あらすじ
「前略 蔵王のダリア園から、ドッコ沼へ登るゴンドラ・リフトの中で、まさかあなたと再会するなんて、本当に想像すら出来ないことでした」運命的な事件ゆえ愛しながらも離婚した二人が、紅葉に染まる蔵王で十年の歳月を隔て再会した。そして、女は男に宛てて一通の手紙を書き綴る――。往復書簡が、それぞれの孤独を生きてきた男女の過去を埋め織りなす、愛と再生のロマン。
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Posted by ブクログ
久々に良い本読んだな…と思う読後感。
あらすじに離婚した男と女の愛と再生の物語ってあるし要は復縁していく経緯を描く物語を期待して読み進めていたけれど、
再生ってそういうことか〜!ってなりました。
二人が綴る書簡の美しさはまさに錦繍。
ラストが近づくほど美しく、作品としても味わえるような素敵な一冊でした。
Posted by ブクログ
一番はじめに読んだのは、30年くらい前のハタチ位の時。その後、2〜3回は読んだと思う。
先日、久しぶりに宮本輝さんの別の作品を読む機会があり、懐かしくなって、今回20年ぶりに読みました。
かつての夫婦であった男女の間で交わされる14通の手紙。
暗い過去を振り返るやりとりから、後半になるにつれ、だんだん希望を感じられるやりとりになっていく様子が素晴らしかったです。
また10年後に読み返してみたいです。
Posted by ブクログ
紅、朱、橙、黄
色とりどりの紅葉を目にする度、私はこの「錦繍」を思い出さずにはいられないだろう。
錦繍【きんしゅう】
1.錦(にしき)と刺繍(ししゅう)を施した織物
2.美しい織物や立派な衣服
3.美しい紅葉や花のたとえ
4.美しい字句や文章のたとえ
蔵王のドッコ沼へ向かうゴンドラの中で10年ぶりに偶然再会した元夫婦 勝沼亜紀と有馬靖明。そんな2人の往復書簡のみで綴られた小説。
別れて10年の歳月が過ぎたというのに、当時を振り返り相手のことを思い、いく枚もの便箋に何時間も何日もを費やして書かれた手紙。
時に冷たく突き放す有馬。しかし再びやり取りが始まると、そんな有馬からも品を感じる。
手紙の丁寧な文章にどんどんと引き込まれ、2人の思いが染み入るように伝わってくる。
あの時の本心。
伝えたかったこと。
ようやく気がついた相手の気持ち、自分の気持ち。
書くことで少しづつ整理されていく。
かつて7年もの間 本当に愛し合っていた2人だからこそ交わすことのできる心と心の答え合わせ。
そんな手紙を読みながら、どれだけお似合いの夫婦だったのだろう、と想像せずにはいられない。
あの日、あのことさえなければ2人は永遠に幸せだったのかもしれない。
この物語の主役は亜紀と有馬に違いない。けれど 有馬の不倫相手であった瀬尾由加子、有馬の同棲相手である令子、星島家のお手伝い育子さん、それに亜紀を含めた4人の色とりどりの女性の「錦繍」であるようにも思えた。
有馬は亜紀への手紙の中で令子のことを
「この厄介な男を大切にしてくれる気立の優しい女ですが、私は愛情を感じていません」と記している。
しかし有馬の手紙の内容は令子との今の暮らしや令子がどんな女かという事ばかりである。
有馬は亜紀への手紙を書くうちに令子の存在の大きさや 自分の令子への気持ちに気付いていくように見える。
一方 亜紀は有馬への消すことのできない愛情を曝けつつも、有馬からの手紙を読み 今まで見て見ぬふりをしてきた現在の夫とのこれからの関係について、あたり一面の「錦繍」を見ながら重大な決断を下す。
2人が手紙をきっかけによりを戻すのではなく、これまでの人生を整理し、また歩き始めるところに この物語の美しさがあるように思う。
手紙はメールやLINEのように一瞬では終わらない。
相手からの手紙を読み、その返事を書き終えるまでの数日感、何度も相手のことを思い浮かべ、文章を反芻し、一文字ずつ自分の手で書いていく。
返事を書く間にも、相手から届いたその手紙を何度か読み直すはずだ。
相手を思う気持ち、相手に費やす時間、その全てが 今よりも遥かに大きく真っ直ぐなものである。
テレビを見ながらとか、電車の中でとか、何かの隙間時間に、なんて返信できない。きちんと机に向かって真正面から取り組まなければならない。
そう思うと、いつから人は人と真剣に向き合わなくなってしまったのだろう。
相手のことだけを思い、机に向かい、ただただ手紙を書くだけの時間。
それがどれだけ愛おしい時間なのか。
2人の往復書簡もまた「錦繍」なのだ。
実際に手書きの往復書簡が冊子になれば、その字体から、心情や気持ちがありありと読み取れて、世界一の名作になるのではないか、なんて妄想をしてみる。
余談
この本を読むまで私の大好きな1冊は夏目漱石の「こころ」だった。
(「こころ」の第3章は先生からのとてつもなく長い手紙だ)
でも、この「錦繍」を読んでその気持ちがグラグラとしている。
ただひとつはっきりしていることは、きっと私は人の手紙を盗み見るのが好きなのだ、ということ。
