あらすじ
「前略 蔵王のダリア園から、ドッコ沼へ登るゴンドラ・リフトの中で、まさかあなたと再会するなんて、本当に想像すら出来ないことでした」運命的な事件ゆえ愛しながらも離婚した二人が、紅葉に染まる蔵王で十年の歳月を隔て再会した。そして、女は男に宛てて一通の手紙を書き綴る――。往復書簡が、それぞれの孤独を生きてきた男女の過去を埋め織りなす、愛と再生のロマン。
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Posted by ブクログ
離婚した元夫婦が偶然蔵王で再会し、一年弱、14通の手紙のやり取りを通じて、過去を乗り越え、再生する物語。
1985年の小説なので、令和の今読むと倫理観が崩壊している。浮気を開き直られても、とか、忘れられない女がいたことは墓場まで持っていく話でしょ!とか、今の女性とのやりとりをそんなに赤裸々に語られても、とか…色々、色々思った。けれどそれでも圧倒的だった。読後の力強さ、みなぎる感じが、やはり名作。2025最後の小説かな、と思いながら読み始めたけれど、一気読み!
Posted by ブクログ
とてもきれいな書簡小説だった…
文体はもちろんのこと、内容も高尚で美しく
読んでいて心がスゥーっと洗われていくような感じがした。
亜紀と靖明は10年前に、靖明の不貞・殺人事件が原因で離婚をした。そして、その10年後蔵王のゴンドラで奇跡的な再会を果たす。その再会ではお互い見つめ合い少しの挨拶で終わったが、亜紀には靖明に聞きたいことがたくさんあった。不貞の相手由加子と靖明の関係性とその真実、亜紀との離婚を踏みきった理由…それを切実に書簡で尋ねる亜紀。それに対しはじめは躊躇したものの、亜紀に嘘偽りもない事実を書き連ねて返信していく靖明。ふたりの計14通から見えてくるさまざまな真実に、胸が締め付けられると同時に、人間という生き物のやるせなさもひしひしと感じられた…
特に印象に残ったシーンは、さまざまな死や無になる描写が出てくるなかで、最後にふたりが見出した未来を語るシーンだ。ずっとふたりは過去を振り返り書簡していたが、いつしかそれぞれにこれからの生き様を語り、お互いの健闘を祈る姿は凛々しく、そして美しかった。
手紙の尊さを改めて感じた作品。
私も誰かに手紙を書きたくなった…
そしてこの作品が昭和60年に執筆されたことに、
いまだ驚きを隠せない。
宮本輝さん…また気になる作家さんに出会ってしまった!!