
昭和57年に刊行されている本だけどとても読みやすかった。
Posted by ブクログ
たぶん20代のころぶりの、再読。あるできごとによって別れた夫婦が、十年後、偶然の再会をし、手紙のやり取りをする。二人の再会時の年齢よりも、はるかに年を取ってしまって、読み返して思うのは、二人が大人だということ。それで、妻がちょっとはしゃいだ感じになっているのがかわいらしく、しかし、どうにもならないので無念だということ。業や、生まれ変わりにについては、あいかわらずわからない。生まれる前から決まっていた、そういうものもあるかもしれない、とは思う。
再会は本当に、全くの偶然だった。夫がそこへ行くことは、そのときまで決まっていなかったし、あと数秒違えば、同じゴンドラにも乗っていなかった。二人が再会したことの奇跡に感謝したくなる。そんな、あのときああしたら、ああしなかったら、が、自分の人生にもいくつもあるのだろうな。だけど、現実には、今ある人生を愛してゆくしかないのだろう。