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備忘録
亜紀と有馬の手紙
1月16日 亜紀 1通目
3月 6日 有馬 1通目
3月20日 亜紀 2通目
4月 2日 有馬 2通目
6月16日 亜紀 3通目
7月16日 亜紀 4通目
7月31日 有馬 3通目
8月 3日 亜紀 5通目
8月 8日 有馬 4通目
8月18日 亜紀 6通目
9月10日 有馬 5通目
9月18日 亜紀 7通目
10月 3日 有馬 6通目
11月18日 亜紀 8通目
Posted by ブクログ
山形文学紀行で紹介された本であるが、蔵王温泉は一場面しか出てこない。その場所で別れた夫婦が偶然に再開する。しかし、多くの場面は関西であり、大阪であり京都である。
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昔はこうして連連と手紙を書いたものでした。
本当は別れたくはなかった、本当は今も愛し愛されていることがわかった。でも一緒にはなれない現実もある。
女は、生きることと死ぬことは同じと感じ、その言葉に男は、己の為した全ての行為、心に抱いた思念は、死の世界へ移行した自分を打擲すると伝えた。
過去に囚われた苦しみが、希望に満ちてくる瞬間がある。その時、美しい錦の織物が紡がれたように感じました。
この人の作品は本当に素晴らしい!
Posted by ブクログ
離婚した元夫婦が偶然蔵王で再会し、一年弱、14通の手紙のやり取りを通じて、過去を乗り越え、再生する物語。
1985年の小説なので、令和の今読むと倫理観が崩壊している。浮気を開き直られても、とか、忘れられない女がいたことは墓場まで持っていく話でしょ!とか、今の女性とのやりとりをそんなに赤裸々に語られても、とか…色々、色々思った。けれどそれでも圧倒的だった。読後の力強さ、みなぎる感じが、やはり名作。2025最後の小説かな、と思いながら読み始めたけれど、一気読み!
Posted by ブクログ
東京も紅葉がたけなわ、久しぶりに読みたくなりました。
往復書簡の形式。
互いに愛し合いながらも思いもよらぬ別れで傷つきなお生きてきた元夫婦が、
それぞれの人生で立ち直って生きていく話です。
Posted by ブクログ
書簡体小説といわれるものは、夏目漱石の「こころ」がはじめてでした。手紙は一方的なのですが、その人の感情が痛いほど感じとれるものだと思います。それを読んで泣いたのを覚えていますし、小説にはまったのもそれがきっかけだったような気がします。それほど強く衝撃を受けたものでした。
「こころ」は往復ではなく片道のたった一通の手紙でしたが、「錦繍」の手紙は男女でやりとりされる往復で、最初から最後まで手紙のみ。
昔夫婦だった二人が久しぶりに再会し、手紙のやり取りをはじめるのですが、1ページ目から心をぐっと掴まれます。読むのをやめることが出来なくなりました。
内容は男女の激しいものですが、書簡体なので印象としては文章が静かに流れていく感覚を覚えます。
とても好きな小説ですが、はたして人に勧められるかと問われると考えてしまいます。本当に本が好きであるだけでなく、酸いも甘いも経験した大人向けとでも言っておきましょうか。
でも決して破滅的な内容ではなく、あらすじにも書かれているとおり「再生」を強く感じた物語でした。
Posted by ブクログ
10年ぶりに偶然邂逅した元夫婦の、手紙のやり取りで綴られる物語。傍にいても気づかぬこと、離れていても分かること。縺れ合う糸の混沌を裏返せば美しい刺繍となるように、迷い悔やみながら歩む人生もいつか美しい錦となる。哀しさ切なさと共に勇気が湧いてくる美しい作品だった。
Posted by ブクログ
とてもきれいな書簡小説だった…
文体はもちろんのこと、内容も高尚で美しく
読んでいて心がスゥーっと洗われていくような感じがした。
亜紀と靖明は10年前に、靖明の不貞・殺人事件が原因で離婚をした。そして、その10年後蔵王のゴンドラで奇跡的な再会を果たす。その再会ではお互い見つめ合い少しの挨拶で終わったが、亜紀には靖明に聞きたいことがたくさんあった。不貞の相手由加子と靖明の関係性とその真実、亜紀との離婚を踏みきった理由…それを切実に書簡で尋ねる亜紀。それに対しはじめは躊躇したものの、亜紀に嘘偽りもない事実を書き連ねて返信していく靖明。ふたりの計14通から見えてくるさまざまな真実に、胸が締め付けられると同時に、人間という生き物のやるせなさもひしひしと感じられた…
特に印象に残ったシーンは、さまざまな死や無になる描写が出てくるなかで、最後にふたりが見出した未来を語るシーンだ。ずっとふたりは過去を振り返り書簡していたが、いつしかそれぞれにこれからの生き様を語り、お互いの健闘を祈る姿は凛々しく、そして美しかった。
手紙の尊さを改めて感じた作品。
私も誰かに手紙を書きたくなった…
そしてこの作品が昭和60年に執筆されたことに、
いまだ驚きを隠せない。
宮本輝さん…また気になる作家さんに出会ってしまった!!
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Posted by ブクログ
宮本輝さん著「錦繍」
宮本輝作品の中でも人気上位の未読の作品をと思いこの作品を選んでみた。
作品は離婚した元夫婦関係にあった男女の手紙のやり取りだけで構成されている。
携帯電話が主流の今の時代、「手紙」でのやり取りという作風がとてもノスタルジックに感じられ、言葉の気品の高さもあいまって妙に味わい深い雰囲気を感じさせられる。
人が口を揃えて「名作」と位置付ける理由がよくわかる作品だった。
手軽で利便性に富んだ携帯電話。
今の時代では当たり前に電話、メール、ライン等でメッセージを送受信できる。
誰の生活にも無くてはならない必需品であり、また個人の一部といってもいい位の重要ツールでもある。
それがなかった時代では…
この作品のように手紙をしたため、時間をかけながら何度も往復させながらのやり取りしたことだろう。
現代にはない、奥ゆかしさや知性が文面の手紙に込められているように感じられ、逆に斬新に感じられる不思議な感覚を得られる。手紙を書くという行為自体がとても清純に感じられ、自白していくその心をまるで写し取っていく行為に感じられた。
漂う気品の高さ、とても良い作品だった。
Posted by ブクログ
何故か解説の「書くことによってだけ辛うじて伝え得る悔恨を、哀惜を、思慕を綴ったような便り」の所で涙が出てしまいした。正にその通りです。
Posted by ブクログ
初めは有馬に対する嫌悪感と不信感しかなかった。
でも、有馬さんからの手紙を読み進めていくうちに、彼の波瀾万丈な人生に寄り添い始めてしまう。
亜紀もしかり。
読み始めた時とは違う感情が最後には込み上げてきて、2人の再会とこれからの人生に美しさが見えた。
Posted by ブクログ
NHKラジオの朗読にて
石田ゆり子さんと松尾スズキさんによる朗読
夫の不貞によって別れざるを得なかった2人。
しかも相手の女性が心中を計り、夫のみ助かった。
思いがけないところで偶然再会したことにより、本当は今でもかつての夫を愛していることに気づく。
裕福な家で育ったあきさんの、でもあまり幸せではない人生が切ない。
往復書簡によって続くやり取りに、今では感じられない「間」があって、それがよかった。
Posted by ブクログ
別れた元夫婦の偶然再会したことによる、手紙の往復書簡で物語が進む。愛し合っていたのに別れ…二人ともなかなかの波乱万丈な人生でした。
これからの人生も交わることがないのだとわかっているけれど…それでも愛し合っているのだなぁと感じ切ない物語でした。蔵王 ダリア園 ゴンドラ 知っているからなのか、郷愁を感じ読み進めました。
Posted by ブクログ
電話の普及により手紙が減った
携帯電話の普及により電話が減った
未来に向けての元夫婦の書簡のやりとりが書かれている
手紙とは相手にそろそろ届いたかな?というワクワク感を
返事が来るかな?というドキドキ感を
時間がその感情を与えてくれている
今はタイパといって時間短縮を求められるが
書簡には相手に気持ちが良く伝わる・記憶に残る等デジタルには無い価値があると思う
この小説は昭和に書かれたものであるが私自身に書簡の良さを再確認させてくれた
Posted by ブクログ
別れた2人がばったり会ったことから手紙のやり取りが始まり、その手紙だけで物語が進みます。
2人の人生を手紙でなぞるのですが、2人ともなかなかの波瀾万丈ぶり。2人の人生を読み進め、他人事なのに自分事のようにしみじみしてしまいました。
Posted by ブクログ
一時、宮本輝にハマった時期があって、少し離れてからまた読んだ作品。
「晩秋に読む本としておすすめ」って紹介されてたと思う。
確かに、再会の場所が紅葉真っ只中のところで、全体的に哀愁が漂っていて、もう巻き戻すことの出来ない時間を生きているのに手紙のやり取りで2人の愛や憎しみ、悲しみが色を取り戻す、という印象が晩秋を思わせた。
すごく薄い本なんだけど内容は濃いと思う。
Posted by ブクログ
テレビで紹介されて読んでみたが、おもしろかった。手紙のやり取りだけで、これだけ想像することができるとは。
色々なことがあったとしても、毎日感謝して生きよう。
Posted by ブクログ
読む前
愛し合っていた2人が、ただすれ違って誤解してしまったがために離婚したけれど、手紙を通して再び相思相愛になる話
なのかなと勝手に思っていた
でも読んでみたら、思っていたよりもちゃんと不倫していたし、有馬さんは思ってたよりもダメな男やった
お勧めしてくれた方がこの本を読んだ感想として、「ちゃんと言葉にしないとすれ違う」というようなことを言っていたからこそ、そう思ってたのかも?
その意味を、ただ「事実を伝えること」みたいな意味合いで受け取っていたのだけど、この小説を読んでみて、実際にあった出来事は受け止め方に差はあれど大きな変わりはなく。
でも「お互いがしっかりと本音を伝え合うこと」で、しっかりと過去に向かい合って、受け入れて、今を生きることができるようになった話やなと感じた。
だからこそ、言葉にしないとすれ違うというのは、自分の思い込みを正さないとというわけでなく、自分の気持ちや物事をきちんと受け止めるためにはちゃんと言葉にしてそのまんまを伝えることが大切やということかも。と思った。
あと、要所要所で、障がいのある息子を業だと言ったり、男の不倫は性だと言ったり、小さな、ん?って思うことはちらほらあった。
なんとなくやけど、時代錯誤やなという感じの違和感。
けれど。その小さな違和感になる要素がなければ、この手紙は本心ではないものだったし、2人は前を向けなかったような気がする。
めちゃくちゃ人間臭い2人が、めちゃくちゃ時間をかけて過去を受け入れて、ようやく今を生きることができるようになった話という感想
でも、手紙形式だったからか、「こう生きるべき」というよりは、「こういう人生がある」みたいな小説で、なんかわからんけど今の小説にはない感覚な気もした
え、いいな、とてもいいな
Posted by ブクログ
40年も前に書かれた作品なので、日々の描写も生活実感もとても深い。ネズミの食べられる様も今では実感を持っては無理で、頭で考え想像しなければ映像も結べないと思う。
主人公の男性も30代と読み進んで分かった。もっと熟年の男女の物語のように思えたので、なんて私達は幼稚な人間になっているのだろうと作品と離れた感慨を抱いた。
Posted by ブクログ
最初にページを開いて読み始めた時の印象を裏切って、夢中になって一気に読んでしまった。手紙のやりとりだけで進んでいく本で、それがまた時代を感じさせる。
再会したことで手紙のやりとりが始まり、過去を打ち明け、今までわかり得なかった事を知る。現在の自分を語り、これからの別々の人生を歩んでいく。
なにかすごいストーリー展開、とかでもなく淡々としているけど、人間の心の中を繊細に描いていた。
Posted by ブクログ
情景が目に浮かぶ こんなに綺麗な文章を久しぶりに読んだ気がする。小説なのに、映像が目に浮かび、登場人物の心のヒダみたいな部分まで読み手に感じさせる、読んで良かったと心から思える一冊。
Posted by ブクログ
難しかったけど、長い人生の中の一瞬をのぞかせてもらったような感じで、濃い読書体験だった、、
人の人生を一言で表せないように、
この本の感想を言葉にしてしまうと一気に薄くなってしまうようで、
それくらい人の人生を見た感じだった
読書体験の可能性に驚いた
Posted by ブクログ
人生ってほんと思う様にいかないし、伝えたいように伝えられないし、上手くいかないもんだ思った。愛しあっていたはずの夫婦が離婚して、手紙のやり取りをするようになる中、伝えられなかったものを伝え合い少し分かりあってそれぞれに歩みを進めていく。手紙のやり取りだけでお話が進んでいって面白かった。
Posted by ブクログ
初めは女性も男性も好きになれなかったが、現在の話になっていくと、今の彼女も含め応援したい気持ちになっていた。だって男がひどい。礼子さんと亜希さんの気持ちが寄り添いあってて前向きになってちょっと嬉しい。全体的には好きではない恋愛背景だったけど。
Posted by ブクログ
手紙のやり取りの形式は結構珍しいのではないかと思う。
途中で、手紙送りません からの やっぱり送りました
みたいなのは面白かった。
人生経験少ないからか、あまりイメージできなかったので、繰り返し読みたいと思う。